【完結】召喚失敗された彼がしあわせになるまで

鯖猫ちかこ

文字の大きさ
119 / 161

119*

しおりを挟む
 はあはあと肩で息をして、俯いたままやり過ごす。
 暫く待って、少し落ち着いた頃、またジルの指が動き出した。
 一度スイッチの入った躰は、ちょっとしたことでびくびく震えてしまう。
 触れられるとこがどこもかしこも気持ちいい。
 我慢するように、爪先に力が入る。

「ユキ……」 
「……っ、も、いいよっ……」

 熱を含んだ視線に頷く。元よりおれは早く早くと急かしていたのだ。

「……ッ、」

 指が抜かれて、ジルのものが宛てがわれる。
 おれが首から腕を離さないものだから、少しやりにくそうだったけど、それでもその腕を振り払うことはなかった。
 時間を掛けて、ゆっくりゆっくりナカに挿入っていって、全部挿入ったのかな、というところで馴染むのを待つかのように動かない。
 あつくて、もどかしくて、少し腰が揺れる。耳元でくす、と笑う声がした。
 そこでみっともないことをしたことが恥ずかしくなって、顔が熱くなってしまう。
 ぼそりと呟いたごめんなさいに、謝ることはないよと優しい声が降る。

「……だって、あ、あつく、て、いっぱいで、その……」
「いいよ、もどかしかったよね、ごめんね、今日だけ我慢して」

 言い訳するおれの額にキスをして微笑む。
 余裕のないおれと違って、そんな風に優しく出来るジルが少し恨めしくて、悔しくて、でも心の中ではもうすきすきすき、かっこいい、だいすきって煩い。
 どんどん制御出来なくなってる気がする。

「……っあ、ん!」
「もうそろそろ大丈夫そうかな」

 最初は遠慮がちにゆるゆると動いて、気がついたらベッドが軋む程になっていた。
 指だって充分過ぎるほど気持ちいいけど、でもそれとはまた違う、ナカがいっぱいになる感覚に躰が震える。
 ジルが動く度にあっと声が押し出されてしまう。

「んっ、あ、ッん、ふ、うぅ……」
「ユキ、大丈夫?気持ちいい?」
「あっ、う、きもち、いっ……じぅ、はっ……?」
「ん、俺も気持ちいいよ」
「ふあ、ぅ……は、あたま、とくち、してっ……」

 頭も舌も回らなくて、上手く話せない子供のようになってしまっている。
 それでもジルわかってくれたようで、髪を撫で、キスをしてくれる。
 満たされるような、あたたかい気持ち。

「あっ……や、ぁ、そこっ……」
「ここ?」
「や、あっ……!あ、あッ……う、」

 奥の方にぎゅう、とされた瞬間、目の前がちかちかした。
 躰がびくびくとして、気持ちいい、気持ちいいのに、イったと思ったのに達してなくて、頭が混乱する。
 待って、まだ気持ちいい、動かないでほしい、でもそう口に出来ないでいると、ジルが察したのか動きを緩めてくれた。
 なにこれ、なに……
 呆然としてると、大丈夫だよ、と宥めるように声を掛けられた。ユキの躰が慣れてきたってことだよ、と。

「……お、おかしくない?」
「ないよ、寧ろいいことじゃないかな」
「いい、こと?」
「ユキは気持ちいいし、俺はユキの色んなところが見れて嬉しいよ」

 かわいいし、と頬を撫でる。
 ね、いいことでしょ、と微笑むジルに呆れちゃうけど、でも内心心臓はばくばくして、もう、どこまで甘やかす気だろう。
 でもこれ、本当に大丈夫なのかな、不安になるし、ネットがあればきっと検索している。そういうとこ不便だと、改めて思った。
 ……やっぱり、当然だけど、前の生活に慣れちゃってるんだよな。

「……おれだって、ジルの色んなとこ、見たい」
「いいよ」
「へ」
「ユキになら全部」
「ー……っ」

 真っ直ぐな視線を逸らすことが出来なかった。
 疚しいことなんかなにもないような、真っ直ぐな瞳。
 自分だけが迷って、おかしいことをして、間違うような、そんな気がして、慌ててジルの肩にぐり、と頭を押し付けた。
 もう動いていいよ、と消えるような声で言うと、押し付けた頭毎抱えられて、痛かったり無理だったら教えて、と同じくらい小さな、囁くような優しい声で返された。

「……っ、ん」

 抱えられてるから、ちゃんと頷くことは出来なかった、ほんの少し、ジルの肩口に擦り寄せたくらいの動きにしかなからなかった。
 額に当たる布の感触がもどかしくて、頬に触れた首の体温に安心する。

「っあ、は……ッう、」

 再度始まった抽挿に、奥の方がきゅうきゅうなってる気がする。
 心做しか、ジルも気持ちよさそうな気がする。
 まだ数回しかしたことないのに、おれの躰がどんどんかわってくようで、こわくて、でもそれで少しでもジルが気持ちよくなってくれてるなら嬉しい。
 嬉しい。
 さみしいのに。

「あっ、あ、う、あッ、ん……ぅ」

 後何回出来るだろう、後何回抱き締めて貰えて、何回キスして貰えて、何回嬉しい言葉を貰えて、何回気持ちを伝えることが出来るだろう。
 短い、一週間なんて短過ぎる。
 もっともっともっと、一緒にいたい、やりたいこともしてほしいことも、たくさんあるっていうのに。

「……ジル、ぅあ、っす、き、う、」
「ユキ?」
「あ、あぅ、ん、すきっ……あ、もっ、とお……!」

 どうやったらちゃんと伝えられるだろう。
 自分の経験値の低さが恨めしい。
 ジルが忘れられないくらい、おれに夢中になってほしいのに、やり方がわからない。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...