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六章 アイオン落日編
使徒vs魔人①
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熊も巴もエマも亜空に帰す事が出来た。
目の前にはアルテ=バレット。
女神の使徒で雷属性の使い手らしい。
雷属性自体は全ての属性の頂点に存在する究極の属性とか至高の属性とか言われてる眉唾物の胡散臭いもんだと思ってたら、実際この世界ではかなりエグイ優遇を受けているのは間違いない。
巴やエマが初見だからってあそこまで一方的に攻撃を受けるんだから。
色々と情報を引き出してくれた巴には感謝だ。
ところで究極とか至高と聞くと何故か料理勝負が思い浮かぶのは僕だけだろーか。
「……」
アルテは僕の方を見ているけど僕を見ていない。
何かトランスしてる。
初撃で腕をもらった時から少しおかしい。
追撃で頭を射抜いて終わりにしたかったのに妙なひっかかりを覚えてティアラの破壊に留めちゃったしな。
ロクな思い出じゃあないが僕自身が女神の使徒と呼ばれた時の事を思い出す。
今となっちゃ本物の女神の使徒と対峙してるんだから、中々遠くまで来たもんだ。
ようやく、だ。
あいつの尖兵とこうやって向かい合う所まできた。
腕は、血は止まってる。
応急処置、止血……?
肘が電気でパリパリして光ってる、なんて治癒方法は聞いた事もないし意味もわからない。
でも大丈夫、そう雷ならね。
なんて反則だろうか。
あのクソ虫なら十分に有り得るね。
「油断は無かった……」
「?」
「最高の準備、最高の装備で私はここにいる」
「……」
「状況だけは最高じゃあない。でもそんな事はほんの些細な時の悪戯に過ぎない」
「……」
ブツブツと彼女は呟き続けてる。
ただ、的外れというか。
「上位竜の化身と豚も対処は可能だった。ツィーゲもついでに片付けて、後はアルパインを見つけ出して狩って……段取りはもう出来ていたのに」
アルテが口にした状況、時の悪戯。
それこそが常に戦場にあって勝敗や生死を分かつものだ。
些細な事だとか、そもそものピントがずれてる。
こいつ、実戦経験が少ない?
或いは苦戦すらした事が無いほど……敵に恵まれてこなかった。
にしてもエマを豚とは。
あの子ほど賢怖い御方は中々いないぞ。
ハイランドオーク女衆をまとめる次代のボスを舐めるなよ。
「お前」
「?」
お、ようやく視線が合った。
似てる。
あの女神の傲慢さにさ。
「お前が、ライドウね」
「ああ。そうだよ、アルテ=バレット」
「なるほど、なるほどね……。そう、こういう事。レンブラントの庇護の下、一気に名を売ってきた商会の代表で人材にだけは恵まれている」
「……」
「が、その実急成長に見合う能力は持ち合わせておらず商人としては危うく隙だらけ。ツィーゲの急所」
「……ちょっと評価酷くないか」
間違いではないけれど。
思わず講義してしまった。
「その正体は稀代の魔術師にして冒険者という訳? やられたわ」
「ん?」
「ずっと、さも美味しいエサであるかのように擬態していた。密偵が騙されてアイオンが食いついてきたらその力で蹂躙する予定だったのね」
「……多少、誤解はあるみたいだけど君の相手は頼まれてるのは事実だね」
殺せと。
目の前のこいつを殺せと冷たい思考が告げてくる。
ずっとだ。
僕が思っているよりも彼女は危険な存在なのかもしれない。
ここで確実に、こいつを始末しろ。
最善の選択はこれしかないとばかりに脳内の警鐘は高まるばかり。
言われるまでも無く既に僕はその気だよ。
「既にお前に関する多くの策が水泡に帰している。だから多くは問わない」
「悠長だね」
ブリッドを一発、最速で発動させて胸に放ってみる。
残念な予想通りの結果、アルテの身体に触れる前にブリッドは彼女の周囲をのたうつように生じた雷に阻まれて呆気なく消えてしまった。
「……ブリッド。古いけれど強い術。隠しているようだけど確かに感じるわ、強烈な魔力をね。無駄だけど」
「そっちこそ良い反応だ。いや、オートガードの類かな? 全部を防いでくれる訳じゃないみたいだけど」
腕と地面に落ちた砕けたティアラを見て返してやる。
「ライドウ。お前、以前にリミアに降臨した魔人? 女神の使徒などと騙られている、あの不遜な存在は、お前?」
「ああ。女神ってクソ虫に無理やり拉致された結果、竜殺しに奇襲された上での欲しくも無い二つ名だよ」
魔人も、女神の使徒も代行者とかもな!
「咲け」
あれか!
続くアルテの言葉を待つまでもなく急速に周囲を赤雷の花が埋め尽くしていく。
放たれる稲妻。
「っ!!」
意外と目で追えるかと期待もしたけど無駄だった。
光ったと思った次の瞬間にはもう攻撃が終わってる。
気付いたら身体を貫く激痛が残ってるって寸法だ。
魔力障壁どころか、魔力体も全く役に立たない。
触れた瞬間に一方的にこちらの魔術が打ち消されてしまう感覚。
ああ、これは確かにズルい。
でもわかった、速度の感覚としては光ったと認識した時点でアウト。
準備がどうって喚いてたから、上空の雲に絡む稲妻も何かしら意味があるな。
それも探ろう。
にしても、もらっちゃうとこれ……動かせてもらえないな。
障壁や魔力体を理不尽に貫通してくるし。
確かに雷属性反則。
雷じゃなく、雷属性。
この世界では破格の力を持ってる。
「雷纏身」
「っと、そんな事もするか」
アルテの身体を雷が包んだ。
彼女の全身が光り輝く。
僕が地面に縫い付けてやった腕も持ってた鎌ごとふわふわと元の位置に戻っていく。
流石にくっつきはせず、肘と腕の間に小さな雷球が一つ。
見た目は普通に動きそうだな。
その前提で考えた方が良いか。
さて他は纏っただけって考えるのはちと楽観的か……なっ!?
予想外の速度でアルテが僕との間にあった距離を詰めてきた。
突き出される左手。
細かな雷の連撃の中で動きを阻害されてる僕としては回避は難しく、喉元に突き込まれた。
刹那、身体を走る衝撃。
「っぁ!」
まるで罰ゲームのビリビリグッズを全身に押し付けられているような、字面よりずっときつい痛み。
痛みの連続。
「女神様の力になってくれてありがとう、ライドウ」
「何、あいつは友達少なそうだしっ他に頼れるのがいなかったんだろっ、から気に、なら、らずっ!!」
軽口も結構しんどい。
んー。
すぐにでも殺れそうに感じるんだけど……するりと抜けられそうな。
最低限の保険はかけてあるとはいっても、これは不思議な感覚だ。
「屈辱よ。アレは私達にとって本当に最大の辱めだった。けれどこうしてお前と逢えたのは天恵ね。楽に死ねると思わないで。たっぷりとお礼をしてあの竜もアルパインも引きずり出して! ツィーゲ諸共消し炭、いえ物言わぬ石ころにしてあげる!!」
「石、ころ?」
妙な言葉が混じった。
こいつに限っては手の内を出来るだけ見てから終わらせたい。
使徒はもう一人いるし、女神にも繋がる相手だ。
逃がさない範囲で出来るだけ、その実力を把握しておきたいんだけど。
少し、危険な匂いがする。
「使徒の力をその身に刻みなさい。空埋める稲妻、地埋め咲く雷花……」
「ぐ、こ、の」
あーもう動き難い!
「無駄よ、お前はもう既に詰んでいる。ローレルの言葉をかじっているのなら多少はわかるかもしれないわね。赤い雷は赤雷。転じて石雷、数多の状態異常の王。手始めは忌まわしい壁、偽の使徒たるライドウ諸共……終われ!」
「来い!」
「雷轟紅塵!」
両方は無理だな、じゃ上優先!
頼れる腕を呼び出して上の稲妻を潰すようイメージする。
僕の方はまあ、耐えられるから。
上空の稲妻からツィーゲの外壁と内側に雷の火花、線香花火の松葉に酷似した魔術が降り注ぐ……予定だった。
ったくさ、個人で発動する魔術が儀式魔術クラスの規模とかどうなってるんだか。
あんまり人の事言えないけどさ!
僕の呼んだ双腕が少しだけ先に空の稲妻に触れた。
線香花火の逆再生を見ているように松葉の火花は空に戻り、稲妻は圧縮されて牡丹になった。
そして、消える。
大体思った通りの結果だった。
大して、僕を掴んだままのアルテの左手、それから足元の雷花から無数に立ち上がって僕の周りで炸裂してくれる松葉の方は……まあ直撃。
こちらも思った通りの激痛の連続。
つくづく障壁と魔力体に頼ってきたと痛感する。
純粋な肉体の防御で耐える感覚は久々過ぎて無茶苦茶しんどい。
がパニックとは程遠い、落ち着いた僕のままだ。
「魔術は、大概ぶち抜けても、魔力による抵抗まで、全部っは、無視できないっんだな」
アルテの左手を横から掴む。
熱くて、痛い。
雷なんて触れられるものじゃないから、どう例えていいものやら。
「触るな!! 穢れる!!」
「っと!」
思い切り振り払われる。
おかげさまでようやく自由だ。
まだ雷の連撃は弱めに続いてるけど、何とか動けるし、話す方もいけそう。
さて、続きはここじゃまずい。
ツィーゲにとばっちりがいったんじゃ本末転倒だ。
「雷纏身!」
「重ねるのもありかー!」
アルテの全身が一層赤く眩く輝く。
でも実はラッキー。
この子、近接型じゃない。
なのにどういう訳かやたらと近接戦を警戒して、あまり使い慣れていないだろうにこの術を使ってる節がある。
……アルパイン辺りが何か上手い事やったかな。
何かしらトラウマがあるんだろう。
確かに速く強くなるけど、動きは単調。
例えるなら、こっちの世界に来たばかりの僕。
……。
…。
ここ!
「雷掌――っ!?」
「怪獣決戦は郊外でやるってのがお約束だ」
アルテの突進にタイミングを合わせて、繰り出される腕を絡めとる。
仕込んでおいた霧の門を発動させて外壁から遠く離れたアイオン側のどこかに転移。
アイオン軍とツィーゲの戦場である場の一画で派手にやらかしていた戦いは、その瞬間に一切の音も止み何事も無かったかのように静まった訳だ。
お邪魔しましたっと。
さあ、続きをしよう。
目の前にはアルテ=バレット。
女神の使徒で雷属性の使い手らしい。
雷属性自体は全ての属性の頂点に存在する究極の属性とか至高の属性とか言われてる眉唾物の胡散臭いもんだと思ってたら、実際この世界ではかなりエグイ優遇を受けているのは間違いない。
巴やエマが初見だからってあそこまで一方的に攻撃を受けるんだから。
色々と情報を引き出してくれた巴には感謝だ。
ところで究極とか至高と聞くと何故か料理勝負が思い浮かぶのは僕だけだろーか。
「……」
アルテは僕の方を見ているけど僕を見ていない。
何かトランスしてる。
初撃で腕をもらった時から少しおかしい。
追撃で頭を射抜いて終わりにしたかったのに妙なひっかかりを覚えてティアラの破壊に留めちゃったしな。
ロクな思い出じゃあないが僕自身が女神の使徒と呼ばれた時の事を思い出す。
今となっちゃ本物の女神の使徒と対峙してるんだから、中々遠くまで来たもんだ。
ようやく、だ。
あいつの尖兵とこうやって向かい合う所まできた。
腕は、血は止まってる。
応急処置、止血……?
肘が電気でパリパリして光ってる、なんて治癒方法は聞いた事もないし意味もわからない。
でも大丈夫、そう雷ならね。
なんて反則だろうか。
あのクソ虫なら十分に有り得るね。
「油断は無かった……」
「?」
「最高の準備、最高の装備で私はここにいる」
「……」
「状況だけは最高じゃあない。でもそんな事はほんの些細な時の悪戯に過ぎない」
「……」
ブツブツと彼女は呟き続けてる。
ただ、的外れというか。
「上位竜の化身と豚も対処は可能だった。ツィーゲもついでに片付けて、後はアルパインを見つけ出して狩って……段取りはもう出来ていたのに」
アルテが口にした状況、時の悪戯。
それこそが常に戦場にあって勝敗や生死を分かつものだ。
些細な事だとか、そもそものピントがずれてる。
こいつ、実戦経験が少ない?
或いは苦戦すらした事が無いほど……敵に恵まれてこなかった。
にしてもエマを豚とは。
あの子ほど賢怖い御方は中々いないぞ。
ハイランドオーク女衆をまとめる次代のボスを舐めるなよ。
「お前」
「?」
お、ようやく視線が合った。
似てる。
あの女神の傲慢さにさ。
「お前が、ライドウね」
「ああ。そうだよ、アルテ=バレット」
「なるほど、なるほどね……。そう、こういう事。レンブラントの庇護の下、一気に名を売ってきた商会の代表で人材にだけは恵まれている」
「……」
「が、その実急成長に見合う能力は持ち合わせておらず商人としては危うく隙だらけ。ツィーゲの急所」
「……ちょっと評価酷くないか」
間違いではないけれど。
思わず講義してしまった。
「その正体は稀代の魔術師にして冒険者という訳? やられたわ」
「ん?」
「ずっと、さも美味しいエサであるかのように擬態していた。密偵が騙されてアイオンが食いついてきたらその力で蹂躙する予定だったのね」
「……多少、誤解はあるみたいだけど君の相手は頼まれてるのは事実だね」
殺せと。
目の前のこいつを殺せと冷たい思考が告げてくる。
ずっとだ。
僕が思っているよりも彼女は危険な存在なのかもしれない。
ここで確実に、こいつを始末しろ。
最善の選択はこれしかないとばかりに脳内の警鐘は高まるばかり。
言われるまでも無く既に僕はその気だよ。
「既にお前に関する多くの策が水泡に帰している。だから多くは問わない」
「悠長だね」
ブリッドを一発、最速で発動させて胸に放ってみる。
残念な予想通りの結果、アルテの身体に触れる前にブリッドは彼女の周囲をのたうつように生じた雷に阻まれて呆気なく消えてしまった。
「……ブリッド。古いけれど強い術。隠しているようだけど確かに感じるわ、強烈な魔力をね。無駄だけど」
「そっちこそ良い反応だ。いや、オートガードの類かな? 全部を防いでくれる訳じゃないみたいだけど」
腕と地面に落ちた砕けたティアラを見て返してやる。
「ライドウ。お前、以前にリミアに降臨した魔人? 女神の使徒などと騙られている、あの不遜な存在は、お前?」
「ああ。女神ってクソ虫に無理やり拉致された結果、竜殺しに奇襲された上での欲しくも無い二つ名だよ」
魔人も、女神の使徒も代行者とかもな!
「咲け」
あれか!
続くアルテの言葉を待つまでもなく急速に周囲を赤雷の花が埋め尽くしていく。
放たれる稲妻。
「っ!!」
意外と目で追えるかと期待もしたけど無駄だった。
光ったと思った次の瞬間にはもう攻撃が終わってる。
気付いたら身体を貫く激痛が残ってるって寸法だ。
魔力障壁どころか、魔力体も全く役に立たない。
触れた瞬間に一方的にこちらの魔術が打ち消されてしまう感覚。
ああ、これは確かにズルい。
でもわかった、速度の感覚としては光ったと認識した時点でアウト。
準備がどうって喚いてたから、上空の雲に絡む稲妻も何かしら意味があるな。
それも探ろう。
にしても、もらっちゃうとこれ……動かせてもらえないな。
障壁や魔力体を理不尽に貫通してくるし。
確かに雷属性反則。
雷じゃなく、雷属性。
この世界では破格の力を持ってる。
「雷纏身」
「っと、そんな事もするか」
アルテの身体を雷が包んだ。
彼女の全身が光り輝く。
僕が地面に縫い付けてやった腕も持ってた鎌ごとふわふわと元の位置に戻っていく。
流石にくっつきはせず、肘と腕の間に小さな雷球が一つ。
見た目は普通に動きそうだな。
その前提で考えた方が良いか。
さて他は纏っただけって考えるのはちと楽観的か……なっ!?
予想外の速度でアルテが僕との間にあった距離を詰めてきた。
突き出される左手。
細かな雷の連撃の中で動きを阻害されてる僕としては回避は難しく、喉元に突き込まれた。
刹那、身体を走る衝撃。
「っぁ!」
まるで罰ゲームのビリビリグッズを全身に押し付けられているような、字面よりずっときつい痛み。
痛みの連続。
「女神様の力になってくれてありがとう、ライドウ」
「何、あいつは友達少なそうだしっ他に頼れるのがいなかったんだろっ、から気に、なら、らずっ!!」
軽口も結構しんどい。
んー。
すぐにでも殺れそうに感じるんだけど……するりと抜けられそうな。
最低限の保険はかけてあるとはいっても、これは不思議な感覚だ。
「屈辱よ。アレは私達にとって本当に最大の辱めだった。けれどこうしてお前と逢えたのは天恵ね。楽に死ねると思わないで。たっぷりとお礼をしてあの竜もアルパインも引きずり出して! ツィーゲ諸共消し炭、いえ物言わぬ石ころにしてあげる!!」
「石、ころ?」
妙な言葉が混じった。
こいつに限っては手の内を出来るだけ見てから終わらせたい。
使徒はもう一人いるし、女神にも繋がる相手だ。
逃がさない範囲で出来るだけ、その実力を把握しておきたいんだけど。
少し、危険な匂いがする。
「使徒の力をその身に刻みなさい。空埋める稲妻、地埋め咲く雷花……」
「ぐ、こ、の」
あーもう動き難い!
「無駄よ、お前はもう既に詰んでいる。ローレルの言葉をかじっているのなら多少はわかるかもしれないわね。赤い雷は赤雷。転じて石雷、数多の状態異常の王。手始めは忌まわしい壁、偽の使徒たるライドウ諸共……終われ!」
「来い!」
「雷轟紅塵!」
両方は無理だな、じゃ上優先!
頼れる腕を呼び出して上の稲妻を潰すようイメージする。
僕の方はまあ、耐えられるから。
上空の稲妻からツィーゲの外壁と内側に雷の火花、線香花火の松葉に酷似した魔術が降り注ぐ……予定だった。
ったくさ、個人で発動する魔術が儀式魔術クラスの規模とかどうなってるんだか。
あんまり人の事言えないけどさ!
僕の呼んだ双腕が少しだけ先に空の稲妻に触れた。
線香花火の逆再生を見ているように松葉の火花は空に戻り、稲妻は圧縮されて牡丹になった。
そして、消える。
大体思った通りの結果だった。
大して、僕を掴んだままのアルテの左手、それから足元の雷花から無数に立ち上がって僕の周りで炸裂してくれる松葉の方は……まあ直撃。
こちらも思った通りの激痛の連続。
つくづく障壁と魔力体に頼ってきたと痛感する。
純粋な肉体の防御で耐える感覚は久々過ぎて無茶苦茶しんどい。
がパニックとは程遠い、落ち着いた僕のままだ。
「魔術は、大概ぶち抜けても、魔力による抵抗まで、全部っは、無視できないっんだな」
アルテの左手を横から掴む。
熱くて、痛い。
雷なんて触れられるものじゃないから、どう例えていいものやら。
「触るな!! 穢れる!!」
「っと!」
思い切り振り払われる。
おかげさまでようやく自由だ。
まだ雷の連撃は弱めに続いてるけど、何とか動けるし、話す方もいけそう。
さて、続きはここじゃまずい。
ツィーゲにとばっちりがいったんじゃ本末転倒だ。
「雷纏身!」
「重ねるのもありかー!」
アルテの全身が一層赤く眩く輝く。
でも実はラッキー。
この子、近接型じゃない。
なのにどういう訳かやたらと近接戦を警戒して、あまり使い慣れていないだろうにこの術を使ってる節がある。
……アルパイン辺りが何か上手い事やったかな。
何かしらトラウマがあるんだろう。
確かに速く強くなるけど、動きは単調。
例えるなら、こっちの世界に来たばかりの僕。
……。
…。
ここ!
「雷掌――っ!?」
「怪獣決戦は郊外でやるってのがお約束だ」
アルテの突進にタイミングを合わせて、繰り出される腕を絡めとる。
仕込んでおいた霧の門を発動させて外壁から遠く離れたアイオン側のどこかに転移。
アイオン軍とツィーゲの戦場である場の一画で派手にやらかしていた戦いは、その瞬間に一切の音も止み何事も無かったかのように静まった訳だ。
お邪魔しましたっと。
さあ、続きをしよう。
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