歩く15億の花嫁~契約婚約から始まるオフィス・シンデレラ~

YOR

文字の大きさ
2 / 35
第1章:許嫁契約!?

第2話:電気紐のリングと幼馴染健太からの着信

しおりを挟む

家族全員が同時に、ある場所へ視線を向けた。

「あー、キッチンシンク上の!」

「そう!電気紐のリング!」

そのライトの紐の先端には、埃をかぶった薄い紫色のリングが結び付けられている。このライトは紐が短く、手が届きにくいのが家族共通の悩みだった。

母が「何か、指に引っかかるように輪になっているものを付けたいね。」と言った時、私が適当にその辺にあったリングを紐の先に固く結びにしたのだ。

点灯しやすくなり、それ以来、家族は誰もリングを気に留めずにいた。

その適当なものこそが、祖父の遺品整理の際、どこからか転がり落ちたリングを、弟の悠真が拾い上げ、「玩具のリングなんていらね~よ」と、ゴミ箱に捨てた。

私は、祖父の遺品だからとゴミ箱から拾い上げ、テレビ台の上にそっと置いていた。そう思うと、結局は、この御曹司と結婚する運命だったのだ。

(だって、弟の悠真が捨てたものを拾い上げたのは、私自身だから)

「奈月、早く取ってこい!」と、父に急かされ、私は踏み台を持ってきて、ライトの紐からリングを外した。

ライトの紐に固く結びつけられたリングは、抵抗するように簡単には外れなかった。自分の人生を断ち切るように、その薄紫色の輪を力任せに引きちぎり、手に握りしめた。

手のひらに乗せたリングは、薄い紫色。まさにアメジストカラーだった。古い指輪で、表面には細かな傷がついており、長年のキッチンからの油や埃で薄っすらと曇っていたが、確かに光を反射してほのかに輝いている。

「あ、あの...キッチンにあったので、汚れていてすみません。」

私が差し出したリングを見て、執事は白い手袋をはめた手を静かに差し出していた。

執事は表情一つ変えず、丁寧に受け取り、「確認させていただきます。」と、ルーペで裏側を覗き込んだ。

私は、喉の奥が張り付いたような静寂の中、「どうか間違いであってほしい」と、そればかりを願った。両手を胸の前で固く握りしめ、その中に最後の望みを押し込めるように組んだ。

ただの古い指輪だと告げてくれることを一縷の望みとして、組んだ手元から執事の横顔を見つめた。

そして、執事はゆっくりと顔を上げ、静かな口調で告げた。

「間違いございません。この裏側に刻まれたスターライト財閥の刻印。これは、会長が秘蔵していたとされる、特別な婚約の証です。」

その瞬間、荒れ果てた居間の中は、一瞬静寂に包まれた。

その静けさを破ったのは、居間の隅に立っていた弟の声だった。

「やった、マジかよ!」

まだ中学生の弟は、借金の重さが消えるという事実を、純粋な歓喜として受け取っているようだった。

「これで、もう夜中に怒鳴り込んでくる借金取りも来なくなるんだ!新しいゲーム機も買える!」と、興奮して小さな拳を握りしめている。

「つまりは」
父が震える声で尋ねた。
「借金は…?」

「これで婚約は成立です。負債は本日中に処理されます。」

途端に、父と母は安堵からか、その場で崩れ落ちそうになった。数年来、家族を苦しめてきた借金が一瞬で消えたのだ。弟の明るい歓声と、両親の深い安堵の溜息が、居間を満たした。

しかし、私の頭の中は、真っ白だった。たかが、電気の紐を延長するための輪っか。何の気なしにつけた、この薄紫色のリング一つで、人生の全てを決められてしまった。

歓喜に沸く家族に向き直り、震える声で訴えた。

「ちょっと待って!まず、祖父の借金の金額いくらあるの?」

執事は口の端を微かに上げ、物凄く穏やかな笑みを浮かべた。その微笑みは、この荒れた居間の中で、妙に冷たい光を放っている。

「水野敬一様の現在の負債総額は、正確には15億3,000万円にございます。」

15億3,000万円?その途方もない金額は、私の抵抗の意思を一瞬で凍り付かせた。
これはひど過ぎない?おじいちゃんのお人好しが招いたこの事態で、たった一度の人生が。

私まだ二十歳なのに。

少しくらいは考える時間もらえるよね?
人間一人の人生に値札が付けられるなんて。

もし私が歩く宝石なら、誰がその宝石を磨き、誰がその輝きを奪うのだろう。

私は、もう一度家族に向き直り、震える声で訴えた。

「まだ就職活動も終わってないし、彼氏だってできたことないのに!無理。」

父と母は、安堵で崩れ落ちそうになっていた体勢から、慌てて私の方へ向き直った。

「奈月、お願い!何を言っているの!」と、母は泣きそうな顔で、すがるように言った。

父は声を荒げ、「この話を受け入れれば、借金が消えるんだぞ!家族全員が救われるんだ!」と叫んだ。

弟は、握りこぶしを上下にして、抗議でもしているかのように言った。
「そうだ、そうだ、バカ奈月。金があれば幸せになれる。神谷財閥の次期当主の許婚になれよ!」

兄は、俺が嫁ぎたいぜと言わんばかりの表情で、こう言った。
「奈月みたいなお転婆娘が嫁に迎えてくれるんだ。夢でしか叶わないと思っていたことが現実なんだぞ。NOなんて言ったら失礼だぞ。」

