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《エピローグ》
そのうさぎ、支配者につき 03
しおりを挟む「おい、お湯沸いてね?」
「ああ。火つけっぱなしだった」
ロアの言葉に、リウが慌ててキッチンのほうへと戻っていく。
その背中を見送っていると、すぐ近くにロアが立つ気配を感じた。
――やっぱり、違う。
顔だけじゃなく背も体格も全くと言っていいほど同じなのに、幸季には二人が全くの別人にしか見えなかった。
ロアに近くに立たれるのは、ちょっとだけ怖い。
「莉兎がSubに全然警戒してないとこ、初めて見たわ」
「え?」
「アイツ、結構自分のDom性にトラウマあるっていうか……そういうのだからさ」
小さく呟いたロアの声に、その恐怖もすぐに忘れた。
トラウマ――、その言葉に思い当たることがある。Spaceに入っていたときにリウと交わした会話だ。
リウはあのとき、自分のことが怖くないかと幸季に聞いた。
その表情は、自分が何よりそれを恐れているような顔だった。不安だというのが伝わってくる顔に、急に抱きしめてあげたくなった。
Spaceに入っている間はいつもよりも心が素直に表現できるようで、幸季が気持ちをまっすぐ伝えるとリウは泣いていた。
その涙も、幸季はちゃんと覚えている。
「……リウはいいDomですよ」
「コウキさん、アイツの本性を知らないわけじゃねえんだよな?」
ロアの真剣な声の問いに、幸季はこくんと頷く。
「僕は、――リウになら、殺されてもいいです」
ゆっくりと、はっきり告げた。
それはDomのSubに対する最大の愛情表現ではないかと思う。
リウの手で殺してもらえたら……自分はとても幸せな気持ちで死ねるのではないかと、そう思う。
――それを、彼に願うつもりはないけど。
「二人って、案外いいカップルなのかもな」
ロアはそう呟くと、幸季から離れていった。椅子に腰掛けると、またスマホを弄り始める。
幸季は視線をキッチンのほうへと向けた。
――だったらいいな。
幸季もそう思う。
自分の隙間を埋めてくれる相手がリウであってほしい。リウの隙間を埋める相手が自分でありたい。
それは、心からの願いだった。
ロアをリビングにおいて、幸季はキッチンへと向かう。
パタパタと近づくと足音に気づいたリウが幸季のほうを振り返り、優しく微笑んだ。
その顔を見て、幸季の頬も自然と緩む。
リウへの気持ちが身体の内側からいっぱいにあふれた。
触れたくなって腕を伸ばすと、リウが両手を広げてくれる。その腕の中に、迷わず飛び込んだ。
「――僕を、リウのパートナーにしてください」
ようやく口にできたその言葉に、リウが嬉しそう笑った声が聞こえた。
ぐしゃぐしゃと髪を掻き回す手に不器用な愛情を感じる。
「喜んで。今度、一緒に首輪を見に行こうか」
その言葉に、ふわりと気持ちが浮き上がる。そんな気持ちと重なるように唇同士が優しく触れ合う。
愛に支配される歓びに幸季の本能が強く震えるのを感じた。
「そのうさぎ、支配者につき」 END.
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みんなの感想(13件)
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四葩さん、こんにちは!
再読ありがとうございます!( ´ ▽ ` )
バーチャルアルファもご購入いただけて嬉しいです!書籍版はWEB版からかなり加筆・改稿したので、そうおっしゃっていただけると努力が報われた気持ちです(*´∀`*)
そのうさぎ〜は同人誌化するときに、カラーのお話を書けたらなーと思っています。
呂亜もお気に入りキャラなので、そう言っていただけて嬉しいです! また書きますね!!!
いろんな作品を読んでいただけて、本当に嬉しいです!!
また是非、お気軽に感想を送っていただけると嬉しいです。ありがとうございました!!
ふああああ、とても好みな作品でした…
ろあくんのお話やこの先の幸せな話も少しみたいなと思いました。
素晴らしい作品をありがとうございました!!
Carmelさん、こんにちは!!
うさぎ、気に入っていただけて嬉しいです!!(*´▽`*)
リウとおんなじ顔のロアのお話を私もいつか書きたいなぁと思ってるので、その時はぜひまた読みに来てやってくださいね!!(*'▽')
こちらこそ、感想ありがとうございました!!!
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でもコウキとリウはプレイがあっても雰囲気があたたかいので楽しませていただきました!
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yumiさん、こんにちは!
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