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第一幕*見世物にされて一晩でメス堕ちさせられた冒険者の話
06
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倒してしまって構わないというルチアの発言に、エランは少なからず驚いていた。
先ほど衣装と一緒に渡された短剣を見下ろす。エランが普段使っている短剣よりも上質なそれは、見せかけだけのハリボテではない。それなりの威力も出せるだろう代物だ。
「……まぁ、倒した場合、投げ銭はあまり期待できないかもしれないけど。魅せる試合ができれば、それはそれで好きな観客もいるかもしれないね」
「戦う相手は?」
「それは見てのお楽しみ。まぁ、あのカーテンを開ければすぐにわかるんだけど」
どうやら、あのカーテンの向こう側が舞台のようだった。
しかし……お楽しみ、とは。
先ほどまでの状況なら全く楽しみにには思えなかったが、ただ一方的に犯されるのではなく倒していいというのならば、話は別になってくる。カーテンの向こうにいる魔物がどんなものはかわからなかったが、全力で戦うしかないとエランは決意した。
「あと、エランは初めてだから、これをあげる」
「……これは?」
「通信具だよ。耳に入れて使うんだ。こういう見世物は初めてでしょ? だから、何かまずいことがあれば、ボクから指示を出せたほうがいいと思って」
確かにこういった見世物の決まり事なんて、エランは一切わからなかった。こういった裏の見世物はもちろん、一般向けに行われているこういった出し物も一切見たことがなかったからだ。
だから、暗黙のルールというものがあったとして、エランはわからない。もし何かしでかしてしまった場合、その対処に困ることは目に見えている。
これは必要だろう、とエランは差し出されたそれを疑いもなく受け取った。
通信具は指先ほどのサイズの小さなキノコのような形だった。
二つあるということは両耳に入れるのだろう。しかし―――、
「これを入れて、周りの音が聞こえなくなるなんてことは?」
「ないよ。魔術具だからね。周りの音は遮断しないから、安心して」
魔術具とは本当に便利なものなのだと、エランは改めて認識させられた。
しかし、ここにいると普通の感覚が麻痺しそうになる。魔術具なんて、日々生活をしていても早々見かけるものではない。それがここでは普通のもののように手渡される。
先ほどの扉だってそうだ。あんなもの、本来は国レベルで管理するものだ。それがここでは当たり前のように使われている。明らかに異常だった。
だが、あんな報酬を一晩働くだけで貰える場所だ。それを可能にするだけの収入と―――それをもたらす上客がこの見世物小屋にはいるのだとすれば、納得できなくもない。
「さ。そろそろ時間だから準備して」
「あぁ」
答えて、耳に通信具を挿入する。
その瞬間、エランの体に異変が起きた。
「ぁ…………ふぁッ」
ずるり、と耳の奥に何かが滑り込む感触。
首筋にぞくりと痺れが走って、口からは勝手に声が漏れる。思わず腰が抜けそうになったが、それだけは何とか耐えた。
「な、なんだ……?」
いきなり自分の体に襲い掛かった異変に驚いた。
目を瞬かせていると、それを見たルチアが笑っている。
「魔術具が作動しただけだよ。もしかして、耳弱い?」
「っ……そんな、別に」
「そんな怒んないでよ。冗談だよ。ほら、音もちゃんと聞こえるし、平気でしょ?」
「あ……そうだな、確かに」
耳に触れてみると、通信具はしっかりとエランの耳の中に装着されていた。
穴が塞がったようになっているのに、音はつける前と変わらずしっかりと聞こえている。流石は魔術具といったところだ。
『聞こえる?』
「っ、え……あ」
ルチアの口は動いていないのに、確かにルチアの声が頭に響いた。突然のことにまたおかしな声が出てしまったが、今度はルチアは笑わなかった。
直接頭に声が響く不思議な感覚には違和感があったが、音は問題なく聞こえたので頷きで応じる。
「ちゃんと聞こえたみたいだね。さ、時間だよ。行って」
「……わかった」
背後に立ったルチアが、トン、とエランの背中を押す。
分厚いカーテンが何者かに持ち上げられ、目が開けていられないぐらいの照明がエランに当てられた。
先ほど衣装と一緒に渡された短剣を見下ろす。エランが普段使っている短剣よりも上質なそれは、見せかけだけのハリボテではない。それなりの威力も出せるだろう代物だ。
「……まぁ、倒した場合、投げ銭はあまり期待できないかもしれないけど。魅せる試合ができれば、それはそれで好きな観客もいるかもしれないね」
「戦う相手は?」
「それは見てのお楽しみ。まぁ、あのカーテンを開ければすぐにわかるんだけど」
どうやら、あのカーテンの向こう側が舞台のようだった。
しかし……お楽しみ、とは。
先ほどまでの状況なら全く楽しみにには思えなかったが、ただ一方的に犯されるのではなく倒していいというのならば、話は別になってくる。カーテンの向こうにいる魔物がどんなものはかわからなかったが、全力で戦うしかないとエランは決意した。
「あと、エランは初めてだから、これをあげる」
「……これは?」
「通信具だよ。耳に入れて使うんだ。こういう見世物は初めてでしょ? だから、何かまずいことがあれば、ボクから指示を出せたほうがいいと思って」
確かにこういった見世物の決まり事なんて、エランは一切わからなかった。こういった裏の見世物はもちろん、一般向けに行われているこういった出し物も一切見たことがなかったからだ。
だから、暗黙のルールというものがあったとして、エランはわからない。もし何かしでかしてしまった場合、その対処に困ることは目に見えている。
これは必要だろう、とエランは差し出されたそれを疑いもなく受け取った。
通信具は指先ほどのサイズの小さなキノコのような形だった。
二つあるということは両耳に入れるのだろう。しかし―――、
「これを入れて、周りの音が聞こえなくなるなんてことは?」
「ないよ。魔術具だからね。周りの音は遮断しないから、安心して」
魔術具とは本当に便利なものなのだと、エランは改めて認識させられた。
しかし、ここにいると普通の感覚が麻痺しそうになる。魔術具なんて、日々生活をしていても早々見かけるものではない。それがここでは普通のもののように手渡される。
先ほどの扉だってそうだ。あんなもの、本来は国レベルで管理するものだ。それがここでは当たり前のように使われている。明らかに異常だった。
だが、あんな報酬を一晩働くだけで貰える場所だ。それを可能にするだけの収入と―――それをもたらす上客がこの見世物小屋にはいるのだとすれば、納得できなくもない。
「さ。そろそろ時間だから準備して」
「あぁ」
答えて、耳に通信具を挿入する。
その瞬間、エランの体に異変が起きた。
「ぁ…………ふぁッ」
ずるり、と耳の奥に何かが滑り込む感触。
首筋にぞくりと痺れが走って、口からは勝手に声が漏れる。思わず腰が抜けそうになったが、それだけは何とか耐えた。
「な、なんだ……?」
いきなり自分の体に襲い掛かった異変に驚いた。
目を瞬かせていると、それを見たルチアが笑っている。
「魔術具が作動しただけだよ。もしかして、耳弱い?」
「っ……そんな、別に」
「そんな怒んないでよ。冗談だよ。ほら、音もちゃんと聞こえるし、平気でしょ?」
「あ……そうだな、確かに」
耳に触れてみると、通信具はしっかりとエランの耳の中に装着されていた。
穴が塞がったようになっているのに、音はつける前と変わらずしっかりと聞こえている。流石は魔術具といったところだ。
『聞こえる?』
「っ、え……あ」
ルチアの口は動いていないのに、確かにルチアの声が頭に響いた。突然のことにまたおかしな声が出てしまったが、今度はルチアは笑わなかった。
直接頭に声が響く不思議な感覚には違和感があったが、音は問題なく聞こえたので頷きで応じる。
「ちゃんと聞こえたみたいだね。さ、時間だよ。行って」
「……わかった」
背後に立ったルチアが、トン、とエランの背中を押す。
分厚いカーテンが何者かに持ち上げられ、目が開けていられないぐらいの照明がエランに当てられた。
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