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あってる、その寝方であってますよ……と観念して、ノエの首元まで布団を引き上げた。
ノエは何度か頭の起き方を確認して、ううん、と唸る。
やっぱり寝にくいらしい。硬いし高いしまあそうだよね。
でも腕枕に文句を言われたのは初めてかも。
心臓から離す為とはいえ俺から呼んだ手前、断られるのは結構恥ずかしいな……
「んー……ん、ん」
「……」
「んっ、ここ」
「もう腕枕じゃない……」
もうそこは肩だ。そう思ったけれど、眠そうなぽやぽやした表情のまま、んふふ、と嬉しそうに笑うものだから、もうすきにしてくれと思う。
かおが近い。ノエのかわいらしいかおが。
そんなことで俺がどきどきしてるのを知ってか知らずか、顎の辺りにちゅうとキスをして、にへらと笑うとまた肩に頭を落とす。
……これは唇にもしろと強請られるか、勝手にしてくるかどちらかだ。どっちだろうか、正直どっちもアリだ。
唇を尖らせて、口にしてほしいと拗ねたように言うノエもかわいいし、ぎこちないキスを仕掛けてくるノエだってかわいい。
そう思っていたのに。
待っている間にすや、と寝てしまった。
……初めて酔っ払いに弄ばれるという経験をしました。
◇◇◇
みーんなで!おでかけ!
リアムの跳ねるような声が響く。そんな楽しいものではないんだけれどな。
俺たちが向かうのは、街の端、森の中にある薄暗いであろう洋館。
おでかけだー!なんて楽しそうなところではないだろう。
怜くんが含むように、危ないかもしれないから静かにすること、自分たちの言うことをちゃあんと聞くこと、離れないこと、を約束させる。
弟子になりにきただけあって、そこはきりっとしたかおではい!と良いお返事をしていた。
とはいえ何をしでかすのがわからないのがこども。特にリアムには念入りに、普通の人間の子に見えるように認識阻害を掛けておく。
かわいいかわいい獣人だー!なんて誘拐でもされたら別のイベントが発生してしまう。
朝食を済ませると、帰りのことも考えて早目に出ることにした。
怜くんは箒に跨り、リアムも一緒に載せる。俺やノエは体重オーバーだ、乗れない。
かわりに足元の雪を溶かして道を作ってくれた。
ここ最近のノエは一日に何回もキスを仕掛けてくるお陰で魔力もそこそこ、お陰で元気よく歩いてくれる。
流石に飛ぶ程の魔力は勿体ないらしい。ノエの魔力消費えげつないからな、ちょっとでも魔法をつかえばすぐすっからかんになってしまう。
それでも普通にしてる分には十分量だ、おれも飛びたい等と駄々を捏ねることなく……ただしっかり俺の手は繋いで歩く。
結局は甘えん坊。
「そのヨーカン?になんかあるの」
「わかんないから行くんだよ、だから変なことしないでね」
「へんなことってなんですか!」
「勝手に入ったりしないでね」
「かってにははいりません!」
リアムとノエの相手をしてるとちょっと引率の先生の気分になってきた。
ソフィも置いてくる訳にはいかず、鞄に入れて連れてきた。相変わらず丸くなって寝ている。
寒いとこ駄目なのに連れ回してごめんね、生まれてからずっと寒いとこいるね、申し訳ない。
そう思い撫でると、きゅ、と小さく返事をした。早く帰れるよう頑張ります。
「ここを降りた方が近道です」
「崖ですが」
「飛び降りましょう」
「箒に乗ってるひとに言われましても……」
怜くんの指したところは結構な高さの崖だ。
下が雪とはいえ普通なら大怪我間違いなし。無事だったとしても雪に埋もれて死ぬのでは。
「俺繊細な魔法苦手なんだよ、飛んだりするの無理、ノエもいるし。ここだと風起こしたら吹雪になりそうだし」
「結界とかは張れるのに……」
「そういう大雑把なもののが得意なの」
「わかりましたよ、僕がどうにかするんで飛んでください」
「こわ、飛び降りてくださいだよ、俺たちにとっては」
「最短ルートで行きたいって言ったのはシャルルさんでしょ、ほらさん、にー、」
有無を言わせぬカウントダウン。
心の準備も出来ない三秒前からのスタートという鬼畜仕様。
高所恐怖症ではなくても流石に崖から飛び降りるなんてやりたいものではない、けれど。
いち、ぜろ!の掛け声で、背中を押されたような気がした。
ソフィが間違えて鞄から飛び出さないよう押さえ、ノエの腰を抱いて、うわあああ、と情けない声を出して崖から落ちる。
なんで俺、崖から落ちるなんて経験二回もしてるんだろうな。
落ちる先は雪。
どれだけ積もってるかはわからない。
殆ど積もってなければすぐ下の地面にぶつかって死ぬし、結構積もってれば……ふわふわの雪なんてクッション材になるのか?同じく地面にぶつかって死ぬか、上手いこといっても雪に埋もれて死ぬ、怜くんはどうにかするって、どう──……
「……ッ、」
「わ」
着地したところはふわっふわのふかふかした、……雪の上。
どういうこっちゃ、と思っていると、ゆっくり上から飛んできた怜くんが、雪をマットのようにふかふかにしてみました、とちょっと自慢気に言ってきた。
そういうの、飛ぶ前に言ってくんない?
