【完結】召喚失敗された彼がしあわせになるまで

鯖猫ちかこ

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 それからは床に伏せることも増え、それまで持ち上げていた者達が声を上げる、やはり呪われた者に国を任せられないと。
 次第に塞ぎがちになったロザリー様は、別館を用意し、そちらに籠りきりになる。
 王様も息子もあまり招かず、ひとりでひっそりと別館に住まう。
 自分にもうそんなに力は残っていない。国を護る程の力はない。
 各地で魔獣の被害が増えてきた。それすらロザリー様のせいにされるような。

 それでもロザリー様は、自分の愛したひとを、愛しい我が子を護る為に力を使い、あとは自分が長生きすることだけを考えた。
 自分が生きてれば他のものに呪いがかかることはない。
 少しでも長く生きれば、その分次の呪われる者への期間が短くなる、新しい者が生まれれば息子が呪われる確率も下がる。
 誰が呪われてもいい訳ではない。それでも我が子のことを考えてしまう母親を責めるひとはいないだろう。

 でも弱った躰は抗っても死を迎え、三年前、ロザリー様は亡くなった。
 亡くなってすぐにわかったのは、当時一歳になったばかりのキャロルが次の犠牲者だったこと。

 ……王族に妾が多いのはよくあること。特にこの呪いのあるブシャール家では当然だった。
 跡継ぎが数人、呪いで亡くなってしまう可能性がある。多くの子をもうけるのは当然だった。

 現王妃様も強い女性だった。
 第二王子と第三王子を生み、王女を生んだ。
 その後に末っ子王女が呪われた時も、泣き崩れたりはしなかった。
 呪いのことをわかってて嫁いできた、自分が呪われる可能性も、子や王が呪われる可能性も覚悟していたと。

 そんな彼女が涙を流したのは、遥陽の召喚が成功した時。
 覚悟をしていたとはいえ、自分の娘が呪われて平気な筈はなかった。
 それからは目に見えて柔らかくなっていったそうで、ぴりぴりしていたお城の中も落ち着いてきたようだ。

 これが聞かされたロザリー様のお話。母は強し、女王になるにはなるだけの強さがあるのだと知った。
 詳しいな、と思ったら日記があったらしい。だがそれも燃やしたと。
 何でか訊けば、何かの間違いでキャロルが読んでしまっては困る、と。思い切りがよ過ぎる、一応形見だろうに。
 ……残ってたら何か新しい発見とかもあっただろうか。

「……何でロザリー様の時に召喚しなかったのかな」
「幾つか条件があるからね、タイミングが悪かった」

 それにしても三年前って。
 たったの三年前。遥陽がもっと早く召喚されてれば、ロザリー様は、ジルの母親は亡くなってなかったかもしれない。
 勿論キャロルの呪いも。

「なんかごめん……」
「……?何故」
「いや、遥陽が三年前前に召喚されても嫌だったけど……嫌だったけど、でもそしたらジルのお母さんは」
「ユキ、そこは間違ってるよ、ユキのせいでもハルヒのせいでもない、タイミングが悪かっただけだと言ってるだろう」
「でも考えちゃうじゃん……」
「良いんだ、もう」
「でもやっぱり気にしてるでしょ」

 書庫室にあった絵画、あれはやっぱりロザリー様なんだろう。
 通りでジルに似ている筈だ。その絵画を外して隠してるのは、気にしてる証拠じゃないか。

「……全く気にしてない訳ではないよ、でも本当に召喚のタイミングは仕方ないんだ、あの時儀式をしてれば失敗していただろうし、今ではキャロルが元気にしているだけで有難いよ」

 おれたちは完全に被害者だと思う。
 だけどその召喚で助かってるひともたくさんいる。
 そんなの関係ないといえばないんだけど、でもやっぱりここまで来たら気にしてしまうのはひととして当たり前だとも思う。
 目の前に傷付いたひとがいたら助けたいと考えてしまうのは。

 そんなことをぐるぐる考えてると、ふわっと笑ったジルがおれの頬を撫でた。
 気にしてくれてありがとう、と。
 おれ、なんも出来てないのに。

「……ロザリー様のことはわかりました、けど、じゃあ、おれの力って」
「ああ、そうですね、恐らく同じようなものだと思います」
「おれロザリー様の生まれ変わりとかじゃ」

 そう言った瞬間、ジルもモーリスさんも、セルジュさんまで吹き出した。
 ……だって王族ばっかり魔法使えるんでしょ、で、おれ同じ力や魔力量なんでしょ、そう考えちゃうの普通じゃん。
 こんなファンタジーな世界で時間軸とか考えても意味ないし。

「ふふ……失礼しました、ユキ様はおも……可愛らしい発想をされますね」

 面白いって言いかけたな?

「たまたま……でしょうか、それとも神がロザリー様の代わりとしてユキ様を呼んだのかもしれないですね、そこは私たちにはわかりませんが」
「うう……」
「でも本当に……ロザリー様はこの国を護る為に色々して下さいました」
「おれも同じことをすればいいのかな?でもジル、おれは別館に居ればいいって」
「魔力の多さと質は違いますよ」
「……難しいことわかんないんだけど」

 この世界の普通と、おれの普通は全然違う。
 だから当たり前のように言われてもおれにはわかんないんだよね。
 ゲームのようにチュートリアルがある訳ではないんだから、馬鹿にもわかるように教えて欲しい。
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