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七章 蜃気楼都市小閑編
常連争奪と密かな危機(中)
「先日素晴らしい別荘地にご招待いただいたばかりで気安いかとも考えたのですが、やはり直接二人で話す機会も必要だと思いましてね」
レンブラントさん、カプリさんに続いてムゾーさんか。
ツィーゲの重鎮と会う機会が増えるのはまあ致し方なしってわかってる。
ただ素材商のムゾーさんとはこれまでもさほど目立った軋轢はなく穏当に共存できているつもりでいた。
今日の要件次第では新たな難題を突きつけられる、なんて可能性もある。
お通しするように言ったものの気が重い席だってのも事実だ。
ブロンズマン商会とは結構上手く住み分けていると思うから当面はこことのすり合わせが僕にとっての山だな。
バトマさんとこのリストラの嵐はうちとは無関係っぽいし。
これまでの居心地の良さから打って変わって競争の論理がシビアに導入されたようだけど、ルシリー商会以外と大した付き合いもないから悪い言い方だけどその辺りは所詮他人事である。
「別荘というほどのものでも無いですが、気に入っていただけたならまた皆さんと是非」
「ああ、何よりの言葉です。温泉があれきりとなると私としても辛いですから。さて、お互いに商人同士世間話ばかりでは時間の無駄というもの、早速本題にといきたい所ですが……その、彼についてはどう見ればよろしいのか」
ムゾーさんの視線は部屋の隅へ。
そこにはショーケースを見つめる一人の男性。
そう、パトリック=レンブラントその人だ。
エンジン型の展示となると必ず現れるようになって久しい。
私は空気だと思ってくれていいから、という言葉通り商談の席でも出ていってくれない時もあるほど。
一種の魔除けみたいに機能してくれる面もあるんだけど、ほぼ100%商談に来た相手が萎縮する。
そしてまとまらない。
レンブラント商会のトップがいる席で即日契約なんて出来るか、とでも言わんばかりに皆さん話をお持ち帰りする。
「えー……もう言葉を選ばずに言いますが物凄く邪魔ですレンブラントさん」
「大丈夫だライドウ君、私は何も聞いてないから」
ばっちり受け答えするじゃないっすか、ほぼラグなしで。
あ、オロシャの気安い感じの話し方がまだ頭に残ってる。
「いくら近しい関係でもここまで露骨な営業妨害はいかがなものかと」
「ムゾーの、どうせ中途半端なレア素材の供給が圧倒的に追いつかなくなってここの状況でも窺いに来たのだろ? 既に読めている動きに興味などないから好きに話していたまえ。今日の私は壁のシミだ」
独り言のように視線もこちらに向ける事なく。
レンブラントさんが口を開いた。
顔をひきつらせたムゾーさんは絶句している。
「……」
ぎぎぎと顔をこちらに向けたムゾーさんがもうやだこの人何とかして、と目で訴えてくる。
図星、なのか。
エンジン模型を見つめながらこっちの来客もきっちり把握して相談するだろう内容まで読み切っている部屋のシミ……商人としては絶対放置できないシミである。
もちろん、レンブラントさんの言葉通り話を進める訳にもいかない。
このところの恒例行事となったけれど、仕方ない、今日も執行しよう。
パンパンと僕が手を叩いた直後。
応接室にノックの音が響き、ライムと識が入ってきた。
ん?
ライムはともかく、識?
レンブラントさんに乱暴な真似は出来ないにしても連行要員に識が来るなんて……何かあったのか?
