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2話 ダイエット、そしてイケメンへ①
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鏡を前に、俺ことアルベルト・シュトレーゼンは唸り声をあげていた。
「うーん、顔のパーツはどれも恐ろしいほど整っているな。」
前世の記憶を思い出したことで、俺がこの世界に転生して今まで、ゲームに登場する悪役貴族のアルベルト・シュトレーゼンとして生きてきたというのは理解した。
そこで最強になると決意したのだが、まずは何をしようかと鏡に映る自分を眺めていると、今は脂肪に覆われていて醜い顔だが、パーツの1つ1つはとても整っており痩せれば間違いなくイケメンになるだろうと気づいたのだ。そうとなればやることは1つ。
ダイエットして痩せよう。イケメンどうのこうのの前に怪物の様に太ったこの体では、ろくに戦うこともできないだろう。
「よし、痩せてイケメンになって今回の人生ではモテてやる!」
そんなことを1人で呟いていると、専属メイドのミーシャが部屋に入ってきた。ノックもなく入ってくるあたり、俺のことを見下しているのだろう。
「アルベルト様、朝食が準備できましたので、食堂までお越しください。」
明らかに軽蔑したような目でそれだけ告げると部屋を出て行った。部屋の外からは、「あの豚が自分で起きるなんて、今日は雪でも降るのかしら。」という声が聞こえてきた。
メイドとして俺に仕えているにも関わらず、豚などと、今に見ていろ。そう心の中で呟いた。
記憶を思い出す前の俺なら、確実に怒鳴り散らしていただろう。だが記憶を思い出したことで心にも少し余裕ができたのだ。
▼
食堂に入ると、俺以外の家族全員で楽しそうに食事をしていたが、俺が食堂に入るや否や嫌そうな顔をして言ってくる。
「おや、兄さん。落ちこぼれのクズがどうして僕たちと同じ空間で食事ができると思ったのかな。自分の部屋で残飯でも1人寂しく食べていればいいものを。」
「ルーク、そんな人にわざわざ話しかけちゃダメよ。お母さんの子供はルークとアリスの2人だけで、その人は他人なんだから。」
実の母親と弟のルークは、次々に俺に対する悪口を言い合ってくる。仮にも血のつながった家族によくもそんな酷いことを言えるものだ。
俺がここまで家族や使用人から蔑まれているのには理由がある。それは、俺が授かった職業が「農家」だったからだ。
職業というのは、10歳になると神殿で神から授けられるもののことで、戦いにおいて役に立つ職業から、普段の生活を便利にするもの、何の役にも立たない様なものなど、数多くの職業が存在するのだが、シュトレーゼン公爵家は代々、アルカディア王国で将軍を務めてきた名家であるため、戦いにおいて何の役にも立たない俺の職業が心底気に入らないのだ。
そのうえ、姉であるアリスの職業は「剣聖」であり、弟のルークは「豪剣」であるため、俺は家族からゴミ以下のクズだと思われているのだ。
家族が、俺のことを色々と言っているのを無視して食事を食べ終えると、こっそりと街に出ることにした。
目的は街の隅にある果物屋に行くことだ。
「それにしても、事故から目覚めた息子に対して、心配の一言もなしとか終わってるだろ。今に見ていろ。地獄を見せてやる。」
黒いフード付きのコートを着て、街を歩きながら家族への恨みを述べる。しばらく歩くと目的の果物屋が見えてきた。
「ハアハア、ちょっと歩いただけでこれはまずいな。早く痩せなければ。」
果物屋に着いたので息を整えつつ、店主に目的の果物があるか尋ねる。
「りんごとバナナはあるか?」
「へい、いらっしゃい。ちょうど今日入荷したからたくさんあるよ。いくついるんだい?」
「この店にあるだけ全部くれ。金ならある。」
「ぜ、全部!?ありがとうございます。」
大量のバナナとリンゴをどんどんバックに入れていく。普通なら絶対に入らない量だが、俺の持っているバックはマジックバックなので、見た目よりもずっと大容量なのだ。
このバック1つで豪邸が立つほど高価なものだが、公爵邸に置いてあった物を、ここに来る前にこっそりと持ってきてやった。
大量の果物を入れ終わると店主に金貨1枚を渡す。すると驚きのあまり倒れそうになっていた。ここの果物は俺のダイエットにとって役に立つから、チップとして多めに渡したのだが、どうやらやりすぎてしまったみたいだ。
ちなみにこの世界の貨幣価値だと、金貨1枚で日本円にすると100万円、銀貨1枚で1万円ほどなので、そりゃ驚くか。
買いたいものも買えたので家に向かって歩き出す。今日買ったりんごとバナナは交互に食べれば通常の何倍も代謝が良くなるとゲームの豆知識に書いてあった。
誰得なんだよと思っていたが、まさかこんな形で役に立つとは思わなかったな。
さあ、帰ってダイエット開始だ!
