「第二至上主義論者」の斯くも難しき恋心

三十路独身フリーター男

文字の大きさ
24 / 40

第24話 第二至上主義論者の身体接触

しおりを挟む
「私は一条さんとお付き合いしているとはいえ、それは“仮”なのだ。果たしてそんな私が女性と付き合った経験のある男性に分類されるのだろうか?」

 二宮さんの話を聞くに連れて、私の中で不安な気持ちが沸々と湧いて出るのを感じた。

 別に、今の私と一条さんの関係に不安があるわけではない。寧ろ、今の距離感は最も良いぐらいでそこに問題はない。しかし、一年後…いや既に10ヶ月後に差し迫った決断の日に、私は明確な答えが出せるのであろうか。残りたった10ヶ月である。この間に一条さんと本気でお付き合いするのか、ただの友達に戻るのかを選択せねばならない。どちらを選んでも一条さんとは今の様な関係ではいられなくなるだろう。それを踏まえた上で後腐れない決断ができるかどうか、それが私にとっての不安であった。

「どうなんだろう、二宮さん?今の一条さんと私はお付き合いしているに値するのだろうか?それとも“仮”という言葉を盾に、ただ男女の友達の延長線上にいるだけなのだろうか?」

「そ、そうね…。じゃあ一先ず、お昼ご飯を一緒に食べる以外に一条さんと何をしているのかしら?」

「一緒に登下校をしている」

「成程。それは勿論、手と手を繋いでよね?」

「手?……手か」

 そう言えば、恋愛を題材にしたドラマや映画において男女が手を繋ぐシーンなどはよく見かける。だが、「手を繋ぐ」という行為だけでは特に大した要素には思えない。例えば、親子でも手を繋ぐだろうし、学校の体育の授業などで隣の人と手を繋ぐことも少なくないだろう。であるならば、男女が手を繋ぐという行為に対してどのような意味合いがあるというのだろうか。

「どうして、付き合う男女は手を繋ぐのだろう?」

「そうね。ずばり、手を繋ぐという行為より“身体接触”という点が重要なのだと思うわ!」

「身体接触?じゃあ、手ではなくてもいいと?」

「勿論よ!足でも肩でも指先でも、好きな相手に触れた瞬間にビリリとした恋の稲妻が脳を駆け巡るの!それが恋!それが好き!それこそが愛!!」

「ほう。二宮さんは恋愛についてよく勉強しているのだな」

「当たり前でしょう!恋愛っていうのは簡単に出来るものじゃないの!お互いがお互いの時間を捧げるのよ!24時間という有限かつ貴重なものを相手に捧げるってだけで、無駄には出来ないの!あぁ!でも、だからこそ…恋愛は特別なの……」

 それだけを言うと二宮さんはうっとりとした表情で虚空を見つめた。そこに何が見えるのかと私も覗き込んで見たが、見えるのは6月の曇った空ばかりでまだまだ私には恋愛の真髄は見えそうになかった。

「それで?一条さんとは手を繋いだの?」

「いや、全く」

「えぇ!?……ねぇ二階堂くん、もしかして貴方は一条さんに”キープ”されているだけなんじゃない?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~

ねるねわかば
恋愛
悪路に閉ざされた貧しい辺境ルースライン領。 兄を支えたい子爵令嬢リゼは、視察に来た調査官のずさんな仕事に思わず異議を唱える。 異議を唱えた相手は、侯爵家の子息で冷静沈着な官吏ギルベルト。 最悪の出会いだった二人だが、領の問題に向き合う中で互いの誠実さを知り、次第に理解し合っていく。 やがてリゼが王都で働き始めたことを機に距離を縮める二人。しかし立ちはだかるのは身分差と政略結婚という現実。自分では彼の未来を縛れないと、リゼは想いを押し込めようとする。 そんな中、故郷の川で拾われる“名もなき石”が思わぬ縁を呼び、リゼの選択と領の未来を動かしていく――。 想いと責務の狭間で揺れる青年と、自分を後回しにしがちな少女。 すれ違いと葛藤の先で、二人は互いを選び取れるのか。 辺境令嬢の小さな勇気が恋と運命を変えていく。 ※作中の仕事や災害、病、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。 ※8万字前後になる予定です。

うわさの行方

下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。 すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。 戦場から帰るまでは。 三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。 ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

あざとさを捨てた令嬢は、若き公爵に溺愛される

古紫汐桜
恋愛
婚約者の裏切りを目撃し、命を落とした“私”が目を覚ましたのは、 見知らぬ貴族令嬢の身体の中だった。 そこは、誰かの悪意によって評判を地に落とした世界。 かつて“あざとさ”で生きていた彼女の代わりに、 私はその人生を引き受けることになる。 もう、首を揺らして媚びる生き方はしない。 そう決めた瞬間から、運命は静かに歪み始めた。 冷酷と噂される若公爵ユリエル。 彼もまた、自らの運命に抗い続けてきた男だった。 そんな彼が、私にだけ見せた執着と溺愛。 選び直した生き方の先で待っていたのは、 溺れるほどの愛だった。 あざとさを捨てた令嬢と、運命に翻弄される若公爵。 これは、“やり直し”では終わらない、致命的な恋の物語。

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

処理中です...