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しおりを挟む眩い輝きに周囲の人々が思わず目をつむる。それはしばらくして、落ち着いていった。
薄くレイアが瞼を開ける。ラシーヌは急いでソラティスを見た。
苦しんでいた表情が幾分、和らいでいた。ホッとするラシーヌの上で自身の首飾りを見るレイアが、首をかしげる。
「前もあったけど、癒しの力でもあるのかしら」
その言葉に反応したのは、ザラだった。「そうよ!」と強い口調で返す。
「それはもともと……ヴァーガリアに受け継がれてきたものだもの。それが奪われたせいであの人は……」
「誰のこと?」
「とにかく主を休ませましょう。ザラ様、ラシーヌ様、手をお借りしますね」
レイアの疑問もそのままに、バルトネルはソラティスの傍に膝をついた。声をかけられた二人が承諾する。
「わかったわ」
「もちろんです」
三人でゆっくりと抱き起こす。途中で騎士の持ってきた担ぎ台へのせる。白い布の敷かれたそこに横にさせ、そのまま神殿を後にした。
ふとラシーヌが空を仰ぎ見る。吹雪は幾分和らいでいた。
* * *
「なるほどね。それで? 返却はしないわよ」
釘を刺すようにレイアが言う。彼女は通された客間で、出された紅茶に口をつけた。正面では、ザラが恐ろしいほど険しい顔をしていた。
ソラティスの霊力で加護が強まり、街に平穏が訪れたところで不在の領主に代わり、バルトネルが改めてアーティファクトの説明をした。
氷華には命を削る恐れがあること、それをアーティファクトで抑えることが出来るということを簡単に伝える。
そしてレイアの持つそれが、もともとヴァーガリア家で受け継がれてきたものだということは、ザラが堪えきれず訴えた。それを受けてバルトネルは、丁寧に返却を求めた。
だが、それを聞いたレイアは皆が思っていた通り拒否する。どれほどバルトネルが頼み込んでも、ザラが脅すような言葉を吐いても全く意に介さない。
あまりにも勝手な言い分に、とうとうザラが感情を露にする。バンッとテーブルに手をついて、立ち上がった。
「人の命がかかっているのに、よく言えたわね!」
「だからこそに決まってんでしょ!」
レイアも対抗するように立ち上がって返した。そして続ける。
「とにかく! そっちの事情なんてレイアは知らない。こんなところから早く帰るわよ!」
「レイア様!」
「レイア、待って!」
取り巻きを引き連れ、部屋を出ていこうとする。慌ててラシーヌとバルトネルが引き留めたものの、ラシーヌは手を振り払われ尻餅をついてしまった。
「ラシーヌ様!」
バルトネルが急いで駆け寄る。彼女を起こしている間に、レイアは帰路の指示を出していた。
「ちょっと待ちなさいよ!」
このままでは本当に帰ってしまう。ようやくアーティファクトを見つけたのに、と、ザラは焦っていた。
ザラの亡き夫ベルナーは、アーティファクトの行方を探して皇都に行った時、見つからなかったと言った。それがソレーユ家にあったのなら、どうあっても取り戻したのに、とさえ思う。
だが今は悠長にしていられない。今度こそ息子を失うかもしれない。彼女は焦るあまりに、思わず声を上げた。
「レイア嬢……そのペンダントの代わりに、何を渡せばいいのかしら」
その言葉にピタリと動きを止める。レイアはスッと視線を動かして、フッと笑みを浮かべた。
「あら。楽しそうなお話? ふざけたことじゃないといいのだけど」
人差し指を顎に添えて、小首をかしげる。ザラは絞り出すように言った。
「望みを言いなさい。私が叶えるわ」
「ふふっ、そうね」
不敵に笑って、考える素振りをした。だがその視線は、ラシーヌに移る。そして続ける。
「ソラティス様の妻の座が欲しいわ。そこの役立たずを、今すぐ追い出して。ね?」
「……」
ザラが息を呑む。ゆっくり振り返り、ラシーヌを見る。そして眉根を寄せて彼女の傍にいくと、震える両手でその手を握った。
消え入りそうな声でザラは「ごめんなさい」と言う。
「他に手がないの……あの子をもう失いたくない」
今にも涙をこぼしそうなほど瞳を潤ませるザラ。そんな彼女を安心させるように、ラシーヌは微笑んだ。
「もちろんです。私も同じ思いです。だから……」
柔らかく微笑んで、後ろを振り返る。カナンに声をかけて、近づいてきた彼女から装飾が緻密な美しい細長い箱を受け取った。
そしてザラに渡す。彼女は不思議そうに開けた。
「これは? まさか」
「ティスを……ソラティス様をよろしくお願いします」
静かに頭を下げて、その場を後にする。ザラが箱から取り出したのはラシーヌのサインが入った離縁届けだった。
ザラの瞳から雫がこぼれ落ちる。その箱を顔に持っていく彼女の頬には涙が伝っていく。「ごめんなさい…」と呟く声は静寂に溶けていった。
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