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食事が済み、モーリスさんとアンヌさんを見送り、もはや恒例になりつつあるお風呂タイムもさっさと済まし、部屋に戻る。
つい先程まで寝ていたおれに眠気などまだない。
……まだない、のだが。
ではこのふたりきりの夜、何をするんですかって話で。
行きの馬車の中で失言した。
馬車の中はだめ、帰ってから、とかなんとか。
そのちょっと前に浮気相手になんかなりたくないぜと誓っておきながら。
……ジルは覚えているだろうか。
でも早朝に出て、おれは爆睡をかましたけどジルは寝てない、多分。だから、疲れてるといえば疲れてる筈なんだ。
だから眠いかもしれない。
まだ眠くない俺に構わず、どうぞ寝て頂いて。
本当はなー、遥陽とかいればなー、ゲームとかしたいんだけど。
残念ながらいないので、寝るかぼーっとするかしか選択肢がない。
眠気がないとはいえ、今のおれならほっといたらその内寝てるかもしれないけど。
ベッドでごろごろしながら自分の両手を見つめる。
魔力だだ漏れってどこから出てるんだろ。全然わっかんないや。
「どうしたの、怪我でもした?あ、ナイフの傷跡が」
「いやいやちがうちがう、あんなんもうふさがったし」
「本当?見せて」
「うい」
傷をつけたのは左手なのだから、その片手だけ出せばいいのに両手を出してしまった。
その手を取ったジルは、両手ともまじまじと見てくる。
ほんの軽い気持ちで出したけど、たいして綺麗でもない手をそんなに見られるのはなんか……なんか、冷や汗が出るじゃないか。
手のひらを見て、ひっくり返されて、甲もチェックし、それからまた手のひらを向けて、すす、と指を走らせた。
「んっ……」
思わず身動ぎしてしまう。
ジルの長い指が、ゆっくりとおれの手を包んで、指を絡めて、握る。
触れてるのはそこだけ。
それなのに、躰の奥が、熱くなるようで。
「……っ、う」
「確かに昼のは塞がってるようだけど」
「……ゆった、じゃんっ……」
「切り傷や火傷をしてるね?大丈夫?ハルヒを呼ぶか?」
「呼ばない……てか、これくらい……痛くないし、普通だし、こんなことで魔力使わせたくない」
「綺麗な指なのに」
「おれはこれくらいでいーの」
「そう?」
「うん、自分でなんかやった証拠じゃん、別に特別綺麗な手でも大怪我でもないし、これくらいはこのままでいい」
少し落ち着いてきて、仕返しとばかりにおれもジルの手を握り返す。
おれの考えが足りないのはそういうところだ。
ジル相手にそんなことをやっても、照れるどころか倍返しされるのをわかってる筈なのに。
「そうか、うん、傷跡があってもユキの手は綺麗だよ」
握ったままの手をそのまま上に持っていき、唇を落とす。
きざったらしい行為が似合ってるのが憎たらしい。
唇と手を離された途端に自分の方へ避難させる。
あのままだと溶かされてしまう。
「ゆ、油断も隙もない……」
「俺とふたりの時はどれだけ油断してくれててもいいよ」
「ジルとふたりの時がいちばん危ない」
「はは」
おかしそうに笑うジルに枕を投げて、他の枕に顔を埋めた。
どう転んでも甘い空気にしてしまう男め。
……だめなのに、こんな空気になってしまったら、きっと流される。
だってもうすきになってしまったから。
緊張するけど、恥ずかしいけど、みっともなく思うけど、それでもジルの体温があたたかくて、キスがほしくなって、与えられるものが気持ちいいのを知ってしまった。
だから、そんな空気になったら、これが最後、次が最後とずるずる延ばしてしまいそう。
でもだからといって、自分から婚約者の話を出すことも出来ない。
……逃げてるんだって本当はわかってる。言えばこの関係が終わってしまうかもって、だから言わないんだって。
前までなら、大丈夫だったかもしれない。
でもこんなに、胸がいっぱいになる気持ちを知ってから、あの手を離すなんて出来ない。
でも浮気なんて最低で、絶対に自分がされたら嫌だし、婚約者だって傷付く。
会ったこともない婚約者だけど、おれが傷付けていい相手ではない。
じゃあ自分が手放すしかないじゃないか、割り込んだのはおれなんだから。そしてそれが出来ないから悩んでるんじゃないか。
本当に最悪だ、自分がそんなにんげんだったなんて。
「ユキ?」
「……なに」
「眠い?」
「……ねむい、」
うそ、まだ眠くない、全然。
ほんの少し、顔を動かしてジルを覗き見る。
おれの悩みなんてわかりもしないだろうジルが、優しい顔で腕を伸ばすのが見えた。
思わず自分から頭を差し出してしまう。
……意思が弱い。
「……ん、」
この手がおれだけのものになればいいのに。
そんなの、色んな意味で無理なのはわかってる。
男だし、婚約者はいるし、王太子に釣り合う身分はないし、他の世界からきた部外者だし、何よりこんなに自分本位のやつはこの優しいひとに似合わない。
セルジュさんはすごいと褒めてくれたけど、でも、この力じゃなくて……遥陽のように望まれた神子様なら、もっと近くにいても許されたんじゃないか、なんて。
つい先程まで寝ていたおれに眠気などまだない。
……まだない、のだが。
ではこのふたりきりの夜、何をするんですかって話で。
行きの馬車の中で失言した。
馬車の中はだめ、帰ってから、とかなんとか。
そのちょっと前に浮気相手になんかなりたくないぜと誓っておきながら。
……ジルは覚えているだろうか。
でも早朝に出て、おれは爆睡をかましたけどジルは寝てない、多分。だから、疲れてるといえば疲れてる筈なんだ。
だから眠いかもしれない。
まだ眠くない俺に構わず、どうぞ寝て頂いて。
本当はなー、遥陽とかいればなー、ゲームとかしたいんだけど。
残念ながらいないので、寝るかぼーっとするかしか選択肢がない。
眠気がないとはいえ、今のおれならほっといたらその内寝てるかもしれないけど。
ベッドでごろごろしながら自分の両手を見つめる。
魔力だだ漏れってどこから出てるんだろ。全然わっかんないや。
「どうしたの、怪我でもした?あ、ナイフの傷跡が」
「いやいやちがうちがう、あんなんもうふさがったし」
「本当?見せて」
「うい」
傷をつけたのは左手なのだから、その片手だけ出せばいいのに両手を出してしまった。
その手を取ったジルは、両手ともまじまじと見てくる。
ほんの軽い気持ちで出したけど、たいして綺麗でもない手をそんなに見られるのはなんか……なんか、冷や汗が出るじゃないか。
手のひらを見て、ひっくり返されて、甲もチェックし、それからまた手のひらを向けて、すす、と指を走らせた。
「んっ……」
思わず身動ぎしてしまう。
ジルの長い指が、ゆっくりとおれの手を包んで、指を絡めて、握る。
触れてるのはそこだけ。
それなのに、躰の奥が、熱くなるようで。
「……っ、う」
「確かに昼のは塞がってるようだけど」
「……ゆった、じゃんっ……」
「切り傷や火傷をしてるね?大丈夫?ハルヒを呼ぶか?」
「呼ばない……てか、これくらい……痛くないし、普通だし、こんなことで魔力使わせたくない」
「綺麗な指なのに」
「おれはこれくらいでいーの」
「そう?」
「うん、自分でなんかやった証拠じゃん、別に特別綺麗な手でも大怪我でもないし、これくらいはこのままでいい」
少し落ち着いてきて、仕返しとばかりにおれもジルの手を握り返す。
おれの考えが足りないのはそういうところだ。
ジル相手にそんなことをやっても、照れるどころか倍返しされるのをわかってる筈なのに。
「そうか、うん、傷跡があってもユキの手は綺麗だよ」
握ったままの手をそのまま上に持っていき、唇を落とす。
きざったらしい行為が似合ってるのが憎たらしい。
唇と手を離された途端に自分の方へ避難させる。
あのままだと溶かされてしまう。
「ゆ、油断も隙もない……」
「俺とふたりの時はどれだけ油断してくれててもいいよ」
「ジルとふたりの時がいちばん危ない」
「はは」
おかしそうに笑うジルに枕を投げて、他の枕に顔を埋めた。
どう転んでも甘い空気にしてしまう男め。
……だめなのに、こんな空気になってしまったら、きっと流される。
だってもうすきになってしまったから。
緊張するけど、恥ずかしいけど、みっともなく思うけど、それでもジルの体温があたたかくて、キスがほしくなって、与えられるものが気持ちいいのを知ってしまった。
だから、そんな空気になったら、これが最後、次が最後とずるずる延ばしてしまいそう。
でもだからといって、自分から婚約者の話を出すことも出来ない。
……逃げてるんだって本当はわかってる。言えばこの関係が終わってしまうかもって、だから言わないんだって。
前までなら、大丈夫だったかもしれない。
でもこんなに、胸がいっぱいになる気持ちを知ってから、あの手を離すなんて出来ない。
でも浮気なんて最低で、絶対に自分がされたら嫌だし、婚約者だって傷付く。
会ったこともない婚約者だけど、おれが傷付けていい相手ではない。
じゃあ自分が手放すしかないじゃないか、割り込んだのはおれなんだから。そしてそれが出来ないから悩んでるんじゃないか。
本当に最悪だ、自分がそんなにんげんだったなんて。
「ユキ?」
「……なに」
「眠い?」
「……ねむい、」
うそ、まだ眠くない、全然。
ほんの少し、顔を動かしてジルを覗き見る。
おれの悩みなんてわかりもしないだろうジルが、優しい顔で腕を伸ばすのが見えた。
思わず自分から頭を差し出してしまう。
……意思が弱い。
「……ん、」
この手がおれだけのものになればいいのに。
そんなの、色んな意味で無理なのはわかってる。
男だし、婚約者はいるし、王太子に釣り合う身分はないし、他の世界からきた部外者だし、何よりこんなに自分本位のやつはこの優しいひとに似合わない。
セルジュさんはすごいと褒めてくれたけど、でも、この力じゃなくて……遥陽のように望まれた神子様なら、もっと近くにいても許されたんじゃないか、なんて。
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