「うーん、顔のパーツはどれも恐ろしいほど整っているな。」
前世の記憶を思い出したことで、俺がこの世界に転生して今まで、ゲームに登場する悪役貴族のアルベルト・シュトレーゼンとして生きてきたというのは理解した。
そこで最強になると決意したのだが、まずは何をしようかと鏡に映る自分を眺めていると、今は脂肪に覆われていて醜い顔だが、パーツの1つ1つはとても整っており痩せれば間違いなくイケメンになるだろうと気づいたのだ。そうとなればやることは1つ。
ダイエットして痩せよう。イケメンどうのこうのの前に怪物の様に太ったこの体では、ろくに戦うこともできないだろう。
「よし、痩せてイケメンになって今回の人生ではモテてやる!」
そんなことを1人で呟いていると、専属メイドのミーシャが部屋に入ってきた。ノックもなく入ってくるあたり、俺のことを見下しているのだろう。
「アルベルト様、朝食が準備できましたので、食堂までお越しください。」
明らかに軽蔑したような目でそれだけ告げると部屋を出て行った。部屋の外からは、「あの豚が自分で起きるなんて、今日は雪でも降るのかしら。」という声が聞こえてきた。
メイドとして俺に仕えているにも関わらず、豚などと、今に見ていろ。そう心の中で呟いた。
記憶を思い出す前の俺なら、確実に怒鳴り散らしていただろう。だが記憶を思い出したことで心にも少し余裕ができたのだ。
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食堂に入ると、俺以外の家族全員で楽しそうに食事をしていたが、俺が食堂に入るや否や嫌そうな顔をして言ってくる。
「おや、兄さん。落ちこぼれのクズがどうして僕たちと同じ空間で食事ができると思ったのかな。自分の部屋で残飯でも1人寂しく食べていればいいものを。」
「ルーク、そんな人にわざわざ話しかけちゃダメよ。お母さんの子供はルークとアリスの2人だけで、その人は他人なんだから。」
実の母親と弟のルークは、次々に俺に対する悪口を言い合ってくる。仮にも血のつながった家族によくもそんな酷いことを言えるものだ。
俺がここまで家族や使用人から蔑まれているのには理由がある。それは、俺が授かった職業が「農家」だったからだ。
職業というのは、10歳になると神殿で神から授けられるもののことで、戦いにおいて役に立つ職業から、普段の生活を便利にするもの、何の役にも立たない様なものなど、数多くの職業が存在するのだが、シュトレーゼン公爵家は代々、アルカディア王国で将軍を務めてきた名家であるため、戦いにおいて何の役にも立たない俺の職業が心底気に入らないのだ。
そのうえ、姉であるアリスの職業は「剣聖」であり、弟のルークは「豪剣」であるため、俺は家族からゴミ以下のクズだと思われているのだ。
家族が、俺のことを色々と言っているのを無視して食事を食べ終えると、こっそりと街に出ることにした。
目的は街の隅にある果物屋に行くことだ。
「それにしても、事故から目覚めた息子に対して、心配の一言もなしとか終わってるだろ。今に見ていろ。地獄を見せてやる。」
黒いフード付きのコートを着て、街を歩きながら家族への恨みを述べる。しばらく歩くと目的の果物屋が見えてきた。
「ハアハア、ちょっと歩いただけでこれはまずいな。早く痩せなければ。」
果物屋に着いたので息を整えつつ、店主に目的の果物があるか尋ねる。
「りんごとバナナはあるか?」
「へい、いらっしゃい。ちょうど今日入荷したからたくさんあるよ。いくついるんだい?」
「この店にあるだけ全部くれ。金ならある。」
「ぜ、全部!?ありがとうございます。」
大量のバナナとリンゴをどんどんバックに入れていく。普通なら絶対に入らない量だが、俺の持っているバックはマジックバックなので、見た目よりもずっと大容量なのだ。
このバック1つで豪邸が立つほど高価なものだが、公爵邸に置いてあった物を、ここに来る前にこっそりと持ってきてやった。
大量の果物を入れ終わると店主に金貨1枚を渡す。すると驚きのあまり倒れそうになっていた。ここの果物は俺のダイエットにとって役に立つから、チップとして多めに渡したのだが、どうやらやりすぎてしまったみたいだ。
ちなみにこの世界の貨幣価値だと、金貨1枚で日本円にすると100万円、銀貨1枚で1万円ほどなので、そりゃ驚くか。
買いたいものも買えたので家に向かって歩き出す。今日買ったりんごとバナナは交互に食べれば通常の何倍も代謝が良くなるとゲームの豆知識に書いてあった。
誰得なんだよと思っていたが、まさかこんな形で役に立つとは思わなかったな。
さあ、帰ってダイエット開始だ!
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