306 / 551
19巻
19-2
しおりを挟む
巴は上着を脱ぎ捨てつつ、ニッコリといろはに笑みを向けた。
「残念、時間切れじゃ。三十分ほど遅かったのう。さて、三秒やる。誰に剥かれたいか選ぶがいい」
こ、酷な。
いろはちゃんは今、巴に両手で脇の下を持ち上げられている。
逃げようにも不可能だ。
「さーん」
「ふえ!? ええ、えっと」
「にー」
「あ、ああ、ええ……」
「いーち」
「分か、分かりました。じゃ、じゃあ!!」
恐ろしく理不尽な選択を迫られ、いろはちゃんはついに……。
「ほっほう」
良い笑みを浮かべる巴。
いろはちゃんが誰を選んだのかは、まあ、わざわざ口にする事じゃない。
無意味な衣服の知識が増えたからって……別にどうだっていい。
そう。
世の中、忘れた方が良い事もあるよね。
ただ一つ。
今夜の出来事については絶対の箝口令を敷こうと、心に決めた。
◇◆◇◆◇
結論。
子供が一人交ざれば、お風呂から色気なんて消し飛ぶ。
混浴とかより遥かに破壊力がある要素だったな、子供。
おかげさまで僕ものぼせたりせず、無事に入浴を終える事ができた。
……ただ若干とはいえ冷静になると、余裕が出てきて色んなものが見えてくるもので。
やっぱり浮いてた。
うん、二人とも凄い。何がとは言わないけど。
別にそれはね、今特に思い出して大したものだと思っただけで、深夜と呼ぶべきこの時間まで眠れずに横になっていた理由じゃない。
普段なら寝ている時間なのに、未だに目を開けている理由は二つ。大本は一つ。
巴から教えてもらったいろはちゃんの素性について。
そして、彼女の護衛へのフォローについて。
風呂上りにいろはちゃんが寝付いた後、ニコニコしながら教えてくれた巴の顔を思い出す。
「あの娘はカンナオイを治める武家オサカベ家の姫です」
「だろうね」
予想はついていたけど、そのまま正解だった。
いろはちゃんと揉めていた爺やっぽい老齢の男性の名前は、ショウゲツさんだっけ。
彼もカンナオイがどうのと言っていたし……。
そんな名家の人達とトラブルになるのは、正直嬉しくない。
ミズハに入っていきなりアウトな事をしたかと、冷や汗ものだった。
「ただし、特に力のある姫君ではありませんな。オサカベ家は大きな家で、姫も若も大量におるようですから」
でもそこはなんとかセーフ。
代わりが沢山いて特に力もないなら、この後のやり方次第で十分仕切り直しができる。
そしてそのためには、姫であるいろはちゃんの機嫌を決定的に損ねない程度に保ちつつ、護衛の人達とちゃんと話をしておかないと。
前者の条件は巴に懐いているようだから、なんとでもなりそう。
だから、後はショウゲツさん達と話をすればいい。
僕達の身元の保証には、彩律さんの手形が使える。
彩律さんの華原家とオサカベ家の関係はともかく、効力は見込めると思う。
僕としては、話をする切っ掛けになればそれでいい。
それに、いろはちゃん自体は知らないだろうけど、彩律さんの事だから、クズノハ商会だのライドウだのって名前が有力な家の耳に入るように広めているはずだ。
あの人の性格からして、そのくらいはやらないと僕を国内に入れないと思うんだよ。
つまり、勝機は十分。
巴には悪いんだけど、流石に爆弾を抱えたまま黄門様をやるなんて、僕にはちょっと難しい。
さっさと行って、話を済ませてきますか。
僕は既に寝付いているみんなを起こさないように静かに支度を済ませる。
「……やはり、行かれますか」
巴が静かに声をかけてきた。
「起きていたのか」
「周囲を連中が窺っております故。もしここに襲撃など仕掛けてくれるのなら、遊んでやろうかと」
「近くにいるか」
「あれらの姫ですからな。必死で捜索したのでしょうよ。む」
「え」
巴が何かに気付いて視線を横に滑らせる。
げ、襲撃?
一歩遅かったか。
「若、あれを」
「……いろはちゃんの刀か。子供に持たせる守り刀にしては魔力まで帯びた業物だったけど……」
見ると、いろはちゃんの刀が光っていた。
とはいっても、鞘から漏れる微かなもので、その色合いは蛍を思わせる優しい光だ。
あの子が振り回していた時にも光っていたようだけど、なんのためかね。
「特に悪さをしているわけでもなさそうですが、抜いてみますか」
「澪といろはちゃんを起こすなよ」
「心得ておりますよ」
刀を手に取った巴が、苦もなくそれを抜く。
所持する者以外は抜けないという仕掛けはなしか。
ふぅん。
淡い光が刃の側に所々強弱をつけながら纏わりついている。
刀自体が光っている感じでもないな。
小さな光の粒が沢山重なっているような……っ!?
「なんでしょうな、これは。放たれる魔力も微弱すぎてどうにも……実戦向きの刀ではないが……芸術品として出来は良い」
「巴、その光の強い場所だけど」
「はい」
「刃こぼれとかしてないか」
「刃こぼれ? おお、言われてみれば、小さな刃こぼれがありますな」
……まさか『蛍丸』?
いやいやいやいや、違うと思う。
蛍丸は戦で刃こぼれした際にひとりでに直ったという伝説を持つ刀だ。その由来を知っていた誰かが、それらしいレプリカを作らせたんだ。
そうに違いない。
大体、アレがこっちの世界にあるわけもないし、子供の守り刀――短刀サイズなはずもない。
僕の勘違いだ。
「そっか。まあ……しまっとけ」
「はぁ、御意」
巴は僕の様子に首を傾げながらもうなずいた。
「ともかくだ。行ってくる」
「儂としては、ベレン達が合流するくらいまではこのまま、と行きたかったのですが……」
エルダードワーフのベレンは、巴の命により、僕達とは別ルートからローレルに入っている。
「ダメ。行ってきます」
「若がそう仰るのでしたら、致し方ありません。是非、全力で亀裂を断崖になさって――」
「この後に何があるかも分からないんだぞ? 無駄にトラブルは増やさなくていいんだって」
「でありますか。御意。思うていたよりもこのローレルは楽しめそうな国ですし、ここは譲りましょう」
「はいはい」
実際、迷宮が待っている。
それにフツ。
闇を司る影竜だという。
学園都市ロッツガルドじゃ名前も聞かなかった竜だってのに、ローレルだと結構知っている人が多いんだよな。
どういった存在か、まるで分からない。
あのルトの口からも名前を聞いた事がない。
かといって、あいつのところに聞きに戻るのも手間だ。
講義で学園を訪れる日でも十分に間に合う。
今は、どちらにしてもショウゲツさんが一番だ。
巴の話だと、この宿を見張っているようだし、全員無事なはず。
僕が一人で宿から出れば接触してくるのは確実だ。
この際、彼らに襲われるのは仕方ない。
いつもの事だ。
◇◆◇◆◇
たとえばだ。
釣りのゲームに『深澄真』ってルアーがあったとする。
ばくばく食いつかれて、すぐにボロボロにされるね。
引きが強いから、きっとレアリティは一番上だね。
あるいはエンカウント制のRPGに『深澄真』ってアクセサリがあったとする。
その効果は、面倒だったり厄介だったりする敵とのエンカウント率に限って爆上げだね。
レアリティはともかく……ストレス源としてゴミ扱いだろうな。
つまり、だ。
宿を出た僕は、ショウゲツさん達に襲ってもらうまでに実に二桁を超える襲撃を受けた。
大きな街でも――いや、それなり以上の街だからこそ、深夜の一人歩きには危険が伴うって事でもある。
その上、僕はミズハで一番の宿からふらふら出てきているわけで。
はははは、自業自得でもあるのはよく分かっている。
それでも!
もっと早く襲ってこいよ、お前ら!
ほんの少しそう思ったのは、ご愛嬌だと思う。
「どこの家の者か!」
いろはちゃんの護衛らしき人達が僕に尋ねた。
「深澄家の者です」
試しに言ってみた。
もしこの国に同じ家名の人がいたら、大事な場面で下手に名乗って面倒な事になってもアレだし。
仮に同じ家名があると不都合だと彩律さんに訴えたとして、流石に彼女のパワーでも、一つの家をそんな理由で改名させるのは無理だろう。
「ミスミ?」
「……いや、聞いた事がない」
「儂も知らぬな」
護衛の女性二人とお爺さんが首を傾げ、その他のお付きの女中風の二人も首を横に振る。
この様子なら、普通に名乗っても問題ないな。
使われていなさそうな家屋の一つに引きずり込まれた僕は、椅子に縛られて広めの部屋の中央に置かれた。
そこは窓のない部屋だった。
「何故いろは様を攫った?」
僕への尋問はアカシさんという護衛の女性が担当するようだった。
ユヅキさんという女性もすぐ傍に控えていて、ショウゲツさんや女中さん達は彼女達のやや後方に控えていた。
「それは……連れの一人が、皆さんが子供を誘拐しようとしている悪者だと勘違いしまして……」
僕が答えると、ショウゲツさんが口を挟んできた。
「あれは事情があっての事で、そちらが思い違いをしていると、あの場で儂は話したつもりじゃぞ?」
「ええ。そのようですね。あ、皆さん火傷は大丈夫でした?」
「っ! お前に案じてもらう事では――」
「……大丈夫よ。治療は済んでいるわ」
アカシさんはお怒りのようだけど、ユヅキさんが表面上は静かに答えてくれた。
「それは良かった。もし痕になっていたら治療を、と思っていましたから」
女性が多いから、密かに気になっていたんだ。
「……で、お主。いろは様は返してもらえるんじゃろうな」
ショウゲツさんが静かに聞いてきた。
「もちろん、我々にあのお姫様を傷つけるつもりなどありませんよ」
『!?』
息を呑む三人に構わず、僕は続ける。
「――で、こう言っちゃうと最初の質問に近い〝お前は何者だ〟に戻ると思うんで……あ、アカシさん。僕の上着の左の内ポケットを見てもらえます?」
「っ、先ほど見て何もなかった場所をもう一度探れと言うのか、お前は!?」
アカシさんとユヅキさんには縛られる前に散々体中をまさぐられた。
コートは僕じゃないとボタンも留められない特注品なんで、不便な思いをさせた。
「いや、僕も商人をやっていますので、一応見られたくない物も多少あります。さっきは二人がかりで全身まさぐられたんで、流石に……ねえ」
「誰が好き好んでまさぐるか!!」
「……アカシ、交代。左側の内ポケットね……」
苛立つアカシさんに代わってポケットに手を突っ込んだユヅキさんが、手元を魔術で光らせて手形を詳しく見る。
「これ、手形?」
「はい、身元保証になるかと」
「ちょっと、これ……」
ユヅキさんは理知的で話が分かる。
一方、アカシさんは直情的なので、敵視されている状態だと会話が成立し難い。
普通この状況だと、ユヅキさんの方が良いなと思うところだろうが……僕的にはアカシさんの方が好印象だ。
裏表がなさそうだなと、その一点だけでそう思う。
割と僕も重症かもしれない。
「ショウゲツ様」
ユヅキさんがショウゲツさんに手形を渡す。
「うむ。なに? 華原の紋!? それにこの形状……最大限の便宜じゃと……」
やっぱり効果は抜群だ。
ローレルの有力者が外からの客に持たせた手形なわけだから、外交的な効果も期待できる。
領主とか貴族とか武家ってのは、こういうのに弱い。
弱いというか、ちゃんと対応する。
「裏の名は……彩律本人っ。まさか……」
「ショウゲツ様?」
「アカシ、ユヅキ。縄を解きなさい」
ショウゲツさんに命じられ、ユヅキさんとアカシさんが抗議の声を上げる。
「な、なんでですか!!」
「その手形だけで縄を解く事はできません。こちらはいろは様を連れ去られております!」
「その方はライドウ殿。……賢人であらせられる」
『――!?』
この場の全員に緊張が走った。
賢人だと断言された?
そういえば、ミズハに入る時の兵士も、手形を見た瞬間に態度が変わった。
僕の見た目だけでそう確信されるだろうか。
しかし、少なくとも僕はさっきまで、目の前にいるアカシさんとユヅキさんにはそこそこ手荒に扱われていた。
つまり容姿が酷い――もとい、ある程度特徴的なだけでは、賢人とは特定できないはずだよな。
あの兵士とショウゲツさんの共通点。
……。
手形を見た。
だけどそれはユヅキさんもか。
いや、見たってだけなら、僕も巴も澪もだ。僕ら三人とも、その手形から僕が賢人だって情報は読み取れなかった。
って事は。
「手形に、賢人と推察されるか、そう特定されている旨の情報が密かに刻まれてる?」
手形を確認するような役職の人にしか分からない部分に。
それが一番ありそうだな。
「ご推察の通り。それに、貴殿がクズノハ商会のライドウ殿とは。確かに、あの女狐の名だけならどうしたかは分からんが。これはどうにも互いに不幸な勘違いをした結果と見るほかない」
ショウゲツさんは大きく息を吐いて、僕に向かって笑みを作る。
穏やかな笑みだ。
最初の和解は成った、かな。
それにしても、くそ、あの手形。何気に僕を賢人扱いするようにできているんじゃないか。
これも傭兵団に向けた彩律さんの仕込み?
ただの亜人っぽい人になるよりは賢人と見られた方が大事に扱ってもらえるわけで、僕にそこまでデメリットがないのがまた嫌らしい。
「オレは納得できてませんけど!」
「私もまだ。賢人様が刺客に仕立てられるほど、いろは様が世間の注目を集めているわけではないのは承知しておりますけれど……」
アカシさんとユヅキさんは未だ警戒の雰囲気が濃い。
女中さんもどちらかというとダメそうだ。
ショウゲツさんだけが色々分かっていて、僕に手を出すのをやめた雰囲気。
「形式のみのものに過ぎんが、儂にも一応通達は届いておった。近いうちにヤソカツイの大迷宮に潜る商会が行くから、その一行が華原家の手形を持っていたら協力するようにとな」
「まさにそれが僕らです」
「でしょうな。アカシ、ユヅキ!」
「分かりました!」
「……承知いたしました」
ショウゲツさんの強い口調もあって、僕はようやく自由の身。
だが、二人とも不満ありありのご様子で、返事の〝た〟がやけに強かった。
しかし、ひとまず手形も返してもらえた。
まああれか。この国にいる間くらい、賢人扱いされても別にいいのか。
むきになって否定するのも面倒……はっ!
まさか、ここまでが彩律さんの狙いか?
いや、よそう。
あんまり考え込んでもドツボにはまる。
「何分、こちらも色々と大変な時期でして。過剰な対応になった事、許されよ」
「こちらこそ。いろは様はゆっくりお休みになっていますので、ご心配なく」
「では明日にも……ふむ、いや」
よし、ばっちり問題解決。
こうだよな。
大きくなるまで問題を抱え込んでも。なんにも良い事なんてないんだよ。
若いうちはその限度ってものがよく分かってないんですよ。
これぞ成長。
「ええ。明朝、あの子にも誤解があった事を」
「ライドウ殿」
僕が話を締めようとしたところ、ショウゲツさんが待ったをかけた。
「はい?」
なんぞ?
「ちと、お話がございます。このような時間に出てこられた事、元々我々に時間を割くおつもりであったという解釈で、問題はございませんな?」
「それは、もちろんですが。あの、話は先ほどまとまったかと……」
「実は、いろは様が今ミズハにおられるのには、内々の事情がありましてな」
『ショウゲツ様!?』
ショウゲツさんが語り出し、他の四人が驚きの表情で見つめる。
巴の呪いの言葉を思い出す。
亀裂を断崖とかなんとか……いや、思い出さない。
思い出したくない。
成長、成長が……!
歯噛みする僕をよそに、ショウゲツさんが話を続ける。
「なに、ライドウ殿といろは様も全くの無関係というわけではございません。イズモ様は貴方の教え子、そうですな?」
『!?』
「……」
エー。
イズモって……今度はそんな薄いとこを引くのー?
これで迷宮に潜るのがチャラになるってんならともかく!
一方的に厄介事が増えるばかりだろうが!!
わ、笑えない。
イズモなんて、これまで特に問題もなかった子でコレだもんな。
無意識のうちに、僕の生徒達の顔が次々と浮かんでくる。
このままだとジン……は今のところ思い当たる事ないし、アベリアは……まあ、識絡みなら僕の出番はないか。
ミスラは神殿関連? 一番嫌なとこだな。
ダエナだと……夫婦問題? よそでお願いします。
シフとユーノのレンブラント姉妹の問題は、もう済んだよな。
かといって、ジンとアベリアも、まだ何か爆弾を抱えている可能性もなきにしもあらずか。
それにしても、イズモ=イクサベね……。
そっか、いろはちゃんが、あいつの許婚か。
歳の差とか、本当に何も考えていないんだな。
爺さん同士の茶飲み話で、お互いの家で次に生まれた子を結婚させようとか決めていそうな……。
ええ、話くらいは聞きますけど。
僕が関わるんです。
望んでいるような円満解決になるとは……限らないんだからな!!
2
僕がローレル連邦について知っている事は、実はあまりない。
大陸の中にありながら、山脈によって周囲とやや隔離されている事や、日本人を賢人と呼んで慕っている事、それによって独自の文化を持っている国という事。
成り立ちなんかも大雑把に知っているだけ。
あとは……漢字を賢人文字なんて名前で実際に使っている辺り、日本人の影響はそれなりに大きいんだろうと思う。
でもここは女神の世界。
僕がよく知っていると言えるローレルの人は、生徒のイズモとお偉いさんの彩律さんだけど、二人とも日本人の顔立ちとは大分違う。
大きな括りなら白人や黒人よりは黄色人種寄りの容姿に見えるけど、中東、東南アジア、それに日本人、結構色んな要素が混じった雰囲気もあるような……。
より日本人要素が強いという意味では、彩律さんも含め、凄く僕好みの外見をした人が多くて、自ずと……ついつい二度見してしまう回数も増えてる。
こっちの世界に慣れて、美形は腐るほど見てきたのに、最果ての絶野やツィーゲに到着した頃に戻ったみたいだった。
「――といった事情もありまして、我々にもピリピリした空気が流れていた時だったのです」
ただ、さ。
国として日本をどの程度参考にしているかなんて、外側からじゃ詳しくは分からない。
この国――ローレル連邦は、巴が好きな江戸時代の日本と、近代現代の日本の間で妙な融合を果たしている状況にあった。
江戸後期とも言えず、かといって初期中期ほど殺伐ともせず、明治初期のような外の文化を大量に受け入れ始めて進む方向を決めかねている……そんな雰囲気も感じた。
間違いなく言えるのは、かつてなく日本の要素満載な国だという事。
この間、リミアの勇者である響先輩もローレルに来ていたようだし、多分彼女も懐かしく感じたところ、あったんじゃないかな。
ここミズハも、街並みや食べ物など、外国の人が一度も日本を訪れずに聞きかじった日本文化のテーマパークを造ってみた、的なところがある。
僕はそんなミズハを面白いと思っている。
