【完結】召喚失敗された彼がしあわせになるまで

鯖猫ちかこ

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 おれの嬌声に満足したのか、ゆるゆるとジルが動き出す。
 おれがゆっくりと言ったから、本当にゆっくりと。
 もう馴染んだからいいのに、もどかしい。

「は……ぅ、」

 息が漏れる。どうしよう、もうちょっと、くらい早くても……
 でもゆっくりって言ったのはおれで、いやでもこれは生殺しかも……早くして、は流石に引かれるかな。

「う、あ……ッ」

 シーツを握り締める手に、ジルの大きな手が重なる。
 おれのすきなあたたかい手。
 思わずそこに頬を寄せると、背中でぴくりと反応したのがわかった。
 ……

 そういう反応されると、ちょっと、まあ、いたずらじゃないけど、おれだって心がざわざわする。
 おれだけいつもこんなにどきどきさせられてずるい。
 おれだってジルをどきどきさせたい。

「んう……」
「……ユキ?」

 重なった指先にキスをして、舌先を這わして、含む。
 ちゅうと吸うと、背後で息を呑む音がした。
 ……勝った。
 何の勝負かわからないけど、そんなことを思ってしまう。
 いつもおれが余裕なくて、慌てた姿しか見せてないから、ジルのたまに見せる焦る姿が嬉しい。
 残念なのは今、こんな体勢だからちゃんと見ることが出来ないってこと。

「……っあ!」
「……今のはユキが煽ったんだよ」
「ッあ、あ!やっ、あ、あ、ッう」

 ゆっくりしてあげようと思ったのに、と息を漏らしながらジルが言う。
 早くなった抽挿に、少し望んだことだったけど、躰は急にはついていけなかったみたいだ。
 がくがく揺さぶられながら高まっていく。
 でも待って、待ってほしい、これじゃあ足りない。

「まっ、やめ、待ってえ、あ、待っ、う」
「……っ」
「かおっ、見たいっ……あぅ、ジルのっ……」
「ん、俺も、ユキのかわいい顔見たい」

 こんなことするのはジルしか有り得ないんだけど。
 でもちゃんと、ジルだってわかりながら達したかった。
 ぐる、と繋がったまま仰向けにされて、声も、前もその、少し出してしまった。

「……っ」
「……」
「だってっ……」
「かわいいね、大丈夫、もうぎりぎりだったもんね……かわいい」
「……ッう」

 おかしそうに、愛しそうに笑って、おれの頬を撫でて、軽く唇を重ねる。
 次に瞳があった時には、その笑顔が消えて、熱っぽくて、……おれのことがすきだって顔をしていた。
 嬉しい。
 そういう顔、見せてくれるのが。
 おれよりずっと大人で、しっかりしていて、隠そうと思ったら隠せるかもしれないのに、ちゃんと見せてくれる。
 言葉で、態度で教えてくれるから、不安になってもその度に引き戻して貰える。

「う、あッん、は、んぁ、あ」
「やっぱりこっちの方がユキが見れてすきだなあ」
「んっん、う」
「……ユキは背中も頭も全部かわいいけど」
「そんなっ、わけっ……あっ」
「かわいいよ、全部ぜんぶ、かわいい」
「んぅ……っあ、う、や、っあ」
「あたまっから爪先まで全部かわいい」
「は、ん、ッく、ぅう……」
「かわいいユキ……今だけは全部俺のだ」
「うんっ……ん、ん……あ」
 
 そうだよ、もう全部ジルのだ。
 心ごと、丸ごと。全部。独り占めして、どこにも行けないくらい。

「……あ、や、もっ……だめ、」
「……いいよ」
「っあ、ジル、じる、すき……言って、ジルも、あっ、ゆって」
「ん、ユキ、かわいい、すきだよ」
「……っ、ん!」
「愛してる、」
「──……っあ!」

 自分で強請った癖に、ジルの甘い言葉が脳に、腰に響いて、くらくらする。
 真っ直ぐの視線はおれの視線とぶつかって、それでも逸らされることはなくて、眩しいのに、溶けるようで、包むようで、甘い甘い痺れと一緒になって弾けた。



「ふぁ……」
「大丈夫?」 
「らいじょぶ……」
「いいよ、寝てて」
「うん……ん、寝ない」

 寝ないの、とジルが笑う。うん、寝ない。まだ。

「躰、気持ち悪いでしょう、綺麗にするから」
「だいじょぶ、だってば……起きて、からで……」

 ジルの腕を掴んで止める。力は全然入らなかったけど。
 気にし過ぎだと思う。
 ちょっと躰がべたべたなくらい、大丈夫だ。
 そりゃ、シャワーを浴びて、シーツを替えるのが一番なのはわかってるけど。
 でも今はそんなことより、この余韻に浸っていたい。

「起きた時に、ジルがいない方がやだ……」
「……わかった」

 じゃあ、と横になるジルに笑顔になってしまう。
 いつでも近くにいて欲しい。手を伸ばしたらすぐ届く距離に。

「……ご機嫌だね」
「ん、そうかな」
「嬉しそうでかわいい」
「嬉しいよ」

 望み通りに抱いてもらって、今もこうやって横にいてもらって、嬉しい。
 いつも優しいジルが更に優しくて、甘ったる過ぎて口にも入れられないくらい甘やかしてもらって、しあわせじゃないなんて言ったら罰が当たってしまう。

 額に張り付いた前髪を避けて、キスをして、視線をあわせて、おやすみ、と言う。
 それに返さずに、少し近付くと、だっこしてあげようか、と笑うから、頷いた。
 まだ少し熱いジルの胸に頭を乗っけて、おでこにジルの息を感じて、やっと瞳を閉じる。
 ジルの腕がおれを抱いて、それに満足する。
 眠りに落ちてもこのままでいてほしいと思った。
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