【完結】春が追い付く二拍手前。

――月が、綺麗ですね。
―――いつかあの世で返事を聞かせてほしい。

臨終の床にある彼女の言葉に、私は何も返事をすることができなかった。

だって、私は、彼女の思いに答える資格もない器械(おもちゃ)だから。
魂なんてなくて、
死んだ後は、無になるのだから――


そして、彼女を失い、自棄になった私を救った大切な親友。
その命すらも、消えようとする時、
脳裏に浮かんだのはかつての彼の言葉。

――願いを確実に叶えてもらう。神様への願いの伝え方が存在しているんだって。


ごめんなさい。私は、あなたたちから受けた愛を、仇で返します――。

***********************

「約束しましょう、柾。私は、何があっても必ず、彼女の傍にいます」


親友と交わしたその約束は、
ロボットである私には、簡単に果たせるはずのものだったのに――。


人間の女の子とロボットのウサギ。
結ばれるはずのない、切ない恋。
そして、神主の彼との大切な友情。

みんなを奪っていこうとする残酷なこの世界に、神様なんていないのか。
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