308 / 619
第8章 Freedom国の設立!
9話 エリス
しおりを挟む
奴隷商から帰ってきて、まずケンジは欠損奴隷の治療をし、ここでもやっぱり涙を流し感謝され、奴隷達から信用を得ることができた。
まさか、奴隷の自分達にエリクサーを使うような人間がこの世の中にいると思っておらず、もう人生を諦めた人間ばかりだった。
「「「「「ご主人様!ありがとうございます!」」」」」
「うん、みんな今までよく頑張ったな。これからはこの店で頑張ってくれ」
「「「「「はい!」」」」」
「システィナ、プリム、みんなの服や日用雑貨をテンペの町に行きそろえて来てくれ!」
「「はい!」」
「ギルも一緒に頼む!」
「はい」
システィナ達は、女性達10人ギルは男性達5人を引き連れ買い物に行くのである。もういつもの事なのでなれたモノである。
そして、その様子に驚き目を真ん丸にしていたのが、奴隷商のお勧め商品である奴隷の女性だった。
「ケンジ、いえ……ご主人様。ここではいつもこんな感じなのですか?」
「こんな感じとは?」
「私のような高額奴隷じゃない者に、服とか日用雑貨を与えるという行為ですよ。」
「うん、普通だよ。えーっと、君の名前を聞いてなかったな。なんて呼べばいい?」
「あ……失礼しました。私はエリス=リルヴェルトと言います。よろしくお願いします。」
「はっ?君は元貴族なのか?」
「はい……もうリルヴェルト家はもうございません。エリスとお呼びください。」
エリスは、優雅な感じを出しつつ、ケンジに頭を下げるのだった。さすが元貴族である。頭を下げる物腰も気品が漂っていた。
「なんで、そんな事が可能なのですか?」
「可能というか……じゃあエリスに聞くが、あいつ等はこれから俺の店で働いてもらうのだが、案内する店員がボロボロの服を着ていた場合、その店で買い物をしたいと思うか?」
「それは、買わないですね……」
「そうだろ?だったら、あいつ等の服や日用雑貨を用意するのは、当然じゃないか」
「でも、そんな事聞いた事ないですよ」
「そこは、俺じゃない奴らの行動で俺とは違うからな。ここではこれが普通だと思ってくれ」
「は、はい……」
「そして、エリス!お前にも、店で働いてもらうつもりだからよろしくな」
「えっ……私もですか?」
「そりゃ当り前だろ!ここに来たらみんな一緒だよ」
「ですが、私は働いたことがありません……」
「だったら、覚えればいいことだよ。出来る事を探せばいいんだ。失敗や出来ない事は恥ずかしい事じゃない!その行為をできないと言い、放って置くことが恥ずかしい事なんだ」
「はい……」
「もし、店の事が本当に出来ないようなら別の事を頼むから、とりあえず接客を頑張ってくれ」
エリスは戸惑っていた。元貴族の自分に店に出て働けと、自分の主は言うのである。ここでも、ケンジの常識が普通ではない事が出るのである。
エリスのような特別奴隷は、元貴族を奴隷にして手元に置き、箔をつける為だけに購入する事が殆どなのだ。それ故に、特別奴隷は貴族や大商人などに買われるのである。そして、屋敷に飾られるように大事にされるのだ。
つまり、屋敷に飾られる絵画や骨董品のようなものなのである。その為、奴隷商で売られていた時、綺麗に着飾られ見栄えの良いモノが、店頭に並べられていたのである。
すると、マイが呆れたように、ケンジに説明してきたのだ。
「ケンちゃんって、本当に常識がないのね……」
「常識って何だよ」
「エリスの購入目的が全然違うのよ」
「はっ?」
「なんで、あの店頭に並べられ売られていると思うのよ?ケンちゃんに分かりやすく言うと、エリス達は絵画やアクセサリーと一緒なのよ」
「言ってみたらね。本来の購入目的は、元貴族のエリスを買ったと箔をつける為、自分の手元に置くのよ。」
「はあ?そんな物扱いでいいのか?」
「いいのかというより、そういうものなのよ。理屈とかじゃなくてね。」
「まあ、俺はそういうのはよく分からんから、みんな一緒!仲間という感じで扱うよ。」
「っという事で、エリスはがんばってくれ。」
「はい。承知いたしました。」
だが、エリスは今は不安の方が大きいのだが、貴族の時は色んな縛りがあり、もっと自由に生きてみたいと思っていた時期があったのだ。
だが貴族に生まれた自分は将来は家の為、どこかの貴族の家に嫁ぎ、自分の好きでもない相手と結婚し、子供を宿し人生を終えるものだと思っていたのだ。
だが、家が没落し奴隷となり、結婚さえも出来なくなって、後の人生は主人の箔をつける為だけに、生きていかなければならないと思っていたのだ。
だが、ケンジに購入され店で働けと言われ、少しワクワクしている自分もいたのである。
そして、ケンジに店に連れてこられて、ユエティーに紹介されて、店の事はユエティーに聞く様にと言われるのだった。
元貴族だった自分が、平民の下につき命令され働く事はエリスにとって屈辱だった。だが、自分の主人の言う事が絶対なのである。そして、ここではみんな一緒という意味を、嫌というほど身に染みたのである。
「エリス!何やっているの。早くその荷物こっちに運んでちょうだい。」
店の中は、本当に忙しいのだ。それも当然であり、3つの町からお客様が来るのである。普通ならこんなに忙しくはならないのだ。
そして、エリスは信じられないものを目撃するのだ。店頭で、ケンジも接客や荷物を運んでたりするのである。
普通ならケンジは家の方で、別の事をしてても誰も文句は言わないのに、誰よりも動き率先して働いているのだ。
そして、お客様相手に丁寧に対応し、商品を買って貰っているというスタンスで下手に出ているのだ。
エリスは、奴隷商でケンジの商品の事を知っていたのだ。あれほどまでに便利で凄い商品を売っているのに、それに驕る事はせず、常に下手に出て対応しているのである。
「エリス!何ボーっとしてるの?早くそれ持ってきて!」
「は、はい!」
そんな感じで、一日はあっという間に過ぎ去って店を閉める時間となったのだ。エリスは今までいろんな店で買い物をしてきたが、こんな忙しい所は見た事がなかったのだ。
だが、驚いた事はまだ夕方の5時なのに、店を閉めるというのである。普通なら、早くとも8時まではどこの店もやっているはずなのである。
「ユエティー、こんな早くお店を閉めるのですか?」
「エリス、今日はお疲れ様です。初めてで疲れたでしょ?」
「本当にすごい忙しかったですね。これが毎日続くのですか?」
「うん。がんばってね。それとうちの店は5時で終わりなのよ」
「なんでですか?」
「この店は、支店が城壁の外にあるのは知っているわよね?日が暮れると城壁の外は危険になるからだよ」
「城壁の外?でも、外を見たら城壁の中じゃない?」
「ここは本店でしょ。そうじゃなくて支店の方だよ」
中継地点になっている、転移マットが置いてある建物が、城壁の外にある為日が暮れると、魔物や盗賊に襲われる危険性が増えるのである。
テンペの町にあった時からも、5時で閉店していたが、自国で開店してからは、特にその辺りは徹底して閉店しているのである。
「な、なるほど……」
「エリスは、今日が初めてだしもう上がっていいよ。」
ケンジが、上がるのと一緒にエリスも店から出て、井戸の方に向かい汗をタオルで拭きさっぱりするのだった。
「エリス。今日はどうだった?」
「ご主人様……私は最初、働くのは無理と思っていました。そして、申し訳ないのですが、他の者に命令される事が屈辱でした……」
「あっそうか……元貴族のエリスには無理だったか?すまなかったな……明日からやっぱり違うことするか?」
「ご主人様、謝らないでください。今日一日働いた感想はまだ言ってません。それでも、やっぱり今は気持ちいいのです。貴族だった頃、自分の意思は全部封じて、只言いなりだった人生ではなく、お店に出て働けた事が気持ちいいと思いました」
「そっか、それならよかったよ」
「でも、これが毎日となると体力の方にいささか不安があるというか……」
「そっか、だけど俺の店は土と聖の日は休暇だがそれでも無理そうか?」
「はっ?どういう事でしょうか?」
「土の日は、みんな自分のスキルを伸ばす日で、聖の日は完全休暇だ。昼まで寝てても構わんし、家にある本を読んでも構わん。ユエティー達はテンペの町に行き、お茶をしに行っているみたいだぞ」
「奴隷が休暇?お茶をしに町に出かけているのですか?」
「ああ、俺はみんなの事を奴隷とは思っていないし、休暇も与えるよ。お茶をしに町に行きたいなら、少しばかりだがおこずかいも与えているからな。ゆっくり休日を満喫してくれてかまわないよ」
エリスは、ケンジの言う事に、開いた口が塞がらず呆然としていたのだった。すると、そこに鍛冶工房で一日働いていた男達も井戸にやってくるのである。
「お!姉ちゃんも新しく来た新人だな!これからヨロシクな!」
「は、はい!よろしくお願いします。」
「おいおい、これから主の為に頑張る仲間なんだ!そんな堅苦しい挨拶は抜きだ」
