君のすべては僕のもの

ぽんち。

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第2章(高一冬~)

8: 言葉

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 もうダメだ。そう思った瞬間、バンと勢いよくドアが開いた。



「おい。遊馬」


 低く冷たい声で彼は話しかける。


「秦同家を敵に回したくなかったら、今すぐ失せろ。」


「けっ。秦同の付け回しかと思ったら、お気に入りだったのかよ。はいはい。分かった。そう睨むなよ。俺は危険な旅はしない派だからさ。」



 そういうと遊馬は、ささっと制服を着直し
トイレを後にした。
 そして、僕達2人だけになり、沈黙が続く。
くっ…。遊馬の言う通り、本当にヒートが来てしまったかもしれない。身体が疼いてしまう。‪α‬の秦同は一緒にいるのもつらいはず。早く離れないと。


「んっ…、しん、どう。僕は大丈、夫だか…ら。
っ……!はやく、にげ、て。」


 身体が熱くなるのを我慢し、ポケットに入れてた抑制剤を打った。そして、途切れ途切れになりながらも秦同に話しかける。


「……………、」


「秦同?」


「……さっきまで辛い目にあってたのに、こんな状況で久城を1人に出来るわけないだろ。仮に俺が今出て行ったとする。その後は?こんなきついフェロモン出してるのに、‪α‬が近づいてこないわけが無い。俺がいたら、他の‪α‬は近づいて来れないから。」



 秦同は悲しそうな表情を浮かべながら、僕を見つめる。そんな顔を見ていると僕まで悲しい気持ちになってくる。
 Ωだから仕方ないのに。どうしてそんなに僕のことを心配してくれるんだ?



「…いから。」


「え?」


「何もしないから、そばにいさせてくれ。」


 こんなヒート中のΩのそばにいて、何もしないなんて絶対にあるはずがない。でも秦同のその言葉を聞いて、何故か信用してしまう自分がいた。


「ごめん。もう少し早く来てあげれたら。」


「しかた、ないよ。僕はΩだから。」


「そんな事…関係ないだろ。Ωだからって襲われていい理由にはならない。」


「Ωはそういう存在なんだよ。秦同。いるだけで卑猥なそういう目で見られる。いつどこで襲われたっておかしくないんだよ。生きてるだけで迷惑がかかるんだ。」



「……………。Ωがどういう扱いをされているのかはよく知っている。だが、だからって諦めて襲われるなんて…」



「仕方ないんだ。秦同。僕とお前とでは住む世界が違う。秦同みたいな家柄に生まれたΩなら、守られるかもしれない。だが、一般家庭のΩは貴族の‪α‬に逆らうなんて出来るはずがないんだ。」


 秦同は、ハッとした表情でこちらを見てくる。


「これは僕だけの問題じゃない。遊馬は、かなり上の貴族様で、あそこで僕が逆らえば何をされていたか分からない。僕だけならどうでもいい。でも、叔父さまや叔母さまに迷惑をかける訳にはいかないんだ。」


「叔父さまと叔母さま……?」


「あぁ。僕は養子なんだ。優しい叔父さまと叔母さまにずっと育ててもらってきた。大切なに迷惑をかけたくない。」


「なぁ、久城。俺の番になること。前向きに考えてはくれないか?」


「は…?」


「俺の番になれば、いつでも守ってやれる。俺がいない時も番ってだけで牽制できる。どうだ?」




 確かに、秦同の番になれば叔父さまと叔母さまに迷惑をかけることなくΩで生きていけるかもしれない。
でも、初めは僕をと言って番を求めていたのに、今は僕をにと言っている。本当は嬉しいし、番にもなりたい。でもね、秦同お前は少し思い違いをしている。だから、僕はこういうしかないんだ。



「ねぇ?秦同。」



「久城…?」



 自分の気持ちを悟られないように、目を細め、微笑みながらもハッキリと秦同に伝える。




「僕はお前と番になる気なんか一切ないよ。」
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