9 / 23
9
しおりを挟む
「どういう育てられ方をしたんだ……お前は」
そして、ヘリオスは自然と彼女の身体に手を伸ばしていた。
トエイは抵抗することもなく、自然にそのまま彼の方に引き寄せられる。細い身体は難なくヘリオスの腕の中に収まり、見上げれば彼の顔が間近に在った。
「ヘリオス」
トエイが小さく名を呼ぶと、ヘリオスはじっと視線を合わせてきた。
「構わないか?」
「何を?」
「口付けても」
「買ってもらった絵本で、見たことがある。王子様が眠っているお姫様に口付けると、お姫様が目を覚ますの」
「……逆だな」
「逆なの?」
「……お前が、俺の目を覚まさせてくれるかもしれない」
その言葉には、あらゆる意味が含まれていた。
だがヘリオスはそれ以上何も言わず、壊さぬように、そっとトエイに唇を重ねた。
触れた唇はまだ未発達で幼く、あまりに清らかすぎてヘリオスは目眩がした。
きゅ、と寄せてくる唇の仕草が余りに愛おしい。
一度でも深くそう思ってしまうと、後は堕ちていくだけで。
終幕に向けて起こりうる"それ"を予感することなど、ヘリオスには出来るわけがなかった。
ただ、トエイだけは、何もかも予知した上でそうしていた。
どうなるか、何が起こるか、全てを覚悟した上で。
* * *
「早くしろ!! まだ中に人がいるんだぞ!!」
「み……水はこれだけしか無いのか?!」
「なんでもいいから火を消してくれぇぇぇえ!!」
悲痛な叫び声を上げて、人々は空を仰いだ。明々と辺りを橙色に照らすのは、街の灯りなどではなく。燃え盛る炎の熱い躍動によるものだった。
炎は空高く燃え上がり、首都アグラの商店街の中でも一際大きな建物をその腹に包んでいた。しかも、ただの炎ではないのか、時折火玉を辺りに吐き出しながら燃え狂っている。
「わ……私の店が……」
頭から布を被った男が力なくその場に崩れ落ちた。ふくよかな体型は贅沢の証。青ざめた彼の顔を密かに笑うものは、少なくはなかった。
「反乱軍もついに本格的に動きだしたのか……」
誰かが言った。
「手口が荒くなってきたな。そのうち首謀者の顔が見れるかもしれないぞ」
大惨事を前にしても、彼らが語るのは第三者の立場から見た話題ばかり。火を消そうとしているのは、店の従業員や店主の家族だけ。野次馬達は、まるでお芝居か何かを見ているような目付きで、傍観するのみだった。
* * *
「…………あ」
湖のほとりで、ヘリオスの肩に身を寄せていたトエイだが、ふいに何かに呼ばれたように、その体を離し立ち上がった。
「離れるな」
ヘリオスは立ち上がったトエイのその手を掴み、自身の方に引き寄せる。そのまま彼の膝の上に座り込んでしまったトエイだが、どこか落ち着かない様子だった。
「……どうかしたのか?」
するとトエイは、ヘリオスに視線を合わせ落ち着いた声でこう言った。
「ヘリオス。何かが燃えてるよ」
「何?」
「熱い力……すごく強く、燃えてる。ほら」
そう呟きながらトエイは、ヘリオスの手に自分の手を重ね瞳を閉じた。すると、途端にヘリオスの頭の中に、恐ろしい光景が強制的に映し出された。
「これは……」
自身の城近くまで燃え盛る炎、火だるまになり狂う民。逃げまとう人々の中で、笑みを浮かべる人物。
「ついに市民に手を出したな……」
そのイメージが浮かんでいる最中、終始目をきつく歪ませ唇を噛んでいたヘリオスだったが、映像が切れると同時にすぐに立ち上がった。
「お前はここにいろ」
素早く支度を始めるヘリオスに、トエイは焦り駆け寄る。
「でも、でも、火を消さなきゃ」
「危険だ。絶対に来るな。あれはただの火ではない」
ヘリオスはトエイの意志をはねのける。だがそれでハイと返事をするトエイでは無かった。
「私も連れていって。お願い」
「危険だと言っただろう! あれはおそらく反乱軍の仕業だ」
「だって、あの炎。もし間違ってなかったら私にしか消せな…………」
そう言い掛けて、トエイは思わず口を塞いだ。しまった。そう後悔しながらそっとヘリオスの表情を伺うと、彼は僅かに眉を寄せ、トエイを見つめていた。
「トエイは魔導師なのか?」
「え……あ」
肯定するのが、無難な選択だった。トエイが小さく頷くと、ヘリオスは彼女の手を引き駆け出した。
「なら話は早い。水の魔導術は使えるか?」
「うん」
「どこまでの術を?」
「高位魔法は簡単」
ディアナドラゴンだから、魔法ではないけれど。とは、当然言うわけがない。
ヘリオスは少し安堵したのか、駆けながら小さく息を吐いた。
「……助かる。だが、俺から離れるなよ」
「分かった」
その返事を聞くと、ヘリオスは近くに縛っていた蹄の大きな砂漠用の馬の背にトエイを乗せた。そして素早く自分もまたがると、手綱を引き勢い良く馬を走らせた。
「……夜の空が赤い」
走りだした馬の背で、トエイは彼方に映る都を見つめそう言った。
「火が膨らんでいる……! 」
ヘリオスは馬の速度を更に上げた。馬は必死に砂を蹴り、疾風のように走りだした。
焦りを隠せないヘリオスとは反対に、トエイはやけに落ち着いていた。街に近づくにつれ、周りの気温が上昇しているのが分かる。ついには、火の粉が風に乗って流れてきた。
その赤い屑を横目に見ながら、トエイはある確心を持っていた。
間違いない。
熱く、狂い乱れる赤い光。
憎しみと怒りが混濁した深淵から立ち上る火炎柱。
これは"人"が出せるものなんかじゃない。
間違いなくこれは、
私と同じ、"竜"の仕業だ。
* * *
「いいから女と子供をさっさと逃がせってんだよ!!」
燃え盛る火が周りを包む中、アインは混乱する人々を必死に先導していた。パニック状態に陥った人々を動かすのは容易なことではない。ともすれば、あまりの恐怖に狂いだす者も出てくるからだ。
「聖騎士様、アイン様! 西の通りは完全に火の海です! ……うわっ!!」
どこからか現われた男がアインに用件を言い終わると同時に、彼らの右手の建物が火球を吹いた。
その衝撃で建物のガラスが砕け散り、逃げる人々に降り注いだ。これは助けようにも、距離が遠すぎる。
「あーッくそ! 出来るかわかんねえけど……」
すると、アインはそう叫びながら腰の片手剣を抜き、走りだした。そして勢いをつけながら、その刄を力の限り強く真横に振った。
「でやああああ!!」
すると、彼の振るった刄からは白い三日月状の剣圧が飛び出した。剣圧は落ちる硝子の破片を砕き、更に炎の中へと吹き飛ばした。
「……あ……、出来たし」
剣圧を飛ばすなどという芸当は初めてだったのか。アインは気の抜けたような表情でホッと胸を撫で下ろした。
「アストレイアさんの講義、一応受けといて良かったぜ」
「アインー!!」
すると、まだ火の手の回っていない通りの向こうから、息急きらせながらルピナスがこちらに走ってきた。その姿を見たアインは、目を丸くして驚嘆の声を上げる。
「バカ何やってんだよ! トエイ連れて逃げろっつっただろ!!」
とっくに逃げたものと思っていたルピナスは、煤だらけで髪を振り乱しながらこちらに駆け寄ってきた。彼女はアインの前で辛そうに呼吸をすると、泣きそうな顔で彼を見上げた。眼鏡は、片方のグラスにヒビが入っていた。
「おい、トエイは!?」
「……それが……いないの」
「……は?」
「いないのよどこにも! アンタが消火に飛び出した後部屋に行ったら、あの子いなかったの!」
「何だって!?」
アインの拳が震える。まさか、どこに行くと言うんだろうか。こんな火の中、ディアナドラゴンである彼女にとっては毒でしかない。
「街の中走り回ったけど……皆混乱しきっていて思うように探せないのよ……ッ」
下を向くルピナスの瞳に涙が滲む。彼女はそれを乱暴に拭うと、切羽詰まった表情でこう言った。
「アンタもトエイを探して! あたしは、もう一回街の中見るから!」
「分かった。けどお前も無茶すんな。この火、普通じゃねえ」
「ええ、分かってる」
ルピナスは力強く頷くと、慌ててきびすを返し、炎が逆巻く通りの中へと走り出した。
「…………嫌な予感は当たるもんだな」
アインは走りながら、悔しそうに呟いた。