ダンギは、ガハハハハと笑いながらエリスの肩を軽く叩くのだった。エリスはこの状況を見てなんかうれしくなるのだった。
ダンギをはじめ、鍛冶工房の男達は何とも言えないような、幸せそうな笑顔を浮かべていたのだった。
そして、自分も又そんな風に笑えているのかと思い、自分の顔に手をやるのだった。ケンジは、そんなエリスを見て微笑んでいた。だが、この事が新たな厄介事がケンジに降りかかる事となるである。
それから半年後、一方ここはガーライの町の奴隷商店。
「どういうことだ!エリスはどこに行ったのだ?」
「お客様、申し訳ございません……エリスなら御購入されました。ここにはもういません。他の奴隷達はいかがでしょうか?」
「やっと、エリスがここにいると聞き、探し出しすことが出来たのに、誰が購入したのだ!」
「申し訳ございません……それは守秘義務の為、教えする事はできません。」
奴隷商も、いくら貴族の命令でもそれは絶対言えないのである。購入された奴隷はその人の財産となり、特にこういった場合はトラブルになりやすい為、誰が購入したのか教えるわけにはいかないのだ。
特にケンジは太客であり、エリスのような奴隷も躊躇することなく購入出来るような人物なのだ。そんな客の信用を、奴隷商としても失うわけには絶対いかないのである。
「どんなやつが買っていったのだ?」
「ですから、守秘義務で教えることは無理でございます。」
その貴族の若者は、悔しそうな顔をしたのだが、どうにもならないのである。その貴族の若者は、奴隷商を不敬罪だ!と言って部下に処刑しろ!というのだが、部下達に止められるのである。
この行為は不敬罪ではなく、王国でちゃんと決められている事であり、ここで処刑した場合、貴族の方が罰せられてしまうのである。
「マードン様!それは無理でございます。そんなことをしたらマードン様が王国法で処刑されてしまうのでございますよ。」
「むぐぐぐぐ……」
マードンと呼ばれた、この貴族は顔をゆがめ歯ぎしりをしていたのだった。どうしようもないマードンは、奴隷商を後にしたのだった。
「エリス……お前は、いったいどこに買われたのだ……」
マードンは、寂し気にどこか遠くを見るように、空を見上げるのだった。
まさか、奴隷の自分達にエリクサーを使うような人間がこの世の中にいると思っておらず、もう人生を諦めた人間ばかりだった。
「「「「「ご主人様!ありがとうございます!」」」」」
「うん、みんな今までよく頑張ったな。これからはこの店で頑張ってくれ」
「「「「「はい!」」」」」
「システィナ、プリム、みんなの服や日用雑貨をテンペの町に行きそろえて来てくれ!」
「「はい!」」
「ギルも一緒に頼む!」
「はい」
システィナ達は、女性達10人ギルは男性達5人を引き連れ買い物に行くのである。もういつもの事なのでなれたモノである。
そして、その様子に驚き目を真ん丸にしていたのが、奴隷商のお勧め商品である奴隷の女性だった。
「ケンジ、いえ……ご主人様。ここではいつもこんな感じなのですか?」
「こんな感じとは?」
「私のような高額奴隷じゃない者に、服とか日用雑貨を与えるという行為ですよ。」
「うん、普通だよ。えーっと、君の名前を聞いてなかったな。なんて呼べばいい?」
「あ……失礼しました。私はエリス=リルヴェルトと言います。よろしくお願いします。」
「はっ?君は元貴族なのか?」
「はい……もうリルヴェルト家はもうございません。エリスとお呼びください。」
エリスは、優雅な感じを出しつつ、ケンジに頭を下げるのだった。さすが元貴族である。頭を下げる物腰も気品が漂っていた。
「なんで、そんな事が可能なのですか?」
「可能というか……じゃあエリスに聞くが、あいつ等はこれから俺の店で働いてもらうのだが、案内する店員がボロボロの服を着ていた場合、その店で買い物をしたいと思うか?」
「それは、買わないですね……」
「そうだろ?だったら、あいつ等の服や日用雑貨を用意するのは、当然じゃないか」
「でも、そんな事聞いた事ないですよ」
「そこは、俺じゃない奴らの行動で俺とは違うからな。ここではこれが普通だと思ってくれ」
「は、はい……」
「そして、エリス!お前にも、店で働いてもらうつもりだからよろしくな」
「えっ……私もですか?」
「そりゃ当り前だろ!ここに来たらみんな一緒だよ」
「ですが、私は働いたことがありません……」
