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「いいよ、俺で出来るなら受けるよ、それどっかにやります~って言いに行ったりした方がいいやつ?」
「いえ、正式な依頼とかじゃないから……」
「事後報告でいい感じね、早速明日行った方がいいかな」
早過ぎません?そう訊く怜くんに、街の子たちが被害にあってるのなら早い方が良くない、と返すと、そりゃそうですけど、と口篭った。
「準備とか~……」
「いらなくない?場所もすごい遠くとかじゃないんでしょ」
「まあ……僕はともかく、シャルルさんならそんなに……」
「じゃあちゃっちゃと終わらせちゃお」
「そんな簡単に」
「引っ張る程でもなくない?」
そうですけどお……とまた怜くんはもごもご。
俺は割と楽観的というか、大物と戦ったことないくせに、まあシャルルのちからがあればどうにかなるでしょ、なんて考えてる。相手が魔法を使うなら魔力妨害、物理で襲ってくるなら剣を振り回せばいいと思ってるのだ。
「ノエ見ててくれるよね?」
「まさかひとりで行く気ですか?」
「え、うん、そんな危ないとこ連れてけないよ」
「そんな危ないとこひとりで行く気ですか」
僕も行きますよ、と怒ったように言う怜くんにびっくりする。
それはちょっと。
「ノエとリアムを連れてくのは……」
「勇者さまへのイベントとはいえ、ここは僕たちのテリトリーですよ、物語に関係あるのかないのか、僕はついて行くべきだと思うし、そしたらリアムも置いていけない」
そうなると勿論ノエやソフィだって置いてく訳にはいかない。
にや、と笑った怜くんは、皆で行ってもちゃっちゃと終わらせてくれるんですよね、とからかうように言った。
それくらいの軽口を叩けるようになるほどには心を許してくれてるようだ。
なのでこちらも、頼りにしてるよ、魔法使いさま、とちょっとしたお返しを。
ゲームでいえばサブクエスト、それくらいの気持ちでいたんだ。
◇◇◇
情報が少ないので、あの後特に相談なんてすることもなく、ただちょっとだけ、明日早く出るからとグラスに残ってる分だけ飲み干して解散した。
怜くんは自室へ、俺は……ノエを抱えて、取り敢えずノエに与えられた部屋へ。
ぎゅううと腰に抱き着くノエを剥がすのは大変だった。
意地でも離れん!という執着を感じるほど。
仕方がないので、頬をぺちぺち軽く叩いて、起きて、とどうにか半分起きてる状態まで持っていき、腕を引き剥がすことが出来た。
ベッドまで連れてくね、と言うと、ん、とぼんやりした声で頷き、今度は俺の首に腕を回す。
落ちないようにするには正解だ。正解なんだけど。
なんだか俺の心も鷲掴みにされちゃったような気持ち。
抱き抱えられたノエはすり、と俺の首元へ頬を寄せる。
どきっとしたけれど、すぐにノエは意識を手放したようで、ずっしりと重みを感じた。
……助かったような、残念なような。
部屋まで運び、ノエをベッドに下ろす。筈だった。
また腕を離さないの、この子。
起きてる?わざとだよね?と確認したくなる程強くぎゅうぎゅうと首元にしがみついてくるものだからもう。……絶対起きてるでしょ。
「ノエ離して、俺ももう眠い」
「ん~……」
「ノエ」
「……ソフィ、いない、から」
「から?」
「しゃるが、いっしょ……」
「……」
んもう、君、ソフィ関係ないでしょ、ソフィがいようがいまいが一緒に寝ようと持ち込むでしょ。
わかってるよ、でもだからそんなとこまでかわいいなと思ってしまうようになってしまった。
ただ、それとは別に、わざとらしかったり無理だったり、そんな言い訳を、させてしまうようになった自分が情けない。
理由を見つけなきゃ、俺が一緒に寝ないと思ってるんだよね。それはまあ、そのつもりだったけれど。リアムの用意してくれた部屋に行こうと思ってたけれど。
「……いっしょがいい、」
「わかったわかった、うん、一緒に寝よ、ね」
そう言ったところで腕は離れない。離す気なんてない。ああもう。このまま寝るしかないかあ。
仕方ないなとノエを首から下げたままベッドに横になった。
それを待ってましたと言わんばかりに、腕を離し、胸元にぴったり収まった。
この子は!もう!
「……そこがいいの?」
「うん、ここがいちばん音がきこえる、から……」
音?と考えて、それがああ、心臓の音か、と気付くと妙に恥ずかしくなった。
かおはさあ、ポーカーフェイスとかいうけど、でも心臓の音は誤魔化せないでしょ、どきどきしてるとかしてないとか、すぐばれちゃうじゃん。
格好つけてるだけとかばれちゃうの、すっごい恥ずかしいんだけど。
「う、腕枕は?」
「うでまくら……?」
何それ、と言いたげな視線で見上げるノエに、ぽんぽんと腕を叩くと、寝にくそうなんて当たり前のことを言われてしまった。
その通りだとは思うんですけどね。
「腕枕ってのはね、恋人……すきなひとにしてもらうんだよ、」
「すきなひと」
「……」
何言ってんだ俺。自分で言っておいてなんだか恥ずかしい。
でもそんなことにノエはずりずりと上に上がり、俺の腕に小さな頭を置いた。
これでいい?というように視線だけで問うてくる。
ノエの頭が心臓から離れて良かった。一々の動きがかわいくて、もう既に心臓が煩くなってそうで。
「いえ、正式な依頼とかじゃないから……」
「事後報告でいい感じね、早速明日行った方がいいかな」
早過ぎません?そう訊く怜くんに、街の子たちが被害にあってるのなら早い方が良くない、と返すと、そりゃそうですけど、と口篭った。
「準備とか~……」
「いらなくない?場所もすごい遠くとかじゃないんでしょ」
「まあ……僕はともかく、シャルルさんならそんなに……」
「じゃあちゃっちゃと終わらせちゃお」
「そんな簡単に」
「引っ張る程でもなくない?」
そうですけどお……とまた怜くんはもごもご。
俺は割と楽観的というか、大物と戦ったことないくせに、まあシャルルのちからがあればどうにかなるでしょ、なんて考えてる。相手が魔法を使うなら魔力妨害、物理で襲ってくるなら剣を振り回せばいいと思ってるのだ。
「ノエ見ててくれるよね?」
「まさかひとりで行く気ですか?」
「え、うん、そんな危ないとこ連れてけないよ」
「そんな危ないとこひとりで行く気ですか」
僕も行きますよ、と怒ったように言う怜くんにびっくりする。
それはちょっと。
「ノエとリアムを連れてくのは……」
「勇者さまへのイベントとはいえ、ここは僕たちのテリトリーですよ、物語に関係あるのかないのか、僕はついて行くべきだと思うし、そしたらリアムも置いていけない」
そうなると勿論ノエやソフィだって置いてく訳にはいかない。
にや、と笑った怜くんは、皆で行ってもちゃっちゃと終わらせてくれるんですよね、とからかうように言った。
それくらいの軽口を叩けるようになるほどには心を許してくれてるようだ。
なのでこちらも、頼りにしてるよ、魔法使いさま、とちょっとしたお返しを。
ゲームでいえばサブクエスト、それくらいの気持ちでいたんだ。
◇◇◇
情報が少ないので、あの後特に相談なんてすることもなく、ただちょっとだけ、明日早く出るからとグラスに残ってる分だけ飲み干して解散した。
怜くんは自室へ、俺は……ノエを抱えて、取り敢えずノエに与えられた部屋へ。
ぎゅううと腰に抱き着くノエを剥がすのは大変だった。
意地でも離れん!という執着を感じるほど。
仕方がないので、頬をぺちぺち軽く叩いて、起きて、とどうにか半分起きてる状態まで持っていき、腕を引き剥がすことが出来た。
ベッドまで連れてくね、と言うと、ん、とぼんやりした声で頷き、今度は俺の首に腕を回す。
落ちないようにするには正解だ。正解なんだけど。
なんだか俺の心も鷲掴みにされちゃったような気持ち。
抱き抱えられたノエはすり、と俺の首元へ頬を寄せる。
どきっとしたけれど、すぐにノエは意識を手放したようで、ずっしりと重みを感じた。
……助かったような、残念なような。
部屋まで運び、ノエをベッドに下ろす。筈だった。
また腕を離さないの、この子。
起きてる?わざとだよね?と確認したくなる程強くぎゅうぎゅうと首元にしがみついてくるものだからもう。……絶対起きてるでしょ。
「ノエ離して、俺ももう眠い」
「ん~……」
「ノエ」
「……ソフィ、いない、から」
「から?」
「しゃるが、いっしょ……」
「……」
んもう、君、ソフィ関係ないでしょ、ソフィがいようがいまいが一緒に寝ようと持ち込むでしょ。
わかってるよ、でもだからそんなとこまでかわいいなと思ってしまうようになってしまった。
ただ、それとは別に、わざとらしかったり無理だったり、そんな言い訳を、させてしまうようになった自分が情けない。
理由を見つけなきゃ、俺が一緒に寝ないと思ってるんだよね。それはまあ、そのつもりだったけれど。リアムの用意してくれた部屋に行こうと思ってたけれど。
「……いっしょがいい、」
「わかったわかった、うん、一緒に寝よ、ね」
そう言ったところで腕は離れない。離す気なんてない。ああもう。このまま寝るしかないかあ。
仕方ないなとノエを首から下げたままベッドに横になった。
それを待ってましたと言わんばかりに、腕を離し、胸元にぴったり収まった。
この子は!もう!
「……そこがいいの?」
「うん、ここがいちばん音がきこえる、から……」
音?と考えて、それがああ、心臓の音か、と気付くと妙に恥ずかしくなった。
かおはさあ、ポーカーフェイスとかいうけど、でも心臓の音は誤魔化せないでしょ、どきどきしてるとかしてないとか、すぐばれちゃうじゃん。
格好つけてるだけとかばれちゃうの、すっごい恥ずかしいんだけど。
「う、腕枕は?」
「うでまくら……?」
何それ、と言いたげな視線で見上げるノエに、ぽんぽんと腕を叩くと、寝にくそうなんて当たり前のことを言われてしまった。
その通りだとは思うんですけどね。
「腕枕ってのはね、恋人……すきなひとにしてもらうんだよ、」
「すきなひと」
「……」
何言ってんだ俺。自分で言っておいてなんだか恥ずかしい。
でもそんなことにノエはずりずりと上に上がり、俺の腕に小さな頭を置いた。
これでいい?というように視線だけで問うてくる。
ノエの頭が心臓から離れて良かった。一々の動きがかわいくて、もう既に心臓が煩くなってそうで。
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