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第51話 呼び声の在り処
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ラボのモニターに映し出された“祠”は、赤い光に包まれていた。
だがその光は暖かさを持たず、血のように濃く、ねっとりと画面の奥を滲ませていた。
美奈が息を呑む。
「これ……見覚えがあります。紅葉と一緒に、ここで写真を撮ったことがあるんです。
秋祭りの前の日に……森の中の祠で」
春香の手が、わずかに震える。
「祠……まさか、あの“消えた子たち”が最後に目撃された場所……」
祐真は無言で映像を見つめ続けていた。
画面には、赤い光の奥で、無数の影が蠢いている。人の形をしているようにも、枝や根のようにも見える。
やがて、画面の中でカメラが動き、視界の端に一瞬──白いワンピースが映った。
春香が反射的にモニターに手を伸ばす。
「紅葉……!」
しかし次の瞬間、モニターは一斉に消え、ラボ全体が闇に沈んだ。
機械が停止したような音が響き、冷たい風が背中を撫でる。
「電源が落ちた……?」
祐真が呟く。
その時、足元から「ざり……」と音がした。
三人が一斉に下を見ると、床の亀裂から黒い根のようなものが這い出してきていた。
まるで意思を持つかのように蠢き、春香の足首に触れようと伸びてくる。
「逃げてッ!」
祐真が春香と美奈を抱えるようにして扉へ走る。
背後で金属音が響き、ラボの天井から粉塵が降り注ぐ。
外へ出た瞬間、三人は湿った夜気に包まれた。
森はざわめき、風が渦を巻く。
春香は膝をつき、荒く息を吐いた。
「……今のは……あの根……まるで生き物みたいだった……」
美奈は顔を青ざめさせながらも、震える声で言った。
「祠へ、行かないといけません」
祐真が眉をひそめる。
「何を言ってる、あそこは封鎖区域だ。入れば……」
「紅葉が、そこにいるんです!」
美奈の叫びが夜の森に響く。
「夢で見たんです。紅葉が、祠の前で……“まだ間に合う”って。
あのラボの映像も、全部、導いてる……」
春香は顔を上げた。
その目は涙を含みながらも、どこか決意に満ちていた。
「もし紅葉が……あの祠にいるのなら……私、行きます」
祐真は二人を見つめ、しばらく黙っていた。
やがて、懐中電灯のスイッチを入れる。
「……わかった。だが、俺が先に行く。二人は後ろを離れるな」
三人は再び、森の奥へと足を踏み入れた。
夜の闇が、まるで生き物のようにまとわりついてくる。
やがて、祐真の耳に──微かな鈴の音が届いた。
「……この音……」
20年前と同じ、あの秋の日に聞いた音だった。
「お姉ちゃんが呼んでるの」──美桜の声が、記憶の奥から蘇る。
森の奥で、赤い光がまたひとつ灯った。
それは祠のある方向。
呼ぶように、誘うように。
祐真は拳を握った。
「行こう……あの祠の“正体”を確かめる」
春香と美奈は頷く。
三つの光が、夜の森に吸い込まれていった。
そして、森の奥で何かが微かに笑った。
それは人の声にも、風の音にも聞こえた。
> ──おかえり。
だがその光は暖かさを持たず、血のように濃く、ねっとりと画面の奥を滲ませていた。
美奈が息を呑む。
「これ……見覚えがあります。紅葉と一緒に、ここで写真を撮ったことがあるんです。
秋祭りの前の日に……森の中の祠で」
春香の手が、わずかに震える。
「祠……まさか、あの“消えた子たち”が最後に目撃された場所……」
祐真は無言で映像を見つめ続けていた。
画面には、赤い光の奥で、無数の影が蠢いている。人の形をしているようにも、枝や根のようにも見える。
やがて、画面の中でカメラが動き、視界の端に一瞬──白いワンピースが映った。
春香が反射的にモニターに手を伸ばす。
「紅葉……!」
しかし次の瞬間、モニターは一斉に消え、ラボ全体が闇に沈んだ。
機械が停止したような音が響き、冷たい風が背中を撫でる。
「電源が落ちた……?」
祐真が呟く。
その時、足元から「ざり……」と音がした。
三人が一斉に下を見ると、床の亀裂から黒い根のようなものが這い出してきていた。
まるで意思を持つかのように蠢き、春香の足首に触れようと伸びてくる。
「逃げてッ!」
祐真が春香と美奈を抱えるようにして扉へ走る。
背後で金属音が響き、ラボの天井から粉塵が降り注ぐ。
外へ出た瞬間、三人は湿った夜気に包まれた。
森はざわめき、風が渦を巻く。
春香は膝をつき、荒く息を吐いた。
「……今のは……あの根……まるで生き物みたいだった……」
美奈は顔を青ざめさせながらも、震える声で言った。
「祠へ、行かないといけません」
祐真が眉をひそめる。
「何を言ってる、あそこは封鎖区域だ。入れば……」
「紅葉が、そこにいるんです!」
美奈の叫びが夜の森に響く。
「夢で見たんです。紅葉が、祠の前で……“まだ間に合う”って。
あのラボの映像も、全部、導いてる……」
春香は顔を上げた。
その目は涙を含みながらも、どこか決意に満ちていた。
「もし紅葉が……あの祠にいるのなら……私、行きます」
祐真は二人を見つめ、しばらく黙っていた。
やがて、懐中電灯のスイッチを入れる。
「……わかった。だが、俺が先に行く。二人は後ろを離れるな」
三人は再び、森の奥へと足を踏み入れた。
夜の闇が、まるで生き物のようにまとわりついてくる。
やがて、祐真の耳に──微かな鈴の音が届いた。
「……この音……」
20年前と同じ、あの秋の日に聞いた音だった。
「お姉ちゃんが呼んでるの」──美桜の声が、記憶の奥から蘇る。
森の奥で、赤い光がまたひとつ灯った。
それは祠のある方向。
呼ぶように、誘うように。
祐真は拳を握った。
「行こう……あの祠の“正体”を確かめる」
春香と美奈は頷く。
三つの光が、夜の森に吸い込まれていった。
そして、森の奥で何かが微かに笑った。
それは人の声にも、風の音にも聞こえた。
> ──おかえり。
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