「だったら、覚えればいいことだよ。出来る事を探せばいいんだ。失敗や出来ない事は恥ずかしい事じゃない!その行為をできないと言い、放って置くことが恥ずかしい事なんだ」
「はい……」
「もし、店の事が本当に出来ないようなら別の事を頼むから、とりあえず接客を頑張ってくれ」
エリスは戸惑っていた。元貴族の自分に店に出て働けと、自分の主は言うのである。ここでも、ケンジの常識が普通ではない事が出るのである。
エリスのような特別奴隷は、元貴族を奴隷にして手元に置き、箔をつける為だけに購入する事が殆どなのだ。それ故に、特別奴隷は貴族や大商人などに買われるのである。そして、屋敷に飾られるように大事にされるのだ。
つまり、屋敷に飾られる絵画や骨董品のようなものなのである。その為、奴隷商で売られていた時、綺麗に着飾られ見栄えの良いモノが、店頭に並べられていたのである。
すると、マイが呆れたように、ケンジに説明してきたのだ。
「ケンちゃんって、本当に常識がないのね……」
「常識って何だよ」
「エリスの購入目的が全然違うのよ」
「はっ?」
「なんで、あの店頭に並べられ売られていると思うのよ?ケンちゃんに分かりやすく言うと、エリス達は絵画やアクセサリーと一緒なのよ」
「言ってみたらね。本来の購入目的は、元貴族のエリスを買ったと箔をつける為、自分の手元に置くのよ。」
「はあ?そんな物扱いでいいのか?」
「いいのかというより、そういうものなのよ。理屈とかじゃなくてね。」
「まあ、俺はそういうのはよく分からんから、みんな一緒!仲間という感じで扱うよ。」
「っという事で、エリスはがんばってくれ。」
「はい。承知いたしました。」
だが、エリスは今は不安の方が大きいのだが、貴族の時は色んな縛りがあり、もっと自由に生きてみたいと思っていた時期があったのだ。
だが貴族に生まれた自分は将来は家の為、どこかの貴族の家に嫁ぎ、自分の好きでもない相手と結婚し、子供を宿し人生を終えるものだと思っていたのだ。
だが、家が没落し奴隷となり、結婚さえも出来なくなって、後の人生は主人の箔をつける為だけに、生きていかなければならないと思っていたのだ。
だが、ケンジに購入され店で働けと言われ、少しワクワクしている自分もいたのである。
そして、ケンジに店に連れてこられて、ユエティーに紹介されて、店の事はユエティーに聞く様にと言われるのだった。
元貴族だった自分が、平民の下につき命令され働く事はエリスにとって屈辱だった。だが、自分の主人の言う事が絶対なのである。そして、ここではみんな一緒という意味を、嫌というほど身に染みたのである。
「エリス!何やっているの。早くその荷物こっちに運んでちょうだい。」
店の中は、本当に忙しいのだ。それも当然であり、3つの町からお客様が来るのである。普通ならこんなに忙しくはならないのだ。
そして、エリスは信じられないものを目撃するのだ。店頭で、ケンジも接客や荷物を運んでたりするのである。
普通ならケンジは家の方で、別の事をしてても誰も文句は言わないのに、誰よりも動き率先して働いているのだ。
そして、お客様相手に丁寧に対応し、商品を買って貰っているというスタンスで下手に出ているのだ。
エリスは、奴隷商でケンジの商品の事を知っていたのだ。あれほどまでに便利で凄い商品を売っているのに、それに驕る事はせず、常に下手に出て対応しているのである。
「エリス!何ボーっとしてるの?早くそれ持ってきて!」
「は、はい!」
そんな感じで、一日はあっという間に過ぎ去って店を閉める時間となったのだ。エリスは今までいろんな店で買い物をしてきたが、こんな忙しい所は見た事がなかったのだ。
だが、驚いた事はまだ夕方の5時なのに、店を閉めるというのである。普通なら、早くとも8時まではどこの店もやっているはずなのである。
「ユエティー、こんな早くお店を閉めるのですか?」
「エリス、今日はお疲れ様です。初めてで疲れたでしょ?」
「本当にすごい忙しかったですね。これが毎日続くのですか?」
「うん。がんばってね。それとうちの店は5時で終わりなのよ」
「なんでですか?」
「この店は、支店が城壁の外にあるのは知っているわよね?日が暮れると城壁の外は危険になるからだよ」
「城壁の外?でも、外を見たら城壁の中じゃない?」
「ここは本店でしょ。そうじゃなくて支店の方だよ」
中継地点になっている、転移マットが置いてある建物が、城壁の外にある為日が暮れると、魔物や盗賊に襲われる危険性が増えるのである。
