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はあ、ジェットコースターよりこわかった、当然だけどこわかった。
鞄を確認すると、ソフィも無事。まぁ元々飛べるもんな。潰れてなくて良かった。
ノエはノエで隣で呆然としていた。
この子も元は飛べる筈で、そうするとこの高さから落ちるなんて経験はそう無かったのかもしれない。いや普通ないんだよ。
大丈夫、と訊くと、うん……うん、びっくりした、とこどものような感想と、またぎゅうと俺の手を掴んでくる。
震えたりはしていないようで、そこは安心した。こんなことでこわがらせたい訳ではない。
「でもこれでほら、もうそこの森の奥ですよ」
「ショートカットが強引だよ」
「帰りも考えると早い方がいいでしょ?」
夜の森ははいったらいけないんですよ、とリアム。
そうね、迷子になっちゃうからね。でも出来れば昼も森には入らないでほしいな。
まだ昼前だ。雪原は真っ白で、反射するように明るく眩しい。
だというのに、その先にある森のなんと薄暗いことか。
用事がなければリアムなんて連れて行きたいと思うことはない。
けれど、それだけ恐ろしさの感じるような森に続々と入っては記憶をなくす若人を想像すれば、その原因を早くどうにかするべきだとも思う。
家族からしたら心配だろうし、何よりよくわからないやつを野放しにしておくのも俺だって不安だ。
強引なショートカットはしたが、距離でいうとあの家とそんなに遠い訳ではない。
俺たちもいつまで怜くんたちといるかわからないし、その後何かあっても嫌だもんな。
「でもなんか、いやーな気配はしますよね」
「うん……結界も張ってある、俺たちが来たこともばれてるかも」
「……シャルルさん頼りにしてますからね」
なんだか本当にホラーのよう。
やだな、フラグを立てた奴はすぐ死ぬんだぞ。
暫く雪原を歩き、森に入り、また少し歩く。
思っていたより暗い森は、その暗さに慣れているのかノエは平気そうなかおをしているが、リアムは泣きそうだった。
彼の知ってる森ではないのだろう。
かわいい仔熊ちゃんには、木の実のたくさんなる明るい森が似合う。こんなにおどろおどろしい森では住めたものじゃない。
箒の上で怜くんにしがみついているリアムに、小声で大丈夫だよ、あと少しだからねえ、帰ったらはちみつたっぷりのケーキを食べようねえ、なんて皆で声を掛けていた。
そんなことを続けていると、漸く目的地が見えてきた。
開けた土地にでん、と馬鹿でかい門がある。
こんなとこにこんな洋館だなんて、どう見ても訳ありだ。
すみません、道に迷ってしまって。
まあ大変でしたでしょう、うちであたたまっていってくださいな、
お言葉に甘えて失礼致します。
……そうやって、殺人事件おこるやつでしょ。よく見るやつだ。
また、いやあな雰囲気、と言った怜くんを止めて、まずは俺だけ門を叩くから、やばそうなら逃げるように、大丈夫なら呼ぶからまだ森に隠れていてと指示をする。
俺だけならどうにかなると思うけれど、誰かを守るとなると話は別。
怜くんは箒でさっと逃げられるとして、ノエの逃げ道も考えておかなきゃいけない。
危なくない?と怜くんは言うけれど、勇者さまが頼まれたことでもあるし、まあ大丈夫でしょこれくらい、とまだ俺は楽観的だった。
シャルルの持つチート能力に絶大な信頼をおいている。
ノエに怜くんたちと待つように、呼ぶまで出てこないように告げると、ぎゅっと手を掴む力が強くなって、それから、うん、早く呼んでね、なんてさみしそうに言う。
なんだか大袈裟だなあ。ノエも何か感じるところがあるのだろうか。
ソフィの入った鞄をノエに預けて、耳をぺしょんと倒すリアムの頭を撫でて、大丈夫だからねと笑顔を見せてから門の方へ向かう。
こういう時はおとなたちが不安そうなかおをしてたら駄目なのだ。
すうと息を吸って、ごめんください……いやこれチャイムがないんだった。
当たり前なんだけど、門の前で呆然としてしまう。
大きな声で呼んでもいいものなのだろうか。
どうしようかと迷っていると、どうかなさいましたか、と声がした。
一瞬びく、として、それからまあ結界の件から俺たちが来てることもばれてる訳だし、すぐに誰かが出てきてもおかしくないか、とまた息を吸った。
迷いましたなんて言葉は通らない。
でもだからといって勇者です、不審なので調査に来ましたとも言えない。
まずいな、なんて言えば怪しくないかな、何言ったって怪しいけどさ、なんて考えてると、声の主が姿を現した。
声からして女なのはわかっていた。
洋館の従者なのだから所謂メイド服なのもわかる。
だけど、言葉に詰まったのは、そのメイドがある種メイドには似つかわしくないほど綺麗な女性だったからだ。
……というかこれはメイドでいいのか?コスプレでは?エロゲーとかAVに出てくるやつでは?
