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「キャロがいったらおはなかれちゃうかしら」
「えっ」
「キャロ、のろわれてるから」
「……キャロル、えっと、この部屋にお花、たくさんあるけど、枯れてないよね?」
「うん」
「だから大丈夫だよ、お花枯れたりしないよ」
「じゃあなんでだめなのかな?」
純粋な瞳がきれいでこわい。
傷付けないように、壊さないようにしなくちゃ。
「うーん、おれはわかんないけど、ジルも怒ってなかったでしょ」
「ジルにいさまはあんまりおこらないわ」
「だから、キャロルを行かせたくないのは悪いことをするからじゃなくて、心配なだけなんだよ」
「……うん」
「でもおれもあの中庭きれいですきなんだ、キャロルを招待出来るように頑張るね、一緒にまたお茶しよう」
「うん!」
またぱっと花のような笑顔。ご機嫌になったキャロルに安堵した。
そして、また一口ケーキを頬張って、ジルにいさまのおかあさまはおはなをそだてるのがおじょうずだったのね、と言った。
その、ジルにいさまのおかあさま、という言い方に、母親が違うのだと気付く。
確かに、ジルと、ティノとキャロルの髪色は違う。
遠くからだったから、印象が薄くて第三王子と王妃様の髪色は思い出せない。
ということはもしかしてジルだけ母親が違う?
それともたまたまティノとキャロルが同じプラチナなだけで、皆母親が違うとか?それもありそうで、でもキャロルに訊く話ではないと思い、そうなんだ、とキャロルの綺麗な髪を撫でて誤魔化した。
おじょうずだったのね、その過去形に意味はあるのだろうか。
もしかしてもう生きてない?どこかに居る?ならどこに?
キャロルが行った一度だけ、とはどのタイミング?
気になるけど、訊けやしない。
「んふふ」
「どうしたの」
「ユキにいさま、ぽかぽかする、ハルヒにいさまといっしょね」
「体温が高いってことかな」
「キャロ、ハルヒにいさまとおひるねするのすきなの」
「そう……いっぱい食べちゃったし眠いかな?」
「ユキにいさまがいるのにねちゃうのはもったいないわ……つぎ、いつあえるかわからないもの」
小さな声が不安そうに揺れる。
胸がぎゅっとなってしまう。そうだよね、まだまだ人恋しい歳だよね。
「また絶対に会いに来るよ、言ったでしょ、お兄ちゃん結構暇なんだ」
自慢にはならないけど。
「約束しよっか」
「やくそく?」
「小指を出して、これね、お兄ちゃんのいた世界の約束のしるしなんだよ」
小さな小さな小指を絡ませる。
ぜったいよ、と言うか細い声に微笑んだ。
「キャロルが起きるまで傍にいるよ、だからレディはちょっと休む時間じゃないかな」
「……うん」
キャロルは既にぽやぽやした瞳で、おれの膝に小さな手と頭を乗っけて、丸くなる。猫みたいでかわいい。
モーリスさんがそっと膝掛けを掛けてくれた。
小さな躰に、よく親が子供にするようにぽんぽんと撫でてやると、すぐにとろんとする。
さっきまで元気だったのに。子供の充電切れはいきなりだなあ。呪いのせいで病弱だからというのもあるのだろうけど。
「あのね……」
「うん?」
「キャロね、シャノンねえさまより、ユキにいさまのがすき」
「……んん?」
「ジルにいさまとってもうれしそう。だから……」
だから?だから何?
小さなレディは思わせ振りに、それだけ言ってすうすうと眠りの世界に落ちてしまった。
シャノンねえさまって誰だ、王女はひとりでは?とモーリスさんに視線を向ける。
きょうだいの多いというモーリスさんは、かわいらしいですねえ、という顔でこっちを見ていた。今おれが言いたいのはそこじゃない、かわいいけど!
「シャノンねえさまって」
「ジル様から何も?」
「きいてない」
「……では俺からもやめておきますね」
「えっ」
「直接聞いた方がいいですよ」
「やだ気になる、今言って」
「……キャロル様が起きてしまわれますよ」
「じゃあ今言って!」
胸騒ぎがして、モーリスさんに強く言ってしまう。
ぽりぽりと頭を掻きながら、言いにくそうに、間を空けて……婚約者ですよ、と呟いた。
「婚約者……」
「でもユキ様が気にすることないですからね」
「……なんで」
気にするに決まってるじゃないか。
そうだよ、王族貴族で良い歳をした男女に婚約者がいるなんてよく聞く話じゃないか。
ジルなんて王太子だし、お金持ちだし顔は綺麗だし優しいし、あんな優良物件が余ってる筈ないんだ。
やばい。
血の気が引くのを感じだ。
あんなにしょっちゅう部屋に呼んで、おれ関連の仕事も増やして、先日はあんな……あんなことまでしてしまった。
もしかしておれ、もしかしなくても……不倫、浮気相手……?
やばい、知らなかったとはいえ、婚約者のいる男に手を出してしまった、いや、手を出されたのはおれだけど、そういう問題じゃなくて。
まだ結婚してないからセーフ?男だからセーフ?
かわいいっていったのは、おれが欲しいと言ったのは、ただのベッドの上の睦言?
「ユキ様」
「……うん」
「ユキ様、変に捉えないで下さい、ジル様とちゃんとお話して下さいね、悩むと碌なことにならない」
「うん……でも」
「俺も叱っておきます、だいじなことを話してないジル様が悪い、だからユキ様がそんなに悩むことはないんです」
わからない、王族ってそういうの、すぐ隠すんだもん。
……でも約束、したし、嘘吐かない、って。
だから訊いてみる気はある。
あるけど……今はちょっとこわいかもしれない。
「えっ」
「キャロ、のろわれてるから」
「……キャロル、えっと、この部屋にお花、たくさんあるけど、枯れてないよね?」
「うん」
「だから大丈夫だよ、お花枯れたりしないよ」
「じゃあなんでだめなのかな?」
純粋な瞳がきれいでこわい。
傷付けないように、壊さないようにしなくちゃ。
「うーん、おれはわかんないけど、ジルも怒ってなかったでしょ」
「ジルにいさまはあんまりおこらないわ」
「だから、キャロルを行かせたくないのは悪いことをするからじゃなくて、心配なだけなんだよ」
「……うん」
「でもおれもあの中庭きれいですきなんだ、キャロルを招待出来るように頑張るね、一緒にまたお茶しよう」
「うん!」
またぱっと花のような笑顔。ご機嫌になったキャロルに安堵した。
そして、また一口ケーキを頬張って、ジルにいさまのおかあさまはおはなをそだてるのがおじょうずだったのね、と言った。
その、ジルにいさまのおかあさま、という言い方に、母親が違うのだと気付く。
確かに、ジルと、ティノとキャロルの髪色は違う。
遠くからだったから、印象が薄くて第三王子と王妃様の髪色は思い出せない。
ということはもしかしてジルだけ母親が違う?
それともたまたまティノとキャロルが同じプラチナなだけで、皆母親が違うとか?それもありそうで、でもキャロルに訊く話ではないと思い、そうなんだ、とキャロルの綺麗な髪を撫でて誤魔化した。
おじょうずだったのね、その過去形に意味はあるのだろうか。
もしかしてもう生きてない?どこかに居る?ならどこに?
キャロルが行った一度だけ、とはどのタイミング?
気になるけど、訊けやしない。
「んふふ」
「どうしたの」
「ユキにいさま、ぽかぽかする、ハルヒにいさまといっしょね」
「体温が高いってことかな」
「キャロ、ハルヒにいさまとおひるねするのすきなの」
「そう……いっぱい食べちゃったし眠いかな?」
「ユキにいさまがいるのにねちゃうのはもったいないわ……つぎ、いつあえるかわからないもの」
小さな声が不安そうに揺れる。
胸がぎゅっとなってしまう。そうだよね、まだまだ人恋しい歳だよね。
「また絶対に会いに来るよ、言ったでしょ、お兄ちゃん結構暇なんだ」
自慢にはならないけど。
「約束しよっか」
「やくそく?」
「小指を出して、これね、お兄ちゃんのいた世界の約束のしるしなんだよ」
小さな小さな小指を絡ませる。
ぜったいよ、と言うか細い声に微笑んだ。
「キャロルが起きるまで傍にいるよ、だからレディはちょっと休む時間じゃないかな」
「……うん」
キャロルは既にぽやぽやした瞳で、おれの膝に小さな手と頭を乗っけて、丸くなる。猫みたいでかわいい。
モーリスさんがそっと膝掛けを掛けてくれた。
小さな躰に、よく親が子供にするようにぽんぽんと撫でてやると、すぐにとろんとする。
さっきまで元気だったのに。子供の充電切れはいきなりだなあ。呪いのせいで病弱だからというのもあるのだろうけど。
「あのね……」
「うん?」
「キャロね、シャノンねえさまより、ユキにいさまのがすき」
「……んん?」
「ジルにいさまとってもうれしそう。だから……」
だから?だから何?
小さなレディは思わせ振りに、それだけ言ってすうすうと眠りの世界に落ちてしまった。
シャノンねえさまって誰だ、王女はひとりでは?とモーリスさんに視線を向ける。
きょうだいの多いというモーリスさんは、かわいらしいですねえ、という顔でこっちを見ていた。今おれが言いたいのはそこじゃない、かわいいけど!
「シャノンねえさまって」
「ジル様から何も?」
「きいてない」
「……では俺からもやめておきますね」
「えっ」
「直接聞いた方がいいですよ」
「やだ気になる、今言って」
「……キャロル様が起きてしまわれますよ」
「じゃあ今言って!」
胸騒ぎがして、モーリスさんに強く言ってしまう。
ぽりぽりと頭を掻きながら、言いにくそうに、間を空けて……婚約者ですよ、と呟いた。
「婚約者……」
「でもユキ様が気にすることないですからね」
「……なんで」
気にするに決まってるじゃないか。
そうだよ、王族貴族で良い歳をした男女に婚約者がいるなんてよく聞く話じゃないか。
ジルなんて王太子だし、お金持ちだし顔は綺麗だし優しいし、あんな優良物件が余ってる筈ないんだ。
やばい。
血の気が引くのを感じだ。
あんなにしょっちゅう部屋に呼んで、おれ関連の仕事も増やして、先日はあんな……あんなことまでしてしまった。
もしかしておれ、もしかしなくても……不倫、浮気相手……?
やばい、知らなかったとはいえ、婚約者のいる男に手を出してしまった、いや、手を出されたのはおれだけど、そういう問題じゃなくて。
まだ結婚してないからセーフ?男だからセーフ?
かわいいっていったのは、おれが欲しいと言ったのは、ただのベッドの上の睦言?
「ユキ様」
「……うん」
「ユキ様、変に捉えないで下さい、ジル様とちゃんとお話して下さいね、悩むと碌なことにならない」
「うん……でも」
「俺も叱っておきます、だいじなことを話してないジル様が悪い、だからユキ様がそんなに悩むことはないんです」
わからない、王族ってそういうの、すぐ隠すんだもん。
……でも約束、したし、嘘吐かない、って。
だから訊いてみる気はある。
あるけど……今はちょっとこわいかもしれない。
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