言ったところであの高さを飛ぶのは大分勇気がいるけれど。
ノエは何度か頭の起き方を確認して、ううん、と唸る。
やっぱり寝にくいらしい。硬いし高いしまあそうだよね。
でも腕枕に文句を言われたのは初めてかも。
心臓から離す為とはいえ俺から呼んだ手前、断られるのは結構恥ずかしいな……
「んー……ん、ん」
「……」
「んっ、ここ」
「もう腕枕じゃない……」
もうそこは肩だ。そう思ったけれど、眠そうなぽやぽやした表情のまま、んふふ、と嬉しそうに笑うものだから、もうすきにしてくれと思う。
かおが近い。ノエのかわいらしいかおが。
そんなことで俺がどきどきしてるのを知ってか知らずか、顎の辺りにちゅうとキスをして、にへらと笑うとまた肩に頭を落とす。
……これは唇にもしろと強請られるか、勝手にしてくるかどちらかだ。どっちだろうか、正直どっちもアリだ。
唇を尖らせて、口にしてほしいと拗ねたように言うノエもかわいいし、ぎこちないキスを仕掛けてくるノエだってかわいい。
そう思っていたのに。
待っている間にすや、と寝てしまった。
……初めて酔っ払いに弄ばれるという経験をしました。
◇◇◇
みーんなで!おでかけ!
リアムの跳ねるような声が響く。そんな楽しいものではないんだけれどな。
俺たちが向かうのは、街の端、森の中にある薄暗いであろう洋館。
おでかけだー!なんて楽しそうなところではないだろう。
怜くんが含むように、危ないかもしれないから静かにすること、自分たちの言うことをちゃあんと聞くこと、離れないこと、を約束させる。
弟子になりにきただけあって、そこはきりっとしたかおではい!と良いお返事をしていた。
とはいえ何をしでかすのがわからないのがこども。特にリアムには念入りに、普通の人間の子に見えるように認識阻害を掛けておく。
かわいいかわいい獣人だー!なんて誘拐でもされたら別のイベントが発生してしまう。
朝食を済ませると、帰りのことも考えて早目に出ることにした。
怜くんは箒に跨り、リアムも一緒に載せる。俺やノエは体重オーバーだ、乗れない。
かわりに足元の雪を溶かして道を作ってくれた。
ここ最近のノエは一日に何回もキスを仕掛けてくるお陰で魔力もそこそこ、お陰で元気よく歩いてくれる。
流石に飛ぶ程の魔力は勿体ないらしい。ノエの魔力消費えげつないからな、ちょっとでも魔法をつかえばすぐすっからかんになってしまう。
それでも普通にしてる分には十分量だ、おれも飛びたい等と駄々を捏ねることなく……ただしっかり俺の手は繋いで歩く。
結局は甘えん坊。
「そのヨーカン?になんかあるの」
「わかんないから行くんだよ、だから変なことしないでね」
「へんなことってなんですか!」
「勝手に入ったりしないでね」
「かってにははいりません!」
リアムとノエの相手をしてるとちょっと引率の先生の気分になってきた。
ソフィも置いてくる訳にはいかず、鞄に入れて連れてきた。相変わらず丸くなって寝ている。
寒いとこ駄目なのに連れ回してごめんね、生まれてからずっと寒いとこいるね、申し訳ない。
そう思い撫でると、きゅ、と小さく返事をした。早く帰れるよう頑張ります。
「ここを降りた方が近道です」
「崖ですが」
「飛び降りましょう」
「箒に乗ってるひとに言われましても……」
怜くんの指したところは結構な高さの崖だ。
下が雪とはいえ普通なら大怪我間違いなし。無事だったとしても雪に埋もれて死ぬのでは。
「俺繊細な魔法苦手なんだよ、飛んだりするの無理、ノエもいるし。ここだと風起こしたら吹雪になりそうだし」
「結界とかは張れるのに……」
「そういう大雑把なもののが得意なの」
「わかりましたよ、僕がどうにかするんで飛んでください」
「こわ、飛び降りてくださいだよ、俺たちにとっては」
「最短ルートで行きたいって言ったのはシャルルさんでしょ、ほらさん、にー、」
有無を言わせぬカウントダウン。
心の準備も出来ない三秒前からのスタートという鬼畜仕様。
高所恐怖症ではなくても流石に崖から飛び降りるなんてやりたいものではない、けれど。
いち、ぜろ!の掛け声で、背中を押されたような気がした。
ソフィが間違えて鞄から飛び出さないよう押さえ、ノエの腰を抱いて、うわあああ、と情けない声を出して崖から落ちる。
なんで俺、崖から落ちるなんて経験二回もしてるんだろうな。
落ちる先は雪。
どれだけ積もってるかはわからない。
殆ど積もってなければすぐ下の地面にぶつかって死ぬし、結構積もってれば……ふわふわの雪なんてクッション材になるのか?同じく地面にぶつかって死ぬか、上手いこといっても雪に埋もれて死ぬ、怜くんはどうにかするって、どう──……
「……ッ、」
「わ」
着地したところはふわっふわのふかふかした、……雪の上。
どういうこっちゃ、と思っていると、ゆっくり上から飛んできた怜くんが、雪をマットのようにふかふかにしてみました、とちょっと自慢気に言ってきた。
そういうの、飛ぶ前に言ってくんない?
言ったところであの高さを飛ぶのは大分勇気がいるけれど。
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