そう毒吐きたくなるほど、その女性はまあ艶のある女性だった。
この世界に来て、綺麗な女性もかわいい女の子もたくさん見てきた。夜の世界で働く女性だって。
ただここまで性的な女性は出てこなかった、やはりジャンルが違う。
頭の中で、人間ではない、そう警鐘が鳴った。
鞄を確認すると、ソフィも無事。まぁ元々飛べるもんな。潰れてなくて良かった。
ノエはノエで隣で呆然としていた。
この子も元は飛べる筈で、そうするとこの高さから落ちるなんて経験はそう無かったのかもしれない。いや普通ないんだよ。
大丈夫、と訊くと、うん……うん、びっくりした、とこどものような感想と、またぎゅうと俺の手を掴んでくる。
震えたりはしていないようで、そこは安心した。こんなことでこわがらせたい訳ではない。
「でもこれでほら、もうそこの森の奥ですよ」
「ショートカットが強引だよ」
「帰りも考えると早い方がいいでしょ?」
夜の森ははいったらいけないんですよ、とリアム。
そうね、迷子になっちゃうからね。でも出来れば昼も森には入らないでほしいな。
まだ昼前だ。雪原は真っ白で、反射するように明るく眩しい。
だというのに、その先にある森のなんと薄暗いことか。
用事がなければリアムなんて連れて行きたいと思うことはない。
けれど、それだけ恐ろしさの感じるような森に続々と入っては記憶をなくす若人を想像すれば、その原因を早くどうにかするべきだとも思う。
家族からしたら心配だろうし、何よりよくわからないやつを野放しにしておくのも俺だって不安だ。
強引なショートカットはしたが、距離でいうとあの家とそんなに遠い訳ではない。
俺たちもいつまで怜くんたちといるかわからないし、その後何かあっても嫌だもんな。
「でもなんか、いやーな気配はしますよね」
「うん……結界も張ってある、俺たちが来たこともばれてるかも」
「……シャルルさん頼りにしてますからね」
なんだか本当にホラーのよう。
やだな、フラグを立てた奴はすぐ死ぬんだぞ。
暫く雪原を歩き、森に入り、また少し歩く。
思っていたより暗い森は、その暗さに慣れているのかノエは平気そうなかおをしているが、リアムは泣きそうだった。
彼の知ってる森ではないのだろう。
かわいい仔熊ちゃんには、木の実のたくさんなる明るい森が似合う。こんなにおどろおどろしい森では住めたものじゃない。
箒の上で怜くんにしがみついているリアムに、小声で大丈夫だよ、あと少しだからねえ、帰ったらはちみつたっぷりのケーキを食べようねえ、なんて皆で声を掛けていた。
そんなことを続けていると、漸く目的地が見えてきた。
開けた土地にでん、と馬鹿でかい門がある。
こんなとこにこんな洋館だなんて、どう見ても訳ありだ。
すみません、道に迷ってしまって。
まあ大変でしたでしょう、うちであたたまっていってくださいな、
お言葉に甘えて失礼致します。
……そうやって、殺人事件おこるやつでしょ。よく見るやつだ。
また、いやあな雰囲気、と言った怜くんを止めて、まずは俺だけ門を叩くから、やばそうなら逃げるように、大丈夫なら呼ぶからまだ森に隠れていてと指示をする。
俺だけならどうにかなると思うけれど、誰かを守るとなると話は別。
怜くんは箒でさっと逃げられるとして、ノエの逃げ道も考えておかなきゃいけない。
危なくない?と怜くんは言うけれど、勇者さまが頼まれたことでもあるし、まあ大丈夫でしょこれくらい、とまだ俺は楽観的だった。
シャルルの持つチート能力に絶大な信頼をおいている。
ノエに怜くんたちと待つように、呼ぶまで出てこないように告げると、ぎゅっと手を掴む力が強くなって、それから、うん、早く呼んでね、なんてさみしそうに言う。
なんだか大袈裟だなあ。ノエも何か感じるところがあるのだろうか。
ソフィの入った鞄をノエに預けて、耳をぺしょんと倒すリアムの頭を撫でて、大丈夫だからねと笑顔を見せてから門の方へ向かう。
こういう時はおとなたちが不安そうなかおをしてたら駄目なのだ。
すうと息を吸って、ごめんください……いやこれチャイムがないんだった。
当たり前なんだけど、門の前で呆然としてしまう。
大きな声で呼んでもいいものなのだろうか。
どうしようかと迷っていると、どうかなさいましたか、と声がした。
一瞬びく、として、それからまあ結界の件から俺たちが来てることもばれてる訳だし、すぐに誰かが出てきてもおかしくないか、とまた息を吸った。
迷いましたなんて言葉は通らない。
でもだからといって勇者です、不審なので調査に来ましたとも言えない。
まずいな、なんて言えば怪しくないかな、何言ったって怪しいけどさ、なんて考えてると、声の主が姿を現した。
声からして女なのはわかっていた。
洋館の従者なのだから所謂メイド服なのもわかる。
だけど、言葉に詰まったのは、そのメイドがある種メイドには似つかわしくないほど綺麗な女性だったからだ。
……というかこれはメイドでいいのか?コスプレでは?エロゲーとかAVに出てくるやつでは?
そう毒吐きたくなるほど、その女性はまあ艶のある女性だった。
この世界に来て、綺麗な女性もかわいい女の子もたくさん見てきた。夜の世界で働く女性だって。
ただここまで性的な女性は出てこなかった、やはりジャンルが違う。
頭の中で、人間ではない、そう警鐘が鳴った。
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