「っ! ライドウ君、もう少し! もう少しだけ!」
連行される人の方は慣れたもので、これから強制的にお帰り願うのがもうわかってらっしゃる。
「レンブラントの旦那……流石にこうも入り浸りは困りやす」
「まったく。こんな模型がそんなに興味深ければ商人らしく買い求めればよろしいのに。あ、若様。私が参りましたのは偶然手すきでしたからで、丁度今日ウェイツ孤児院にコレを届けに行っていたのです」
僕の疑問の目に気付いて識が先回りで答えを教えてくれた。
彼の手にはトランプのようなカードの束。
孤児院の子が数字の計算に馴染めるように作ってみたものだ。
この世界と日本を一緒に考えるのは無理だけれど、子供に勉強してもらうってのは中々難しい。
ちょっとでもゲーム感覚で遊びながら入れる入り口があると良いかなーと思ったんだよね。
一桁の数字が書かれているシンプルなカードで、特に今のところ意味はないけれどカラフルな方が良いかなと四色に分けてある。
まあトランプを思いっきり参考にしたよね。
これで四則演算を駆使して手札の数字を弄って既定の数、例えば21とか53とか、まあ目的の数字を作るってゲームを考えた訳。
その内三桁にも挑戦できるようになれば商人ギルド試験の計算問題くらいならさほど難しく感じる事なく合格できるようになるんじゃないかと。
本当は……そろばんを教えられたら良かったんだけど僕は残念ながらうろ覚えでとても実用レベルで使えない。
惜しい事したな、きちんと習っておけば良かった。
「ああ、どうだった子どもたちの反応は」
「数人はルールを理解していましたが、まだまだですね。私が教えてきた生徒たちとは全くレベルが違うのでこちらも戸惑いながらの授業でした」
「……」
「そうか。基本的にあそこに識が行く事は少ないだろうから、引き続きロッツガルド中心で考えてくれてて良いからね」
なんだ?
レンブラントさんが無言で識を見ている。
ムゾーさんもどこか意外そうな表情で識と僕を交互に見つめてる。
「ありがとうございます、若様。さてレンブラント殿、申し訳ありませんが本日はそろそろお帰り頂きますよ。ライム」
「へい」
「……いや、識殿」
「?」
「今、模型を買えばいいと君は言ったな?」
「ええ、申しましたが。まだツィーゲでは一般的ではない機構と概念ではありますが使用されている技術自体はさほど難しいものもありません。こちらの模型程度でしたら商談次第ではありますがお譲りできるかと。はて、若様。エンジン模型自体は展示している範囲のものは販売制限などはなかったと記憶していますが」
「まあしてないね。だって基本スターリングエンジン模型なんてオブジェだし。何なら結構音も大きいし置く場所も選ぶものだから――」
何よりアブなそうなのは事前にチェックしてはじく用にしたからね。
「明日!」
「うお!?」
レンブラントさんが僕の至近距離までずずいっと近づいてきていきなり大声をあげた。
「朝から晩まで君の時間が空く時間まで待つ! ライドウ君、これを是非譲ってほしい! じゃあ、明日!」
ライムと識の実力行使を待つまでもなく、朗らかな顔でレンブラントさんが帰っていった。
なんだったんだ、一体?
「あー……お待たせしましたムゾーさん。それでは本日のご用向きを詳しく」
「ライドウ殿」
じっと識の持つカードを見つめながら声をかけてくるムゾーさん。
もしもし、また脱線ですか?
ここんとこツィーゲの大御所たちはどうしたんですかネ?
「なんでしょうか」
「あのカードを使った数字の遊び、よろしければ私にもお見せいただきたく」
「中途半端なレア素材の不足? とかの話ではなくですか?」
「もちろんそちらについても君の意見を聞いてみたくて立ち寄ったんですが、話題のウェイツ孤児院に新たに持ち込まれてた物と聞くとつい個人的な興味がわきました」
「……ライム、識。少し時間はある?」
僕の言葉に部屋を出るタイミングを何となく逃していた二人が頷く。
じゃあ少しだけ四人でやってみるか。
「では実際に少しだけ触ってみましょうか。それが一番早いでしょうし」
「あ、それなら下に行って摘まめそうなものと飲み物をお持ちします」
ライムが気を利かせて素早く部屋を出ていく。
識は僕らの方、テーブルまでカードを手にしたままやってきてムゾーさんに改めて挨拶。
カードを広げてみせてゲームのルールを簡単に説明してくれる。
うん、実にわかりやすい。
手札のカードを頭の中で足し算引き算掛け算割り算好きに使って特定の数字を作る。
できなかったり思いつかなかったりした場合の手札の入れ替え方なんかの説明も丁寧でわかりやすい。
「現在はとにかく目的の数字さえ出来ればよし、最初に宣言した人が正解なら勝利、というゲームになります」
「ほう……」
「例えば8,8,7,9,5と5枚の手札がある状態で57を作るのが目的なら8×8-7で完成しますので三枚の手札を出し式を提示すれば勝ちですね。大人がやるのでしたら手札の使い切りや手札の交換時のルールも詰めるべきでしょうが子どもたちが計算に慣れる入り口との事でしたので緩いルールを採用しております」
……ま、大人たちだけでやるには少々味気ないというか。
物足りないのは間違いない。
ただ目標とする数字の設定の方が中々難しくて皆頑張って作ってくれたんだよね。
それだけにウェイツ孤児院である程度の成果は出してほしい。
ムゾーさんの質問に識が答え終えたあたりでライムが飲み物とつまみを持って戻ってきた。
あれ、つまみ?
