3 / 34
《幸季視点》
取り上げられた首輪 02
しおりを挟む
「え、と……」
「ご主人様とか呼ばせるタイプだった? 俺、そういうの苦手。なんか演技させてるみたいじゃない? そんなんじゃ相手の本質がわかんないと思うんだよね」
「……本質?」
「そう。だから俺のことは呼び捨てで呼んでほしいな。敬語は……まあ、コウキには似合ってるからそのままでもいいけど」
了承の意味を込めてコクリと頷くと、リウが目を細めて満足そうに笑みを浮かべた。そんな表情をDomに向けられたのも初めてで、とくりと心臓の音が跳ねる。
「コウキって年齢よりも若く見えるね。その見た目で三十って誰も信じないと思うけど」
「そうですね……この間、新入社員に間違えられました」
「ははっ、だよね。そんな感じする。あ、先週誕生日だったんだよね。おめでと」
――全然、めでたくなんかない。
そのせいで、幸季は前のパートナーには捨てられたのだ。
元々、幸季が三十になるまでの限定パートナーだと言われていた。若いSubにしか興味はないと。それでも気に入ってもらえればその制約だってなくなるかもしれないと、どこかで期待していた。自分だけは特別だと言ってもらえないかと――。
だが、そんなことは起きなかった。
三十歳の誕生日。
それは幸季がずっと来なければいいと思っていた日だ。
当日にはお祝いもなく、あっさりと捨てられてしまった。クレイムの契約とともに贈られた首輪も、そのときに彼に取り上げられてしまった。
――彼から貰った唯一の贈り物だったのに。
「コウキ、ダメだよ」
「――っ、あ」
無意識に首を掻きむしっていたらしい。手首を大きな手に掴まれ、幸季はハッと顔を上げる。
真剣な表情をしたリウと目が合った。
「申し訳、ありません」
「掻きむしりは不安症の症状でもあるけど……コウキのそれはストレスも強いのかな?」
しゃがんだままのリウに、じっと下から瞳の中を覗き込まれる。
まだ、Glareは出されていないはずなのに、何故かそうされるだけで身体の奥が小さく震えてしまう。
「さてと、プレイの前にセーフワードを決めようか。何がいい?」
「…………」
その言葉に、彼とのセーフワードが「愛してる」だったことを思い出す。それを言ったらプレイをやめると言われていた。
どうして気づかなかったんだろう。
その時点で、彼からの愛は得られないと言われているようなものだったのに。
愛してしまったら終わり、なんて――そんな残酷なルール。
「コウキってさ、嫌いな食べ物は何?」
「? ……ピーマン、ですけど」
「じゃあそれにしよう。セーフワードはピーマンね。あ、ちなみに俺もピーマンは嫌い」
同じだね、と笑うリウの表情にきゅっと胸が痛くなる。
それを振り払うように幸季は小さく首を振った。
「じゃ、始めよっか」
立ち上がったリウが、うんと背伸びをする。
その言葉にまた少しだけ緊張が増した。彼以外のDomとの初めてのプレイだ。
「――よろしく、お願いします」
「うん」
対照的にリウの態度はずっと変わらなかった。口調だって軽いままだ。
でも、それもきっとここまでだろう。
プレイが始まればDomは豹変する。
「ご主人様とか呼ばせるタイプだった? 俺、そういうの苦手。なんか演技させてるみたいじゃない? そんなんじゃ相手の本質がわかんないと思うんだよね」
「……本質?」
「そう。だから俺のことは呼び捨てで呼んでほしいな。敬語は……まあ、コウキには似合ってるからそのままでもいいけど」
了承の意味を込めてコクリと頷くと、リウが目を細めて満足そうに笑みを浮かべた。そんな表情をDomに向けられたのも初めてで、とくりと心臓の音が跳ねる。
「コウキって年齢よりも若く見えるね。その見た目で三十って誰も信じないと思うけど」
「そうですね……この間、新入社員に間違えられました」
「ははっ、だよね。そんな感じする。あ、先週誕生日だったんだよね。おめでと」
――全然、めでたくなんかない。
そのせいで、幸季は前のパートナーには捨てられたのだ。
元々、幸季が三十になるまでの限定パートナーだと言われていた。若いSubにしか興味はないと。それでも気に入ってもらえればその制約だってなくなるかもしれないと、どこかで期待していた。自分だけは特別だと言ってもらえないかと――。
だが、そんなことは起きなかった。
三十歳の誕生日。
それは幸季がずっと来なければいいと思っていた日だ。
当日にはお祝いもなく、あっさりと捨てられてしまった。クレイムの契約とともに贈られた首輪も、そのときに彼に取り上げられてしまった。
――彼から貰った唯一の贈り物だったのに。
「コウキ、ダメだよ」
「――っ、あ」
無意識に首を掻きむしっていたらしい。手首を大きな手に掴まれ、幸季はハッと顔を上げる。
真剣な表情をしたリウと目が合った。
「申し訳、ありません」
「掻きむしりは不安症の症状でもあるけど……コウキのそれはストレスも強いのかな?」
しゃがんだままのリウに、じっと下から瞳の中を覗き込まれる。
まだ、Glareは出されていないはずなのに、何故かそうされるだけで身体の奥が小さく震えてしまう。
「さてと、プレイの前にセーフワードを決めようか。何がいい?」
「…………」
その言葉に、彼とのセーフワードが「愛してる」だったことを思い出す。それを言ったらプレイをやめると言われていた。
どうして気づかなかったんだろう。
その時点で、彼からの愛は得られないと言われているようなものだったのに。
愛してしまったら終わり、なんて――そんな残酷なルール。
「コウキってさ、嫌いな食べ物は何?」
「? ……ピーマン、ですけど」
「じゃあそれにしよう。セーフワードはピーマンね。あ、ちなみに俺もピーマンは嫌い」
同じだね、と笑うリウの表情にきゅっと胸が痛くなる。
それを振り払うように幸季は小さく首を振った。
「じゃ、始めよっか」
立ち上がったリウが、うんと背伸びをする。
その言葉にまた少しだけ緊張が増した。彼以外のDomとの初めてのプレイだ。
「――よろしく、お願いします」
「うん」
対照的にリウの態度はずっと変わらなかった。口調だって軽いままだ。
でも、それもきっとここまでだろう。
プレイが始まればDomは豹変する。
89
あなたにおすすめの小説
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
待てって言われたから…
ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
不器用な僕とご主人様の約束
いち
BL
敬語のクラブオーナー×年下のやんちゃっ子。遊んでばかりいるSubの雪はある日ナイトクラブでDomの華藍を知ります。ちょっと暑くなってくる前に出会った二人の短編です。
🍸カンパリオレンジのカクテル言葉は初恋だそうです。素敵ですね。
※pixivにも同様の作品を掲載しています
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる