リスティリア救世譚

ともざわ きよあき

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第三章 清廉なるティタニエラ

第三話 天に挑む試練②

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「さて……お前たちの要件について話す前に、だ。そろそろ聞かせてもらおうか、ベル。お前の本心をな」
「……もうちょっと聞いてたかったなぁ」
 ベルは、総司とリシアが話すルディラントの冒険譚や、クローディアの思い出話に一切口を挟まず、ただただ呆気に取られながら聞き役に徹していた。そうするしかなかったのだ。クローディアが異質なだけであって、総司とリシアの冒険譚は、ベルにとっては正しく「伝説の証明」であり、言葉が見つからなかったのである。
「カイオディウムの支配者を殺す……その言葉に偽りはないのか」
「もちろん。本気ですよ、大老さま」
「そのために、我らの持つ“古代魔法”が必要だと」
「はい」
「ではその理由を問うとしよう。何故、貴様にとっては主である枢機卿を殺さねばならぬ」
「カイオディウムの現体制を崩壊させるためにはそれしかない。枢機卿とその権威、意思がある限り、カイオディウムは変わらない」
「……ふむ。世迷言よな」
 クローディアはバッサリと切り捨てた。
「続けて問う。“古代魔法”を欲するのは何故か」
「枢機卿は代々、無敵の護りによってその命を保証されてる。でもエルフの“古代魔法”であれば、その護りを突破できるはずなんです」
「……無敵の護り」
「はい。枢機卿は――――大聖堂デミエル・ダリアにいる限り、決して傷つくことはない。彼女に対するあらゆる害は無効化される。その魔法を突破しない限り、枢機卿を殺すことは出来ない」
 ベルが口にした衝撃的な事実に、総司もリシアも目を丸くした。
「そんなからくりが……」
 フロル枢機卿が他国との交流を嫌い、窓口役を王族に押し付けているのもその特性が原因だったのだ。
 デミエル・ダリアにいる限り、枢機卿は無敵の護りによってその身の安全を保障される。つまりは、デミエル・ダリア内部においては無敵の存在であるということだ。
「……さて。それで終いか、ベル?」
「……言いたいことは以上です」
「お前は肝心なことを答えておらぬ。そしてそれは意図的なものだ」
 クローディアは立ち上がり、ベルをまっすぐに見た。
「何故枢機卿を殺さねばならぬのか……カイオディウムの現体制を変えねばならぬとするお前の考え、そこに至るお前の動機が見えぬ。お前は嘘をついている」
「……嘘じゃない。けど……」
「よい」
 ベルの言い訳を遮り、クローディアが笑った。
 その笑みに込められているのは、実に楽しげな感情だ。
「滞在を認めよう。そして、お前の働き次第で、お前の望みを叶えてやらぬこともない」
「クローディア様!」
 総司が声を上げた。それと同時に、それまで黙って聞いていた戦士レオローラも立ち上がり、クローディアに厳しい声で言った。
「殺しの手助けをするというのですか、大老! それもヒト同士のいさかいに首を突っ込むとは!」
 レオローラは火の出るような怒りの眼差しをクローディアに向けていたが、すぐに押し黙った。
 クローディアとレオローラが見つめ合う。総司は、エルフのみに伝達できる特殊な魔法で、クローディアが何事かをレオローラに伝えているのだと察した。
「ベル、お前に任を与えよう」
「……任? 仕事ってこと?」
「そうだ。ソウシとリシアは、これよりティタニエラの秘宝を手に入れるため、試練を乗り越えることとなる。その補佐をせよ。無事それが達成された暁には、お前の望みを聞き入れる」
「クローディア様、本気ですか」
 リシアもまた憤慨し、立ち上がってクローディアに抗議した。しかしクローディアは手を振り、魔法によってリシアを強引に座らせると、リシアの抗議を無視して話を続けた。
「この国の“オリジン”は、千年前より我らエルフの元を離れておる。お前たちの目的はオリジンだ。手に入れなければなるまいな?」
「はい。お許しがいただけるのなら、取ってきます」
「無論取ってきてもらうことになるが、並大抵ではないぞ。お前たちは天に挑むことになるのだから」
「……天に……?」
 クローディアは不敵に笑った。
「ティタニエラの秘宝“レヴァンディオール”を護るのは、最も強靭なる生命にして、女神の意思が下界にて具現化したともいわれる最強の一角」
 リシアがかっと目を見開いて、まさか、とつぶやく。

「天空の覇者 “ジャンジットテリオス”。もしかすると、最後の敵より手強いかもしれんな」
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