22 / 36
第2章(高一冬~)
8: 言葉
しおりを挟むもうダメだ。そう思った瞬間、バンと勢いよくドアが開いた。
「おい。遊馬」
低く冷たい声で彼は話しかける。
「秦同家を敵に回したくなかったら、今すぐ失せろ。」
「けっ。秦同の付け回しかと思ったら、お気に入りだったのかよ。はいはい。分かった。そう睨むなよ。俺は危険な旅はしない派だからさ。」
そういうと遊馬は、ささっと制服を着直し
トイレを後にした。
そして、僕達2人だけになり、沈黙が続く。
くっ…。遊馬の言う通り、本当にヒートが来てしまったかもしれない。身体が疼いてしまう。αの秦同は一緒にいるのもつらいはず。早く離れないと。
「んっ…、しん、どう。僕は大丈、夫だか…ら。
っ……!はやく、にげ、て。」
身体が熱くなるのを我慢し、ポケットに入れてた抑制剤を打った。そして、途切れ途切れになりながらも秦同に話しかける。
「……………、」
「秦同?」
「……さっきまで辛い目にあってたのに、こんな状況で久城を1人に出来るわけないだろ。仮に俺が今出て行ったとする。その後は?こんなきついフェロモン出してるのに、αが近づいてこないわけが無い。俺がいたら、他のαは近づいて来れないから。」
秦同は悲しそうな表情を浮かべながら、僕を見つめる。そんな顔を見ていると僕まで悲しい気持ちになってくる。
Ωだから仕方ないのに。どうしてそんなに僕のことを心配してくれるんだ?
「…いから。」
「え?」
「何もしないから、そばにいさせてくれ。」
こんなヒート中のΩのそばにいて、何もしないなんて絶対にあるはずがない。でも秦同のその言葉を聞いて、何故か信用してしまう自分がいた。
「ごめん。もう少し早く来てあげれたら。」
「しかた、ないよ。僕はΩだから。」
「そんな事…関係ないだろ。Ωだからって襲われていい理由にはならない。」
「Ωはそういう存在なんだよ。秦同。いるだけで卑猥な目で見られる。いつどこで襲われたっておかしくないんだよ。生きてるだけで迷惑がかかるんだ。」
「……………。Ωがどういう扱いをされているのかはよく知っている。だが、だからって諦めて襲われるなんて…」
「仕方ないんだ。秦同。僕とお前とでは住む世界が違う。秦同みたいな家柄に生まれたΩなら、守られるかもしれない。だが、一般家庭のΩは貴族のαに逆らうなんて出来るはずがないんだ。」
秦同は、ハッとした表情でこちらを見てくる。
「これは僕だけの問題じゃない。遊馬は、かなり上の貴族様で、あそこで僕が逆らえば何をされていたか分からない。僕だけならどうでもいい。でも、叔父さまや叔母さまに迷惑をかける訳にはいかないんだ。」
「叔父さまと叔母さま……?」
「あぁ。僕は養子なんだ。優しい叔父さまと叔母さまにずっと育ててもらってきた。大切な人たちに迷惑をかけたくない。」
「なぁ、久城。俺の番になること。前向きに考えてはくれないか?」
「は…?」
「俺の番になれば、いつでも守ってやれる。俺がいない時も番ってだけで牽制できる。どうだ?」
確かに、秦同の番になれば叔父さまと叔母さまに迷惑をかけることなくΩで生きていけるかもしれない。
でも、初めは僕を運命の番だからと言って番を求めていたのに、今は僕を守るためにと言っている。本当は嬉しいし、番にもなりたい。でもね、秦同お前は少し思い違いをしている。だから、僕はこういうしかないんだ。
「ねぇ?秦同。」
「久城…?」
自分の気持ちを悟られないように、目を細め、微笑みながらもハッキリと秦同に伝える。
「僕はお前と番になる気なんか一切ないよ。」
0
あなたにおすすめの小説
無自覚オメガとオメガ嫌いの上司
蒼井梨音
BL
ベータとして生きてきた無自覚オメガの小国直樹は、オメガ嫌いの白鷹課長のいる部署に異動になった。
ビクビクしながら、なるべく関わらないように仕事をしてたのに、
ペアを組んでいた先輩が倒れてしまい、課長がサポートすることに。
そして、なぜか課長にキスされてしまい…??