湯気が出てるんですけど。
「ただいま戻りました。下に行きやしたら澪の姐さんから若様に味見をと一品頂きまして。折角だからこれをつまみ代わりにすればよろしいかと、へへ」
「ち、茶椀蒸しじゃないか。カードゲームのつまみなんだから豆とかサラミみたいので良かったのに」
熱いしスプーンだし……ま、いいか。
茶碗蒸し美味しいよね。
「初めて見ますが美味しそうな香りですね。これはまた楽しみが増えました」
「卵を使った蒸し料理ですが……ムゾーさん苦手などは?」
基本喜んでくれているようだけど、茶碗蒸しは中身次第でアウトって事もあるから一応聞いておかないと。
って、中身?
ライムに聞けばわかるか?
「食べ物の好き嫌いはありません。お気遣いありがとうございます」
「ライム、中身は?」
「鳥の肉とキノコだそうです。確か……戻したコハクヒトヨタケとマコウダケ、ゴウカエンタケとか」
ツィーゲでも見るのと、あまり見ないのと、明らかな珍品のキノコ尽くしだな。
まあでも、それなら大丈夫か。
「っ、やはりここに来たのは正しかったですね」
「?」
「いえ、それでは少し遊ばせてください」
「わかりました、じゃライムも席について」
「へい」
素材商のムゾー商会か。
これまではそこまで接点もなかったとこだ。
どんな人なのか、意外と今日でわかるかもしれない。
そうなったら、この時間も少しは有意義になるか。
レンブラントさん、カプリさんに続いてムゾーさんか。
ツィーゲの重鎮と会う機会が増えるのはまあ致し方なしってわかってる。
ただ素材商のムゾーさんとはこれまでもさほど目立った軋轢はなく穏当に共存できているつもりでいた。
今日の要件次第では新たな難題を突きつけられる、なんて可能性もある。
お通しするように言ったものの気が重い席だってのも事実だ。
ブロンズマン商会とは結構上手く住み分けていると思うから当面はこことのすり合わせが僕にとっての山だな。
バトマさんとこのリストラの嵐はうちとは無関係っぽいし。
これまでの居心地の良さから打って変わって競争の論理がシビアに導入されたようだけど、ルシリー商会以外と大した付き合いもないから悪い言い方だけどその辺りは所詮他人事である。
「別荘というほどのものでも無いですが、気に入っていただけたならまた皆さんと是非」
「ああ、何よりの言葉です。温泉があれきりとなると私としても辛いですから。さて、お互いに商人同士世間話ばかりでは時間の無駄というもの、早速本題にといきたい所ですが……その、彼についてはどう見ればよろしいのか」
ムゾーさんの視線は部屋の隅へ。
そこにはショーケースを見つめる一人の男性。
そう、パトリック=レンブラントその人だ。
エンジン型の展示となると必ず現れるようになって久しい。
私は空気だと思ってくれていいから、という言葉通り商談の席でも出ていってくれない時もあるほど。
一種の魔除けみたいに機能してくれる面もあるんだけど、ほぼ100%商談に来た相手が萎縮する。
そしてまとまらない。
レンブラント商会のトップがいる席で即日契約なんて出来るか、とでも言わんばかりに皆さん話をお持ち帰りする。
「えー……もう言葉を選ばずに言いますが物凄く邪魔ですレンブラントさん」
「大丈夫だライドウ君、私は何も聞いてないから」
ばっちり受け答えするじゃないっすか、ほぼラグなしで。
あ、オロシャの気安い感じの話し方がまだ頭に残ってる。
「いくら近しい関係でもここまで露骨な営業妨害はいかがなものかと」
「ムゾーの、どうせ中途半端なレア素材の供給が圧倒的に追いつかなくなってここの状況でも窺いに来たのだろ? 既に読めている動きに興味などないから好きに話していたまえ。今日の私は壁のシミだ」
独り言のように視線もこちらに向ける事なく。
レンブラントさんが口を開いた。
顔をひきつらせたムゾーさんは絶句している。
「……」
ぎぎぎと顔をこちらに向けたムゾーさんがもうやだこの人何とかして、と目で訴えてくる。
図星、なのか。
エンジン模型を見つめながらこっちの来客もきっちり把握して相談するだろう内容まで読み切っている部屋のシミ……商人としては絶対放置できないシミである。
もちろん、レンブラントさんの言葉通り話を進める訳にもいかない。
このところの恒例行事となったけれど、仕方ない、今日も執行しよう。
パンパンと僕が手を叩いた直後。
応接室にノックの音が響き、ライムと識が入ってきた。
ん?
ライムはともかく、識?
レンブラントさんに乱暴な真似は出来ないにしても連行要員に識が来るなんて……何かあったのか?
「っ! ライドウ君、もう少し! もう少しだけ!」
連行される人の方は慣れたもので、これから強制的にお帰り願うのがもうわかってらっしゃる。
「レンブラントの旦那……流石にこうも入り浸りは困りやす」
「まったく。こんな模型がそんなに興味深ければ商人らしく買い求めればよろしいのに。あ、若様。私が参りましたのは偶然手すきでしたからで、丁度今日ウェイツ孤児院にコレを届けに行っていたのです」
僕の疑問の目に気付いて識が先回りで答えを教えてくれた。
彼の手にはトランプのようなカードの束。
孤児院の子が数字の計算に馴染めるように作ってみたものだ。
この世界と日本を一緒に考えるのは無理だけれど、子供に勉強してもらうってのは中々難しい。
ちょっとでもゲーム感覚で遊びながら入れる入り口があると良いかなーと思ったんだよね。
一桁の数字が書かれているシンプルなカードで、特に今のところ意味はないけれどカラフルな方が良いかなと四色に分けてある。
まあトランプを思いっきり参考にしたよね。
これで四則演算を駆使して手札の数字を弄って既定の数、例えば21とか53とか、まあ目的の数字を作るってゲームを考えた訳。
その内三桁にも挑戦できるようになれば商人ギルド試験の計算問題くらいならさほど難しく感じる事なく合格できるようになるんじゃないかと。
本当は……そろばんを教えられたら良かったんだけど僕は残念ながらうろ覚えでとても実用レベルで使えない。
惜しい事したな、きちんと習っておけば良かった。
「ああ、どうだった子どもたちの反応は」
「数人はルールを理解していましたが、まだまだですね。私が教えてきた生徒たちとは全くレベルが違うのでこちらも戸惑いながらの授業でした」
「……」
「そうか。基本的にあそこに識が行く事は少ないだろうから、引き続きロッツガルド中心で考えてくれてて良いからね」
なんだ?
レンブラントさんが無言で識を見ている。
ムゾーさんもどこか意外そうな表情で識と僕を交互に見つめてる。
「ありがとうございます、若様。さてレンブラント殿、申し訳ありませんが本日はそろそろお帰り頂きますよ。ライム」
「へい」
「……いや、識殿」
「?」
「今、模型を買えばいいと君は言ったな?」
「ええ、申しましたが。まだツィーゲでは一般的ではない機構と概念ではありますが使用されている技術自体はさほど難しいものもありません。こちらの模型程度でしたら商談次第ではありますがお譲りできるかと。はて、若様。エンジン模型自体は展示している範囲のものは販売制限などはなかったと記憶していますが」
「まあしてないね。だって基本スターリングエンジン模型なんてオブジェだし。何なら結構音も大きいし置く場所も選ぶものだから――」
何よりアブなそうなのは事前にチェックしてはじく用にしたからね。
「明日!」
「うお!?」
レンブラントさんが僕の至近距離までずずいっと近づいてきていきなり大声をあげた。
「朝から晩まで君の時間が空く時間まで待つ! ライドウ君、これを是非譲ってほしい! じゃあ、明日!」
ライムと識の実力行使を待つまでもなく、朗らかな顔でレンブラントさんが帰っていった。
なんだったんだ、一体?
「あー……お待たせしましたムゾーさん。それでは本日のご用向きを詳しく」
「ライドウ殿」
じっと識の持つカードを見つめながら声をかけてくるムゾーさん。
もしもし、また脱線ですか?
ここんとこツィーゲの大御所たちはどうしたんですかネ?
「なんでしょうか」
「あのカードを使った数字の遊び、よろしければ私にもお見せいただきたく」
「中途半端なレア素材の不足? とかの話ではなくですか?」
「もちろんそちらについても君の意見を聞いてみたくて立ち寄ったんですが、話題のウェイツ孤児院に新たに持ち込まれてた物と聞くとつい個人的な興味がわきました」
「……ライム、識。少し時間はある?」
僕の言葉に部屋を出るタイミングを何となく逃していた二人が頷く。
じゃあ少しだけ四人でやってみるか。
「では実際に少しだけ触ってみましょうか。それが一番早いでしょうし」
「あ、それなら下に行って摘まめそうなものと飲み物をお持ちします」
ライムが気を利かせて素早く部屋を出ていく。
識は僕らの方、テーブルまでカードを手にしたままやってきてムゾーさんに改めて挨拶。
カードを広げてみせてゲームのルールを簡単に説明してくれる。
うん、実にわかりやすい。
手札のカードを頭の中で足し算引き算掛け算割り算好きに使って特定の数字を作る。
できなかったり思いつかなかったりした場合の手札の入れ替え方なんかの説明も丁寧でわかりやすい。
「現在はとにかく目的の数字さえ出来ればよし、最初に宣言した人が正解なら勝利、というゲームになります」
「ほう……」
「例えば8,8,7,9,5と5枚の手札がある状態で57を作るのが目的なら8×8-7で完成しますので三枚の手札を出し式を提示すれば勝ちですね。大人がやるのでしたら手札の使い切りや手札の交換時のルールも詰めるべきでしょうが子どもたちが計算に慣れる入り口との事でしたので緩いルールを採用しております」
……ま、大人たちだけでやるには少々味気ないというか。
物足りないのは間違いない。
ただ目標とする数字の設定の方が中々難しくて皆頑張って作ってくれたんだよね。
それだけにウェイツ孤児院である程度の成果は出してほしい。
ムゾーさんの質問に識が答え終えたあたりでライムが飲み物とつまみを持って戻ってきた。
あれ、つまみ?
湯気が出てるんですけど。
「ただいま戻りました。下に行きやしたら澪の姐さんから若様に味見をと一品頂きまして。折角だからこれをつまみ代わりにすればよろしいかと、へへ」
「ち、茶椀蒸しじゃないか。カードゲームのつまみなんだから豆とかサラミみたいので良かったのに」
熱いしスプーンだし……ま、いいか。
茶碗蒸し美味しいよね。
「初めて見ますが美味しそうな香りですね。これはまた楽しみが増えました」
「卵を使った蒸し料理ですが……ムゾーさん苦手などは?」
基本喜んでくれているようだけど、茶碗蒸しは中身次第でアウトって事もあるから一応聞いておかないと。
って、中身?
ライムに聞けばわかるか?
「食べ物の好き嫌いはありません。お気遣いありがとうございます」
「ライム、中身は?」
「鳥の肉とキノコだそうです。確か……戻したコハクヒトヨタケとマコウダケ、ゴウカエンタケとか」
ツィーゲでも見るのと、あまり見ないのと、明らかな珍品のキノコ尽くしだな。
まあでも、それなら大丈夫か。
「っ、やはりここに来たのは正しかったですね」
「?」
「いえ、それでは少し遊ばせてください」
「わかりました、じゃライムも席について」
「へい」
素材商のムゾー商会か。
これまではそこまで接点もなかったとこだ。
どんな人なのか、意外と今日でわかるかもしれない。
そうなったら、この時間も少しは有意義になるか。
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本当に、ありがとうございます。
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