これから行くカンナオイも、道中の他の街も楽しみだったりする。
なのに、目の前のご老人がそれはもう気の萎える話をしてくださっているというわけだ。
「残念、時間切れじゃ。三十分ほど遅かったのう。さて、三秒やる。誰に剥かれたいか選ぶがいい」
こ、酷な。
いろはちゃんは今、巴に両手で脇の下を持ち上げられている。
逃げようにも不可能だ。
「さーん」
「ふえ!? ええ、えっと」
「にー」
「あ、ああ、ええ……」
「いーち」
「分か、分かりました。じゃ、じゃあ!!」
恐ろしく理不尽な選択を迫られ、いろはちゃんはついに……。
「ほっほう」
良い笑みを浮かべる巴。
いろはちゃんが誰を選んだのかは、まあ、わざわざ口にする事じゃない。
無意味な衣服の知識が増えたからって……別にどうだっていい。
そう。
世の中、忘れた方が良い事もあるよね。
ただ一つ。
今夜の出来事については絶対の箝口令を敷こうと、心に決めた。
◇◆◇◆◇
結論。
子供が一人交ざれば、お風呂から色気なんて消し飛ぶ。
混浴とかより遥かに破壊力がある要素だったな、子供。
おかげさまで僕ものぼせたりせず、無事に入浴を終える事ができた。
……ただ若干とはいえ冷静になると、余裕が出てきて色んなものが見えてくるもので。
やっぱり浮いてた。
うん、二人とも凄い。何がとは言わないけど。
別にそれはね、今特に思い出して大したものだと思っただけで、深夜と呼ぶべきこの時間まで眠れずに横になっていた理由じゃない。
普段なら寝ている時間なのに、未だに目を開けている理由は二つ。大本は一つ。
巴から教えてもらったいろはちゃんの素性について。
そして、彼女の護衛へのフォローについて。
風呂上りにいろはちゃんが寝付いた後、ニコニコしながら教えてくれた巴の顔を思い出す。
「あの娘はカンナオイを治める武家オサカベ家の姫です」
「だろうね」
予想はついていたけど、そのまま正解だった。
いろはちゃんと揉めていた爺やっぽい老齢の男性の名前は、ショウゲツさんだっけ。
彼もカンナオイがどうのと言っていたし……。
そんな名家の人達とトラブルになるのは、正直嬉しくない。
ミズハに入っていきなりアウトな事をしたかと、冷や汗ものだった。
「ただし、特に力のある姫君ではありませんな。オサカベ家は大きな家で、姫も若も大量におるようですから」
でもそこはなんとかセーフ。
代わりが沢山いて特に力もないなら、この後のやり方次第で十分仕切り直しができる。
そしてそのためには、姫であるいろはちゃんの機嫌を決定的に損ねない程度に保ちつつ、護衛の人達とちゃんと話をしておかないと。
前者の条件は巴に懐いているようだから、なんとでもなりそう。
だから、後はショウゲツさん達と話をすればいい。
僕達の身元の保証には、彩律さんの手形が使える。
彩律さんの華原家とオサカベ家の関係はともかく、効力は見込めると思う。
僕としては、話をする切っ掛けになればそれでいい。
それに、いろはちゃん自体は知らないだろうけど、彩律さんの事だから、クズノハ商会だのライドウだのって名前が有力な家の耳に入るように広めているはずだ。
あの人の性格からして、そのくらいはやらないと僕を国内に入れないと思うんだよ。
つまり、勝機は十分。
巴には悪いんだけど、流石に爆弾を抱えたまま黄門様をやるなんて、僕にはちょっと難しい。
さっさと行って、話を済ませてきますか。
僕は既に寝付いているみんなを起こさないように静かに支度を済ませる。
「……やはり、行かれますか」
巴が静かに声をかけてきた。
「起きていたのか」
「周囲を連中が窺っております故。もしここに襲撃など仕掛けてくれるのなら、遊んでやろうかと」
「近くにいるか」
「あれらの姫ですからな。必死で捜索したのでしょうよ。む」
「え」
巴が何かに気付いて視線を横に滑らせる。
げ、襲撃?
一歩遅かったか。
「若、あれを」
「……いろはちゃんの刀か。子供に持たせる守り刀にしては魔力まで帯びた業物だったけど……」
見ると、いろはちゃんの刀が光っていた。
とはいっても、鞘から漏れる微かなもので、その色合いは蛍を思わせる優しい光だ。
あの子が振り回していた時にも光っていたようだけど、なんのためかね。
「特に悪さをしているわけでもなさそうですが、抜いてみますか」
「澪といろはちゃんを起こすなよ」
「心得ておりますよ」
刀を手に取った巴が、苦もなくそれを抜く。
所持する者以外は抜けないという仕掛けはなしか。
ふぅん。
淡い光が刃の側に所々強弱をつけながら纏わりついている。
刀自体が光っている感じでもないな。
小さな光の粒が沢山重なっているような……っ!?
