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結局、ジルから奪うようにとって、自分の腕をべったべたにしながら完食してやった。
美味い。が、どう考えても食べ過ぎた。
水分でお腹がたぷたぷだ。
「はは、全部食べた」
「美味しかった、ありがと」
「気に入った?」
「……うん」
「また用意するよ」
「……うん、てかあれは?」
「え?」
おれの腕を綺麗に拭いながら笑うジルに、まだ床にでんと置かれた箱達を逆の指でさす。
まさか全部食べ物ではないよな?
「ああ、土産だよ」
「土産」
「ユキに」
「えっ全部!?」
「ここにあるのはね。わざわざユキ以外へのものをここに運ぶ必要ないだろう」
「多過ぎるでしょ……」
箱の前まで行き、これはユキの着替え、と言い出す。
……確かに必要なものだけど。
これも着替えあれも着替え、靴、部屋の小物、アクセサリー、焼き菓子、綺麗な筆記用具、食器……
「待って待ってお土産のレベルじゃない!」
「ユキに似合いそうだと思って」
「買い過ぎだよ!」
「でも必要なものでしょう」
「いや食器とかここにあるものだけで十分……」
「ユキに似合いそうなものを選んだよ」
「……」
おれに似合いそうな食器ってなんだよ。
着替えは必要かもしれないけどさ、別に普通のでいいし……女のひとなら流行りのドレスとかで喜べたかもしれないけど。
「早く帰ってきたかったけど、ユキに似合いそうなものを選んでるのが楽しかった」
「……ありがと、でももし次があるならこういうのでいいよ」
焼き菓子を指さす。
お土産ってこういうもんじゃん。こういうので十分。いやこれも高いんだろうけどさ……
小物は明日にでも飾ろう、時計や動物みたいな置物、人形、きらきらした造花みたいなやつ。
元々派手な部屋だったけど、更に賑やかになりそうだ。
「そういえば今日って」
「うん?泊まっていくよ」
「……一回戻ったりしないの?」
「ユキが気にすることはないよ」
「……そか」
「そういえば掃除をしたってアンヌが言ってたな、湯浴みするとしよう」
「湯浴み」
「ユキも少し汚れただろう、一緒にどうだ?」
「!」
別に男同士だ、気にすることはない、んだけど。
なんかその、さっきのこととか思い出してしまって……今一緒に入るのはやばい気がする。
「お、おれさっき入ったし!腕は軽く洗うからいいや!ジルだけ入ってきてよ」
「そうか、残念」
残念ってなんだよ残念って!
含むような言葉がおれを恥ずかしくさせる。ただでさえこういうの慣れてないってのに、一々糖度が高過ぎる。
部屋を出るジルを見送って、ちらりと鏡を見てみた。
やばい、やっぱり耳まで真っ赤じゃないか。こんなの見たらそりゃからかいたくもなるだろうな。
いやそれにしてもあれはだめでしょ、おれは同性だし遥陽みたいにかわいい訳じゃないからまだいいけど、女のひとならすぐころっといっちゃうでしょ。
甘い言葉に甘いマスク、たくさんのプレゼントにたまに強引な腕。
おれだってイケメンに生まれてれば……無理だな、あれは天性のものだ、恥ずかしくてあんなムーブ出来ないや。
「……腕洗ってこよ」
暫く考えてたけど他人の考えはわからん。諦めよう。
ついでにトイレも行こう。水分摂りすぎたからね。
夜は薄暗い廊下も少し慣れた。
慣れたといっても、ジルやモーリスさんがいるのがわかっててだけど。
明日からどうなるかな、モーリスさんにも騎士団の仕事とかある訳で、ジルも帰ってきた訳だし泊まりどころかここに来るかもわからない。
アンヌさんはどうだろ、同じようにジルがいない間だけなのか、明日からも来てくれるのか。
ジルだって、今日泊まってくれて、明日は?
もう視察はないとしても、他の仕事があるだろう。
日中は時間を無理矢理潰すとして夜は?今度こそひとりになるのかな?
「はー……」
いっつも同じこと考えてるな、だって安心出来ないんだもん。
未来がわかればおれだって少しは安心出来ると思うんだけど。
「ユキ、迎えに来てくれたの?」
「……短時間くらいひとりで大丈夫だよ、ただトイレにきただけ」
「嘘でもいいから迎えに来たって言っておけばいいのに」
「正直者なんで……」
丁度お風呂上がりのジルと鉢合わせてしまう。
その瞬間のぱあっと笑顔になった瞬間が眩しい。どうした、今日のジルなんかかわいくない?大型犬みがある。
ジルがかわったのか、おれがかわったのか。
「まあいいや、冷える前に部屋に戻ろう」
「うん」
「ユキは暗いのこわいんだろう?」
その言い方はすごいおれがこわがりみたいじゃないか。
別にこんな訳のわからない世界でなければ、ひとりで夜に帰ったり、部屋の電気真っ暗でも寝れたりしてたんだから、特別こわがりって訳じゃないんだからな。
「……今はジルがいるから大丈夫だよ」
「ふふ、やっぱりかわいいことを言うね、ごめんねひとりにさせて。昨日まで大丈夫だった?」
別にジルを喜ばせる為に言った訳じゃ……と思いながらも、モーリスさんが泊まってくれたので大丈夫です、と返すと、ジルの足がぴたっと止まった。
「ジル?」
「泊まったの?モーリスが?」
「……?はい、どうせ通うしいいですよって……まずかったですか?」
まさか騎士団の官舎とか規則がうるさかったりするのだろうか、毎晩点呼をするとか、外泊禁止とか。
いやでも騎士団は学生寮とかと違っていい大人だし、モーリスさんは仕事みたいなもんだし……
でもおれのせいで怒られたりしてたら申し訳ない。
美味い。が、どう考えても食べ過ぎた。
水分でお腹がたぷたぷだ。
「はは、全部食べた」
「美味しかった、ありがと」
「気に入った?」
「……うん」
「また用意するよ」
「……うん、てかあれは?」
「え?」
おれの腕を綺麗に拭いながら笑うジルに、まだ床にでんと置かれた箱達を逆の指でさす。
まさか全部食べ物ではないよな?
「ああ、土産だよ」
「土産」
「ユキに」
「えっ全部!?」
「ここにあるのはね。わざわざユキ以外へのものをここに運ぶ必要ないだろう」
「多過ぎるでしょ……」
箱の前まで行き、これはユキの着替え、と言い出す。
……確かに必要なものだけど。
これも着替えあれも着替え、靴、部屋の小物、アクセサリー、焼き菓子、綺麗な筆記用具、食器……
「待って待ってお土産のレベルじゃない!」
「ユキに似合いそうだと思って」
「買い過ぎだよ!」
「でも必要なものでしょう」
「いや食器とかここにあるものだけで十分……」
「ユキに似合いそうなものを選んだよ」
「……」
おれに似合いそうな食器ってなんだよ。
着替えは必要かもしれないけどさ、別に普通のでいいし……女のひとなら流行りのドレスとかで喜べたかもしれないけど。
「早く帰ってきたかったけど、ユキに似合いそうなものを選んでるのが楽しかった」
「……ありがと、でももし次があるならこういうのでいいよ」
焼き菓子を指さす。
お土産ってこういうもんじゃん。こういうので十分。いやこれも高いんだろうけどさ……
小物は明日にでも飾ろう、時計や動物みたいな置物、人形、きらきらした造花みたいなやつ。
元々派手な部屋だったけど、更に賑やかになりそうだ。
「そういえば今日って」
「うん?泊まっていくよ」
「……一回戻ったりしないの?」
「ユキが気にすることはないよ」
「……そか」
「そういえば掃除をしたってアンヌが言ってたな、湯浴みするとしよう」
「湯浴み」
「ユキも少し汚れただろう、一緒にどうだ?」
「!」
別に男同士だ、気にすることはない、んだけど。
なんかその、さっきのこととか思い出してしまって……今一緒に入るのはやばい気がする。
「お、おれさっき入ったし!腕は軽く洗うからいいや!ジルだけ入ってきてよ」
「そうか、残念」
残念ってなんだよ残念って!
含むような言葉がおれを恥ずかしくさせる。ただでさえこういうの慣れてないってのに、一々糖度が高過ぎる。
部屋を出るジルを見送って、ちらりと鏡を見てみた。
やばい、やっぱり耳まで真っ赤じゃないか。こんなの見たらそりゃからかいたくもなるだろうな。
いやそれにしてもあれはだめでしょ、おれは同性だし遥陽みたいにかわいい訳じゃないからまだいいけど、女のひとならすぐころっといっちゃうでしょ。
甘い言葉に甘いマスク、たくさんのプレゼントにたまに強引な腕。
おれだってイケメンに生まれてれば……無理だな、あれは天性のものだ、恥ずかしくてあんなムーブ出来ないや。
「……腕洗ってこよ」
暫く考えてたけど他人の考えはわからん。諦めよう。
ついでにトイレも行こう。水分摂りすぎたからね。
夜は薄暗い廊下も少し慣れた。
慣れたといっても、ジルやモーリスさんがいるのがわかっててだけど。
明日からどうなるかな、モーリスさんにも騎士団の仕事とかある訳で、ジルも帰ってきた訳だし泊まりどころかここに来るかもわからない。
アンヌさんはどうだろ、同じようにジルがいない間だけなのか、明日からも来てくれるのか。
ジルだって、今日泊まってくれて、明日は?
もう視察はないとしても、他の仕事があるだろう。
日中は時間を無理矢理潰すとして夜は?今度こそひとりになるのかな?
「はー……」
いっつも同じこと考えてるな、だって安心出来ないんだもん。
未来がわかればおれだって少しは安心出来ると思うんだけど。
「ユキ、迎えに来てくれたの?」
「……短時間くらいひとりで大丈夫だよ、ただトイレにきただけ」
「嘘でもいいから迎えに来たって言っておけばいいのに」
「正直者なんで……」
丁度お風呂上がりのジルと鉢合わせてしまう。
その瞬間のぱあっと笑顔になった瞬間が眩しい。どうした、今日のジルなんかかわいくない?大型犬みがある。
ジルがかわったのか、おれがかわったのか。
「まあいいや、冷える前に部屋に戻ろう」
「うん」
「ユキは暗いのこわいんだろう?」
その言い方はすごいおれがこわがりみたいじゃないか。
別にこんな訳のわからない世界でなければ、ひとりで夜に帰ったり、部屋の電気真っ暗でも寝れたりしてたんだから、特別こわがりって訳じゃないんだからな。
「……今はジルがいるから大丈夫だよ」
「ふふ、やっぱりかわいいことを言うね、ごめんねひとりにさせて。昨日まで大丈夫だった?」
別にジルを喜ばせる為に言った訳じゃ……と思いながらも、モーリスさんが泊まってくれたので大丈夫です、と返すと、ジルの足がぴたっと止まった。
「ジル?」
「泊まったの?モーリスが?」
「……?はい、どうせ通うしいいですよって……まずかったですか?」
まさか騎士団の官舎とか規則がうるさかったりするのだろうか、毎晩点呼をするとか、外泊禁止とか。
いやでも騎士団は学生寮とかと違っていい大人だし、モーリスさんは仕事みたいなもんだし……
でもおれのせいで怒られたりしてたら申し訳ない。
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