61 / 161
61
しおりを挟む
それからは床に伏せることも増え、それまで持ち上げていた者達が声を上げる、やはり呪われた者に国を任せられないと。
次第に塞ぎがちになったロザリー様は、別館を用意し、そちらに籠りきりになる。
王様も息子もあまり招かず、ひとりでひっそりと別館に住まう。
自分にもうそんなに力は残っていない。国を護る程の力はない。
各地で魔獣の被害が増えてきた。それすらロザリー様のせいにされるような。
それでもロザリー様は、自分の愛したひとを、愛しい我が子を護る為に力を使い、あとは自分が長生きすることだけを考えた。
自分が生きてれば他のものに呪いがかかることはない。
少しでも長く生きれば、その分次の呪われる者への期間が短くなる、新しい者が生まれれば息子が呪われる確率も下がる。
誰が呪われてもいい訳ではない。それでも我が子のことを考えてしまう母親を責めるひとはいないだろう。
でも弱った躰は抗っても死を迎え、三年前、ロザリー様は亡くなった。
亡くなってすぐにわかったのは、当時一歳になったばかりのキャロルが次の犠牲者だったこと。
……王族に妾が多いのはよくあること。特にこの呪いのあるブシャール家では当然だった。
跡継ぎが数人、呪いで亡くなってしまう可能性がある。多くの子をもうけるのは当然だった。
現王妃様も強い女性だった。
第二王子と第三王子を生み、王女を生んだ。
その後に末っ子王女が呪われた時も、泣き崩れたりはしなかった。
呪いのことをわかってて嫁いできた、自分が呪われる可能性も、子や王が呪われる可能性も覚悟していたと。
そんな彼女が涙を流したのは、遥陽の召喚が成功した時。
覚悟をしていたとはいえ、自分の娘が呪われて平気な筈はなかった。
それからは目に見えて柔らかくなっていったそうで、ぴりぴりしていたお城の中も落ち着いてきたようだ。
これが聞かされたロザリー様のお話。母は強し、女王になるにはなるだけの強さがあるのだと知った。
詳しいな、と思ったら日記があったらしい。だがそれも燃やしたと。
何でか訊けば、何かの間違いでキャロルが読んでしまっては困る、と。思い切りがよ過ぎる、一応形見だろうに。
……残ってたら何か新しい発見とかもあっただろうか。
「……何でロザリー様の時に召喚しなかったのかな」
「幾つか条件があるからね、タイミングが悪かった」
それにしても三年前って。
たったの三年前。遥陽がもっと早く召喚されてれば、ロザリー様は、ジルの母親は亡くなってなかったかもしれない。
勿論キャロルの呪いも。
「なんかごめん……」
「……?何故」
「いや、遥陽が三年前前に召喚されても嫌だったけど……嫌だったけど、でもそしたらジルのお母さんは」
「ユキ、そこは間違ってるよ、ユキのせいでもハルヒのせいでもない、タイミングが悪かっただけだと言ってるだろう」
「でも考えちゃうじゃん……」
「良いんだ、もう」
「でもやっぱり気にしてるでしょ」
書庫室にあった絵画、あれはやっぱりロザリー様なんだろう。
通りでジルに似ている筈だ。その絵画を外して隠してるのは、気にしてる証拠じゃないか。
「……全く気にしてない訳ではないよ、でも本当に召喚のタイミングは仕方ないんだ、あの時儀式をしてれば失敗していただろうし、今ではキャロルが元気にしているだけで有難いよ」
おれたちは完全に被害者だと思う。
だけどその召喚で助かってるひともたくさんいる。
そんなの関係ないといえばないんだけど、でもやっぱりここまで来たら気にしてしまうのはひととして当たり前だとも思う。
目の前に傷付いたひとがいたら助けたいと考えてしまうのは。
そんなことをぐるぐる考えてると、ふわっと笑ったジルがおれの頬を撫でた。
気にしてくれてありがとう、と。
おれ、なんも出来てないのに。
「……ロザリー様のことはわかりました、けど、じゃあ、おれの力って」
「ああ、そうですね、恐らく同じようなものだと思います」
「おれロザリー様の生まれ変わりとかじゃ」
そう言った瞬間、ジルもモーリスさんも、セルジュさんまで吹き出した。
……だって王族ばっかり魔法使えるんでしょ、で、おれ同じ力や魔力量なんでしょ、そう考えちゃうの普通じゃん。
こんなファンタジーな世界で時間軸とか考えても意味ないし。
「ふふ……失礼しました、ユキ様はおも……可愛らしい発想をされますね」
面白いって言いかけたな?
「たまたま……でしょうか、それとも神がロザリー様の代わりとしてユキ様を呼んだのかもしれないですね、そこは私たちにはわかりませんが」
「うう……」
「でも本当に……ロザリー様はこの国を護る為に色々して下さいました」
「おれも同じことをすればいいのかな?でもジル、おれは別館に居ればいいって」
「魔力の多さと質は違いますよ」
「……難しいことわかんないんだけど」
この世界の普通と、おれの普通は全然違う。
だから当たり前のように言われてもおれにはわかんないんだよね。
ゲームのようにチュートリアルがある訳ではないんだから、馬鹿にもわかるように教えて欲しい。
次第に塞ぎがちになったロザリー様は、別館を用意し、そちらに籠りきりになる。
王様も息子もあまり招かず、ひとりでひっそりと別館に住まう。
自分にもうそんなに力は残っていない。国を護る程の力はない。
各地で魔獣の被害が増えてきた。それすらロザリー様のせいにされるような。
それでもロザリー様は、自分の愛したひとを、愛しい我が子を護る為に力を使い、あとは自分が長生きすることだけを考えた。
自分が生きてれば他のものに呪いがかかることはない。
少しでも長く生きれば、その分次の呪われる者への期間が短くなる、新しい者が生まれれば息子が呪われる確率も下がる。
誰が呪われてもいい訳ではない。それでも我が子のことを考えてしまう母親を責めるひとはいないだろう。
でも弱った躰は抗っても死を迎え、三年前、ロザリー様は亡くなった。
亡くなってすぐにわかったのは、当時一歳になったばかりのキャロルが次の犠牲者だったこと。
……王族に妾が多いのはよくあること。特にこの呪いのあるブシャール家では当然だった。
跡継ぎが数人、呪いで亡くなってしまう可能性がある。多くの子をもうけるのは当然だった。
現王妃様も強い女性だった。
第二王子と第三王子を生み、王女を生んだ。
その後に末っ子王女が呪われた時も、泣き崩れたりはしなかった。
呪いのことをわかってて嫁いできた、自分が呪われる可能性も、子や王が呪われる可能性も覚悟していたと。
そんな彼女が涙を流したのは、遥陽の召喚が成功した時。
覚悟をしていたとはいえ、自分の娘が呪われて平気な筈はなかった。
それからは目に見えて柔らかくなっていったそうで、ぴりぴりしていたお城の中も落ち着いてきたようだ。
これが聞かされたロザリー様のお話。母は強し、女王になるにはなるだけの強さがあるのだと知った。
詳しいな、と思ったら日記があったらしい。だがそれも燃やしたと。
何でか訊けば、何かの間違いでキャロルが読んでしまっては困る、と。思い切りがよ過ぎる、一応形見だろうに。
……残ってたら何か新しい発見とかもあっただろうか。
「……何でロザリー様の時に召喚しなかったのかな」
「幾つか条件があるからね、タイミングが悪かった」
それにしても三年前って。
たったの三年前。遥陽がもっと早く召喚されてれば、ロザリー様は、ジルの母親は亡くなってなかったかもしれない。
勿論キャロルの呪いも。
「なんかごめん……」
「……?何故」
「いや、遥陽が三年前前に召喚されても嫌だったけど……嫌だったけど、でもそしたらジルのお母さんは」
「ユキ、そこは間違ってるよ、ユキのせいでもハルヒのせいでもない、タイミングが悪かっただけだと言ってるだろう」
「でも考えちゃうじゃん……」
「良いんだ、もう」
「でもやっぱり気にしてるでしょ」
書庫室にあった絵画、あれはやっぱりロザリー様なんだろう。
通りでジルに似ている筈だ。その絵画を外して隠してるのは、気にしてる証拠じゃないか。
「……全く気にしてない訳ではないよ、でも本当に召喚のタイミングは仕方ないんだ、あの時儀式をしてれば失敗していただろうし、今ではキャロルが元気にしているだけで有難いよ」
おれたちは完全に被害者だと思う。
だけどその召喚で助かってるひともたくさんいる。
そんなの関係ないといえばないんだけど、でもやっぱりここまで来たら気にしてしまうのはひととして当たり前だとも思う。
目の前に傷付いたひとがいたら助けたいと考えてしまうのは。
そんなことをぐるぐる考えてると、ふわっと笑ったジルがおれの頬を撫でた。
気にしてくれてありがとう、と。
おれ、なんも出来てないのに。
「……ロザリー様のことはわかりました、けど、じゃあ、おれの力って」
「ああ、そうですね、恐らく同じようなものだと思います」
「おれロザリー様の生まれ変わりとかじゃ」
そう言った瞬間、ジルもモーリスさんも、セルジュさんまで吹き出した。
……だって王族ばっかり魔法使えるんでしょ、で、おれ同じ力や魔力量なんでしょ、そう考えちゃうの普通じゃん。
こんなファンタジーな世界で時間軸とか考えても意味ないし。
「ふふ……失礼しました、ユキ様はおも……可愛らしい発想をされますね」
面白いって言いかけたな?
「たまたま……でしょうか、それとも神がロザリー様の代わりとしてユキ様を呼んだのかもしれないですね、そこは私たちにはわかりませんが」
「うう……」
「でも本当に……ロザリー様はこの国を護る為に色々して下さいました」
「おれも同じことをすればいいのかな?でもジル、おれは別館に居ればいいって」
「魔力の多さと質は違いますよ」
「……難しいことわかんないんだけど」
この世界の普通と、おれの普通は全然違う。
だから当たり前のように言われてもおれにはわかんないんだよね。
ゲームのようにチュートリアルがある訳ではないんだから、馬鹿にもわかるように教えて欲しい。
222
あなたにおすすめの小説
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる