【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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39 その反応はやめてほしい

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「それで……十日目にしてようやく、自分で制服を着られるようになったわけか」
「昨日の夕方にはできるようになってたから! 九日目だって!」
「誤差だろ」

 今日は初めて、幹部候補生と同じ訓練に参加する。
 訓練場までの案内を引き受けてくれたのは、幼馴染みの幹部候補生レクセだ。訓練開始の三十分前に合流して、近況を話しながら訓練場を目指す。
 シディア様の部下になって約二週間。
 本当は幹部候補生候補になった時点で、すぐに訓練には合流すべきだったんだけど、制服――いわゆる外皮を自力で纏えなかったり、他にもいくつか魔力の扱いで不安な点があったので、開始を先延ばしにしてもらっていたのだ。
 ちなみにこの十日間、おれを個人的に指導してくれたのはシディア様だ。シディア様も幹部として超多忙なはずなのに、合間の貴重な時間をおれのために使ってくれた。
 指導は文字どおり、手取り足取りって感じだった。
 一回の時間はそんなに長くなかったけど、ものすごく濃密な指導をしてもらったと思う。

 ――それが昨日で終わっちゃったのは残念だけど……でも、そのおかげでできることが増えたし!!

 その一つが、制服を自力で着ることだ。
 せっかく仕立ててもらったのに、自分で着れないなんてめちゃくちゃ情けなかったから、できるようになって本当によかった。

「この十日間、制服の着脱を上司の幹部に頼んでたとか本気か? そんなの、お前以外に聞いたことないぞ」
「う……それは……」
「恥ずかしいから、他の幹部候補生の前では絶対に言うなよ」
「はーい……」

 わざわざ釘を刺さなくても、おれだって話すつもりなんかなかったし。
 でも、レクセの言うとおりなので素直に返事しておく。

「それにしてもお前の制服……初めて見たけど、それ……」
「かっこいいだろ?」
「…………まあ、本人が気に入ってるならいいか」

 ――なんだよ、そのちょっと含んだ言い方。この制服をデザインしてくれたの首領様だぞ! 不敬じゃん!

 と思っていても、言えないんだけど。
 これが首領様にデザインしてもらった制服だってことは、まだ誰にも話していなかった。
 でもなんとなく、シディア様は気づいているような気がする。たまにそれっぽい発言をするからだ。

「まあ……制服の形は自分で選べるものじゃないしな」
「そうなの?」
「この制服は戦闘服でもある。戦闘服は装着主の能力や特性、戦い方に合った最適な形に仕立てるべきものだからな。そういったことに誰よりも長けた、ホニベラ様にお任せするのが一番なんだよ」

 そういえば制服を仕立てる前、おれもホニベラ様から能力についてあれこれ確認された気がする。

 ――一応、参考にされてたのかな? でも、実際にデザインしてくれたのは首領様だし……ううん。

 おれの制服はなんとなく他の人と違う気がするけど、普通がどんな工程で作られるものかわからないだけに、なんともいえない。

「そういえばレクセの制服の色、前と変わった?」
「所属が決まったからな。お前のその色もシディア様の色なんだろ?」
「そう! 幹部の色を纏うって、めちゃくちゃ興奮するよなぁ。シディア様に包まれてるって感じがして!!」
「………………今に始まったことじゃないが、お前の感覚を理解するのは難しいみたいだ」

 溜め息混じりに、呆れた声で言われてしまった。

「ちょっと……それは酷くない?」

 レクセに遠慮がないのはいつものことだけど、そこまではっきり言わなくてもいいのに。
 フェチが理解されないのはわかっているけど、幹部の色を纏うのって部下は皆嬉しいもんなんじゃないの?

「ところでお前の左耳、ずっと気になってたんだけど……それ、外殻か?」

 左側を歩くレクセが何やらちらちら見ている気はしていたけど、どうやらおれの左耳が気になっていたらしい。
 おれの左耳には、確かに小さな外殻がピアスのようについている。
 首領様につけられたものだ。
 おれは自分の左耳に指先で触れながら、こくんと頷いた。

「そう――っていっても、おれのじゃないんだけど」
「どういうことだ?」

 レクセが驚いた様子で足を止めたので、おれも一緒に立ち止まった。
 レクセはさっきよりもまじまじとおれの左耳を見つめている。その眉間には深い皺が寄っていた。

「お前のじゃ、ない?」
「あのさ……おれ、外殻のこととかあんまり詳しくないから、参考までに聞きたいんだけど……自分の外殻を人に渡すってよくあることなの?」
「は?」
「いや、だから……自分の外殻を他人に――」
「別にもう一回言えって意味じゃない」

 聞き返されたと思ったからもう一回説明しようとしたのに、レクセに冷たく遮られてしまった。
 レクセの眉間の皺がさらに深くなっている。

「……これは、他人の外殻なのか?」

 しばらく無言でおれの耳を見ていたレクセが、真剣な声色で尋ねてくる。
 おれが頷くと、レクセは「まじか……」と呟いたあと、びっくりするほど長い溜め息をついた。

「……オクトス様とアラネア様は、何か言っていたか?」
「いや、まだ父さんと母さんには話してなくて」
「はぁ? なんでだよ」
「これ、制服を脱ぐと一緒に消えちゃうから、まだ見せられてないんだよ……だから、今日帰ったら話そうと思ってたんだけど……」

 レクセがじとっとした目で見つめてくるもんだから、説明がたじたじになってしまった。
 レクセはもう一度溜め息をつく。

「シディア様は? 知ってるんだろ?」
「そりゃあ知ってるけど……別に何も言われたことないよ?」

 たまに触られることはあるけど。
 でも嫌な感じは全然しないし、むしろここをシディア様に触られると心地いいというか、安心するというか、もっと触られたいと思ってしまう。

「……なら、俺の考えすぎか」
「どういうこと?」
「この話は一旦終わりだ。遅れたらまずいから、訓練場に向かうぞ」

 自分から話を振ってきたくせに、レクセは一方的に話を切り上げる。
 そこから訓練場まで、ずっと無言だった。
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