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遥陽だって鈍感じゃない。
おれがジルと遥陽を選べないことだってわかってると思う。
その上での、もしかしたら遥陽って言わないかな、っていう意地悪。
おれが調子の良い奴なら遥陽を選ぶよって言えたかもしれない。
でもこんな、ジルが居ない時でも言えなかった、選べなかった。
「どっちも居なきゃいやだ……」
「……うん」
「……遥陽にはめちゃくちゃ言ってるのはわかるんだけど、でも」
「うん、いいよ」
「……選ばない癖に、離れるのはいやだなんて迷惑なの、わかるけど」
「迷惑じゃないよ」
おれのことをすきだと言った遥陽を、友人として離れたくないというおれが自分勝手で、もしかしたらおれが離れてしまった方が遥陽は吹っ切れるかもしれないのに、でも離れたくない。
向こうの世界でなら距離を置くのもありだったかもしれないけど、二度と会えないかもとなると話は別だ。
おれは遥陽もジルもどっちも失いたくない。
「嬉しい、僕だって、この気持ちが迷惑だって言われなくて」
「……遥陽」
「小さい時からずうっと、優希だけ見てたよ」
「……」
「優希が僕を守ってくれるのがかわいくて嬉しくて、優希が僕を見てくれのが嬉しいから、離れられないように、優希がすきな僕を演じてた」
「……え?」
「優希が僕のこと、かわいいって言うから、大きくなれるまではかわいい僕でいようって思ったし、それまで誰にも優希を取られたくないと思って……ごめんね、僕が傍にいる限りは、大丈夫だと思ってた、自惚れてた、優希だって僕のこと、すきだって、そういう意味ではないかもしれないけど、大きくさえなれば優希は僕を選ぶって」
大きくもなれなかったし、選んでも貰えなかったけど、とへら、と笑う。
僕性格悪いから、と。
「幼稚園の時はミカちゃんが優希のことがすきだっていうから、優希は僕がすきだよ、ミカちゃんより僕の方が仲良いしかわいいもんって言ったら泣いて怒られた」
……それは覚えてる。そんなことを言ったのは知らなかったけど、ミカちゃんに何故か急にゆきくんなんてもうきらいと言われて意味がわからなくて先生に泣きついた。
「小学校の時は休み時間も遊びたがる優希に僕を優先させたし」
それはまあ……単純に遥陽と一緒の方が楽しかっただけだし、その頃には変態に目をつけられやすくなった美少年をおれが守る!とか思ってただけ。
「中学の時も、優希に好意を持ってた女子に僕の方がかわいいし女子を選ぶわけないじゃんってこっそり牽制してたし、優希のことをかわいいって言う男子にも僕の方がかわいいだろってわからせてやった」
……話がおかしい方に来たぞ、どうしたどうした。
「高校の時は優希にべったりしてれば皆セット扱いしてくれたし、優希も勝手に僕の心配してくれたし、この顔があれば優希を縛るのは簡単だなって思ってた」
「んん……?」
「だって優希、僕の顔に弱いし」
「だってかわいいし……」
「ほらね、だから暫くはこれでいっかって……その内大きくなったら叔父さんみたいになるからって」
「……この前も思ったけど、遥陽叔父さんよりおばさん似じゃん、叔父さん父方の方でしょ、似るなら母方の方じゃない、確か叔母さん元芸能人の綺麗なひとじゃなかったっけ」
「どう遺伝するかわかんないじゃん」
「いや……」
「ジルさえいなかったら上手くいったのに……」
「……いやそうもならなかったと思うけど」
結局おれにとっては遥陽は恋愛対象ではなくて、庇護対象というか……
「ずっとずっと優希のこと狙ってたんだよ、性格悪いでしょ」
「いや、悪くはないけど」
「優希から恋愛の機会を奪ってたんだけど」
「おれより遥陽の顔がかわいいってそっちにいったんでしょ?そんなんどうせ続かないし、実際遥陽のがかわいいし」
「優希のがかわいいよ」
「……そんなこと悩んでたの」
「悩んではない、こんな性格なのは自分がいちばんわかってるし」
「遥陽が我儘なのはおれもわかってたし、そんなとこもかわいいって思ってたし、おれからしたら許容範囲内なんだけど」
性格悪いなんていうからどんなものかと思えば。
おれへの独占欲だと思えばかわいらしいものだ。
……寧ろそれを裏切ったおれの方が、ずっといやな奴だ。
「ジルとのこと、応援しなきゃいけないんだろうけど、まだ素直に応援出来ない」
「……うん」
「ほんとは優希がしあわせなのがいちばんいいんだけど。でもまだ心の整理が出来なくて……優希がこっぴどく振られたらいいのにって、そしたら僕が慰めてあげるのにって。でも多分そんなことになったら僕はジルをぶん殴りにも行くと思うし。こんなかわいい優希を振るなんてって。だからしあわせでいてほしいんだけど」
「……神子様の祝福だ」
「心からまだ祝えないけど……ジルはむかつくけど、でも優希には誰よりもいちばんしあわせでいてもらいたい、だから」
「……」
「優希がいちばんしあわせになれる未来を選んで。お願いだから、僕よりジルを選んで」
苦しそうに、でも笑顔で言う遥陽に胸が痛くなる。遥陽を選ばなかったのはおれなのに。
なのに、怒ってても辛くても、遥陽はおれのことを想ってくれるんだと考えると、嬉しくて苦しくて、笑ってみせるしかなかった。
おれがジルと遥陽を選べないことだってわかってると思う。
その上での、もしかしたら遥陽って言わないかな、っていう意地悪。
おれが調子の良い奴なら遥陽を選ぶよって言えたかもしれない。
でもこんな、ジルが居ない時でも言えなかった、選べなかった。
「どっちも居なきゃいやだ……」
「……うん」
「……遥陽にはめちゃくちゃ言ってるのはわかるんだけど、でも」
「うん、いいよ」
「……選ばない癖に、離れるのはいやだなんて迷惑なの、わかるけど」
「迷惑じゃないよ」
おれのことをすきだと言った遥陽を、友人として離れたくないというおれが自分勝手で、もしかしたらおれが離れてしまった方が遥陽は吹っ切れるかもしれないのに、でも離れたくない。
向こうの世界でなら距離を置くのもありだったかもしれないけど、二度と会えないかもとなると話は別だ。
おれは遥陽もジルもどっちも失いたくない。
「嬉しい、僕だって、この気持ちが迷惑だって言われなくて」
「……遥陽」
「小さい時からずうっと、優希だけ見てたよ」
「……」
「優希が僕を守ってくれるのがかわいくて嬉しくて、優希が僕を見てくれのが嬉しいから、離れられないように、優希がすきな僕を演じてた」
「……え?」
「優希が僕のこと、かわいいって言うから、大きくなれるまではかわいい僕でいようって思ったし、それまで誰にも優希を取られたくないと思って……ごめんね、僕が傍にいる限りは、大丈夫だと思ってた、自惚れてた、優希だって僕のこと、すきだって、そういう意味ではないかもしれないけど、大きくさえなれば優希は僕を選ぶって」
大きくもなれなかったし、選んでも貰えなかったけど、とへら、と笑う。
僕性格悪いから、と。
「幼稚園の時はミカちゃんが優希のことがすきだっていうから、優希は僕がすきだよ、ミカちゃんより僕の方が仲良いしかわいいもんって言ったら泣いて怒られた」
……それは覚えてる。そんなことを言ったのは知らなかったけど、ミカちゃんに何故か急にゆきくんなんてもうきらいと言われて意味がわからなくて先生に泣きついた。
「小学校の時は休み時間も遊びたがる優希に僕を優先させたし」
それはまあ……単純に遥陽と一緒の方が楽しかっただけだし、その頃には変態に目をつけられやすくなった美少年をおれが守る!とか思ってただけ。
「中学の時も、優希に好意を持ってた女子に僕の方がかわいいし女子を選ぶわけないじゃんってこっそり牽制してたし、優希のことをかわいいって言う男子にも僕の方がかわいいだろってわからせてやった」
……話がおかしい方に来たぞ、どうしたどうした。
「高校の時は優希にべったりしてれば皆セット扱いしてくれたし、優希も勝手に僕の心配してくれたし、この顔があれば優希を縛るのは簡単だなって思ってた」
「んん……?」
「だって優希、僕の顔に弱いし」
「だってかわいいし……」
「ほらね、だから暫くはこれでいっかって……その内大きくなったら叔父さんみたいになるからって」
「……この前も思ったけど、遥陽叔父さんよりおばさん似じゃん、叔父さん父方の方でしょ、似るなら母方の方じゃない、確か叔母さん元芸能人の綺麗なひとじゃなかったっけ」
「どう遺伝するかわかんないじゃん」
「いや……」
「ジルさえいなかったら上手くいったのに……」
「……いやそうもならなかったと思うけど」
結局おれにとっては遥陽は恋愛対象ではなくて、庇護対象というか……
「ずっとずっと優希のこと狙ってたんだよ、性格悪いでしょ」
「いや、悪くはないけど」
「優希から恋愛の機会を奪ってたんだけど」
「おれより遥陽の顔がかわいいってそっちにいったんでしょ?そんなんどうせ続かないし、実際遥陽のがかわいいし」
「優希のがかわいいよ」
「……そんなこと悩んでたの」
「悩んではない、こんな性格なのは自分がいちばんわかってるし」
「遥陽が我儘なのはおれもわかってたし、そんなとこもかわいいって思ってたし、おれからしたら許容範囲内なんだけど」
性格悪いなんていうからどんなものかと思えば。
おれへの独占欲だと思えばかわいらしいものだ。
……寧ろそれを裏切ったおれの方が、ずっといやな奴だ。
「ジルとのこと、応援しなきゃいけないんだろうけど、まだ素直に応援出来ない」
「……うん」
「ほんとは優希がしあわせなのがいちばんいいんだけど。でもまだ心の整理が出来なくて……優希がこっぴどく振られたらいいのにって、そしたら僕が慰めてあげるのにって。でも多分そんなことになったら僕はジルをぶん殴りにも行くと思うし。こんなかわいい優希を振るなんてって。だからしあわせでいてほしいんだけど」
「……神子様の祝福だ」
「心からまだ祝えないけど……ジルはむかつくけど、でも優希には誰よりもいちばんしあわせでいてもらいたい、だから」
「……」
「優希がいちばんしあわせになれる未来を選んで。お願いだから、僕よりジルを選んで」
苦しそうに、でも笑顔で言う遥陽に胸が痛くなる。遥陽を選ばなかったのはおれなのに。
なのに、怒ってても辛くても、遥陽はおれのことを想ってくれるんだと考えると、嬉しくて苦しくて、笑ってみせるしかなかった。
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