大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。

菊池まりな

文字の大きさ
34 / 125

第34話 秘めたる作戦会議

しおりを挟む
平日の夜、朱里は職場近くのダイニングバーに美鈴を呼び出した。

グラスに注がれたジンジャーエールを指先で回しながら、言葉を探すように唇をかむ。



「……ねえ、美鈴。もし親しいと思ってた人が、気づいたら別の人とすごく仲良くしてたら……どう思う?」



美鈴は首をかしげつつも、朱里の真剣な表情にすぐに察した。

「それって、平田先輩と望月さんのこと?」



朱里の肩が小さく跳ねた。図星を突かれたように。

「……うん。こないだ、カフェでふたりが楽しそうにお茶してるのを見ちゃったの。あのときの笑顔……なんか、私じゃ見たことないような顔で」



朱里の声は悔しさと不安でかすかに震えていた。



美鈴は少し黙った後、柔らかく笑った。

「朱里が平田先輩のことを大事に思ってるの、ずっと知ってる。でも、望月さんは距離を詰めるのが上手い人だから……何もしないでいると、本当に取られちゃうかもね」



「……っ」

朱里の胸がずきりと痛む。



「だからこそ、朱里が一歩踏み出すしかないんだよ。平田先輩に“私が隣にいるんだ”って意識させないと」



美鈴の言葉は冷静で的確だった。朱里は小さく頷き、拳を握りしめる。

「……そうだね。このまま黙って見てるだけなんてイヤ。私だって……平田先輩のそばにいたい」



その瞬間、朱里の中で迷いが決意へと変わる。



「具体的にはどうしたらいいかな?」

朱里が問いかけると、美鈴は少し考えてから、いたずらっぽく笑った。



「まずは朱里が“女性として”の一面をちゃんと見せること。仕事だけじゃなく、プライベートでもね。買い物に誘うとか、趣味を共有するとか。望月さんより先に、平田先輩との距離を縮めればいい」



「……なるほど」



朱里はメモを取るように頭の中に刻み込む。瑠奈を意識すればするほど、競争心が燃え上がっていくのを感じた。



「ありがとう、美鈴。私……絶対に負けない」



強く握られた朱里の手。

その瞳の奥には、先輩への尊敬と同時に、はっきりとした“ライバル心”が燃えていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...