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21(攻視点)
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蒼がいなくなった。
別れ話をされて合鍵を返しても、近くにさえいればいずれ復縁できると思っていた。
あと数ヶ月もすれば俺の抱える問題も片付く。
環境が整ったらすぐに迎えに行こうと思っていた。
それなのに…蒼はいなくなった。
▲
「ねぇまりちゃん。最近、早瀬くん見かけないけどお休み?」
コーヒーを運んできたまりちゃんを引き止めて聞いてみる。
別れ話になってからも、『嫌い』と言われてないのをいいことに蒼の勤めるこの店には素知らぬ顔で通い続けた。
しかし、この3日蒼の姿を全く見かけない。
「早瀬さん、転勤だか長期出張だかになって当分こっちのお店には出勤しないんですよ。」
驚いた。まさか蒼が自分の前からいなくなることなど想定もしていなかった。
激しく動悸がした。動揺を隠して平静を装い尋ねた。
「へぇ、どこのお店に移ったの?」
まりちゃんはちょっと困った顔をしてこたえた。
「あ~それは…内緒なんです。店長から箝口令が出ていて。」
「ふ~ん。どうして?」
「早瀬さん、モテるんですよ。お客様に。それこそ小さい女の子からおばあちゃん、男の人まで。」
そんなことは知っているがなぜそれが箝口令になるのか。
「いるんですよね~。ストーカーっぽくなっちゃう人。だから箝口令なんです。」
しかも、とまりちゃんは続けた。
「困ったことに、本人が狙われてる自覚0。」
ストーカーという言葉にドキリとした。自分だって紙一重じゃないかと。
「へぇ、そうなんだ。」
気のないふりをして返事をした。
「やだ、結城さんのことじゃないですよ?あっでも結城さんもファンでしたっけ?」
一人喋り続ける彼女をよそに、俺の頭の中は蒼でいっぱいだった。
▲
店を出てすぐにメッセージアプリを確認した。
ここ最近は俺が連絡してもずっと既読スルーだった。それでも蒼が見ていてくれるなら連絡する意味があると思っていた。
3日前のメッセージに既読がついていなかった。
すぐに、電話をかける。
『この通話はお客様のご希望によりお繋ぎできません。』
無情なメッセージのあとはツーツーツーという機械音だけが響いた。電話が切れたその足で、蒼のアパートに向かった。
遠目からも見慣れたカーテンが目に入りほっとした。
引っ越しはしてないようだ。
部屋に続く階段を駆け上がった。
久しぶりに見る蒼の部屋にはどこか違和感があった。
(キッチンのグリーンがない?)
廊下に面したキッチンの曇り窓に透けていた植物の影がなかった。慌ててドアの郵便受けを確認するとそこにはガムテープが貼られていた。
「蒼…」
別れ話をされて合鍵を返しても、近くにさえいればいずれ復縁できると思っていた。
あと数ヶ月もすれば俺の抱える問題も片付く。
環境が整ったらすぐに迎えに行こうと思っていた。
それなのに…蒼はいなくなった。
▲
「ねぇまりちゃん。最近、早瀬くん見かけないけどお休み?」
コーヒーを運んできたまりちゃんを引き止めて聞いてみる。
別れ話になってからも、『嫌い』と言われてないのをいいことに蒼の勤めるこの店には素知らぬ顔で通い続けた。
しかし、この3日蒼の姿を全く見かけない。
「早瀬さん、転勤だか長期出張だかになって当分こっちのお店には出勤しないんですよ。」
驚いた。まさか蒼が自分の前からいなくなることなど想定もしていなかった。
激しく動悸がした。動揺を隠して平静を装い尋ねた。
「へぇ、どこのお店に移ったの?」
まりちゃんはちょっと困った顔をしてこたえた。
「あ~それは…内緒なんです。店長から箝口令が出ていて。」
「ふ~ん。どうして?」
「早瀬さん、モテるんですよ。お客様に。それこそ小さい女の子からおばあちゃん、男の人まで。」
そんなことは知っているがなぜそれが箝口令になるのか。
「いるんですよね~。ストーカーっぽくなっちゃう人。だから箝口令なんです。」
しかも、とまりちゃんは続けた。
「困ったことに、本人が狙われてる自覚0。」
ストーカーという言葉にドキリとした。自分だって紙一重じゃないかと。
「へぇ、そうなんだ。」
気のないふりをして返事をした。
「やだ、結城さんのことじゃないですよ?あっでも結城さんもファンでしたっけ?」
一人喋り続ける彼女をよそに、俺の頭の中は蒼でいっぱいだった。
▲
店を出てすぐにメッセージアプリを確認した。
ここ最近は俺が連絡してもずっと既読スルーだった。それでも蒼が見ていてくれるなら連絡する意味があると思っていた。
3日前のメッセージに既読がついていなかった。
すぐに、電話をかける。
『この通話はお客様のご希望によりお繋ぎできません。』
無情なメッセージのあとはツーツーツーという機械音だけが響いた。電話が切れたその足で、蒼のアパートに向かった。
遠目からも見慣れたカーテンが目に入りほっとした。
引っ越しはしてないようだ。
部屋に続く階段を駆け上がった。
久しぶりに見る蒼の部屋にはどこか違和感があった。
(キッチンのグリーンがない?)
廊下に面したキッチンの曇り窓に透けていた植物の影がなかった。慌ててドアの郵便受けを確認するとそこにはガムテープが貼られていた。
「蒼…」
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