私の抵抗の訴えも、家族の利己的な説得は、荒れ果てた居間に虚しく響くだけだった。解決には至らない。家族は互いにうなずき合い、これで全て丸く収まったとでも言いたげな顔だった。

しかし、母は歓喜に崩れ落ちそうになりながらも、ふと私の顔を見て言葉を詰まらせていた。

「でも……奈月の人生を、こんな形で決めてしまっていいの?」

「そうだよ。お母さん、私の人生は私のもの!」
私は思わずテーブルを叩いた。骨董品の皿が震え、カランと音を立てて床に転がった。

声は震えていたが、居間の空気を一瞬凍り付かせるほどの必死さがあった。

その瞬間、私のポケットでスマホが激しく震え、場違いな着信音が荒れた居間に響いた。

画面には、高校時代からの幼馴染である『健太』の名前が表示されていた。

私は、反射的にポケットからスマホを取り出し、家族の視線から逃れるように慌てて居間の外に一歩出た。執事の冷たい視線が背中に突き刺さるのを感じたが、それを無視して通話ボタンを押した。

「ごめん、健太。今、ちょっと家のことでごたごたしてるから……後でかけ直す。うん、またね。」

私が焦って通話を切って居間に戻ると、執事はわずかに目線だけを私に向けた。まるで、たった数秒間の私的な会話の全てを聞き取っていたかのように。

最後に、この決定を覆す権利が、私にあるのではないかと、一縷の望みを託した。
が、何を言い出すのかと思ったら、執事はこう言ったのだ。

「ですが、奈月様。ご心配なく。ご婚約が成立すれば、私的な交友関係の整理も、業務の一つとしてサポートいたします。」

「遺言書と婚約の証が揃い、効力は既に発生しております。しかし、ご家族との熟慮期間として、本日夜間のお時間は確保いたします。」

これこそが、財閥と貧乏人との間に生まれるジェネレーションギャップというものか。私の心配は、借金がどうなるか、ではない。私の人生がどうなるか、だ。

執事は、私が口を挟める隙を与えなかった。

白い手袋を整えながら、事務的な口調で「明朝、改めてお迎えに参りますので、それまでにご準備をお願いいたします。」と言い、「ご質問などございませんでしたら、ご近所様にもご迷惑をお掛けしているかと思いますので、失礼しようかと思っております。」と、一方的に締めくくり始めた。

私は、「異議あり」と、口を挟もうとした。

その瞬間、「ブタ奈月」と、居間の隅に座り込んでいたはずの弟・悠真が、興奮した猿のように私の首に飛びついた。

父はすかさず、「は、はい!ご質問など、もう何もありません。」と、手を振りながら、私の顔と執事の顔をチラチラと見ながら言った。

父の応対を見ていた母は、顔を引き攣らせながら「そうですよね、ご近所の方が、外で何事かと気になさっているでしょうからね。オホホ……」と、滑稽な笑いを漏らした。

私は、首に食い込む悠真の腕を力任せに振り払った。

「今更、世間体なんて、気にする?」

目の前で自分の人生の取引が成立したにもかかわらず、諦めきれずにいた。

だが、その場を収めようとする両親の必死な姿を見て、ふと冷静になった。私は、家族を借金の苦しみから救うという大義を拒否する、わがままな娘なのだろうか――。絶望の淵で、そんな罪悪感までもが浮上してきたのだった。

執事は、この家族の醜いやり取りを、まるで一幕の喜劇でも見ているかのように、静かに見つめていた。彼の口の端が、僅かに軽蔑の弧を描いた。

その笑みをすぐに消し去ると、「皆様、大変仲睦まじいご様子で、何よりでございます。ですが、お時間はございませんので。」と、事務的な声音に戻り、場を収めた。

そして、執事は、父に向かって一礼し、静かに居間を出て行った。

この言葉は、冷たい宣告の中の、唯一の人間的な譲歩だったが、結局、猶予は一晩しかなかった。

執事が去った後も、荒らされた居間の空気は重いままだった。

私は無言で、床に散らばったアルバムや母の骨董品を拾い始めた。誰かがやらなければならない。片付けという日常の動作で、この非日常を無理やり終わらせようとした。

「奈月...」

父が、悲しげな表情で私の背中に向かって絞り出すように言った。
母は目を腫らし、拾い上げた皿を、震える手で拭いている。
弟の悠真は、床に座り込みながらも、なお口悪く私を責め立てる。
兄は何も言わず、ただ居間の隅で、私の無言の作業を静かに見つめているだけだった。

