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結局、ちょっと待っていて、と置いてかれ、広いベッドにおれひとり。
周りを見ると、綺麗に整えられていて、昨夜の生々しさは感じないと共に、ああ、やっぱりそれをジルがやったんだ、と頭を抱える。
おれは……この国の、一番偉い王様の次に偉い王太子さまになんてことをさせてんだ。
誤召喚の面倒をみさせ、お守りをさせ、ご飯を作らせ、頭を洗わせ、トドメに情事の後片付け。
ジルがあんなんじゃなかったら今頃首でも撥ねられてるんじゃないだろうか、そもそもジルじゃなかったらそんなことはしないだろうが。
躰もすっきりしている。べたべたしたところがひとつもない。
つまり、汗も出したものも、全部綺麗に拭かれたのだ、ジルに。
また頭を抱える。
見られた。多分、全身、隅々まで。
綺麗にするということで、絶対に見られた。
気付かなきゃよかった、無理だけど、気付きたくなかった。
どんな顔してジルに会えばいいんだ。
しかもあの醜態。香油のせいとはいえ、あんな、あんな甘え方ないだろ。
気持ちいいとか、とんでもないことを口走った気がする。
記憶を消したい。ジルの記憶も一緒に。
「お待たせ」
「ひゃっ」
「すまない、驚かせたな」
「い、いえ……」
ノックなしに入ってきたからびっくりした。でもそっちを向けない。ジルがいるのが当然ながらわかっているから。
この顔でジルを落ち着いて見れない。
「サンドイッチにしてもらったよ、これならここでも食べやすいだろう」
「う、あ、はい……ありがと、ござます……」
「?」
「うっ」
やばい、躰が起き上がらない。
え、そんなに昨日やばかったっけ?おれ基本的に寝てただけじゃなかった?腰がすっごく怠い。絶対無理!ではないんだけど。
「大丈夫か?ハルヒを呼ぶか」
「ぜっっっったいだめ!」
固まったおれに、ジルは善意でそう言ったんだろうけど、そんなことをされたらおれは舌を噛み切ってしんでやる。
会いたいけど、こんな姿を遥陽に見られたらもう生きてけない。誰よりも、誰の前よりも、遥陽の前ではしっかりしたおれでいたい。
「……だいじょぶだから、全然……ッ、起きれるし……!」
無理矢理躰を起こして壁に凭れて、心配そうにしてるジルからトレイを受け取る。
まずはその、喉が渇いた。気のせいか喉がいがいがする気がする。使い過ぎたし、もしかしたら今度こそ本物の体調不良かもしれない。
でもそんなこと言ったらまた遥陽に~とか言われそうだから黙っておくことにした。
食欲はある。だからやっぱり原因は声の出し過ぎ。
「……」
思い出すな、昨夜のことを思い出すな。
頭がおかしくなるぞ、絶対思い出すな。
「……ジルここでゆっくりしてていいの」
「それはそうなんだが、ここにユキを残していくのも心配だ」
「……そんな大袈裟な」
病人でもあるまいし。
……って思うのに。ちょっと嬉しいの何なのおれ。
「……俺の部屋にユキを運ぶか」
「へ?」
「ユキはハルヒとアンヌに見られたくない、俺はモーリスに世話させたくない、けど仕事がここで出来ないなら向こうにユキを連れてったら解決するな」
「ななな何言って」
「負担にならないよう抱えていくよ」
「いいいいらんし!歩けるし!」
「大丈夫、ほら、昨日もユキを抱えて来れたろう?ユキくらい軽いもんだよ」
「そんな話じゃねーんですよ!」
昨日は暗かったけど、こんな明るい空の下でそんなことされたら恥ずかしくてしょうがない。
確かにそれが一番なのかもしれないけど。
おれだけアンヌさんに見られたくないと我儘を言っといて、ジルの希望は聞かないってのもどうかと思う。
でもそれはそれとしてやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「てゆかモーリスさんをここに寄越したのはジルなのに」
「今からかえるか?」
「失礼過ぎる、それにおれモーリスさんに大分なれたのに」
「……どういう意味で?」
「……お兄さん的な意味で……」
そんなにモーリスさん地雷なのか?顔がめちゃくちゃこわい。
仲良いんじゃなかったの。
「モーリスさんだっておれのことよくて弟としか思ってないよ、そんな気にしなくたって」
「わかってても嫌なものは嫌だ」
駄々っ子か。
少し呆れつつ、でも絆されてしまう。
仕方ない、今日はジルの意見を採用してあげよう。
遥陽の我儘に慣れたおれは結構心が広いのである。
◇◇◇
といってもおれは本当に横になっていただけだ。
お城の執務室に運ばれ、またジルの後ろの陽の当たる場所にソファを運んでもらい、うとうとどころかしっかり寝てしまった。それはもうお昼を食べ損ねるくらい爆睡をかました。
おかげでまた別館に戻ってきた頃にはお腹がぺこぺこだった。
アンヌさんに食事にしましょうね、と案内されたのは元応接室。
昨日話したことを、ジルは早速食堂にさせたらしい。確かに明日片付けさせよう、とか言ってたけど仕事が早過ぎる。これが仕事の出来る男ってやつか。
渡り廊下の話も早く進みそうだ。
心做しかアンヌさんもモーリスさんも優しい目で見てる気がする。酷く落ち着かない夕食だった。
夕食を終えて、さあお風呂、と思ってると、ジルがまた一緒に入るとか言う。おれが心配らしい。
爆睡したおかげか、もう全然ひとりで歩けるし、お風呂なんて余裕だ、恥ずかしいしひとりで入りたい。そう告げると、また純粋な笑顔で、ユキの躰はもう見たから恥ずかしくないだろう、と言う。二回目だぞ、それ。
王子様ってやつは羞恥心どこかに捨ててきたのか?
周りを見ると、綺麗に整えられていて、昨夜の生々しさは感じないと共に、ああ、やっぱりそれをジルがやったんだ、と頭を抱える。
おれは……この国の、一番偉い王様の次に偉い王太子さまになんてことをさせてんだ。
誤召喚の面倒をみさせ、お守りをさせ、ご飯を作らせ、頭を洗わせ、トドメに情事の後片付け。
ジルがあんなんじゃなかったら今頃首でも撥ねられてるんじゃないだろうか、そもそもジルじゃなかったらそんなことはしないだろうが。
躰もすっきりしている。べたべたしたところがひとつもない。
つまり、汗も出したものも、全部綺麗に拭かれたのだ、ジルに。
また頭を抱える。
見られた。多分、全身、隅々まで。
綺麗にするということで、絶対に見られた。
気付かなきゃよかった、無理だけど、気付きたくなかった。
どんな顔してジルに会えばいいんだ。
しかもあの醜態。香油のせいとはいえ、あんな、あんな甘え方ないだろ。
気持ちいいとか、とんでもないことを口走った気がする。
記憶を消したい。ジルの記憶も一緒に。
「お待たせ」
「ひゃっ」
「すまない、驚かせたな」
「い、いえ……」
ノックなしに入ってきたからびっくりした。でもそっちを向けない。ジルがいるのが当然ながらわかっているから。
この顔でジルを落ち着いて見れない。
「サンドイッチにしてもらったよ、これならここでも食べやすいだろう」
「う、あ、はい……ありがと、ござます……」
「?」
「うっ」
やばい、躰が起き上がらない。
え、そんなに昨日やばかったっけ?おれ基本的に寝てただけじゃなかった?腰がすっごく怠い。絶対無理!ではないんだけど。
「大丈夫か?ハルヒを呼ぶか」
「ぜっっっったいだめ!」
固まったおれに、ジルは善意でそう言ったんだろうけど、そんなことをされたらおれは舌を噛み切ってしんでやる。
会いたいけど、こんな姿を遥陽に見られたらもう生きてけない。誰よりも、誰の前よりも、遥陽の前ではしっかりしたおれでいたい。
「……だいじょぶだから、全然……ッ、起きれるし……!」
無理矢理躰を起こして壁に凭れて、心配そうにしてるジルからトレイを受け取る。
まずはその、喉が渇いた。気のせいか喉がいがいがする気がする。使い過ぎたし、もしかしたら今度こそ本物の体調不良かもしれない。
でもそんなこと言ったらまた遥陽に~とか言われそうだから黙っておくことにした。
食欲はある。だからやっぱり原因は声の出し過ぎ。
「……」
思い出すな、昨夜のことを思い出すな。
頭がおかしくなるぞ、絶対思い出すな。
「……ジルここでゆっくりしてていいの」
「それはそうなんだが、ここにユキを残していくのも心配だ」
「……そんな大袈裟な」
病人でもあるまいし。
……って思うのに。ちょっと嬉しいの何なのおれ。
「……俺の部屋にユキを運ぶか」
「へ?」
「ユキはハルヒとアンヌに見られたくない、俺はモーリスに世話させたくない、けど仕事がここで出来ないなら向こうにユキを連れてったら解決するな」
「ななな何言って」
「負担にならないよう抱えていくよ」
「いいいいらんし!歩けるし!」
「大丈夫、ほら、昨日もユキを抱えて来れたろう?ユキくらい軽いもんだよ」
「そんな話じゃねーんですよ!」
昨日は暗かったけど、こんな明るい空の下でそんなことされたら恥ずかしくてしょうがない。
確かにそれが一番なのかもしれないけど。
おれだけアンヌさんに見られたくないと我儘を言っといて、ジルの希望は聞かないってのもどうかと思う。
でもそれはそれとしてやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「てゆかモーリスさんをここに寄越したのはジルなのに」
「今からかえるか?」
「失礼過ぎる、それにおれモーリスさんに大分なれたのに」
「……どういう意味で?」
「……お兄さん的な意味で……」
そんなにモーリスさん地雷なのか?顔がめちゃくちゃこわい。
仲良いんじゃなかったの。
「モーリスさんだっておれのことよくて弟としか思ってないよ、そんな気にしなくたって」
「わかってても嫌なものは嫌だ」
駄々っ子か。
少し呆れつつ、でも絆されてしまう。
仕方ない、今日はジルの意見を採用してあげよう。
遥陽の我儘に慣れたおれは結構心が広いのである。
◇◇◇
といってもおれは本当に横になっていただけだ。
お城の執務室に運ばれ、またジルの後ろの陽の当たる場所にソファを運んでもらい、うとうとどころかしっかり寝てしまった。それはもうお昼を食べ損ねるくらい爆睡をかました。
おかげでまた別館に戻ってきた頃にはお腹がぺこぺこだった。
アンヌさんに食事にしましょうね、と案内されたのは元応接室。
昨日話したことを、ジルは早速食堂にさせたらしい。確かに明日片付けさせよう、とか言ってたけど仕事が早過ぎる。これが仕事の出来る男ってやつか。
渡り廊下の話も早く進みそうだ。
心做しかアンヌさんもモーリスさんも優しい目で見てる気がする。酷く落ち着かない夕食だった。
夕食を終えて、さあお風呂、と思ってると、ジルがまた一緒に入るとか言う。おれが心配らしい。
爆睡したおかげか、もう全然ひとりで歩けるし、お風呂なんて余裕だ、恥ずかしいしひとりで入りたい。そう告げると、また純粋な笑顔で、ユキの躰はもう見たから恥ずかしくないだろう、と言う。二回目だぞ、それ。
王子様ってやつは羞恥心どこかに捨ててきたのか?
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