無自覚オメガ→小国直樹(24)
オメガ嫌いの上司→白鷹迅(28)アルファ
第一部・完
お読みいただき、ありがとうございました。
第二部
白鷹課長と一緒に住むことになった直樹。
プロジェクトのこととか、新しくできた友だちの啓さんのこととか。
相変わらず、直樹は無自覚に迅さんに甘えています。
第三部
入籍した直樹は、今度は結婚式がしたくなりました。
第四部
入籍したものの、まだ番になってない直樹と迅さん。
直樹が取引先のアルファに目をつけられて……
※続きもいずれ更新します。お待ちください。
直樹のイラスト、描いてもらいました。
αで上級魔法士の側近は隣国の王子の婚約者候補に転生する
結川
BL
アデル王子の幼馴染かつ側近のルイス・シュトラール(α・上級魔法士)が転生した先は、隣国の王子の婚約者候補であるルカ・エドウィン(Ω・魔法未修得者)だった。
※12/6追記:2章プロット作成のため更新を留めます(2章からはBL/オメガバースらしい話にします)シナリオ調整のため、公開済みの話に変更を加える可能性があります。
愛させてよΩ様
ななな
BL
帝国の王子[α]×公爵家の長男[Ω]
この国の貴族は大体がαかΩ。
商人上がりの貴族はβもいるけど。
でも、αばかりじゃ優秀なαが産まれることはない。
だから、Ωだけの一族が一定数いる。
僕はαの両親の元に生まれ、αだと信じてやまなかったのにΩだった。
長男なのに家を継げないから婿入りしないといけないんだけど、公爵家にΩが生まれること自体滅多にない。
しかも、僕の一家はこの国の三大公爵家。
王族は現在αしかいないため、身分が一番高いΩは僕ということになる。
つまり、自動的に王族の王太子殿下の婚約者になってしまうのだ...。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
あなたの家族にしてください
秋月真鳥
BL
ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。
情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。
闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。
そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。
サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。
対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。
それなのに、なぜ。
番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。
一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。
ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。
すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。
※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。
※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。
籠中の鳥と陽色の君〜訳アリ王子の婚約お試し期間〜
むらくも
BL
婚約話から逃げ続けていた氷の国のα王子グラキエは、成年を機に年貢の納め時を迎えていた。
令嬢から逃げたい一心で失言の常習犯が選んだのは、太陽の国のΩ王子ラズリウ。
同性ならば互いに別行動が可能だろうと見込んでの事だったけれど、どうにもそうはいかなくて……?
本当はもっと、近くに居たい。
自由で居たいα王子×従順に振る舞うΩ王子の両片想いBL。
籠中の鳥と陽の差す国〜訳アリ王子の受難〜
むらくも
BL
氷の国アルブレアの第三王子グラキエは、太陽の国ネヴァルストの第五王子ラズリウの婚約者。
長い冬が明け、いよいよ二人はラズリウの祖国へ婚約の報告に向かう事になった。
初めて国外へ出るグラキエのテンションは最高潮。
しかし見知らぬ男に目をつけられ、不覚にも誘拐されてしまう。
そこに婚約者を探し回っていたラズリウが飛び込んできて──
……王への謁見どころじゃないんだが?
君は、必ず守るから。
無防備なおのぼりα王子×婚約者が心配なΩ王子の
ゆるあまオメガバース&ファンタジーBL
※「籠中の鳥と陽色の君〜訳アリ王子の婚約お試し期間〜」の続きのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる