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「どっから見ていいの?外?」
「外ですねえ」
「遥陽見えるよね?」
「まあお披露目みたいなもんですからねえ、多少隠してるかもしれませんが」
「見えなかったら背負ってくれる?」
「いや、目立つのはどうかと」
式典当日、昼前にあると聞いてそわそわしている。
ジルの土産の服に着替え、それを隠すのは勿体ないかもしれないけど、フードで顔と頭を隠す。
一応、黒髪は目立つだろうという皆の配慮だったけど、おれとしてはそんなにかな?とまだ思っているところもある。
おれからしたら見慣れた髪色だし。
確かに関わった人数が少ないとはいえ、明るい髪色ばかりだけど、街には少人数いるんじゃないの、と軽く考えてしまう。
「モーリスさんは遥陽召喚された時にいましたっけ」
「いえ、その場にはいませんでしたね、どういうお方ですか?」
「えっとねー、天使みたいでかわいい」
「ユキ様よりかわいいのですか?」
「なっ……に言ってんだよ!おれと一緒にしたら失礼なレベルですよ!」
モーリスさんの肩を叩く。
遥陽は老若男女モテるタイプで、おれみたいなくそ生意気なやつと全然ちがう。そりゃあもう天使のようにふわふわしたいい子なのだ。
モーリスさんとアンヌさんにも紹介したい、おれのだいじなともだちです!って。
「出てきたら教えて下さいね」
「うん!」
そろそろお時間ですよ、とアンヌさんに呼ばれて、元気に返事をする。
あと少しで遥陽に会える!会えるというか、見るだけかもしれないけど、それでも嬉しい。
アンヌさんは式典には行かないとのことで、モーリスさんが付き添ってくれる。
ジルに頼まれたらしいんだけど、今朝は笑いながら入ってきたからびっくりした。理由は秘密ですと教えてくれなかったけど。
「式典ってどんなことするんですか?」
「ちょっと挨拶するくらいですよ、この方が神子様ですー、って」
「へえ、堅苦しい挨拶とかあるのかなって」
そう訊くと、あはは、と豪快に笑ったモーリスさんが、そうですね、少しは堅苦しい挨拶あるかもしれないですね、と言う。
だって式典なんて、おれたちからしたら学校の式くらいしか出たことないし、それなのに王様の堅苦しい話とかあったらどんな顔して聞いていいかわからないし、眠くなるかもしれないし。
「外賑やかだね」
「まあ神子様のお披露目だってもう皆知ってますからねえ、ちょっとしたお祭りみたいなもんですよ」
城を出たばかりなのに、外は人の声がたくさんする。
なんだかちゃんと外に出るのは初めてだし、よくよく考えると、ここに来てからモーリスさんたち以外と会うことも漸くなのだ。
今更になってこわくなってしまい、モーリスさんの服の裾をぎゅっと握った。
「ユキ様?」
「あっ」
「こわいんですか?」
「……うん、ちょっと」
「大丈夫ですよ」
意地を張っても仕方がないので素直に頷くと、手を出してくれた。
完全に弟扱いなんだけど、もうそれでいいや、そう思った方が、おれもいい歳して……なんて恥ずかしさも軽減する。
ジルより硬い手のひらだった。
騎士団ってやっぱり剣とか使うんだよね、魔力は基本王族だけが持ってるらしいことも言ってたし。
つまりこの手は躰を張ってこの国を守ってくれてるって訳で、なるほど、少し安心もする訳だ。
「何かいりますか?」
「屋台?」
「はい」
周りを見ると、出店のようなものが幾つか出ていた。
飴みたいなものや果物、何かの串焼き、焼かれた野菜や飲み物、ついでのように並ぶアクセサリー。
式典とはいってもあまり堅苦しいものではないってことかな。
食べてたりしても怒られないってことだよね、とちょっとほっとした。
小難しい話ずうっと聞くなんてやだもん、おれ。
「お肉美味しそうだけど……」
「だけど?」
「……いいや」
お上品な食事が多いから、串焼きみたいなものがすごく美味しそうに見える。
見えるんだけど、アンヌさんが作ったもの以外はやっぱりちょっとまだこわい。
こんな誰でも買えるところでおれにだけなんかされる訳はないんだろうけど。
「いいじゃないですか、食べましょう」
お店のおじさんに1本、と頼むと、それにモーリスさんが噛み付いた。
えっ、と思ってると、それを俺に出してくる。大丈夫だということだろうか。
「あ、流石に俺が口付けたものってのはだめですかね」
「いえ、これくらいなら気にしないです」
ともだち同士の回し飲みとか、まあ良くあったし。
モーリスさんのやってくれたのはおれを気にしてだし、ジルだって同じこと、したし……
思い出すと勝手に恥ずかしくなってしまい、自分も串焼きにかぶりつく。タレの掛かっただけのお肉がうまい。
アンヌさんのご飯も美味しいけど、こういうのもたまには食べたいよね、満足。
「おいしかったです!」
「兄ちゃん美味しそうに食べるねえ、もういいのかい」
「はい!ご馳走様です!」
屋台のおじさんがごみとなった串を回収してくれる。
お礼を言うおれに、おじさんとモーリスさんが目を丸くする。
それからからからと笑って、礼儀正しい子だねえと言った。
別にそんなつもりはなかったんだけど。まあいいや、くそガキと思われるよりはいいだろう。
「他はもういいんです?」
「うん、帰ったらきっとアンヌさん、ご飯作ってるし」
「こういう時くらい気にしなくてもいいのに」
「こーゆー時だからですよ」
モーリスさんは笑っておれの頭を撫でる。フード越しだけど。
こういうとこ、お兄ちゃんなんだよな、って思った。
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