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へびのきゅうあい
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しおりを挟む「……あの、これ……もしかして契約の?」
「わかってやったんじゃないのか?」
「……えっと、俺も何でこんなことしたのか」
その原因ならわかる。
ヤトから感じた匂いだ。あの匂いを嗅いでると頭がぼんやりして、何故だかわからないけどこうしないといけないって思ったんだ。
そう説明するとヤトが考えるように、トントンとこめかみを長い指で叩きながら、難しい顔をしている。もしかして、何かまずかったのかな。
「……これは、私がお前につけたのと同じものなのはわかるな?」
「うん……だって、同じ模様だし」
「あぁ」
「これも契約の徴?」
「片方ならな」
片方なら?
どちらかだけなら契約だけど、両方だと違うってこと?
「じゃあ、両方なら?」
「―――婚姻の徴になる」
「こんいん?」
こんいんって…………―――婚姻?!
「え、え……待って、俺とヤト……結婚したってこと?」
「そうだ」
「いや、待って。ごめん、俺……そんな」
大事なこと、いきなりやっちゃったってこと? ヤトの了承もなしに?
そりゃ困った顔するよ。難しい顔するって。
「いや、お前は悪くない。私もまさかお前にあれがわかると思っていなかった」
「あれって……ヤトからしたいい匂いのこと?」
「……ああ」
「俺もさっき初めて気づいたんだけどさ。あれって体臭? でも、今まであんな匂いしなかったよね?」
そう聞くと、ヤトが赤くなった。え? 何か照れてる?
こんな顔見るの初めてなんだけど。え? ええええ?
「恥ずかしい、ことなの?」
「……うるさい」
「ヤト、めっちゃ顔真っ赤だよ?」
「黙れ」
鋭い声なのに、すごい可愛い。何この可愛い生き物……やばいって、こんなの。
どうやら、その匂いがしてしまったことはヤトにとって誤算だったらしい。そしてなんかすごく恥ずかしいことでもあるらしい。
説明は……してくれないだろうな。この様子だと。
「ヤトは俺と結婚して、嫌じゃない?」
「お前は、どうなんだ」
「俺は前に言ったじゃん。ずっとヤトと一緒にいたい、って」
「……あれは、そういう意味だったのか」
「それ以外に何があるんだよ」
まぁ、結婚までは考えてなかったけど、ずっと離れたくないって思ったのは間違いない。初めて会ったのに、あんな風に抱かれたのに……ヤトとは離れたくないって、心から思ったんだ。
「で? ヤトは?」
「……お前、実は意地が悪いだろ」
赤面はおさまったみたいだけど、まだやっぱりいつものヤトと違って歯切れが悪い。
まぁ、嫌ではないのかな? 嫌そうじゃないよね? ぎゅっと抱きしめるように体を寄せると、ヤトの腕が腰に回された。
力強いその腕に嫌がられていないのだと確信する。嬉しくて笑いがこみあげてきて、体を揺らして笑っているとヤトが俺の耳にそっと唇を寄せた。
「元より、離すつもりはなかったが……」
そういえば、あの日もそんなことを言ってたっけ。聞き返したらはぐらかされて、そのまま契約を結ばれてしまったけど。
「……まさか、お前からも徴をもらえるとは思っていなかったから…………これは、嬉しいのだろうな」
え、何。どんな顔して言ってるの? それ。
見たかったのに、腰に回っていたはずの腕の片方がいつの間にか俺の頭を押さえつけている。どうやっても、顔を見せる気はないらしい。
まぁ、そう言ってもらえただけいっか。
「俺も嬉しい」
そう答えたら、ヤトがふ、と吐息を漏らしながら体を小さく揺らした。
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