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《幸季視点》
取り上げられた首輪 01
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「緊張してる?」
「え……あ、はい。すみません」
にっこりと笑った青年に、下から顔を覗き込まれる。首を傾げた動きに合わせて、綺麗なカーキグレージュの髪がさらりと揺れた。
しゅっとした切長の目元だが、冷たい印象がしないのはその表情のおかげだろう。その笑みはとても優しげだったが、今はまっすぐ見られそうもなかった。
ベッドに腰掛けたまま、動けなくなってしまった幸季のことを青年は気遣ってくれているようだ。無理に顔を上げろとは言わず、幸季の足元にしゃがみ込んで視線に合わそうとしてくれている。
だが、自分より十歳近く年下とはいえ、相手はDomだ。そんな風に振る舞われれば余計に恐縮してしまう。
幸季は俯いたまま、もう一度小さな声で謝った。
「だから謝らなくていいって。コウキはプレイの経験がないわけじゃないんだよね?」
「……経験は、あります」
当たり前のように名前を呼ばれて、少し驚いた。
――彼の名前は……なんだっけ。
指名をするときにきちんと名前を確認したはずなのに、どうやら緊張で抜け落ちてしまったらしい。一文字も思い出すことができない。
どこかに名札のようなものはないかと探してみたが、目につくところには見当たらなかった。
「こういう店は初めて?」
「そう、です」
「ふふ。だからそんなに緊張しないで、ね?」
ぽん、と膝に触れられた。そこから伝わってきた熱にどきりとする。
前のパートナーは直接触れることを嫌う人だった。
褒めるときもCommandを使うだけ。それでもSubの欲求は満たされたし、不満に思ったことは一度もなかったはずなのに。
――まさか、Domから触れてもらえるなんて。
そのことに喜んでしまっている自分がいる。これも受付で支払った料金に含まれているのだろうか。
ここはDomの時間を金で買う店だ。金を払って、プレイをしてもらうための店。
プレイはSubの欲求を満たすために必要な行為だ。Normalの人たちの中にはこれがただの破廉恥な行為と思っている人がいるようだが、実際はそうではない。Subの精神を安定させるために必要不可欠なその行為は医療行為とまではいかないにしても、それに近しいものだと幸季は認識していた。
だが、こんな店に来るのは生まれて初めてだ。やはり緊張してしまう。
「なんと、お呼びすればいいですか?」
「ん? 普通に名前でいいけど? あ、俺はリウだよ、よろしくね」
「リウ、様?」
「呼び捨てでいいって。ああ、そっか。もしかして前のDomにそういう風に躾られてる?」
上目遣いで首を傾げて尋ねられ、思わず答えに詰まる。
「え……あ、はい。すみません」
にっこりと笑った青年に、下から顔を覗き込まれる。首を傾げた動きに合わせて、綺麗なカーキグレージュの髪がさらりと揺れた。
しゅっとした切長の目元だが、冷たい印象がしないのはその表情のおかげだろう。その笑みはとても優しげだったが、今はまっすぐ見られそうもなかった。
ベッドに腰掛けたまま、動けなくなってしまった幸季のことを青年は気遣ってくれているようだ。無理に顔を上げろとは言わず、幸季の足元にしゃがみ込んで視線に合わそうとしてくれている。
だが、自分より十歳近く年下とはいえ、相手はDomだ。そんな風に振る舞われれば余計に恐縮してしまう。
幸季は俯いたまま、もう一度小さな声で謝った。
「だから謝らなくていいって。コウキはプレイの経験がないわけじゃないんだよね?」
「……経験は、あります」
当たり前のように名前を呼ばれて、少し驚いた。
――彼の名前は……なんだっけ。
指名をするときにきちんと名前を確認したはずなのに、どうやら緊張で抜け落ちてしまったらしい。一文字も思い出すことができない。
どこかに名札のようなものはないかと探してみたが、目につくところには見当たらなかった。
「こういう店は初めて?」
「そう、です」
「ふふ。だからそんなに緊張しないで、ね?」
ぽん、と膝に触れられた。そこから伝わってきた熱にどきりとする。
前のパートナーは直接触れることを嫌う人だった。
褒めるときもCommandを使うだけ。それでもSubの欲求は満たされたし、不満に思ったことは一度もなかったはずなのに。
――まさか、Domから触れてもらえるなんて。
そのことに喜んでしまっている自分がいる。これも受付で支払った料金に含まれているのだろうか。
ここはDomの時間を金で買う店だ。金を払って、プレイをしてもらうための店。
プレイはSubの欲求を満たすために必要な行為だ。Normalの人たちの中にはこれがただの破廉恥な行為と思っている人がいるようだが、実際はそうではない。Subの精神を安定させるために必要不可欠なその行為は医療行為とまではいかないにしても、それに近しいものだと幸季は認識していた。
だが、こんな店に来るのは生まれて初めてだ。やはり緊張してしまう。
「なんと、お呼びすればいいですか?」
「ん? 普通に名前でいいけど? あ、俺はリウだよ、よろしくね」
「リウ、様?」
「呼び捨てでいいって。ああ、そっか。もしかして前のDomにそういう風に躾られてる?」
上目遣いで首を傾げて尋ねられ、思わず答えに詰まる。
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