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第96話 気になる理由
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昼休み。
いつものようにデスクで資料をチェックしていた嵩は、ふと斜め前に視線を向けた。
中谷朱里。
いつもならキーボードを小気味よく叩いているはずなのに、今日はまるでフリーズしたパソコンみたいに固まっている。
(また……止まってるな)
嵩は少し迷ってから、そっと席を立った。
給湯室でコーヒーを飲みながらも、なんとなく考えていたことがあった。
──なんだか最近、中谷さん、俺を避けてないか?
朝の豆乳ラテ事件(?)もそうだ。
声をかけるたびに、やけに反応が過剰で、妙にそっけなかったり、逆にテンパっていたり。
(俺、なんかやらかしたかな……)
思い当たる節はない。
怒らせたなら、はっきり言うタイプだし。
仕事の指示も普通にしているはずだ。
(……むしろ、最近は仲良かったと思ってたんだけどな)
映画のことを思い出すと、胸がじんわり熱くなる。
素直に嬉しかった。
彼女の隣にいるあの時間が。
だから──余計に、気になる。
嵩はそっと朱里の席に近づいた。
「中谷さん、午前の資料……」
声をかけようとした瞬間。
「ひゃっっ……!!?」
椅子ごと跳ね上がる勢いで朱里が振り返った。
ほぼ無音で椅子が後退していく。
「な、なにしてるんですか!?心臓止まりますよ!?」
「いや、普通に話しかけただけなんだけど……」
「す、すみません……」
朱里は胸に手を当て、必死に落ち着こうとしている。
その姿が、どう見ても“何かを意識しまくっている人”だった。
……もしかしなくても、俺のせい?
嵩の胸の奥が、きゅっと縮む。
嫌われた?
距離を置きたい?
迷惑だった?
そんな考えがよぎった瞬間──
「ち、違うんです!平田先輩が悪いとかじゃなくて!!」
朱里が唐突に、泣きそうな声で手を振った。
「え、うん……?」
「むしろその、あの……! なんでもないですっ!」
羞恥で爆発しそうな勢いで、朱里は立ち上がり、
手に持った資料を抱えて逃げるように会議室へ向かってしまう。
ぽつんと残された嵩。
(……なんでもない、って……)
さっきの表情は、“なんでもない”どころか、
むしろ──なにかある人の顔だ。
嵩は小さく息をついた。
どうしようもなく、気になってしまう。
朱里が、自分のことをどう思っているのか。
そして……どうして、こんなに避けようとするのか。
(聞いたほうがいいのかな。
……いや、でも、それで余計に避けられたら……)
仕事の資料の文字が、ふっとぼやけた。
嵩は気づき始めていた。
これはもう、ただの“部下の様子がおかしい”ではなく、
──自分の気持ちが揺れ始めているからだ、と。
いつものようにデスクで資料をチェックしていた嵩は、ふと斜め前に視線を向けた。
中谷朱里。
いつもならキーボードを小気味よく叩いているはずなのに、今日はまるでフリーズしたパソコンみたいに固まっている。
(また……止まってるな)
嵩は少し迷ってから、そっと席を立った。
給湯室でコーヒーを飲みながらも、なんとなく考えていたことがあった。
──なんだか最近、中谷さん、俺を避けてないか?
朝の豆乳ラテ事件(?)もそうだ。
声をかけるたびに、やけに反応が過剰で、妙にそっけなかったり、逆にテンパっていたり。
(俺、なんかやらかしたかな……)
思い当たる節はない。
怒らせたなら、はっきり言うタイプだし。
仕事の指示も普通にしているはずだ。
(……むしろ、最近は仲良かったと思ってたんだけどな)
映画のことを思い出すと、胸がじんわり熱くなる。
素直に嬉しかった。
彼女の隣にいるあの時間が。
だから──余計に、気になる。
嵩はそっと朱里の席に近づいた。
「中谷さん、午前の資料……」
声をかけようとした瞬間。
「ひゃっっ……!!?」
椅子ごと跳ね上がる勢いで朱里が振り返った。
ほぼ無音で椅子が後退していく。
「な、なにしてるんですか!?心臓止まりますよ!?」
「いや、普通に話しかけただけなんだけど……」
「す、すみません……」
朱里は胸に手を当て、必死に落ち着こうとしている。
その姿が、どう見ても“何かを意識しまくっている人”だった。
……もしかしなくても、俺のせい?
嵩の胸の奥が、きゅっと縮む。
嫌われた?
距離を置きたい?
迷惑だった?
そんな考えがよぎった瞬間──
「ち、違うんです!平田先輩が悪いとかじゃなくて!!」
朱里が唐突に、泣きそうな声で手を振った。
「え、うん……?」
「むしろその、あの……! なんでもないですっ!」
羞恥で爆発しそうな勢いで、朱里は立ち上がり、
手に持った資料を抱えて逃げるように会議室へ向かってしまう。
ぽつんと残された嵩。
(……なんでもない、って……)
さっきの表情は、“なんでもない”どころか、
むしろ──なにかある人の顔だ。
嵩は小さく息をついた。
どうしようもなく、気になってしまう。
朱里が、自分のことをどう思っているのか。
そして……どうして、こんなに避けようとするのか。
(聞いたほうがいいのかな。
……いや、でも、それで余計に避けられたら……)
仕事の資料の文字が、ふっとぼやけた。
嵩は気づき始めていた。
これはもう、ただの“部下の様子がおかしい”ではなく、
──自分の気持ちが揺れ始めているからだ、と。
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