そして、ヘリオスは自然と彼女の身体に手を伸ばしていた。
トエイは抵抗することもなく、自然にそのまま彼の方に引き寄せられる。細い身体は難なくヘリオスの腕の中に収まり、見上げれば彼の顔が間近に在った。
「ヘリオス」
トエイが小さく名を呼ぶと、ヘリオスはじっと視線を合わせてきた。
「構わないか?」
「何を?」
「口付けても」
「買ってもらった絵本で、見たことがある。王子様が眠っているお姫様に口付けると、お姫様が目を覚ますの」
「……逆だな」
「逆なの?」
「……お前が、俺の目を覚まさせてくれるかもしれない」
その言葉には、あらゆる意味が含まれていた。
だがヘリオスはそれ以上何も言わず、壊さぬように、そっとトエイに唇を重ねた。
触れた唇はまだ未発達で幼く、あまりに清らかすぎてヘリオスは目眩がした。
きゅ、と寄せてくる唇の仕草が余りに愛おしい。
一度でも深くそう思ってしまうと、後は堕ちていくだけで。
終幕に向けて起こりうる"それ"を予感することなど、ヘリオスには出来るわけがなかった。
ただ、トエイだけは、何もかも予知した上でそうしていた。
どうなるか、何が起こるか、全てを覚悟した上で。
* * *
「早くしろ!! まだ中に人がいるんだぞ!!」
「み……水はこれだけしか無いのか?!」
「なんでもいいから火を消してくれぇぇぇえ!!」
悲痛な叫び声を上げて、人々は空を仰いだ。明々と辺りを橙色に照らすのは、街の灯りなどではなく。燃え盛る炎の熱い躍動によるものだった。
炎は空高く燃え上がり、首都アグラの商店街の中でも一際大きな建物をその腹に包んでいた。しかも、ただの炎ではないのか、時折火玉を辺りに吐き出しながら燃え狂っている。
「わ……私の店が……」
頭から布を被った男が力なくその場に崩れ落ちた。ふくよかな体型は贅沢の証。青ざめた彼の顔を密かに笑うものは、少なくはなかった。
「反乱軍もついに本格的に動きだしたのか……」
誰かが言った。
「手口が荒くなってきたな。そのうち首謀者の顔が見れるかもしれないぞ」
大惨事を前にしても、彼らが語るのは第三者の立場から見た話題ばかり。火を消そうとしているのは、店の従業員や店主の家族だけ。野次馬達は、まるでお芝居か何かを見ているような目付きで、傍観するのみだった。
* * *
「…………あ」
湖のほとりで、ヘリオスの肩に身を寄せていたトエイだが、ふいに何かに呼ばれたように、その体を離し立ち上がった。
「離れるな」
ヘリオスは立ち上がったトエイのその手を掴み、自身の方に引き寄せる。そのまま彼の膝の上に座り込んでしまったトエイだが、どこか落ち着かない様子だった。
「……どうかしたのか?」
するとトエイは、ヘリオスに視線を合わせ落ち着いた声でこう言った。
「ヘリオス。何かが燃えてるよ」
「何?」
「熱い力……すごく強く、燃えてる。ほら」
そう呟きながらトエイは、ヘリオスの手に自分の手を重ね瞳を閉じた。すると、途端にヘリオスの頭の中に、恐ろしい光景が強制的に映し出された。
「これは……」
自身の城近くまで燃え盛る炎、火だるまになり狂う民。逃げまとう人々の中で、笑みを浮かべる人物。
「ついに市民に手を出したな……」
そのイメージが浮かんでいる最中、終始目をきつく歪ませ唇を噛んでいたヘリオスだったが、映像が切れると同時にすぐに立ち上がった。
「お前はここにいろ」
素早く支度を始めるヘリオスに、トエイは焦り駆け寄る。
「でも、でも、火を消さなきゃ」
「危険だ。絶対に来るな。あれはただの火ではない」
ヘリオスはトエイの意志をはねのける。だがそれでハイと返事をするトエイでは無かった。
「私も連れていって。お願い」
「危険だと言っただろう! あれはおそらく反乱軍の仕業だ」
「だって、あの炎。もし間違ってなかったら私にしか消せな…………」
そう言い掛けて、トエイは思わず口を塞いだ。しまった。そう後悔しながらそっとヘリオスの表情を伺うと、彼は僅かに眉を寄せ、トエイを見つめていた。
「トエイは魔導師なのか?」
「え……あ」
肯定するのが、無難な選択だった。トエイが小さく頷くと、ヘリオスは彼女の手を引き駆け出した。
「なら話は早い。水の魔導術は使えるか?」
「うん」
「どこまでの術を?」
「高位魔法は簡単」
ディアナドラゴンだから、魔法ではないけれど。とは、当然言うわけがない。
ヘリオスは少し安堵したのか、駆けながら小さく息を吐いた。
「……助かる。だが、俺から離れるなよ」
「分かった」
その返事を聞くと、ヘリオスは近くに縛っていた蹄の大きな砂漠用の馬の背にトエイを乗せた。そして素早く自分もまたがると、手綱を引き勢い良く馬を走らせた。
「……夜の空が赤い」
走りだした馬の背で、トエイは彼方に映る都を見つめそう言った。
「火が膨らんでいる……! 」
ヘリオスは馬の速度を更に上げた。馬は必死に砂を蹴り、疾風のように走りだした。
焦りを隠せないヘリオスとは反対に、トエイはやけに落ち着いていた。街に近づくにつれ、周りの気温が上昇しているのが分かる。ついには、火の粉が風に乗って流れてきた。
その赤い屑を横目に見ながら、トエイはある確心を持っていた。
間違いない。
熱く、狂い乱れる赤い光。
憎しみと怒りが混濁した深淵から立ち上る火炎柱。
これは"人"が出せるものなんかじゃない。
間違いなくこれは、
私と同じ、"竜"の仕業だ。
* * *
「いいから女と子供をさっさと逃がせってんだよ!!」
燃え盛る火が周りを包む中、アインは混乱する人々を必死に先導していた。パニック状態に陥った人々を動かすのは容易なことではない。ともすれば、あまりの恐怖に狂いだす者も出てくるからだ。
「聖騎士様、アイン様! 西の通りは完全に火の海です! ……うわっ!!」
どこからか現われた男がアインに用件を言い終わると同時に、彼らの右手の建物が火球を吹いた。
その衝撃で建物のガラスが砕け散り、逃げる人々に降り注いだ。これは助けようにも、距離が遠すぎる。
「あーッくそ! 出来るかわかんねえけど……」
すると、アインはそう叫びながら腰の片手剣を抜き、走りだした。そして勢いをつけながら、その刄を力の限り強く真横に振った。
「でやああああ!!」
すると、彼の振るった刄からは白い三日月状の剣圧が飛び出した。剣圧は落ちる硝子の破片を砕き、更に炎の中へと吹き飛ばした。
「……あ……、出来たし」
剣圧を飛ばすなどという芸当は初めてだったのか。アインは気の抜けたような表情でホッと胸を撫で下ろした。
「アストレイアさんの講義、一応受けといて良かったぜ」
「アインー!!」
すると、まだ火の手の回っていない通りの向こうから、息急きらせながらルピナスがこちらに走ってきた。その姿を見たアインは、目を丸くして驚嘆の声を上げる。
「バカ何やってんだよ! トエイ連れて逃げろっつっただろ!!」
とっくに逃げたものと思っていたルピナスは、煤だらけで髪を振り乱しながらこちらに駆け寄ってきた。彼女はアインの前で辛そうに呼吸をすると、泣きそうな顔で彼を見上げた。眼鏡は、片方のグラスにヒビが入っていた。
「おい、トエイは!?」
「……それが……いないの」
「……は?」
「いないのよどこにも! アンタが消火に飛び出した後部屋に行ったら、あの子いなかったの!」
「何だって!?」
アインの拳が震える。まさか、どこに行くと言うんだろうか。こんな火の中、ディアナドラゴンである彼女にとっては毒でしかない。
「街の中走り回ったけど……皆混乱しきっていて思うように探せないのよ……ッ」
下を向くルピナスの瞳に涙が滲む。彼女はそれを乱暴に拭うと、切羽詰まった表情でこう言った。
「アンタもトエイを探して! あたしは、もう一回街の中見るから!」
「分かった。けどお前も無茶すんな。この火、普通じゃねえ」
「ええ、分かってる」
ルピナスは力強く頷くと、慌ててきびすを返し、炎が逆巻く通りの中へと走り出した。
「…………嫌な予感は当たるもんだな」
アインは走りながら、悔しそうに呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる