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半ば強引にお風呂に入れられ、髪を洗われ、躰まで綺麗にされた。恥ずかしくてしにそう。
でも、浴槽に嬉しそうに浸かるジルに諦めた。
この自由な王子にはもう刺す位の拒否反応を見せない限りすきにさせてしまうんだろう。
すきという気持ちの厄介さを知る。まさかこんな異世界で。
無事にお風呂から上がって、躰を拭いて、なんと着替えまで手伝われてしまう。
おれはそんなに要介護状態か?
「……楽しい?」
「楽しい」
「そりゃ良かった……」
鼻歌でもうたいだしそうなジルに溜息を吐く。
それすら楽しそうにおれの髪を梳くものだから、もう、もう!溶けてしまう前にさっさと眠ってしまいたい。
「……今日も泊まってく?」
「勿論」
「……うん、」
「大丈夫、そんな固くならなくても。流石に連日負担をかけるようなことはしないよ」
「う」
見透かされている。わかりやすかったとは思うけど、口にされるのはなんか情けない。
別にジルとするのが嫌なんじゃない、昨日が昨日だったし、まだお尻に違和感あるし、腰は怠いし、
でも一緒に寝れるのは嬉しいんだ。だからその、やるのかやらないのかってどきどきして寝るより、宣言して貰った方が安心して寝れるかもしれない。
ジルの大きな躰も、体温も、子供をあやすかのように撫でるような手も、びくびくしながらじゃなくて、全部安心して受け止めたい。
……おれ、ちゃんとひとりで寝れてたのに。ジルのせいでひとりは落ち着かなくなりそう。
部屋に戻るまでの距離も手を繋いでいたりして。
付き合いたてのカップルか、だって自然にジルが繋ぐんだもん、振りほどく理由がなかったんだもん。
「おれ、もう寝るからね」
「もう寝るの?今日ずっと寝てるけど大丈夫?寝れる?」
「寝れる!てかジルは?」
「ユキと一緒に寝たい」
そういう意味ではない。眠れるのかって意味なんだけど。
ベッドに潜り込んで、肩まで布団を引き上げる。ジルも当然のように横に入り、おやすみ、とおれの眦に唇を落とした。
この馬鹿みたいに広いベッドに、こんなにくっついて寝るだなんて勿体ない。
真ん中だけへっこんじゃうんじゃないだろうか。
「明日は普通に仕事?」
「そうだよ、また来る?」
「……そんな毎日行かないよ、明日はアンヌさんの手伝いでもしようかな」
「そうか、明後日の予定は空けといてね」
「……おれに予定なんてないんだけど……?」
毎日ここでごろごろする以外の予定なんてない。
この王国で一番暇なのはおれだ。
「なんかある?めんどくさいこと?」
「昨夜話したろう、ユキの力について鑑定してもらうことを」
「あー、うん、え、早くない?昨日の今日でもう話ついてるの?王子様パワーすげーな」
「鑑定する者が少し離れた所にいるからね、少し時間はかかるけど」
「えっ、お城の外出れるの!?」
あっさりと許可が降りてしまった。
初めてのちゃんとした外出だ!ちょっとわくわくしてしまう。
「ジルも来るっていったよね!」
「ああ」
「じゃあ何があっても平気だね!」
「そうだね、ユキを守ってみせるよ」
だからそういう話じゃないんだけど。
でもその甘ったるい視線はほんっと反論出来なくなるから止めてほしい、おれの心の中の反抗期が浄化されてしまう。
「ふっふ、ちゃんと寝て元気にしておかなきゃ」
「そうだね」
「あっ、じゃあ明日はアンヌさんとまたお菓子作ろうかな、明後日食べられるように!」
「楽しみにしておくよ」
「どんなのがすき?」
「ユキの作るものならなんでも」
ひえ、新婚家庭かよ!
ちょっと引くけど、これが満更でもないんだな。口では変なの作っても知らないからね、と言いながら、心の中ではどんなのが喜んで貰えるかな、とか考えちゃうの。
知ってるぞこれ、ツンデレってやつだ。いや自分がそれやるのきっついな……二次元美少女限定だぞ、あんなの。
「……外に出られるの、そんなに嬉しい?」
「だって初めてだし!」
「そう……」
「だってジルもいるから安心でしょ?全然こっちのことわからないしさー、あっでも魔獣出るとか言ってなかった!?えっやば、あ、でもジルや護衛さんいるのか……」
ぶつぶつ呟いてると、それは満面の笑みのジルが、そうだよ、俺がいるから安心してね、と言う。
はいはい言うと思った、と流してから瞳を閉じて、あ、もしかして今のやつって、そういうのじゃなくて、おれがここに不満を持ってて外に行きたいと考えてると思ったってことか、と気付く。
でも今更訂正も出来なくて、まあ意図も伝わったみたいだしいいか、とそのまま眠りにつくことにした。
◇◇◇
その日も安定の暇さであった。
ジルは朝食を済ますとすぐに帰っていき、おれは食後に少し勉強を教えてもらい、昼食まで中庭で昼寝をして、という怠惰な生活を満喫していた。
アンヌさんにまた一緒にお菓子を作りたいと伝えると、それはもう喜んでくれて、崩れにくいお菓子を幾つか作った。
張り切り過ぎて大量も大量。数人で消費するレベルではない。
その様子を見に来たモーリスさんが、にやにやしながらまたジル様に持って行っては?とからかう。
……まあでも、いいんですけど。クッキーなんかの日持ちしそうなお菓子はともかく、生クリームを使ったプディングやケーキは早く消費しておきたい。
うん、遥陽にも持って行きたいし、二日連続でお城に行ったおれにこわいものはない、いやあるが。
モーリスさんもついてくればもう完璧だ。
でも、浴槽に嬉しそうに浸かるジルに諦めた。
この自由な王子にはもう刺す位の拒否反応を見せない限りすきにさせてしまうんだろう。
すきという気持ちの厄介さを知る。まさかこんな異世界で。
無事にお風呂から上がって、躰を拭いて、なんと着替えまで手伝われてしまう。
おれはそんなに要介護状態か?
「……楽しい?」
「楽しい」
「そりゃ良かった……」
鼻歌でもうたいだしそうなジルに溜息を吐く。
それすら楽しそうにおれの髪を梳くものだから、もう、もう!溶けてしまう前にさっさと眠ってしまいたい。
「……今日も泊まってく?」
「勿論」
「……うん、」
「大丈夫、そんな固くならなくても。流石に連日負担をかけるようなことはしないよ」
「う」
見透かされている。わかりやすかったとは思うけど、口にされるのはなんか情けない。
別にジルとするのが嫌なんじゃない、昨日が昨日だったし、まだお尻に違和感あるし、腰は怠いし、
でも一緒に寝れるのは嬉しいんだ。だからその、やるのかやらないのかってどきどきして寝るより、宣言して貰った方が安心して寝れるかもしれない。
ジルの大きな躰も、体温も、子供をあやすかのように撫でるような手も、びくびくしながらじゃなくて、全部安心して受け止めたい。
……おれ、ちゃんとひとりで寝れてたのに。ジルのせいでひとりは落ち着かなくなりそう。
部屋に戻るまでの距離も手を繋いでいたりして。
付き合いたてのカップルか、だって自然にジルが繋ぐんだもん、振りほどく理由がなかったんだもん。
「おれ、もう寝るからね」
「もう寝るの?今日ずっと寝てるけど大丈夫?寝れる?」
「寝れる!てかジルは?」
「ユキと一緒に寝たい」
そういう意味ではない。眠れるのかって意味なんだけど。
ベッドに潜り込んで、肩まで布団を引き上げる。ジルも当然のように横に入り、おやすみ、とおれの眦に唇を落とした。
この馬鹿みたいに広いベッドに、こんなにくっついて寝るだなんて勿体ない。
真ん中だけへっこんじゃうんじゃないだろうか。
「明日は普通に仕事?」
「そうだよ、また来る?」
「……そんな毎日行かないよ、明日はアンヌさんの手伝いでもしようかな」
「そうか、明後日の予定は空けといてね」
「……おれに予定なんてないんだけど……?」
毎日ここでごろごろする以外の予定なんてない。
この王国で一番暇なのはおれだ。
「なんかある?めんどくさいこと?」
「昨夜話したろう、ユキの力について鑑定してもらうことを」
「あー、うん、え、早くない?昨日の今日でもう話ついてるの?王子様パワーすげーな」
「鑑定する者が少し離れた所にいるからね、少し時間はかかるけど」
「えっ、お城の外出れるの!?」
あっさりと許可が降りてしまった。
初めてのちゃんとした外出だ!ちょっとわくわくしてしまう。
「ジルも来るっていったよね!」
「ああ」
「じゃあ何があっても平気だね!」
「そうだね、ユキを守ってみせるよ」
だからそういう話じゃないんだけど。
でもその甘ったるい視線はほんっと反論出来なくなるから止めてほしい、おれの心の中の反抗期が浄化されてしまう。
「ふっふ、ちゃんと寝て元気にしておかなきゃ」
「そうだね」
「あっ、じゃあ明日はアンヌさんとまたお菓子作ろうかな、明後日食べられるように!」
「楽しみにしておくよ」
「どんなのがすき?」
「ユキの作るものならなんでも」
ひえ、新婚家庭かよ!
ちょっと引くけど、これが満更でもないんだな。口では変なの作っても知らないからね、と言いながら、心の中ではどんなのが喜んで貰えるかな、とか考えちゃうの。
知ってるぞこれ、ツンデレってやつだ。いや自分がそれやるのきっついな……二次元美少女限定だぞ、あんなの。
「……外に出られるの、そんなに嬉しい?」
「だって初めてだし!」
「そう……」
「だってジルもいるから安心でしょ?全然こっちのことわからないしさー、あっでも魔獣出るとか言ってなかった!?えっやば、あ、でもジルや護衛さんいるのか……」
ぶつぶつ呟いてると、それは満面の笑みのジルが、そうだよ、俺がいるから安心してね、と言う。
はいはい言うと思った、と流してから瞳を閉じて、あ、もしかして今のやつって、そういうのじゃなくて、おれがここに不満を持ってて外に行きたいと考えてると思ったってことか、と気付く。
でも今更訂正も出来なくて、まあ意図も伝わったみたいだしいいか、とそのまま眠りにつくことにした。
◇◇◇
その日も安定の暇さであった。
ジルは朝食を済ますとすぐに帰っていき、おれは食後に少し勉強を教えてもらい、昼食まで中庭で昼寝をして、という怠惰な生活を満喫していた。
アンヌさんにまた一緒にお菓子を作りたいと伝えると、それはもう喜んでくれて、崩れにくいお菓子を幾つか作った。
張り切り過ぎて大量も大量。数人で消費するレベルではない。
その様子を見に来たモーリスさんが、にやにやしながらまたジル様に持って行っては?とからかう。
……まあでも、いいんですけど。クッキーなんかの日持ちしそうなお菓子はともかく、生クリームを使ったプディングやケーキは早く消費しておきたい。
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