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《莉兎視点》
支配者としての本能 01
しおりを挟むコウキの不安症の進行具合は、見た目の印象よりもひどいようだった。
既に自傷の症状が出始めている。さっきも急に暗い表情を見せたかと思えば、結構な力で首を掻きむしり始めた。ちょうど首輪の痕がある場所だ。
莉兎が注意すればすぐにやめたが、よく見れば首だけではなく腕にも何ヶ所か掻きむしった痕があることに気づく。爪を深く切っているのは、そんな傷を少しでも防ぐためなのかもしれない。
ということは、本人も自覚しているのだ。
自覚していてもやめられないということは、やはり症状はかなり進行しているのだろう。
――薬は飲んでないのかな。
弱い薬でも飲んでいれば、不安症の悪化スピードを抑えられると聞いたことがある。
だが、この様子では薬は一切飲んでいないのかもしれない。
――って、俺が心配しても仕方ないんだけど。
これだけは、金で買われたDomがあれこれ口出しできることではない。
初対面の相手に「病院に行け」だなんて、それこそ余計なお世話というものだ。
とにかく今はDomの支配により、できるだけ症状を取り除いてやることだけが莉兎がコウキのためにできる唯一のことだった。
◆
「なに、これ」
Glareを当てて第一声、まさかの反応だった。
プレイの経験はあることは確認済みだ。それも少ない回数ではなさそうだったのに、まるでGlareを初めて受けたかのような反応に驚いた。
――まともなGlareをもらったことがない? いや、でもちゃんとパートナーがいたんだよな?
首輪をもらっていたということは、少なくともクレイムの関係にはあったはずだ。
クレイムとはお互いをパートナーとして認める、という一種の契約だ。公式な書類や手続きは存在しないものの、首輪を送ることでDomがSubを自分のものとするという意味がある。
そういう相手がいたにしては明らかにおかしい。そう思ったが、詳しく聞けるような関係でもないので口を出すのはやめておいた。
それに、今はそれよりも気を引かれるものがある。
莉兎のGlareを受け、とろりと蕩けたコウキの視線だ。
――可愛すぎるだろ、この人。
完全に蕩けている。腹を向けて服従を示す犬のような顔つきだ。
だらしなく口を開き、ふるりと身体を震わせながら莉兎の指示を待っている。その健気な様子に己のDom性がぶわりと一気に高まるのを感じた。
――泣かせたい。
この健気なSubの顔を苦痛に歪ませてやりたい。
自分の与えた苦しみを受け止め、必死に堪える顔が見たい。
そこまで考えて、ふと我にかえる。
――結構、やばいかもな。
この二時間ぐらいなら、己の強いDom性を制御できると思っていた。
それぐらいは簡単なことだ、と。
そのために心理学を専攻し、Domの精神構造について学んできたのだ。仕組みが分かれば対応しやすくなるという考え方は間違っておらず、最近では自分のDom性をコントロールできるようになっていたはずだった。
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