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《幸季視点》
あたたかな支配 01
しおりを挟む「コウキのことも教えてほしいな」
請われるようにそう言われて、幸季は渋々カバンの中から名刺を取り出した。
いつもと何ら変わらないはずなのに、モノクロの文字だけの味気ない名刺が普段よりもさらに色を失って見える。
「神取幸季……ただのサラリーマンだよ。小さな印刷会社でいつも同じ営業先を回ってるだけの」
大した仕事だとは思わない。
高卒で働き始めてからずっと、毎日同じことばかりを繰り返す日々だ。
誇れるようなものは何もない。リウのように輝くものを持っていない自分に気づき、幸季は自信のなさを表わすように下を向いた。
「コウキ」
「……っ、あ」
「嫌なら、セーフワード使って」
Glareだ。
正面に座るリウからGlareが放たれている。
「どう、して」
「あんまり良くないこと考えてそうだったから、ちょっとね。こうすれば気持ちいいでしょ?」
――そんな風に、Glareを使うなんて。
Glareはただ支配するためだけの力なのだと思っていた。Subに命令を聞かせるためだけの威圧なのだと。
だが、リウが使うとその印象が変わってくる。
リウから放たれるGlareは、前のパートナーのものとは全然違っていた。
――気持ちよくて、おかしくなりそう。
身体から勝手に力が抜けていく。
慌てて手に持っていたカップをテーブルの上に戻した。
「このまま、友達っていうのでもいいのかもしれないけどさ……でも、やっぱり欲が出ちゃうよね。そんな顔見たら」
「……んッ」
「ねえ、コウキ。そのまま聞いてくれる?」
Glareの力が少し弱まる。
それでも、先ほどまでリウに支配されていた幸季の身体はそのGlareに従順な反応を見せた。リウから目が離せない。
「蕩けちゃってるね。ちゃんと話聞ける?」
「……ん、だいじょうぶ」
「そう。それならいいけど」
優しく頬に触れられる。
指の腹でするりと顎を撫でられただけなのに、背筋を官能的な痺れが走る。
「本当、たまんないよね。コウキって」
「……?」
「ねえ、俺のSubにならない?」
「……リウの、Subに?」
「うん」
声はちゃんと聞こえているし、その言葉も理解しているはずなのに、気持ちよさに考えがまとまらない。
――僕が、リウのSubに……なる?
その提案に対して、頷きたくて仕方がない。何も考えずにリウのことを求めたい。
だけど、それがそんな風に簡単に決めていいものでないことはわかっている。
パートナーを持つということはSubにとって大切なことだ。必ずしも唯一無二の関係というわけではないが、少なくとも幸季にとっては特別な関係だった。
そんなことをすぐに決められるわけがない。今日出会ったばかりの人からの誘いに簡単には頷いていけない。
そう理性では思っているのに、欲しいという気持ちを隠せそうもない。リウのものになりたくて仕方がない。
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