大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。

菊池まりな

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第33話 ガラス越しの二人

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土曜の午後。
朱里は駅前に新しくできた雑貨屋に立ち寄っていた。
特に買いたいものがあるわけじゃなかったけれど、休日の気分転換にとふらりと足を運んだのだ。

(……あ、あのマグカップかわいい)
心が少し和んだのも束の間、店を出て歩き出した時だった。

大通り沿いのカフェの前を通りかかり、ふと視線を横に向けた朱里は、思わず立ち止まった。

ガラス越しに見えたのは、窓際の席に並ぶ二人の姿。
望月瑠奈と、そして──平田嵩。

瑠奈は両手でカップを包み込みながら、楽しそうに身を乗り出して笑っていた。
対する嵩も、頬を緩めて穏やかに相槌を打っている。

(……なに、これ)

頭の中が一瞬で真っ白になる。
ただ同僚同士でお茶しているだけだと、理屈ではわかる。
でも、朱里の胸はチクリと痛んだ。

瑠奈の笑顔はあまりに眩しくて、嵩の視線はあまりに優しかった。
それを外から眺めている自分が、どこか惨めに思えてしまう。

「……別に、関係ないし」
つい口に出した声は、かすかに震えていた。

けれど足は動かない。
ガラスに映る自分の顔が、どこか泣き出しそうに見えてしまい、慌ててうつむいた。

その時、店の中で嵩がふと窓の外を見やった。
朱里は心臓が飛び出しそうになり、咄嗟に柱の影へ隠れた。

(危な……見られるところだった……!)

息を殺しながら、朱里はその場から早足で離れた。
胸の奥には、消化できない苦い感情が渦巻いている。

(なんで……私、こんなに動揺してるの?ただ一緒にお茶してただけなのに……)

答えはわかっている。
でも認めてしまったら、自分の「大嫌い」という口癖が、すべて嘘になるから。

朱里は小さくため息を吐き、背を丸めて歩き続けた。
その背中は、いつもより少しだけ重たかった
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