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第26話 小さな鼓動
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七月の蒸し暑い朝。
美香は健一とともに病院を訪れていた。
待合室のテレビからは蝉の声をかき消すように夏の甲子園の映像が流れている。
だが美香の意識はただ一つ──今日の健診の結果に集中していた。
診察室に呼ばれ、エコーのモニターに映し出された小さな影。
「順調ですよ。手足もよく動いてますね」
医師の声に、美香の胸が熱くなった。
モニターの中で、小さな拳がひらひらと揺れている。
「……動いてる」
美香が呟くと、隣で健一が声を詰まらせた。
「本当に……生きてるんだな」
医師が穏やかに続けた。
「性別も見えましたよ。男の子ですね」
帰宅後、美香は夕食の席でその報告をした。
「男の子……?」
結衣は箸を止め、複雑そうな顔をしたが、すぐに小さく笑った。
「じゃあ、私に弟ができるんだ」
その言葉を聞いた瞬間、美香の胸にじんわりと温かさが広がった。
結衣が初めて「弟」という言葉を口にした。
それは、確かな受け入れの証のように思えた。
その夜、布団に横たわると、再び小さな胎動を感じた。
ポコン、と内側からノックされるような感覚に、美香はお腹を撫でた。
「あなたはもう、家族を変え始めているのね」
外では、夏の夜風に乗って遠くの祭囃子が聞こえていた。
新しい季節が、確実に近づいていた。
美香は健一とともに病院を訪れていた。
待合室のテレビからは蝉の声をかき消すように夏の甲子園の映像が流れている。
だが美香の意識はただ一つ──今日の健診の結果に集中していた。
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「順調ですよ。手足もよく動いてますね」
医師の声に、美香の胸が熱くなった。
モニターの中で、小さな拳がひらひらと揺れている。
「……動いてる」
美香が呟くと、隣で健一が声を詰まらせた。
「本当に……生きてるんだな」
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「性別も見えましたよ。男の子ですね」
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結衣が初めて「弟」という言葉を口にした。
それは、確かな受け入れの証のように思えた。
その夜、布団に横たわると、再び小さな胎動を感じた。
ポコン、と内側からノックされるような感覚に、美香はお腹を撫でた。
「あなたはもう、家族を変え始めているのね」
外では、夏の夜風に乗って遠くの祭囃子が聞こえていた。
新しい季節が、確実に近づいていた。
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