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第133話 考えておく、の破壊力
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玄関のドアを閉めた瞬間、朱里はその場に背中を預けた。
「……はぁ……」
深いため息が、自然と漏れる。
(なんであんな返事したんだろ)
──考えておきます。
逃げでも拒否でもない、でも一歩引いた、いつもの自分。
スマホを取り出すと、画面は静かなままだ。
(……来てない)
平田嵩からのメッセージは、まだ届いていなかった。
それが少しだけ、寂しい。
(来たら来たで、どう返すか分からないくせに)
朱里はソファに腰を下ろし、天井を見上げる。
嵩の言葉が、頭の中で何度も再生される。
──「強がりなところ、嫌いじゃないです」
──「勘違い、してほしい場合は?」
「……ほんと、ずるい」
口ではそう言いながら、胸の奥がじんわり温かい。
そのとき、スマホが震えた。
心臓が一拍、跳ねる。
(……きた?)
画面を確認して、肩の力が抜ける。
──田中美鈴。
『ねえ朱里、今日の顔どうしたの
仕事中ずっと上の空だったけど』
(……やっぱり、分かるよね)
少し迷ってから、返信する。
『そんな顔してた?
ちょっと、考え事』
すぐに既読がつき、間髪入れずに返事が来た。
『嘘
それ、平田さんでしょ』
「……」
スマホを握りしめたまま、朱里は固まる。
(どうして、みんな分かるの)
『なんでそうなるの』
『だって分かりやすいもん
最近、朱里』
胸が、ぎゅっと縮む。
『ねえ、今日一緒に帰った?』
『……少しだけ』
『はい確定』
美鈴の軽快な文字が、やけに眩しい。
『で?
例の「大嫌い」発動しなかったの?』
『してない』
『じゃあ進展じゃん』
その一言に、朱里の指が止まる。
(進展……?)
『進展っていうか
平田さんが距離詰めてきてる感じは、ある』
『朱里はどうしたいの』
その問いに、すぐ答えが出ない。
(どう、したい……?)
嵩と並んで歩いた帰り道。
沈黙が、心地よかったこと。
瑠奈に見られても、嫌じゃなかったこと。
そして──また一緒に帰りたい、と言われたときの、胸の高鳴り。
『……嫌じゃない』
しばらくして、美鈴から返事が来た。
『それ、もう十分じゃない?』
『朱里さ
大嫌いって言わなくなった時点で
自分の気持ち、分かってるんでしょ』
画面を見つめたまま、朱里は息を止める。
(……分かって、る)
『でも
平田さんに期待するの、怖い』
『分かる
でもさ』
『期待しない恋って
もう、恋じゃないと思う』
胸の奥に、静かに刺さる言葉。
スマホを置いて、朱里は目を閉じた。
(私、いつからこんなに臆病になったんだろ)
そのとき、また振動。
今度こそ。
画面に表示された名前に、息を呑む。
──平田 嵩。
『今日はありがとう
無理させてたら、ごめん』
朱里は、すぐには返せない。
でも、今夜は──逃げたくなかった。
ゆっくりと、文字を打つ。
『こちらこそ
……楽しかったです』
送信。
数秒後、返事が来た。
『よかった
じゃあ、また「ちょっとだけ」』
朱里は、思わず笑ってしまう。
(ずるいのは、どっち)
スマホを胸に抱えながら、朱里は小さく呟いた。
「……大嫌い、なんて
もう、言えないじゃない」
「……はぁ……」
深いため息が、自然と漏れる。
(なんであんな返事したんだろ)
──考えておきます。
逃げでも拒否でもない、でも一歩引いた、いつもの自分。
スマホを取り出すと、画面は静かなままだ。
(……来てない)
平田嵩からのメッセージは、まだ届いていなかった。
それが少しだけ、寂しい。
(来たら来たで、どう返すか分からないくせに)
朱里はソファに腰を下ろし、天井を見上げる。
嵩の言葉が、頭の中で何度も再生される。
──「強がりなところ、嫌いじゃないです」
──「勘違い、してほしい場合は?」
「……ほんと、ずるい」
口ではそう言いながら、胸の奥がじんわり温かい。
そのとき、スマホが震えた。
心臓が一拍、跳ねる。
(……きた?)
画面を確認して、肩の力が抜ける。
──田中美鈴。
『ねえ朱里、今日の顔どうしたの
仕事中ずっと上の空だったけど』
(……やっぱり、分かるよね)
少し迷ってから、返信する。
『そんな顔してた?
ちょっと、考え事』
すぐに既読がつき、間髪入れずに返事が来た。
『嘘
それ、平田さんでしょ』
「……」
スマホを握りしめたまま、朱里は固まる。
(どうして、みんな分かるの)
『なんでそうなるの』
『だって分かりやすいもん
最近、朱里』
胸が、ぎゅっと縮む。
『ねえ、今日一緒に帰った?』
『……少しだけ』
『はい確定』
美鈴の軽快な文字が、やけに眩しい。
『で?
例の「大嫌い」発動しなかったの?』
『してない』
『じゃあ進展じゃん』
その一言に、朱里の指が止まる。
(進展……?)
『進展っていうか
平田さんが距離詰めてきてる感じは、ある』
『朱里はどうしたいの』
その問いに、すぐ答えが出ない。
(どう、したい……?)
嵩と並んで歩いた帰り道。
沈黙が、心地よかったこと。
瑠奈に見られても、嫌じゃなかったこと。
そして──また一緒に帰りたい、と言われたときの、胸の高鳴り。
『……嫌じゃない』
しばらくして、美鈴から返事が来た。
『それ、もう十分じゃない?』
『朱里さ
大嫌いって言わなくなった時点で
自分の気持ち、分かってるんでしょ』
画面を見つめたまま、朱里は息を止める。
(……分かって、る)
『でも
平田さんに期待するの、怖い』
『分かる
でもさ』
『期待しない恋って
もう、恋じゃないと思う』
胸の奥に、静かに刺さる言葉。
スマホを置いて、朱里は目を閉じた。
(私、いつからこんなに臆病になったんだろ)
そのとき、また振動。
今度こそ。
画面に表示された名前に、息を呑む。
──平田 嵩。
『今日はありがとう
無理させてたら、ごめん』
朱里は、すぐには返せない。
でも、今夜は──逃げたくなかった。
ゆっくりと、文字を打つ。
『こちらこそ
……楽しかったです』
送信。
数秒後、返事が来た。
『よかった
じゃあ、また「ちょっとだけ」』
朱里は、思わず笑ってしまう。
(ずるいのは、どっち)
スマホを胸に抱えながら、朱里は小さく呟いた。
「……大嫌い、なんて
もう、言えないじゃない」
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