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第52話 封鎖された入口
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夜の森は、まるで息をひそめていた。
梢の間を渡る風も止み、三人の足音だけが落ち葉の上で微かに鳴った。
橘春香は、掌に握った懐中電灯を強く握り直した。
隣を歩く氷川美奈の肩は、細かく震えている。
少し先を歩く一ノ瀬祐真は、無言のまま周囲を見回していた。
「この先に……何があるんですか」
美奈の声は囁きのように掠れていた。
祐真は答えなかった。だが、彼の表情には焦燥と不安が滲んでいる。
ただ一歩、また一歩と、何かに導かれるように進んでいた。
やがて、木々の途切れる場所に出た。
そこには、崩れかけた鳥居が立っていた。
朱塗りはすっかり剥がれ、苔に覆われた柱の根元には──
「立入禁止」の朽ちた看板が打ち捨てられていた。
春香の喉が、ごくりと鳴る。
「……ここ、昔、祠があった場所じゃない?」
祐真は鳥居の先に視線を向けた。
そこには祠などなく、代わりに黒い鉄の扉が地中へと続いていた。
扉の上には、「観測区域A」と白く掠れた文字がある。
「観測区域……?」
春香が読み上げる。
美奈は後ろに下がりながら首を振った。「いやです……なんか、気味が悪い……」
そのとき、祐真の足が止まる。
彼の脳裏に、ひとつの映像が閃いた。
──小さな子どもたちが、この扉の前で遊んでいる。
その中に、幼い少女。栗色の髪。笑っている顔。
「みお……?」
彼の唇から、その名が漏れた。
春香が顔を上げる。「今、なんて?」
「……いや。なんでもない。」
扉には錆びた南京錠がかかっていたが、
祐真が手をかけると、まるで意思を持つように──カチリと外れた。
同時に、春香の懐中電灯がふっと消えた。
一瞬、闇がすべてを飲み込む。
「祐真さん……?」
美奈の声が震える。
闇の奥で、低い機械音が響いた。
ガシャン──
鉄の扉が、ゆっくりと開く。
中から冷たい空気が吹き出した。
それは森の湿った匂いとは違う、機械油と鉄のにおい。
春香の胸に、はっきりとした悪寒が走る。
「……祐真さん、まさか……入るつもりじゃ」
祐真は静かにうなずいた。
「紅葉が、ここに呼ばれた気がする。
そして、俺も……“ここを知っていた”気がする。」
森の奥で、風鈴のような音が鳴った。
それは遠い記憶を呼び覚ますように──
微かに、美桜の笑い声が重なった気がした。
春香は唇を噛み、覚悟を決めたように祐真の後を追う。
美奈も、震える手で春香の袖を掴んだ。
鉄の扉の向こう、階段が地下へと続いていた。
古いコンクリートの壁に、淡い非常灯のような光が点々と続いている。
「まるで……今も、誰かが使ってるみたい」
春香の呟きに、祐真は答えなかった。
階段を下りきると、そこに待っていたのは―
──錆びた扉と、壁に貼られたプレート。
> 【観測施設ラボ 第一区域】
そして、その下に掠れた文字で書かれていた。
> PROJECT RETURN
三人の間に、冷たい沈黙が落ちた。
梢の間を渡る風も止み、三人の足音だけが落ち葉の上で微かに鳴った。
橘春香は、掌に握った懐中電灯を強く握り直した。
隣を歩く氷川美奈の肩は、細かく震えている。
少し先を歩く一ノ瀬祐真は、無言のまま周囲を見回していた。
「この先に……何があるんですか」
美奈の声は囁きのように掠れていた。
祐真は答えなかった。だが、彼の表情には焦燥と不安が滲んでいる。
ただ一歩、また一歩と、何かに導かれるように進んでいた。
やがて、木々の途切れる場所に出た。
そこには、崩れかけた鳥居が立っていた。
朱塗りはすっかり剥がれ、苔に覆われた柱の根元には──
「立入禁止」の朽ちた看板が打ち捨てられていた。
春香の喉が、ごくりと鳴る。
「……ここ、昔、祠があった場所じゃない?」
祐真は鳥居の先に視線を向けた。
そこには祠などなく、代わりに黒い鉄の扉が地中へと続いていた。
扉の上には、「観測区域A」と白く掠れた文字がある。
「観測区域……?」
春香が読み上げる。
美奈は後ろに下がりながら首を振った。「いやです……なんか、気味が悪い……」
そのとき、祐真の足が止まる。
彼の脳裏に、ひとつの映像が閃いた。
──小さな子どもたちが、この扉の前で遊んでいる。
その中に、幼い少女。栗色の髪。笑っている顔。
「みお……?」
彼の唇から、その名が漏れた。
春香が顔を上げる。「今、なんて?」
「……いや。なんでもない。」
扉には錆びた南京錠がかかっていたが、
祐真が手をかけると、まるで意思を持つように──カチリと外れた。
同時に、春香の懐中電灯がふっと消えた。
一瞬、闇がすべてを飲み込む。
「祐真さん……?」
美奈の声が震える。
闇の奥で、低い機械音が響いた。
ガシャン──
鉄の扉が、ゆっくりと開く。
中から冷たい空気が吹き出した。
それは森の湿った匂いとは違う、機械油と鉄のにおい。
春香の胸に、はっきりとした悪寒が走る。
「……祐真さん、まさか……入るつもりじゃ」
祐真は静かにうなずいた。
「紅葉が、ここに呼ばれた気がする。
そして、俺も……“ここを知っていた”気がする。」
森の奥で、風鈴のような音が鳴った。
それは遠い記憶を呼び覚ますように──
微かに、美桜の笑い声が重なった気がした。
春香は唇を噛み、覚悟を決めたように祐真の後を追う。
美奈も、震える手で春香の袖を掴んだ。
鉄の扉の向こう、階段が地下へと続いていた。
古いコンクリートの壁に、淡い非常灯のような光が点々と続いている。
「まるで……今も、誰かが使ってるみたい」
春香の呟きに、祐真は答えなかった。
階段を下りきると、そこに待っていたのは―
──錆びた扉と、壁に貼られたプレート。
> 【観測施設ラボ 第一区域】
そして、その下に掠れた文字で書かれていた。
> PROJECT RETURN
三人の間に、冷たい沈黙が落ちた。
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