文字の大きさ
大
中
小
381 / 551
五章 ローレル迷宮編
不倶戴天の敵でした
出来るだけ手早く。
僕は智樹教の人達を処理してるつもりだ。
でも一個誤算があった。
僕は……どうやら……この人達にものっ凄く恨まれていたらしい。
智樹側から見れば好ましい人物じゃないってのはわかるよ? 自覚もある。
けどまさかここまで嫌われてるとは、ねえ……。
万人に好かれるなんて無茶は目指してさえいない僕でさえ少しへこむ。
結果としてすぐにジン達と合流してしまうつもりだった僕は、街中で次々湧きだしては襲い掛かってくるハイレベルな冒険者中心の猛者を相手にし続ける羽目になった。
これまでに何とか六十程を針で大人しくさせた。
「ち……」
視界の端に映ったモノについ舌打ちが漏れる。
僕が無力化した襲撃者を、憎悪のまま殺す人々が見えたからだ。
突然街を焼かれ、混乱のただ中に放り込まれ。
場合によっては身内や親しい人を奪われた。
住人の心に憎しみは生まれるのは当然だ。
ただ……殺す気なら僕がさっさとそうしてる。
理由があって一応生かしてあるって事、察してくれないかね。
無理か。
今の状況でさえ安全だと確信してる僕だから、たまたま力を持っているからこんな風に考えられるだけだ。
流石に住人の行動に文句を言う、余裕は、ちょっと今は無い。
魔力で書いた文字で警告するのが精いっぱいだ。
同時に三方から迫る武器をすり抜けて一人に針を突く。
ついでに街どころか仲間を巻き込んでも構わないとばかりに叩き込まれる魔術を相殺。
ほんっと、これ市街地での戦いだってのに全くそんな事を思わせない、ある意味で潔いまでの攻撃を仕掛けてくれるよ。
郊外ならもう少しこっちも色々やりようがあるんだけど、ねっ!?
突然、仲間の影から軽装の女の子がいきなり飛び出してきた。
盗賊系のスキル?
でも武器らしいものは……って、おいおいおい!
「火薬!? 火事だから火炎瓶的なのとかはあるかとは思ったけど、それもう爆弾でしょ!?」
一切迷いがないまっすぐな瞳で爆弾を体に巻いて縋る様に僕に迫ってくる少女。
これは針じゃ無理だ。
咄嗟に彼女に無詠唱で火属性無効化の術を施す。
本来はヴェールみたいなモノを作成して対応する属性を無効化するものだけど、今回は巻き付けている爆弾と彼女の間に滑り込ませてその身を包ませた。
あー、もう。
火力が読めん。
南無三ってやつか!
「ライドウ、死んで」
「却下!」
ようやく一言呟いた女の子を抱きしめる。
あ、魔力体大きくすりゃ良かったな。
こんな状況じゃなくて、もう少しこの子が大人だったら、抱擁を求められてそれに応えるっていうちょっとイケメンな状況になったのになあ。
若干丸めた体の内側で衝撃が生まれる。
音は大した事なかった。
さて、彼女は……よし無事!
じゃ失礼して針! OK!
ついでに硬直した手近の二人の首筋にも魔力で象った藍色の針をプレゼント。
「しかしキリがない。こうやって僕に群れてくれるのは他の被害を考えりゃ悪い事じゃないけど……」
街の破壊もお構いなしってのが困る。
次の波が既にこっちに来てる。
もうすっかり仲間内で僕の位置は把握されてるらしい。
かといって転移で場所を変えたりしたらここに集まった集団がどう動くかわからんし。
大人しく僕だけ追ってくれればいい。
でも、ならそもそも迷宮の入り口で僕を張っていれば良かった訳で。
街を襲い宿を襲った以上、この連中が僕だけを追う動きを見せるとは思えない。
このままもう少し数を減らして、ジン達といろはちゃんとこに行くのはそれからだな。
どうやら一緒にいるみたいだしさ。
(若様! 蔵の方は安全確保致しました。お味噌もお醤油も職人も無事でした)
(ありがとう澪)
澪からの念話。
調味料は被害なしみたいだ。
……まあ、さほど心配はしてなかったけど。
ついでに壊される可能性は十分だけど優先的にはやらないと思えたし、なにより澪が向かったからなあ。
例え宿を襲ってる連中のボスが死にもの狂いで味噌と醤油を滅ぼそうとしたところで無理だったんじゃないかと思ふ。
ボス、か。
明らかに毛色が違うのが一人だけいるのはわかってる。
千尋万来飯店に残って迎撃を引き受けたらしいライムとレヴィでも倒すのはどうかってレベルの御仁。
最も、足止めを第一に考えたライムとレヴィなら大分粘るのは間違いない。
アズさん達と冒険者の中間くらい、って感じなんだよな。
女性で、実は何となく正体もわかる。
出来れば外れて欲しいけど……無理だろう。
(では私も若様のお手伝いに――)
(……いや、ここはいいよ)
(え?)
(澪は刑部家といろはちゃんの名前を出してその区画の住民を街から少し離れた場所まで避難させてくれる?)
(で、でも。私もお傍に)
(巴もいるし大丈夫。ごめん、面倒かもしれないけど)
(いえ! いいえ! わかりました)
(うん。街の外からもこちらに向かってくる妙な集団がいる。気をつけて)
(はい、若様も)
こちらに来ようとする澪に理由を付けて離れるように伝える。
はぁ、悲しませたかな。
何か言いたげな様子だった。
でも出来る事なら今日は、あまり澪には戦って欲しくない。
六夜さんと澪の戦いについて聞いて、僕はそう思った。
ったく、僕は……本当に情けない。
ごめんな。
(あー、テステス。真君、通じてるかね、六夜だ)
(……ええ大丈夫ですよ六夜さん)
(実はカンナオイの外からも、帝国の勇者に賛同する輩がこの街を向かっているらしい)
六夜さんからもたらされた情報は既に僕が界で把握しているものだった。
(ええ、複数方向から合計で万を超えるか超えないかってとこですね。把握してます)
(っ! 流石だな。しかし複数で……万か。ふむ……)
(中を何とかしたらついでに対処しますから――)
(いや)
?
(ソレは私が対処しよう)
六夜さんが?
僕は彼の発言に内心驚く。
六夜さんは強い。
でも軍勢向きの力じゃないような気がする。
それに智樹教の場合、頭だけ潰しても駄目だ。
全員を殺すか無力化するかしないと。
(いえそれは)
(ははは、少し下では君達にやり過ぎたからな。ここは僅かばかりでも罪滅ぼしをさせてくれ。それよりもだ、ヴィヴィ達も避難誘導に尽力してはいるがどうにも賊どものやり口が過激過ぎる)
(……ええ)
たった今の自爆を見て僕も同意する。
あんなやり方を躊躇なく仕掛けてくる相手から住民を安全に避難させるというのは、不可能に近い気もする。
(そこで味方を増やしたい)
(味方ですか?)
(敵の敵は、というやつだな。コウゲツという男がいる。カンナオイに革命をもたらそうとしている点では賊どもと変わらんが、街を焼いてでも君やいろは姫を炙り出そうとする点への対処については協力ができる相手だ)
コウゲツ。
確かショウゲツさんの兄だか弟だか。まあ兄弟。
話を聞くに僕らがこの街に来た時からあまり歓迎していない感じの動き方をしていた人。
今の六夜さんの話ぶりだと、智樹教とも浅くない繋がりを持っているんだろう。
(街の見回りを担当する警ら隊や暴徒や外敵の鎮圧にあたる軍を統括しているのもコウゲツだ。街の混乱を治めようと現在必死に指揮を執っている)
(……同情は出来ない話ですが)
(うむ。この事件が片付いたら何らかの形で責任は取るだろう。根は律儀な男だからな。だが今は彼らにも手伝わせた方が上手くいく。何せ街の専門家でもあるからな)
確かに。
……そうだ。
なら彼らに僕が対処した相手の逮捕、保護をやってもらえばさっきみたいな住民の暴走は減らせるんじゃないか?
良いな。
これは良いよ。
(真君?)
(わかりました。では彼らに呼び掛けてみます)
(有難い。では後ほどな)
(御武運を)
(……武運か。まあ、見ていてくれ)
六夜さんからの念話が切れる。
どうやって大軍に対処するつもりなのか。
……ああ!
それを僕に見せる事も含めて、罪滅ぼしだと。
そういうつもりだとか?
「ま、ひとまずは街から出てる軍と警ら隊だな」
針が刺さって倒れてるのは襲撃者で、まだ死んでない事。
住民がパニックを起こして彼らを殺さないよう、逮捕を望む事。
そして迷宮からピクニックローズガーデンのメンバーも出て来ていて住民の避難誘導に当たっている事。
更に彼らにクズノハ商会も参加している事。
レベルにして三百を超えているだろう四人パーティの鋭い攻撃をやり過ごしながら文章を考える。
何で今こんな、荒野でも通用しそうなハイレベルなのが仕掛けてくるかな!
どうにかこうにかテンプレを作って界で把握している軍やその関係者らしい連中の近くに文字を届けた。
「ん?」
親玉が、動いた。
千尋万来飯店を覆うように展開されていたライムとレヴィの結界が破壊された。
馬鹿な、早い。
それにあそこには巴が向かった筈だ。
(巴!)
(若、ライムとレヴィならば生きております。儂は識に確認する事と少し気がかりがあり、ちと出遅れました。申し訳ありません)
(何があった?)
(劣勢気味ながら均衡を保った戦いを展開していたようなのですが、儂らの到着を知った事が悪い意味に働いたようで)
(……というと?)
僕らの到着が悪い意味に働く?
(二人ともこれで勝った、と僅かに気が緩んだのでしょうなあ。レヴィが脚を何本か飛ばされて暴走、ライムも意を決して勝負を仕掛けますががむしゃらに戦うレヴィをフォローしきれず結界に綻びが生じて……この様という訳で)
足が何本かって。
レヴィ、スキュラの体でガチンコしたのか。
あの姿だと蛸みたいなぶっとい触手の脚だもんな。
実は多脚型のメカの戦いみたいでもあり、ああなったレヴィの戦闘は見応えがある。
それでも負けたと。
やれやれだな。
ソフィアよりも強いヒューマンにはまだお目にかかった事はないけど、それほどではなくても世の中まだまだ強い人ってのはいるか。
(ま、レヴィは自他ともに認めるバトルジャンキーだし、生きてれば笑い飛ばすか)
(……いや、相当頭に血が上っとります。あのメス、殺す、食い殺すとうわ言を繰り返しておりますので)
(レヴィが? ……全く絵が浮かばん。とにかく、治療が必要なら亜空に戻してやって)
(そう致しましょう。ライムはともかく、レヴィは手足がありませんからな。まったく不甲斐ない)
……。
物凄い重傷じゃないか!
何をさらっと言うかな巴も!
ん、だから識と相談してたのか?
いやそれだと順番が違うか。
っと。
次は侍か。
巴より遅い居合じゃ不意打ちにもなりませんよっと。
左手で斬撃を掴んで刀を折り、踏み込んで貫手で胸に決着の針。
(で、識とは何の話?)
(学生がここにいる理由について、少し)
……ああ、なるほど。
確かにそれは僕も知りたい。
(識はなんて?)
(若には後程自分の口で御前で説明したいと。ただ……)
(ただ?)
(あれの説明は、儂には、一応納得できるものでした)
引っかかる言い方をする巴。
巴には、って。
つまり僕には納得などできない理由って事だろうか。
(ああ、いや。若なら許せぬ、という意味ではありませんぞ。澪です。あれは此度の識の行動に納得などせぬでしょう。そう思ったまでで。若が識から弁明を受けどう考えるかは、五分五分かと思っております)
澪?
僕は五分五分?
うん?
(まあ、わかった。識には後で話を聞くよ)
戦場でながら聞きして済ませられる事とは思えない。
なら今念話で問いただすのはお互い得るモノがない。
(で、あの女ですが脇目も振らずいろはの所を目指しております。幸い、手綱を握りきれず後手後手に回りながら街に出ている阿呆が間におります故、まだ幾らかの時間の余裕はありましょうな)
阿呆、ってのはコウゲツの事だろうな。
そして巴があの女という女性は、もう決まりだろう。
刑部ハルカ。
いろはちゃんの……母親だ。
やりきれんね。
そしてだ。
阿呆にも生きててもらう方が良いって話になったばかり。
仕方ない。
巴にはそれを頼むか。
(わかった。いろはちゃんのとこには僕が行く。悪いけど巴はその阿呆を保護してやってくれ)
(は? 保護、ですと?)
(ああ、ちょっと思うとこがあってさ。とりあえず今んとこ智樹教の人を殺さずに対処してるんだけど、街の人がね)
(……なるほど。コウゲツとその部下を使って倒した者どもを捕縛させると)
ほんの少しの沈黙の後、巴が返事が来た。
見事に僕が考えていた事と同じで恐れ入る。
(そんなとこ)
(御意。ではコウゲツの保護と説得を引き受けましょう。ところで若)
(ん?)
(殺さずに、と申されましたが)
(うん)
(それはもしやとは思いますが、しばらく前、澪とアルケーに披露されていたアレをお使いに、なったり?)
……巴、マジ凄い。
ピンポイントで僕が今回セレクトした術まで限定したよ。
ニュータ〇プか。
何故か声が少し途切れ途切れで震えているのは謎だけどさ。
(正解。恐ろしいな、巴。あれか? 竜母の力ってやつ?)
(い、いえ。正直気がかりというのはソレの事でしたが。力の上限が跳ね上がったのは自分でもわかるのですが、その、随分とやんちゃなもので。幻術一つとっても少し慣れねば大いにやり過ぎてしまう体たらくで……)
(じゃあやっぱりニ〇ータイプ――)
(そのような事はどうでもよいのです、若!!)
(うおお!?)
(つまり! 今! 若が! あの術を使っているという事は!!)
(あ、ああ)
(そこでは! 若による!)
な、何だ?
巴は何をそんなに興奮してるんだ?
僕はまた何かを見落としていたのか?
(必殺仕掛人、深澄梅安先生劇場が繰り広げられているって事じゃあ、ありませぬか!!)
……。
(っごふ!! す、すみません。昂り過ぎてつい鼻血と吐血が。あ、ああ……見に行きたい……! 儂もそこに行って小杉某として……ぐぬぬ、フツめ、こんな面倒なモノを押し売りしおってぇ……!!)
……。
よし、とりあえず目の前の三位一体ジェット何とか的に合体技っぽいのを放ってくるヒゲ男たちに専念しよう。
噴いてるんだか吐いてるんだかは気にしない事にする。
あとフツだってその日の内に派手に街中で戦闘するとは思ってないだろうし、責めるのは酷だと思います。
(じゃあ巴。後でね)
(ああ、若!? 後生ですから後でその場面を儂に見せて下され! お願いですぞーー!!)
仕掛人。
まったくそんなつもりは無かったのに。
巴に言われてからどうも恥ずかしくなってきたじゃないか。
「これで、百八っと! 煩悩ならこれで打ち止めなのに、智樹教はしつこいね!」
ジン達も移動しながらそこそこの数を打倒してる。
不殺で、ってのは無理な注文で殺してはいるけどレベルとしても実戦経験としても上手の殺気全開で迫ってくるだろう相手に対して中々のもんだ。
明らかに実力以上の力を引き出して戦っているのは確か。
こりゃ、脱落者は出来れば出させたくないな。
理由はどうあれ先生が傍にいて生徒を死なせたんじゃ顔向けできん。
接近戦で絡んでくる輩は一段落したし。
僕流の、と頭に付きはするけど。
この事件を終わらせに行くとしますか!
感想 3,666
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
「お姉様の刺繍は素人ね」と笑った義妹の婚礼衣装——裏地を見た女官十二人が、一斉に針を置いた
歩人(あゆと)「お姉様の刺繍は、素人の手習いに見えますわね」――王太子妃となる異母妹アデリーナは、王宮女官たちの前で姉ローゼを笑った。翌週の婚礼の朝。式典装の最終確認のため、十二人の女官が衣装の裏地を検めた瞬間――一人、また一人と、針を置いた。裏地に縫い込まれていたのは、女官たちが十二年間ずっと探していた一筆の銀糸。即位式の絹外套、二人の王女の婚礼ドレス、亡き王太后の弔意の喪服。王家儀礼衣装のすべての裏地に、同じ手で、同じ糸で、同じ銀の花が縫い込まれていた。「アデリーナ様、これは――あなた様の手では、ございません」縫い手は、ずっと一人だった。それを十二年間、誰の名でも呼べなかっただけのこと。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさんパーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。