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母ではないが
母になれずとも
しおりを挟む私には生まれつき子宮がない。
生まれつき、と言ってもこのことを知ったのは高校受験が終わった頃だ。
私も母もマイペースで、生理が来ないことに焦りすら覚えていなかった。
子宮頸がんのワクチンの話が出て、そう言えばと産婦人科に向かって初めて判明した。
五千人に一人ほどの確率らしく、奇病というには人数が多い気がするが、千人通ってる学校でも五つあつめてようやく一人見つかるかどうかだと考えるとやはり少ないのだろう。
恋人も出来たことがなかったし、周りに生理の重い人が多いのを見ていたから「生理が来なくてラッキー」ぐらいの感覚でいた。
その感覚が変わるキッカケは大学時代にあった。
私は小学校教諭になりたくて大学に通っていた。
教師になりたかったのは単純な理由だった。
先生たちに憧れたからだ。
勉強についていけなかった私に自分のペースでいいよとゆっくり教えてくれた先生。危機察知に疎く危険なところで遊ぶ私に根気よく危ないところを教えてくれた先生。他の先生なら叱るところも理由を聞いて褒めるところを見つけてくれる先生。
そんな先生たちに憧れて、同じようになりたいと思った。
大学に入ってから、皆いろんな理由で教師を目指しているのだと知った。
「子どもが好き」というのを理由に上げる人をみて、すごいなと思った。
私はまだまだ子どもの延長線上にいる気がしていた。
だから、なんというか、別の生き物のように捉えられる様はとても大人に感じた。
二年生になって、人生初の彼氏ができた。
互いに愛し合って、ただ一緒にいれば幸せなのだと思っていたし、私は実際幸せだった。
しかし、彼は違った。
健全な男性なら当然だったのだろう、恋人同士は自然にやるらしいコトを要求してきた。
一応、膣のようなものはある。
入口があり、三センチほどの穴となっている。
それで彼が満足できるのか、私には分からなかった。
私は元々マイペースだし、考えるスピードも遅いし、とりわけ自分と感じ方の違う人の考えを読むのが苦手だった。
教師になるのだから、と小学生の思考については少しずつ勉強しているし自分も小学生を体験してる分、自分の考えだけでなく過去として友達の思いを捉えて解釈し直して理解していくことが出来ていると思う。
けれど、やっぱり同年代や年上の人の思考は難しい。
自分とは違うものなのだと解釈するのがまず、難しい。
それだから、今までいう必要を感じてなかった。
しかし、それが間違いだったらしかった。
「騙してたんだな!親になれないくせに教師なんて目指してんじゃねーよ!」
言わないことが騙すことになるなんて知らなかった。
母になることが親になることだという認識も乏しかった。
今の私なら騙してないと謝罪も加えて言えただろう。そして、心が親として成長できたら血のつながりなど無くても親になれる、とかどうしても血のつながりが必要なら体外受精(日本では代理出産ができないが)がある、とかの親になる話も出来ただろう。
それでも、当時は深刻に捉えたことのなかった事実を投げつけられ、臥せるしかなかった。
こんな自分が教師になりたいと思っていいのか、不安が募っていった。
彼、元彼になったその人や周りからの目もいたく、大学を辞めようかと思ったこともあった。
でも、せめて教育実習はこなそう、違う職を探すにしてもここまできたのだから小学生たちのためになることを探したい、そう思って教育実習に挑んだ。
上手くいくことなんてほとんどなかった。
それでも、子どもたちは緊張や失敗を笑ってくれたし、子供っぽい私を仲間に入れて最近の遊びを教えてくれた。
先生たちは最初から上手くいくなら実習なんていらないんだからとあたたかく支えてくれた。
子どもたちの笑顔を見守りたい、先生たちを少しでも手伝いたい。
その気持ちは日に日に強くなって、たとえ向いてなくとも頑張ることを心に決めた。
そして今、私は念願の小学校教諭になっている。
「かあちゃ...先生!!」
「んん?母ちゃんと呼んでくれてもいいよ?」
「ばっ!!」
「ごめんごめん、お母さんは一人だけよね」
「先生は先生がいいの!子どもみたいだけど」
「喜んでいいのか傷ついた方がいいのかわからないなぁー、ありがとう」
そんな会話をしながら、今日も愉しく生きている。
母になれなくとも、この子たちの成長を見守るのが許されていて、とても幸せだ。
今はそれだけでいいと思える。
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