テンペの町にあった時からも、5時で閉店していたが、自国で開店してからは、特にその辺りは徹底して閉店しているのである。
「な、なるほど……」
「エリスは、今日が初めてだしもう上がっていいよ。」
ケンジが、上がるのと一緒にエリスも店から出て、井戸の方に向かい汗をタオルで拭きさっぱりするのだった。
「エリス。今日はどうだった?」
「ご主人様……私は最初、働くのは無理と思っていました。そして、申し訳ないのですが、他の者に命令される事が屈辱でした……」
「あっそうか……元貴族のエリスには無理だったか?すまなかったな……明日からやっぱり違うことするか?」
「ご主人様、謝らないでください。今日一日働いた感想はまだ言ってません。それでも、やっぱり今は気持ちいいのです。貴族だった頃、自分の意思は全部封じて、只言いなりだった人生ではなく、お店に出て働けた事が気持ちいいと思いました」
「そっか、それならよかったよ」
「でも、これが毎日となると体力の方にいささか不安があるというか……」
「そっか、だけど俺の店は土と聖の日は休暇だがそれでも無理そうか?」
「はっ?どういう事でしょうか?」
「土の日は、みんな自分のスキルを伸ばす日で、聖の日は完全休暇だ。昼まで寝てても構わんし、家にある本を読んでも構わん。ユエティー達はテンペの町に行き、お茶をしに行っているみたいだぞ」
「奴隷が休暇?お茶をしに町に出かけているのですか?」
「ああ、俺はみんなの事を奴隷とは思っていないし、休暇も与えるよ。お茶をしに町に行きたいなら、少しばかりだがおこずかいも与えているからな。ゆっくり休日を満喫してくれてかまわないよ」
エリスは、ケンジの言う事に、開いた口が塞がらず呆然としていたのだった。すると、そこに鍛冶工房で一日働いていた男達も井戸にやってくるのである。
「お!姉ちゃんも新しく来た新人だな!これからヨロシクな!」
「は、はい!よろしくお願いします。」
「おいおい、これから主の為に頑張る仲間なんだ!そんな堅苦しい挨拶は抜きだ」
ダンギは、ガハハハハと笑いながらエリスの肩を軽く叩くのだった。エリスはこの状況を見てなんかうれしくなるのだった。
ダンギをはじめ、鍛冶工房の男達は何とも言えないような、幸せそうな笑顔を浮かべていたのだった。
そして、自分も又そんな風に笑えているのかと思い、自分の顔に手をやるのだった。ケンジは、そんなエリスを見て微笑んでいた。だが、この事が新たな厄介事がケンジに降りかかる事となるである。
それから半年後、一方ここはガーライの町の奴隷商店。
「どういうことだ!エリスはどこに行ったのだ?」
「お客様、申し訳ございません……エリスなら御購入されました。ここにはもういません。他の奴隷達はいかがでしょうか?」
「やっと、エリスがここにいると聞き、探し出しすことが出来たのに、誰が購入したのだ!」
「申し訳ございません……それは守秘義務の為、教えする事はできません。」
奴隷商も、いくら貴族の命令でもそれは絶対言えないのである。購入された奴隷はその人の財産となり、特にこういった場合はトラブルになりやすい為、誰が購入したのか教えるわけにはいかないのだ。
特にケンジは太客であり、エリスのような奴隷も躊躇することなく購入出来るような人物なのだ。そんな客の信用を、奴隷商としても失うわけには絶対いかないのである。
「どんなやつが買っていったのだ?」
「ですから、守秘義務で教えることは無理でございます。」
その貴族の若者は、悔しそうな顔をしたのだが、どうにもならないのである。その貴族の若者は、奴隷商を不敬罪だ!と言って部下に処刑しろ!というのだが、部下達に止められるのである。
この行為は不敬罪ではなく、王国でちゃんと決められている事であり、ここで処刑した場合、貴族の方が罰せられてしまうのである。
「マードン様!それは無理でございます。そんなことをしたらマードン様が王国法で処刑されてしまうのでございますよ。」
「むぐぐぐぐ……」
マードンと呼ばれた、この貴族は顔をゆがめ歯ぎしりをしていたのだった。どうしようもないマードンは、奴隷商を後にしたのだった。
「エリス……お前は、いったいどこに買われたのだ……」
マードンは、寂し気にどこか遠くを見るように、空を見上げるのだった。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
2,451
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる