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19(攻視点)
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俺たちの会社は順調で、相変わらず樹と真奈美の二人は仲良しだった。ただあれだけ卒業したら結婚すると惚気けていたのに結婚する気配がないことだけが不思議だった。
真奈美は名家の一人娘で樹は、名家の出身ではあるが男ばかり三兄弟の末っ子だ。きっと樹が婿入りするのだろう。
▲
「話がある。」
深刻な顔で樹に切り出された。ゆっくり話したいと言うので個室のあるダイニングバーを予約して久しぶりに二人で飲んだ。
大学時代の懐かしい話に花が咲き一向に本題を切り出す様子がなかった。だいぶ、酒がすすん頃、おもむろに樹が切り出した。
「俺、真奈美と別れることにする。」
「?どうしたんだよ急に。お前らこっちが恥ずかしくなるぐらい仲いいじゃないか。」
「俺、無精子症だった。ブライダルチェック受けたんだよ。」
そう言う樹の目は潤んでいた。俺はかける言葉を失った。
「真奈美はなんて言ってるんだよ。そんなことで別れようって言うやつじゃないだろ。」
「だからだよ。真奈美には家の跡取りのことだってあるのに。このまま結婚なんてできないよ。」
「とにかく二人で話し合え。」
それしか言えなかった。
俺は仲睦まじかった学生時代の二人を思い出し暗澹たる気持ちになった。俺はもとより特定のパートナーを持つつもりも子供を持つつもりもなかった。
できることなら樹と代わってやりたかった。
二人での飲み会以降の樹の憔悴ぶりは見ていられなかった。朗らかだった真奈美もここ最近笑顔が見られない。二人は話し合ったのだろうか。二人の葛藤を思うと胸が痛かった。
せめて二人の負担にならないようにと俺はますます仕事に打ち込んだ。
数カ月がたち、なんとなく二人の様子も落ち着いてきた頃、二人に食事に誘われた。
二人が俺を呼び出したのは完全個室のホテルのレストランだった。
「どうしたんだよ。改まってこんな店に呼び出すなんて。」
3人だけで食事をするのは久しぶりだった。
「省吾にお願いしたいことがあって。」
しばらくの沈黙のあと真奈美がそう切り出した。
「私と結婚して欲しいの。」
予想だにしない申し出にすぐには反応できなかった。
「え?どういうことだ。真奈美だって俺の性的指向は知ってるだろ。」
「私、このままだと父にお見合いさせられて、結婚させられちゃう。だから省吾にお願いしているの。」
真奈美は俯いた。
「待てよ。樹はそれでいいのかよ?」
俺は樹の方を見た。
「俺が言い出したんだ。訳のわからない男と結婚させられるぐらいなら省吾とって。」
「もちろん。あなたにとってもメリットがある結婚にする。」
二人の話はこうだった。
結婚の期間は5年間。最初の数年は仲睦まじい様子を真奈美の両親に見せること。徐々に距離をとって最終的には真奈美の有責で離婚すると言うものだった。樹以外と結婚しても子供ができなければ真奈美の父親もいずれ諦めるだろうというものだった。
俺のメリットは真奈美の父親からの出資。今まで真奈美の父親に援助を頼んだことはなかった。俺たちの会社での仕事を真奈美の腰掛け程度にとらえているふしがあった。
でも結婚して夫婦で会社を運営するとなれば娘婿に箔をつけるために出資は惜しまないだろうと言うのだ。正直喉から手が出るほどほしい出資だ。俺たちの会社が今以上に大きくなるためにはさらなる開発費が必要だった。
「お父さんは、俺で納得するのか?俺は樹みたいに家柄は良くないし。」
「それは大丈夫。父は実力主義だから。本当は樹のこともすごく実力をかってたの。」
真奈美は寂しそうに目を伏せた。
「少し考えさせてくれ。」
そう言ってその日は別れた。
二人は言わなかったが他にも俺にはメリットがある。結婚することでの社会的信用の獲得、同性愛に対する偏見の隠れ蓑にもなる。
俺は学生時代の二人のお互いを思い合う眩しかった姿を思い出していた。そして二人に一つの提案をすることを決意した。
▲
「この間の返事をさせてもらいたい。」
そう言ってこの間と同じ店に二人を呼び出した。
「真奈美との結婚受けさせてほしい。それで…俺からも一つ提案がある。真奈美との間に子供を持ちたい。」
二人は驚いて顔を見合わせた。
「それは、どう言う…」
樹が戸惑うように言った。
この提案をする前に俺もブライダルチェックを受けた。
「二人の家族になりたいんだ。sexで子供を持つことはできないと思う。でも医学の力を借りれば子供を持つことは可能だと思う。三人で子供を育てたい。」
こうして俺と真奈美偽装結婚をした。
真奈美は名家の一人娘で樹は、名家の出身ではあるが男ばかり三兄弟の末っ子だ。きっと樹が婿入りするのだろう。
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「話がある。」
深刻な顔で樹に切り出された。ゆっくり話したいと言うので個室のあるダイニングバーを予約して久しぶりに二人で飲んだ。
大学時代の懐かしい話に花が咲き一向に本題を切り出す様子がなかった。だいぶ、酒がすすん頃、おもむろに樹が切り出した。
「俺、真奈美と別れることにする。」
「?どうしたんだよ急に。お前らこっちが恥ずかしくなるぐらい仲いいじゃないか。」
「俺、無精子症だった。ブライダルチェック受けたんだよ。」
そう言う樹の目は潤んでいた。俺はかける言葉を失った。
「真奈美はなんて言ってるんだよ。そんなことで別れようって言うやつじゃないだろ。」
「だからだよ。真奈美には家の跡取りのことだってあるのに。このまま結婚なんてできないよ。」
「とにかく二人で話し合え。」
それしか言えなかった。
俺は仲睦まじかった学生時代の二人を思い出し暗澹たる気持ちになった。俺はもとより特定のパートナーを持つつもりも子供を持つつもりもなかった。
できることなら樹と代わってやりたかった。
二人での飲み会以降の樹の憔悴ぶりは見ていられなかった。朗らかだった真奈美もここ最近笑顔が見られない。二人は話し合ったのだろうか。二人の葛藤を思うと胸が痛かった。
せめて二人の負担にならないようにと俺はますます仕事に打ち込んだ。
数カ月がたち、なんとなく二人の様子も落ち着いてきた頃、二人に食事に誘われた。
二人が俺を呼び出したのは完全個室のホテルのレストランだった。
「どうしたんだよ。改まってこんな店に呼び出すなんて。」
3人だけで食事をするのは久しぶりだった。
「省吾にお願いしたいことがあって。」
しばらくの沈黙のあと真奈美がそう切り出した。
「私と結婚して欲しいの。」
予想だにしない申し出にすぐには反応できなかった。
「え?どういうことだ。真奈美だって俺の性的指向は知ってるだろ。」
「私、このままだと父にお見合いさせられて、結婚させられちゃう。だから省吾にお願いしているの。」
真奈美は俯いた。
「待てよ。樹はそれでいいのかよ?」
俺は樹の方を見た。
「俺が言い出したんだ。訳のわからない男と結婚させられるぐらいなら省吾とって。」
「もちろん。あなたにとってもメリットがある結婚にする。」
二人の話はこうだった。
結婚の期間は5年間。最初の数年は仲睦まじい様子を真奈美の両親に見せること。徐々に距離をとって最終的には真奈美の有責で離婚すると言うものだった。樹以外と結婚しても子供ができなければ真奈美の父親もいずれ諦めるだろうというものだった。
俺のメリットは真奈美の父親からの出資。今まで真奈美の父親に援助を頼んだことはなかった。俺たちの会社での仕事を真奈美の腰掛け程度にとらえているふしがあった。
でも結婚して夫婦で会社を運営するとなれば娘婿に箔をつけるために出資は惜しまないだろうと言うのだ。正直喉から手が出るほどほしい出資だ。俺たちの会社が今以上に大きくなるためにはさらなる開発費が必要だった。
「お父さんは、俺で納得するのか?俺は樹みたいに家柄は良くないし。」
「それは大丈夫。父は実力主義だから。本当は樹のこともすごく実力をかってたの。」
真奈美は寂しそうに目を伏せた。
「少し考えさせてくれ。」
そう言ってその日は別れた。
二人は言わなかったが他にも俺にはメリットがある。結婚することでの社会的信用の獲得、同性愛に対する偏見の隠れ蓑にもなる。
俺は学生時代の二人のお互いを思い合う眩しかった姿を思い出していた。そして二人に一つの提案をすることを決意した。
▲
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そう言ってこの間と同じ店に二人を呼び出した。
「真奈美との結婚受けさせてほしい。それで…俺からも一つ提案がある。真奈美との間に子供を持ちたい。」
二人は驚いて顔を見合わせた。
「それは、どう言う…」
樹が戸惑うように言った。
この提案をする前に俺もブライダルチェックを受けた。
「二人の家族になりたいんだ。sexで子供を持つことはできないと思う。でも医学の力を借りれば子供を持つことは可能だと思う。三人で子供を育てたい。」
こうして俺と真奈美偽装結婚をした。
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