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正直おれたちの成長はもうほぼ止まってる、今から数センチくらいしか伸びないだろ、と思ったけどそれを口にする勇気はなかった。
「叔父さんくらいになったらって……」
遥陽の父方の叔父さんは日本人離れしたイケメンだった、けど、遥陽はどう見てもおばさん似で、叔父さんのようには……と思ったけどそれも呑み込んだ。
遥陽はめちゃくちゃかわいい。おれの天使だとずっと思ってきた。
守らなきゃって。
でもそこに性的なものはなくて、弟みたいなもので、身内のようなもので……
だから付き合うとか、そんなこと、考えたことはなくて……
「そしたら優希に告白しようと思ってたのに……」
またぽろっと大粒の涙を零した遥陽に、頭の中が真っ白になる。
泣かした。おれが泣かせた。かわいいかわいいと、だいじにしたいと、ずっと思って、実際にだいじにしてきたつもりだった、遥陽を。
「……っごめ……」
「ユキ?」
「気付かなくてごめん……」
「気付かれないようにしてたもん……」
ぐずぐず泣く遥陽を慰めに行こうとして、今の自分の状態を思い出す。
このシーツの下のぐちゃぐちゃなままで出て行ける訳がなかろうが。
ぎゅう、とシーツを握り締めてベッドから動けないでいるおれを、隣のジルが覗き込み、涙を拭う。
……おれまでまた泣いてたのか。
……だって遥陽とはずっと一緒に居たし。
ずっとずっと弟のようにかわいがっていて、でも本当に遥陽の中でおれがその、恋愛対象だったのであれば、それは辛い想いもさせてしまっていたのではないかと思って。
本当におれは……自分がそういう対象なんて微塵も思ってなくて、そのことで遥陽を傷付けるのが嫌で、勝手なんだけど、それで遥陽に嫌われてしまうのが嫌だった。
遥陽のその想いに応えることは出来ない癖に、おれがいちばんじゃなくなるのが嫌だった。
「ごめん……」
シーツの中で、膝立ちになる。
う、と声が漏れた。
ナカからどろっとしたものが出たのを感じて、また座り込んでしまう。
お腹があったかいと思ってたけど、……まさか出されてたとは。そんなことにも気付かないくらい夢中になってたなんて。
ジルに怒りたいし、八つ当たりしたいし、でも今遥陽の前ですることじゃなくて、ジルも悪いんじゃなくて、そんなんじゃなくて、目の前で泣いてる遥陽に何も出来ない自分が嫌で、じゃあ遥陽とキス以上のことが出来るかというと……
例えばそうしないとしぬとか、何かの理由があれば出来なくはない。他のひとにやらせるくらいならおれが自分でやる。
でも遥陽の告白を受け入れて、となると話は違う。
「ごめん、おれ、っ」
何度も言う機会はあった。
でも遥陽の姿を見ると言えない。
華奢な躰がそこに立って涙を流してるのを直視出来ない。
自分の我儘な勝手な気持ちと、遥陽が頑張ってる中、恋愛に現を抜かしていた自分への嫌悪感。
だからといってジルの手を離せるものでもない。
言葉に詰まって、何も言えなくなる。
何か言わなきゃ、何か、何か。
何も思いつかない。
だっておれが言っていいのか。おれに何を言われても鬱陶しくないか。
口元まで何かが上がってきてるのに、遥陽を納得させる言葉も、慰める言葉も、出ない。
「……変な時間に来てごめん……僕……頭冷やすね」
「遥陽っ……」
「……おやすみ」
部屋に入ってきた時とは比べ物にならないテンションで遥陽は出ていってしまった。
気の利いた言葉も慰めも言い訳も何も出来ないまま。
そしてやっぱり追いかけることも出来ずに。
「……嘘でしょ」
しんとした部屋に絶望したような声が響いた。
こんなことなら遥陽以外にばれた方がましだった。
どうしよう、と呟くと、ジルが抱き締めてきた。
「ち、ちが、ほんとにおれ、知らなくて……」
「疑ってないよ、もしかしたらとは思ってたけど」
「えっ」
「時折ユキを見る目が熱っぽかったから注意はしてようと思ってた」
「うそだあ……」
「ほんと」
熱っぽい視線に心当たりはない。
ないけど、周りからはそう見られてたってこと?
「ど、どうしよう」
「どうしようも何も」
「遥陽に嫌われちゃったら」
「これくらいでなるわけないでしょう、」
「わかんないもん!っひ」
力を入れるとまたナカから漏れてしまう。
もう甘い空気も何もあったもんじゃない。
「……取り敢えず躰綺麗にしようか」
「お風呂いくう……」
「うん」
おれの反応に流石に思うところがあったのだろう。
今度のお風呂は反対されなかった。
◇◇◇
「寝そう……」
「だから最初止めたのに」
お風呂はまあ最悪だった。
上手く歩けないおれは風呂場まで抱き抱えられての移動だったし、軽く流すだけのつもりだったのに、気付いてしまったジルに、ナカに出されたものを掻き出させられる作業はとんでもなく恥ずかしかった。
もう絶対ナカに出させたりしない。
そこでシャノン様の言葉を思い出す。
『そういう魔法』もある。
つまりは性別なんて関係なく妊娠可能であるということ。
おれにそんな思いは一切ない。
散々文句は言ってるが立場として弁えてるつもりだ。
だけど、可能性として……そういうことも出来るということ。
だから本当はこんなこと、やっぱりやったらだめなのかもしれない、王子が婚前交渉なんて。
魔法を使わなきゃそんなことはおきないのだけど、それでも。
「叔父さんくらいになったらって……」
遥陽の父方の叔父さんは日本人離れしたイケメンだった、けど、遥陽はどう見てもおばさん似で、叔父さんのようには……と思ったけどそれも呑み込んだ。
遥陽はめちゃくちゃかわいい。おれの天使だとずっと思ってきた。
守らなきゃって。
でもそこに性的なものはなくて、弟みたいなもので、身内のようなもので……
だから付き合うとか、そんなこと、考えたことはなくて……
「そしたら優希に告白しようと思ってたのに……」
またぽろっと大粒の涙を零した遥陽に、頭の中が真っ白になる。
泣かした。おれが泣かせた。かわいいかわいいと、だいじにしたいと、ずっと思って、実際にだいじにしてきたつもりだった、遥陽を。
「……っごめ……」
「ユキ?」
「気付かなくてごめん……」
「気付かれないようにしてたもん……」
ぐずぐず泣く遥陽を慰めに行こうとして、今の自分の状態を思い出す。
このシーツの下のぐちゃぐちゃなままで出て行ける訳がなかろうが。
ぎゅう、とシーツを握り締めてベッドから動けないでいるおれを、隣のジルが覗き込み、涙を拭う。
……おれまでまた泣いてたのか。
……だって遥陽とはずっと一緒に居たし。
ずっとずっと弟のようにかわいがっていて、でも本当に遥陽の中でおれがその、恋愛対象だったのであれば、それは辛い想いもさせてしまっていたのではないかと思って。
本当におれは……自分がそういう対象なんて微塵も思ってなくて、そのことで遥陽を傷付けるのが嫌で、勝手なんだけど、それで遥陽に嫌われてしまうのが嫌だった。
遥陽のその想いに応えることは出来ない癖に、おれがいちばんじゃなくなるのが嫌だった。
「ごめん……」
シーツの中で、膝立ちになる。
う、と声が漏れた。
ナカからどろっとしたものが出たのを感じて、また座り込んでしまう。
お腹があったかいと思ってたけど、……まさか出されてたとは。そんなことにも気付かないくらい夢中になってたなんて。
ジルに怒りたいし、八つ当たりしたいし、でも今遥陽の前ですることじゃなくて、ジルも悪いんじゃなくて、そんなんじゃなくて、目の前で泣いてる遥陽に何も出来ない自分が嫌で、じゃあ遥陽とキス以上のことが出来るかというと……
例えばそうしないとしぬとか、何かの理由があれば出来なくはない。他のひとにやらせるくらいならおれが自分でやる。
でも遥陽の告白を受け入れて、となると話は違う。
「ごめん、おれ、っ」
何度も言う機会はあった。
でも遥陽の姿を見ると言えない。
華奢な躰がそこに立って涙を流してるのを直視出来ない。
自分の我儘な勝手な気持ちと、遥陽が頑張ってる中、恋愛に現を抜かしていた自分への嫌悪感。
だからといってジルの手を離せるものでもない。
言葉に詰まって、何も言えなくなる。
何か言わなきゃ、何か、何か。
何も思いつかない。
だっておれが言っていいのか。おれに何を言われても鬱陶しくないか。
口元まで何かが上がってきてるのに、遥陽を納得させる言葉も、慰める言葉も、出ない。
「……変な時間に来てごめん……僕……頭冷やすね」
「遥陽っ……」
「……おやすみ」
部屋に入ってきた時とは比べ物にならないテンションで遥陽は出ていってしまった。
気の利いた言葉も慰めも言い訳も何も出来ないまま。
そしてやっぱり追いかけることも出来ずに。
「……嘘でしょ」
しんとした部屋に絶望したような声が響いた。
こんなことなら遥陽以外にばれた方がましだった。
どうしよう、と呟くと、ジルが抱き締めてきた。
「ち、ちが、ほんとにおれ、知らなくて……」
「疑ってないよ、もしかしたらとは思ってたけど」
「えっ」
「時折ユキを見る目が熱っぽかったから注意はしてようと思ってた」
「うそだあ……」
「ほんと」
熱っぽい視線に心当たりはない。
ないけど、周りからはそう見られてたってこと?
「ど、どうしよう」
「どうしようも何も」
「遥陽に嫌われちゃったら」
「これくらいでなるわけないでしょう、」
「わかんないもん!っひ」
力を入れるとまたナカから漏れてしまう。
もう甘い空気も何もあったもんじゃない。
「……取り敢えず躰綺麗にしようか」
「お風呂いくう……」
「うん」
おれの反応に流石に思うところがあったのだろう。
今度のお風呂は反対されなかった。
◇◇◇
「寝そう……」
「だから最初止めたのに」
お風呂はまあ最悪だった。
上手く歩けないおれは風呂場まで抱き抱えられての移動だったし、軽く流すだけのつもりだったのに、気付いてしまったジルに、ナカに出されたものを掻き出させられる作業はとんでもなく恥ずかしかった。
もう絶対ナカに出させたりしない。
そこでシャノン様の言葉を思い出す。
『そういう魔法』もある。
つまりは性別なんて関係なく妊娠可能であるということ。
おれにそんな思いは一切ない。
散々文句は言ってるが立場として弁えてるつもりだ。
だけど、可能性として……そういうことも出来るということ。
だから本当はこんなこと、やっぱりやったらだめなのかもしれない、王子が婚前交渉なんて。
魔法を使わなきゃそんなことはおきないのだけど、それでも。
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