家族だからこそ感じる無言の空間が、より私を壁際へと追い詰める。

私は作業の手を止め、振り向いた。

「ごめん。一人になりたい。」

すると、兄が静かに言った。

「...もう、いいでしょう。」

その声は、私を助けているのか、この場から追い払おうとしているのか、判別できなかった。その場を後にし、自室へと向かった。自分の部屋の扉を閉め、鍵をかけた。

その瞬間、全身が激しく震え、さっきまでの騒動が走馬灯のように頭の中を駆け巡った。 私は床に崩れ落ち、勝手に目から溢れた涙が、頬を伝い、しょっぱさを感じた。

「電気紐に結ばれるほどの安っぽい指輪が…」

「あははっ…」

15億3,000万円という途方もない数字が、私の人生の値札に。馬鹿馬鹿しい。

喉の奥から絞り出すような笑いが、誰もいない小さな部屋に響いた。それは、狂気ではなく、現実のあまりの非情さに、諦めがついた瞬間だった。

窓の外は、もうすっかり暗い。

与えられた残り数時間の時間は、刻一刻と短くなっている。

私は震える手でスマホを掴み、さっきすぐに切ってしまった健太にかけ直した。
数コール後、健太が焦燥感の滲んだ声で出た。

「奈月!さっきはどうしたんだ?家の前に黒塗りの車が何台も止まって、なんかすごいことになってたって、ご近所さんが言ってたぞ。」

(そりゃ、ご近所の噂になるよね)

私は、涙で声が詰まりながらも、努めて明るい声を作った。
「なんでもないよ。ちょっと家の電気の紐が絡まってさ。直したから大丈夫。変な心配かけちゃってごめん。」

「...そうかよ。変なのは、お前の家じゃなくて、お前の家に来た奴らだろ。」

健太の声が、不機嫌なほど低くなった。

「いいか、明日、絶対会おうな。明日のランチ、お前の好きなケーキバイキング予約した。例の場所だ。」

「うん...ありがとう。」

健太はいつも私の喜ぶことをしてくれる。大切な幼馴染だ。

(明日のランチ、行けそうにないな。どうやって断ろう…)

私は「行けない」と言えないまま、通話を切った。

やること、決めることが一気に押し寄せ、何を優先すべきか思考が麻痺した。

普段なら、頭の中を整理するためにまずTODOリストに書き出すのが、私の癖だった。だが、今はそれすら思いつかない。

無意識に手にしたスマホの画面に、習慣で開いていたTODOアプリの白い画面が目に入った。

そこでようやく、「最も優先すべきこと」が、健太に伝えることだと分かった。

もう一度スマホを手に取った。画面を開き、健太とのトーク画面をタップする。

奈月:ごめん。明日のケーキバイキング、行けない。

奈月:多分、会えなくなると思う。

本題に入ると、私の指が震えた。涙が画面に落ちた。自分でもどんな感情で涙がこぼれたか、全く分からなかった。

(これは生理現象だ、と無理やり割り切った。)

奈月:借金を肩代わりしてもらう代わりに、神谷財閥の許嫁に。

奈月:いつも、ありがとう。ごめん。向こうでの生活が始まると、やり取りもできなくなるかもしれない。

送信ボタンを押すと、指に力がなくなり、スマホがベッドの上に落ちた。

『明日、私がどうするかを家族にまず話さないと。』



(つづく)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷たい外科医の心を溶かしたのは

みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。 《あらすじ》 都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。 アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。 ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。 元々ベリカに掲載していました。 昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

同居人の一輝くんは、ちょっぴり不器用でちょっぴり危険⁉

朝陽七彩
恋愛
突然。 同居することになった。 幼なじみの一輝くんと。 一輝くんは大人しくて子羊みたいな子。 ……だったはず。 なのに。 「結菜ちゃん、一緒に寝よ」 えっ⁉ 「結菜ちゃん、こっちにおいで」 そんなの恥ずかしいよっ。 「結菜ちゃんのこと、どうしようもなく、 ほしくてほしくてたまらない」 そんなにドキドキさせないでっ‼ 今までの子羊のような一輝くん。 そうではなく。 オオカミになってしまっているっ⁉ 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* 如月結菜(きさらぎ ゆな) 高校三年生 恋愛に鈍感 椎名一輝(しいな いつき) 高校一年生 本当は恋愛に慣れていない 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* オオカミになっている。 そのときの一輝くんは。 「一緒にお風呂に入ったら教えてあげる」 一緒にっ⁉ そんなの恥ずかしいよっ。 恥ずかしくなる。 そんな言葉をサラッと言ったり。 それに。 少しイジワル。 だけど。 一輝くんは。 不器用なところもある。 そして一生懸命。 優しいところもたくさんある。 そんな一輝くんが。 「僕は結菜ちゃんのこと誰にも渡したくない」 「そんなに可愛いと理性が破壊寸前になる」 なんて言うから。 余計に恥ずかしくなるし緊張してしまう。 子羊の部分とオオカミの部分。 それらにはギャップがある。 だから戸惑ってしまう。 それだけではない。 そのギャップが。 ドキドキさせる。 虜にさせる。 それは一輝くんの魅力。 そんな一輝くんの魅力。 それに溺れてしまう。 もう一輝くんの魅力から……? ♡何が起こるかわからない⁉♡

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

処理中です...