60 / 161
60
しおりを挟む
母親。
そうなんだ、ジルの母親は魔力が凄くて……呪われてた?
いや、呪われてたかどうかはおれの憶測だからまだわかんないんだけど。
でもその魔力でどうにかならなかった?色んな魔法があるみたいだし、そういうのじゃなかったのかな。
てかジルの表情なんだあれ、いいことなのか悪いことなのか読めない表情してる。
「凄いっていっても、一般的には、とかですよね、遥陽より……神子様とどっこいとかはないですよね」
「どうでしょう、ハルヒ様もまあ一般的、と考えると魔力はある方ですが、あの方はまた特殊ですからね」
「遥陽すげーな」
「ユキ様もすごいですよ」
そこでやっとジルとモーリスさんが近付いて来て、どうだったかセルジュさんに訊ねた。
ジル様のおっしゃってた通りですね、という答えに首を傾げる。
なんで当事者置いてくかな。
「おれにもわかるように話して」
「ああ、うん」
「難しい話じゃなくて簡単にね」
その言い方の問題か、セルジュさんが微笑む。
こういうところはロザリー様とは反対ですね、と。
だからロザリー様がわからないから褒められてんのか貶されてんのかわかんない、セルジュさんが貶すとは思えないけど。
「ユキ様、お疲れになりませんか、どこか座れる場所に行きましょうか」
「え?あ、うん……?」
「歩けるか?」
「こんくらいの血じゃ貧血にもならないんだけど」
そう言って足を出した辺りでふらっとしてしまう。
貧血は例えであって、おれは別に貧血気味だとか思ったことはなかった。
実際にあんな、すぐ止まるような血で貧血になるとも思えない。なのになんでこんなぐにゃぐにゃするような……
「おっと」
「あ、ありがと……えっ」
支えてくれたジルにお礼を言うが早いが、そのまま抱えられてしまった。
こここここんなとこでお姫様抱っこされるとかある!?ちち、近い!顔が!近い!イケメン!有罪!
「歩けるってば!」
「今転びそうだっただろう」
「足が縺れただけ!多分!」
「すぐそこまでだから大人しくしてて」
「ううう……」
恥ずかしい、子供でも病弱でもないってのに、この歳で何度も抱き抱えられるなんて。今更だけど恥ずかしいものは恥ずかしい。
「ユキ様は魔力の使い方のお勉強しましょうね」
「へ?」
「だだ漏れですよ」
恥ずかしさに耐えてるおれの横に来て、セルジュさんが笑顔を見せる。
魔力だだ漏れとは悪いことなのでしょうか。
頭の中がごちゃごちゃなっていて、でも整理をする前に応接間のようなところに着いてしまう。
ふかふかのソファに下ろされ、やっと解放された気分。たった数分とはいえ、あのままじゃおれ、また寝てしまうとこだった。ひとの体温は気持ちがいい。
ただ、それとは別に、単純に眠たくなってしまうんだ。
「……魔力って使うと疲れます?」
「まあ……そこは質や使い方によって変わりますが、ユキ様は疲れやすいでしょう?」
「疲れやすいっていうか……もしかしてすぐ眠たくなっちゃうのって」
「猫みたいでかわいいですよね」
「そこじゃない」
「ふふ、そうですね、ユキ様は休むことで回復しようとしてるのではないでしょうか」
やたら昼寝をしちゃうのも、眠気に勝てないのも、暇だからかと思っていた。平和であたたかくて、やることがないから。よくわからない文字を読んだり勉強したりしてるから。
それなのに、そんな理由だったとは。
魔力って聞くと、強そうでわくわくしてしまう。
基本的に王族にしかない力。そんなひと握りの力をただの一般人のおれが手に入れるような日が来るとは。
魔法としては地味な能力だけど。
もっとさ、空を飛べたり火を出したり、敵を凍らせたり剣の雨を降らせたり、そんな派手なイメージだったのに。
「ジルはおれを護りの神子かもしれないとか言ってたけどさ、まあ神子ではないとして、でもおれ、それで何か役に立つ?」
「勿論!そこにいるだけで十分ですよ」
「それはおれが魔力だだ漏れだから?」
「まあその、大まかに言うと、ですね……」
まずロザリー様の話からしましょうか、とセルジュさんが言う。
大丈夫かな、とジルを見ると、その視線に気付いたジルが、俺は気にしてないよ、と髪を撫でた。
それなら……と少し不安を感じながらもセルジュさんに向き直る。
確か、ジルは護りの力に見覚えがあると言っていた。
濁していたけど、母親だったんだなあ…
ロザリー様とはジルの実母で、やはりキャロルの前の呪われた人物だった。
ただ、そうとは思えない程バイタリティに溢れていたようで、積極的に己の力を使っていたご様子。
国のあちこちを訪れてはその力を使っていた。
壊れた防壁を直し、魔獣の被害が酷い地域ではその地を整備し、他の国と戦争をする前には全ての武器や鎧に力を注ぐ。
おかげでこの国は争いが少ない割には戦争は負け知らず、魔獣の被害も少ないので食糧事情も問題はなく、穏やかで潤沢な国だ。
それが、ジルが生まれてから目に見えて魔力が下がっていったという。
自分が奪ったのかもしれない、とジルは言った。
そうなんだ、ジルの母親は魔力が凄くて……呪われてた?
いや、呪われてたかどうかはおれの憶測だからまだわかんないんだけど。
でもその魔力でどうにかならなかった?色んな魔法があるみたいだし、そういうのじゃなかったのかな。
てかジルの表情なんだあれ、いいことなのか悪いことなのか読めない表情してる。
「凄いっていっても、一般的には、とかですよね、遥陽より……神子様とどっこいとかはないですよね」
「どうでしょう、ハルヒ様もまあ一般的、と考えると魔力はある方ですが、あの方はまた特殊ですからね」
「遥陽すげーな」
「ユキ様もすごいですよ」
そこでやっとジルとモーリスさんが近付いて来て、どうだったかセルジュさんに訊ねた。
ジル様のおっしゃってた通りですね、という答えに首を傾げる。
なんで当事者置いてくかな。
「おれにもわかるように話して」
「ああ、うん」
「難しい話じゃなくて簡単にね」
その言い方の問題か、セルジュさんが微笑む。
こういうところはロザリー様とは反対ですね、と。
だからロザリー様がわからないから褒められてんのか貶されてんのかわかんない、セルジュさんが貶すとは思えないけど。
「ユキ様、お疲れになりませんか、どこか座れる場所に行きましょうか」
「え?あ、うん……?」
「歩けるか?」
「こんくらいの血じゃ貧血にもならないんだけど」
そう言って足を出した辺りでふらっとしてしまう。
貧血は例えであって、おれは別に貧血気味だとか思ったことはなかった。
実際にあんな、すぐ止まるような血で貧血になるとも思えない。なのになんでこんなぐにゃぐにゃするような……
「おっと」
「あ、ありがと……えっ」
支えてくれたジルにお礼を言うが早いが、そのまま抱えられてしまった。
こここここんなとこでお姫様抱っこされるとかある!?ちち、近い!顔が!近い!イケメン!有罪!
「歩けるってば!」
「今転びそうだっただろう」
「足が縺れただけ!多分!」
「すぐそこまでだから大人しくしてて」
「ううう……」
恥ずかしい、子供でも病弱でもないってのに、この歳で何度も抱き抱えられるなんて。今更だけど恥ずかしいものは恥ずかしい。
「ユキ様は魔力の使い方のお勉強しましょうね」
「へ?」
「だだ漏れですよ」
恥ずかしさに耐えてるおれの横に来て、セルジュさんが笑顔を見せる。
魔力だだ漏れとは悪いことなのでしょうか。
頭の中がごちゃごちゃなっていて、でも整理をする前に応接間のようなところに着いてしまう。
ふかふかのソファに下ろされ、やっと解放された気分。たった数分とはいえ、あのままじゃおれ、また寝てしまうとこだった。ひとの体温は気持ちがいい。
ただ、それとは別に、単純に眠たくなってしまうんだ。
「……魔力って使うと疲れます?」
「まあ……そこは質や使い方によって変わりますが、ユキ様は疲れやすいでしょう?」
「疲れやすいっていうか……もしかしてすぐ眠たくなっちゃうのって」
「猫みたいでかわいいですよね」
「そこじゃない」
「ふふ、そうですね、ユキ様は休むことで回復しようとしてるのではないでしょうか」
やたら昼寝をしちゃうのも、眠気に勝てないのも、暇だからかと思っていた。平和であたたかくて、やることがないから。よくわからない文字を読んだり勉強したりしてるから。
それなのに、そんな理由だったとは。
魔力って聞くと、強そうでわくわくしてしまう。
基本的に王族にしかない力。そんなひと握りの力をただの一般人のおれが手に入れるような日が来るとは。
魔法としては地味な能力だけど。
もっとさ、空を飛べたり火を出したり、敵を凍らせたり剣の雨を降らせたり、そんな派手なイメージだったのに。
「ジルはおれを護りの神子かもしれないとか言ってたけどさ、まあ神子ではないとして、でもおれ、それで何か役に立つ?」
「勿論!そこにいるだけで十分ですよ」
「それはおれが魔力だだ漏れだから?」
「まあその、大まかに言うと、ですね……」
まずロザリー様の話からしましょうか、とセルジュさんが言う。
大丈夫かな、とジルを見ると、その視線に気付いたジルが、俺は気にしてないよ、と髪を撫でた。
それなら……と少し不安を感じながらもセルジュさんに向き直る。
確か、ジルは護りの力に見覚えがあると言っていた。
濁していたけど、母親だったんだなあ…
ロザリー様とはジルの実母で、やはりキャロルの前の呪われた人物だった。
ただ、そうとは思えない程バイタリティに溢れていたようで、積極的に己の力を使っていたご様子。
国のあちこちを訪れてはその力を使っていた。
壊れた防壁を直し、魔獣の被害が酷い地域ではその地を整備し、他の国と戦争をする前には全ての武器や鎧に力を注ぐ。
おかげでこの国は争いが少ない割には戦争は負け知らず、魔獣の被害も少ないので食糧事情も問題はなく、穏やかで潤沢な国だ。
それが、ジルが生まれてから目に見えて魔力が下がっていったという。
自分が奪ったのかもしれない、とジルは言った。
213
あなたにおすすめの小説
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる