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何も言わないのがこわい。
アンヌさんたちが優しすぎて甘え過ぎていたかな。
多分ジルはもっと偉いひとだもんな……心の中でごめんなさいと謝っておく。
あ、怒っちゃったんなら今日は泊まらず帰っちゃうかな。
モーリスさん帰るって言ってたし、そしたら初めてここでひとりになってしまう。
どうしよどうしよ、ごますったらばれるよね、自分のやらかしは素直に受け入れるしかないのか。
「ユキ、これ」
「?」
顔を上げると、なんだろう、大きなマスカットみたいなものを持ってジルが立っていた。
……めちゃくちゃ甘いにおいがする。
「お土産?」
「そう、視察に行ったところの名物なんだ」
「へえ……」
どうやら怒ってはない……らしい、多分。
ベッドに腰掛けると、一粒もぎ取ったものをほら、と口元に持ってこられた。
食べろってことか。
以前食事を避けていたから心配だったのかな、今となってはもうおれはアンヌさんの美味しいご飯もりもり食べてるんだが……夕食だってしっかり食べた。果物はまた別だけどさ。
「美味しそうだけどこれ、おっきくない?切った方が良さそう」
「?ああ、ユキの口は小さいからなあ」
「そんなことは」
なんか小さいと言われるとむきになってしまう。
普通にジルたちが体格いいだけで、おれが特別色々小さい訳じゃ……そりゃあ平均よりはまあ背は低いですけど、そんな、口とかそこまでじゃあないと……思うんだけど。
仕方なしにぱかっと口をあけると、甘いものが転がり込んできた。いややっぱでかいって。
「んん……」
こういう水分の多いものだと難しい。
口の中いっぱいだと噛んだ時に汁が出る。口周りを汚すことのないよう、奥歯で少しずつ噛んでいく。
もごもご食べてる様は滑稽だと思うけど、それこそ子供みたいにべったべたにするよりましだと思って。
「ん、ほいふい!」
「美味しいか」
こくこく頷いてみせる。
こんな甘い果物初めて食べた。でも砂糖菓子のように甘ったるい訳ではなくて、幾つでも食べられそう。
このマスカットみたいなやつが特別なのかな、他の果物もこんなに甘いのかな。
もっと食べたい。
じっとジルの手元を見てると、笑ったような声がして、もう一粒差し出された。
やったあ、とまた口を開く。
これ一粒幾らくらいするんだろ、絶対高い、だってめちゃくちゃ美味しいもん。
「んむ」
「ふふ」
「んー……」
ただやっぱり大きい。一粒丸ごとは結構苦しい。せめて半分とかにカットした方がいいんじゃないかな。
こんな美味しいのに頑張って食べなきゃいけないなんて勿体ない。
「ゆっくり食べていいよ」
「んう……ん、ゆっくり食べてるよ」
「思ってた以上に口が小さいな」
「どうせ子供みたいですよ」
悪態を吐きながらも我慢が出来なくて口を開くと、またもう一粒運ばれる。
これ大丈夫?依存性とかない?ずっと食べてたい。
「んっ」
「あ」
「わわっ」
今度は丸ごとではなく、一口噛み付いてみたら、当然というかなんというか、ぶしゃっと汁が溢れてジルの指を伝い、腕まで垂れてしまった。
慌てて指を舐めてしまって、それからおれは何をしてるんだ?と固まってしまう。
垂れたアイスを舐めてしまうことはまあある。ただそれは自分の腕だからだ。
差し出されてるからとはいえ、自分が噛み付いたせいとはいえ、他人の指や腕は舐めるものではありません。
「ごっ……ごめんなさい!」
「あ、いや」
「汚れちゃうと思って……や、逆に汚しちゃって……!」
慌てて袖を伸ばしてごしごしとジルの腕と指を拭う。
幾ら美味しいからといっても夢中になりすぎだ、馬鹿め。
「うわ、わ、ごめんなさい」
「気にしなくていい」
「えー、でもやでしょ、その、な、舐められたりしたら」
「食べさせたくて出してるのは俺だからな」
「う、でもさ」
「一生懸命食べてるのが愛らしかったから見てたかったんだ」
……愛らしい。
初めて言われた言葉で、フリーズしてしまった。
それこそ子供とか動物とか天使のような子が言われる言葉で、おれに向けられる日が来るとは思ってもなくて、モーリスさんたちが言う『かわいい』よりも、なんかずっと恥ずかしくて、一気に耳まで熱くなったのを感じた。
「ユキは舌も小さいんだな」
「ウワアアアァ言うなー!」
やめろやめろやめろそういうのおれ我慢出来ないタイプー!
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい、甘い言葉なんてそんなのベッドの上だけにしてくれ、いや今もベッドの上なんですけど意味が違う!
「やだもう異世界のイケメンすぐやべーこと言う……」
「思ったことしか言ってないが」
「うううう」
「ユキは何をしてもかわいいな」
「うああああやめろお」
もうわざとだろ、わざとおれを恥ずかしがらせてるだろってくらい甘ったるいトーンで言ってくる。
その顔で言われるとおふざけにならないんだよ、口説かれてるみたいになるからやめてほしい。
「ほら、もう食べないの?」
「自分で食べるう……」
「俺が食べさせたい」
「……何でそんな頑固なの」
「食べさせてる時のユキがかわいくて」
「ううう」
楽しそうにするんじゃない。
「やだあ……」
「これ食べさせるの癖になっちゃいそうだな、次もなにか用意しよう」
笑顔がこわい。
それ餌付けっていうんですよ。
アンヌさんたちが優しすぎて甘え過ぎていたかな。
多分ジルはもっと偉いひとだもんな……心の中でごめんなさいと謝っておく。
あ、怒っちゃったんなら今日は泊まらず帰っちゃうかな。
モーリスさん帰るって言ってたし、そしたら初めてここでひとりになってしまう。
どうしよどうしよ、ごますったらばれるよね、自分のやらかしは素直に受け入れるしかないのか。
「ユキ、これ」
「?」
顔を上げると、なんだろう、大きなマスカットみたいなものを持ってジルが立っていた。
……めちゃくちゃ甘いにおいがする。
「お土産?」
「そう、視察に行ったところの名物なんだ」
「へえ……」
どうやら怒ってはない……らしい、多分。
ベッドに腰掛けると、一粒もぎ取ったものをほら、と口元に持ってこられた。
食べろってことか。
以前食事を避けていたから心配だったのかな、今となってはもうおれはアンヌさんの美味しいご飯もりもり食べてるんだが……夕食だってしっかり食べた。果物はまた別だけどさ。
「美味しそうだけどこれ、おっきくない?切った方が良さそう」
「?ああ、ユキの口は小さいからなあ」
「そんなことは」
なんか小さいと言われるとむきになってしまう。
普通にジルたちが体格いいだけで、おれが特別色々小さい訳じゃ……そりゃあ平均よりはまあ背は低いですけど、そんな、口とかそこまでじゃあないと……思うんだけど。
仕方なしにぱかっと口をあけると、甘いものが転がり込んできた。いややっぱでかいって。
「んん……」
こういう水分の多いものだと難しい。
口の中いっぱいだと噛んだ時に汁が出る。口周りを汚すことのないよう、奥歯で少しずつ噛んでいく。
もごもご食べてる様は滑稽だと思うけど、それこそ子供みたいにべったべたにするよりましだと思って。
「ん、ほいふい!」
「美味しいか」
こくこく頷いてみせる。
こんな甘い果物初めて食べた。でも砂糖菓子のように甘ったるい訳ではなくて、幾つでも食べられそう。
このマスカットみたいなやつが特別なのかな、他の果物もこんなに甘いのかな。
もっと食べたい。
じっとジルの手元を見てると、笑ったような声がして、もう一粒差し出された。
やったあ、とまた口を開く。
これ一粒幾らくらいするんだろ、絶対高い、だってめちゃくちゃ美味しいもん。
「んむ」
「ふふ」
「んー……」
ただやっぱり大きい。一粒丸ごとは結構苦しい。せめて半分とかにカットした方がいいんじゃないかな。
こんな美味しいのに頑張って食べなきゃいけないなんて勿体ない。
「ゆっくり食べていいよ」
「んう……ん、ゆっくり食べてるよ」
「思ってた以上に口が小さいな」
「どうせ子供みたいですよ」
悪態を吐きながらも我慢が出来なくて口を開くと、またもう一粒運ばれる。
これ大丈夫?依存性とかない?ずっと食べてたい。
「んっ」
「あ」
「わわっ」
今度は丸ごとではなく、一口噛み付いてみたら、当然というかなんというか、ぶしゃっと汁が溢れてジルの指を伝い、腕まで垂れてしまった。
慌てて指を舐めてしまって、それからおれは何をしてるんだ?と固まってしまう。
垂れたアイスを舐めてしまうことはまあある。ただそれは自分の腕だからだ。
差し出されてるからとはいえ、自分が噛み付いたせいとはいえ、他人の指や腕は舐めるものではありません。
「ごっ……ごめんなさい!」
「あ、いや」
「汚れちゃうと思って……や、逆に汚しちゃって……!」
慌てて袖を伸ばしてごしごしとジルの腕と指を拭う。
幾ら美味しいからといっても夢中になりすぎだ、馬鹿め。
「うわ、わ、ごめんなさい」
「気にしなくていい」
「えー、でもやでしょ、その、な、舐められたりしたら」
「食べさせたくて出してるのは俺だからな」
「う、でもさ」
「一生懸命食べてるのが愛らしかったから見てたかったんだ」
……愛らしい。
初めて言われた言葉で、フリーズしてしまった。
それこそ子供とか動物とか天使のような子が言われる言葉で、おれに向けられる日が来るとは思ってもなくて、モーリスさんたちが言う『かわいい』よりも、なんかずっと恥ずかしくて、一気に耳まで熱くなったのを感じた。
「ユキは舌も小さいんだな」
「ウワアアアァ言うなー!」
やめろやめろやめろそういうのおれ我慢出来ないタイプー!
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい、甘い言葉なんてそんなのベッドの上だけにしてくれ、いや今もベッドの上なんですけど意味が違う!
「やだもう異世界のイケメンすぐやべーこと言う……」
「思ったことしか言ってないが」
「うううう」
「ユキは何をしてもかわいいな」
「うああああやめろお」
もうわざとだろ、わざとおれを恥ずかしがらせてるだろってくらい甘ったるいトーンで言ってくる。
その顔で言われるとおふざけにならないんだよ、口説かれてるみたいになるからやめてほしい。
「ほら、もう食べないの?」
「自分で食べるう……」
「俺が食べさせたい」
「……何でそんな頑固なの」
「食べさせてる時のユキがかわいくて」
「ううう」
楽しそうにするんじゃない。
「やだあ……」
「これ食べさせるの癖になっちゃいそうだな、次もなにか用意しよう」
笑顔がこわい。
それ餌付けっていうんですよ。
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