「なんでしょうな、これは。放たれる魔力も微弱すぎてどうにも……実戦向きの刀ではないが……芸術品として出来は良い」
「巴、その光の強い場所だけど」
「はい」
「刃こぼれとかしてないか」
「刃こぼれ? おお、言われてみれば、小さな刃こぼれがありますな」
……まさか『蛍丸』?
いやいやいやいや、違うと思う。
蛍丸は戦で刃こぼれした際にひとりでに直ったという伝説を持つ刀だ。その由来を知っていた誰かが、それらしいレプリカを作らせたんだ。
そうに違いない。
大体、アレがこっちの世界にあるわけもないし、子供の守り刀――短刀サイズなはずもない。
僕の勘違いだ。
「そっか。まあ……しまっとけ」
「はぁ、御意」
巴は僕の様子に首を傾げながらもうなずいた。
「ともかくだ。行ってくる」
「儂としては、ベレン達が合流するくらいまではこのまま、と行きたかったのですが……」
エルダードワーフのベレンは、巴の命により、僕達とは別ルートからローレルに入っている。
「ダメ。行ってきます」
「若がそう仰るのでしたら、致し方ありません。是非、全力で亀裂を断崖になさって――」
「この後に何があるかも分からないんだぞ? 無駄にトラブルは増やさなくていいんだって」
「でありますか。御意。思うていたよりもこのローレルは楽しめそうな国ですし、ここは譲りましょう」
「はいはい」
実際、迷宮が待っている。
それにフツ。
闇を司る影竜だという。
学園都市ロッツガルドじゃ名前も聞かなかった竜だってのに、ローレルだと結構知っている人が多いんだよな。
どういった存在か、まるで分からない。
あのルトの口からも名前を聞いた事がない。
かといって、あいつのところに聞きに戻るのも手間だ。
講義で学園を訪れる日でも十分に間に合う。
今は、どちらにしてもショウゲツさんが一番だ。
巴の話だと、この宿を見張っているようだし、全員無事なはず。
僕が一人で宿から出れば接触してくるのは確実だ。
この際、彼らに襲われるのは仕方ない。
いつもの事だ。
◇◆◇◆◇
たとえばだ。
釣りのゲームに『深澄真』ってルアーがあったとする。
ばくばく食いつかれて、すぐにボロボロにされるね。
引きが強いから、きっとレアリティは一番上だね。
あるいはエンカウント制のRPGに『深澄真』ってアクセサリがあったとする。
その効果は、面倒だったり厄介だったりする敵とのエンカウント率に限って爆上げだね。
レアリティはともかく……ストレス源としてゴミ扱いだろうな。
つまり、だ。
宿を出た僕は、ショウゲツさん達に襲ってもらうまでに実に二桁を超える襲撃を受けた。
大きな街でも――いや、それなり以上の街だからこそ、深夜の一人歩きには危険が伴うって事でもある。
その上、僕はミズハで一番の宿からふらふら出てきているわけで。
はははは、自業自得でもあるのはよく分かっている。
それでも!
もっと早く襲ってこいよ、お前ら!
ほんの少しそう思ったのは、ご愛嬌だと思う。
「どこの家の者か!」
いろはちゃんの護衛らしき人達が僕に尋ねた。
「深澄家の者です」
試しに言ってみた。
もしこの国に同じ家名の人がいたら、大事な場面で下手に名乗って面倒な事になってもアレだし。
仮に同じ家名があると不都合だと彩律さんに訴えたとして、流石に彼女のパワーでも、一つの家をそんな理由で改名させるのは無理だろう。
「ミスミ?」
「……いや、聞いた事がない」
「儂も知らぬな」
護衛の女性二人とお爺さんが首を傾げ、その他のお付きの女中風の二人も首を横に振る。
この様子なら、普通に名乗っても問題ないな。
使われていなさそうな家屋の一つに引きずり込まれた僕は、椅子に縛られて広めの部屋の中央に置かれた。
そこは窓のない部屋だった。
「何故いろは様を攫った?」
僕への尋問はアカシさんという護衛の女性が担当するようだった。
ユヅキさんという女性もすぐ傍に控えていて、ショウゲツさんや女中さん達は彼女達のやや後方に控えていた。
「それは……連れの一人が、皆さんが子供を誘拐しようとしている悪者だと勘違いしまして……」
僕が答えると、ショウゲツさんが口を挟んできた。
「あれは事情があっての事で、そちらが思い違いをしていると、あの場で儂は話したつもりじゃぞ?」
「ええ。そのようですね。あ、皆さん火傷は大丈夫でした?」
「っ! お前に案じてもらう事では――」
「……大丈夫よ。治療は済んでいるわ」
アカシさんはお怒りのようだけど、ユヅキさんが表面上は静かに答えてくれた。
「それは良かった。もし痕になっていたら治療を、と思っていましたから」
女性が多いから、密かに気になっていたんだ。
「……で、お主。いろは様は返してもらえるんじゃろうな」
ショウゲツさんが静かに聞いてきた。
「もちろん、我々にあのお姫様を傷つけるつもりなどありませんよ」
『!?』
息を呑む三人に構わず、僕は続ける。
「――で、こう言っちゃうと最初の質問に近い〝お前は何者だ〟に戻ると思うんで……あ、アカシさん。僕の上着の左の内ポケットを見てもらえます?」
「っ、先ほど見て何もなかった場所をもう一度探れと言うのか、お前は!?」
アカシさんとユヅキさんには縛られる前に散々体中をまさぐられた。
コートは僕じゃないとボタンも留められない特注品なんで、不便な思いをさせた。
「いや、僕も商人をやっていますので、一応見られたくない物も多少あります。さっきは二人がかりで全身まさぐられたんで、流石に……ねえ」
「誰が好き好んでまさぐるか!!」
「……アカシ、交代。左側の内ポケットね……」
苛立つアカシさんに代わってポケットに手を突っ込んだユヅキさんが、手元を魔術で光らせて手形を詳しく見る。
「これ、手形?」
「はい、身元保証になるかと」
「ちょっと、これ……」
ユヅキさんは理知的で話が分かる。
一方、アカシさんは直情的なので、敵視されている状態だと会話が成立し難い。
普通この状況だと、ユヅキさんの方が良いなと思うところだろうが……僕的にはアカシさんの方が好印象だ。
裏表がなさそうだなと、その一点だけでそう思う。
割と僕も重症かもしれない。
「ショウゲツ様」
ユヅキさんがショウゲツさんに手形を渡す。
「うむ。なに? 華原の紋!? それにこの形状……最大限の便宜じゃと……」
やっぱり効果は抜群だ。
ローレルの有力者が外からの客に持たせた手形なわけだから、外交的な効果も期待できる。
領主とか貴族とか武家ってのは、こういうのに弱い。
弱いというか、ちゃんと対応する。
「裏の名は……彩律本人っ。まさか……」
「ショウゲツ様?」
「アカシ、ユヅキ。縄を解きなさい」
ショウゲツさんに命じられ、ユヅキさんとアカシさんが抗議の声を上げる。
「な、なんでですか!!」
「その手形だけで縄を解く事はできません。こちらはいろは様を連れ去られております!」
「その方はライドウ殿。……賢人であらせられる」
『――!?』
この場の全員に緊張が走った。
賢人だと断言された?
そういえば、ミズハに入る時の兵士も、手形を見た瞬間に態度が変わった。
僕の見た目だけでそう確信されるだろうか。
しかし、少なくとも僕はさっきまで、目の前にいるアカシさんとユヅキさんにはそこそこ手荒に扱われていた。
つまり容姿が酷い――もとい、ある程度特徴的なだけでは、賢人とは特定できないはずだよな。
あの兵士とショウゲツさんの共通点。
……。
手形を見た。
だけどそれはユヅキさんもか。
いや、見たってだけなら、僕も巴も澪もだ。僕ら三人とも、その手形から僕が賢人だって情報は読み取れなかった。
って事は。
「手形に、賢人と推察されるか、そう特定されている旨の情報が密かに刻まれてる?」
手形を確認するような役職の人にしか分からない部分に。
それが一番ありそうだな。
「ご推察の通り。それに、貴殿がクズノハ商会のライドウ殿とは。確かに、あの女狐の名だけならどうしたかは分からんが。これはどうにも互いに不幸な勘違いをした結果と見るほかない」
ショウゲツさんは大きく息を吐いて、僕に向かって笑みを作る。
穏やかな笑みだ。
最初の和解は成った、かな。
それにしても、くそ、あの手形。何気に僕を賢人扱いするようにできているんじゃないか。
これも傭兵団に向けた彩律さんの仕込み?
ただの亜人っぽい人になるよりは賢人と見られた方が大事に扱ってもらえるわけで、僕にそこまでデメリットがないのがまた嫌らしい。
「オレは納得できてませんけど!」
「私もまだ。賢人様が刺客に仕立てられるほど、いろは様が世間の注目を集めているわけではないのは承知しておりますけれど……」
アカシさんとユヅキさんは未だ警戒の雰囲気が濃い。
女中さんもどちらかというとダメそうだ。
ショウゲツさんだけが色々分かっていて、僕に手を出すのをやめた雰囲気。
「形式のみのものに過ぎんが、儂にも一応通達は届いておった。近いうちにヤソカツイの大迷宮に潜る商会が行くから、その一行が華原家の手形を持っていたら協力するようにとな」
「まさにそれが僕らです」
「でしょうな。アカシ、ユヅキ!」
「分かりました!」
「……承知いたしました」
ショウゲツさんの強い口調もあって、僕はようやく自由の身。
だが、二人とも不満ありありのご様子で、返事の〝た〟がやけに強かった。
しかし、ひとまず手形も返してもらえた。
まああれか。この国にいる間くらい、賢人扱いされても別にいいのか。
むきになって否定するのも面倒……はっ!
まさか、ここまでが彩律さんの狙いか?
いや、よそう。
あんまり考え込んでもドツボにはまる。
「何分、こちらも色々と大変な時期でして。過剰な対応になった事、許されよ」
「こちらこそ。いろは様はゆっくりお休みになっていますので、ご心配なく」
「では明日にも……ふむ、いや」
よし、ばっちり問題解決。
こうだよな。
大きくなるまで問題を抱え込んでも。なんにも良い事なんてないんだよ。
若いうちはその限度ってものがよく分かってないんですよ。
これぞ成長。
「ええ。明朝、あの子にも誤解があった事を」
「ライドウ殿」
僕が話を締めようとしたところ、ショウゲツさんが待ったをかけた。
「はい?」
なんぞ?
「ちと、お話がございます。このような時間に出てこられた事、元々我々に時間を割くおつもりであったという解釈で、問題はございませんな?」
「それは、もちろんですが。あの、話は先ほどまとまったかと……」
「実は、いろは様が今ミズハにおられるのには、内々の事情がありましてな」
『ショウゲツ様!?』
ショウゲツさんが語り出し、他の四人が驚きの表情で見つめる。
巴の呪いの言葉を思い出す。
亀裂を断崖とかなんとか……いや、思い出さない。
思い出したくない。
成長、成長が……!
歯噛みする僕をよそに、ショウゲツさんが話を続ける。
「なに、ライドウ殿といろは様も全くの無関係というわけではございません。イズモ様は貴方の教え子、そうですな?」
『!?』
「……」
エー。
イズモって……今度はそんな薄いとこを引くのー?
これで迷宮に潜るのがチャラになるってんならともかく!
一方的に厄介事が増えるばかりだろうが!!
わ、笑えない。
イズモなんて、これまで特に問題もなかった子でコレだもんな。
無意識のうちに、僕の生徒達の顔が次々と浮かんでくる。
このままだとジン……は今のところ思い当たる事ないし、アベリアは……まあ、識絡みなら僕の出番はないか。
ミスラは神殿関連? 一番嫌なとこだな。
ダエナだと……夫婦問題? よそでお願いします。
シフとユーノのレンブラント姉妹の問題は、もう済んだよな。
かといって、ジンとアベリアも、まだ何か爆弾を抱えている可能性もなきにしもあらずか。
それにしても、イズモ=イクサベね……。
そっか、いろはちゃんが、あいつの許婚か。
歳の差とか、本当に何も考えていないんだな。
爺さん同士の茶飲み話で、お互いの家で次に生まれた子を結婚させようとか決めていそうな……。
ええ、話くらいは聞きますけど。
僕が関わるんです。
望んでいるような円満解決になるとは……限らないんだからな!!
2
僕がローレル連邦について知っている事は、実はあまりない。
大陸の中にありながら、山脈によって周囲とやや隔離されている事や、日本人を賢人と呼んで慕っている事、それによって独自の文化を持っている国という事。
成り立ちなんかも大雑把に知っているだけ。
あとは……漢字を賢人文字なんて名前で実際に使っている辺り、日本人の影響はそれなりに大きいんだろうと思う。
でもここは女神の世界。
僕がよく知っていると言えるローレルの人は、生徒のイズモとお偉いさんの彩律さんだけど、二人とも日本人の顔立ちとは大分違う。
大きな括りなら白人や黒人よりは黄色人種寄りの容姿に見えるけど、中東、東南アジア、それに日本人、結構色んな要素が混じった雰囲気もあるような……。
より日本人要素が強いという意味では、彩律さんも含め、凄く僕好みの外見をした人が多くて、自ずと……ついつい二度見してしまう回数も増えてる。
こっちの世界に慣れて、美形は腐るほど見てきたのに、最果ての絶野やツィーゲに到着した頃に戻ったみたいだった。
「――といった事情もありまして、我々にもピリピリした空気が流れていた時だったのです」
ただ、さ。
国として日本をどの程度参考にしているかなんて、外側からじゃ詳しくは分からない。
この国――ローレル連邦は、巴が好きな江戸時代の日本と、近代現代の日本の間で妙な融合を果たしている状況にあった。
江戸後期とも言えず、かといって初期中期ほど殺伐ともせず、明治初期のような外の文化を大量に受け入れ始めて進む方向を決めかねている……そんな雰囲気も感じた。
間違いなく言えるのは、かつてなく日本の要素満載な国だという事。
この間、リミアの勇者である響先輩もローレルに来ていたようだし、多分彼女も懐かしく感じたところ、あったんじゃないかな。
ここミズハも、街並みや食べ物など、外国の人が一度も日本を訪れずに聞きかじった日本文化のテーマパークを造ってみた、的なところがある。
僕はそんなミズハを面白いと思っている。
これから行くカンナオイも、道中の他の街も楽しみだったりする。
なのに、目の前のご老人がそれはもう気の萎える話をしてくださっているというわけだ。
1,007
あなたにおすすめの小説
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。