12 / 55
1
12
しおりを挟む◇◇◇
「アオくん、ちょっといーい?」
「え」
「こっちこっちー」
「ちょ、まっ、えっ」
休み時間、自販機の前で佐倉に拉致られてしまった。
身長があまり変わらないとはいえ、華奢な癖して力が強い。
女の子相手に無理に引き剥がすことも出来ず、されるがままに引っ張られていたら、少し先の空き教室に引っ張りこまれた。
……リンチでもされるのか?と思っていたら、振り返った佐倉はにっこりと笑って、次さぼっちゃお、と言った。
え、こわ、いやさぼったことがないとは言わない。
まさに昨日保健室でさぼったばかりだ。
「昨日コーキから連絡きちゃった」
「あ」
「今日話するんでしょ?その前にあたしの話も聞いて欲しいなって」
座って座って、と窓際の床に座る佐倉に促されて隣に座る。
いつもより佐倉、明るい気がする。
「はいこれあげる、ジュース買おうとしてたでしょ」
「……いちごミルク」
「アオくんすきそうだなって」
「や、初めて飲む」
「そうなの?まあ飲んでみたまえ」
すすめられて一口啜り、甘、とつい言ってしまった僕をみて、佐倉は楽しそうに笑った。
「後でお茶も奢るよ」
「いや、いい……てか僕の方が」
「いいのいいの、あたしが話したかったし、いちごミルク飲んでるアオくんが見たかっただけなの、かわいいね、写真撮っていい?」
「え……だめ」
「あはは」
残念、と佐倉もいちごミルクを口にして、ほんとだめちゃくちゃ甘ったるう、と笑みを見せる。
クラスの中でも明るいタイプだとはわかっていたけど、こういう絡み方してくるタイプだったか、と初めて知った。
当たり障りない会話しかしたことなかったから。
「あのさ……皇輝から聞いたって」
「うん、昨日ね、悪い、アオに話すわって」
「それ皇輝の真似?」
「似てるでしょ」
「全然似てないよ」
思わず僕も笑ってしまう。
学年一かわいくてモテる佐倉も、こういうところがあるから憎まれにくいところがあるんだろう。
「ほんとはね、もうちょっとかかるかなあって思ってたんだよね」
「?」
「でも早かったね」
「……何が?」
「アオくんはコーキがすきで、コーキはアオくんがすきで、お互いすきなのにいつまで経ってもくっつかないんだもん」
「えっ」
「あたしだって早く次に進みたいのにさ、ふたりがそんなんじゃ……そんなんじゃあたしの物語は進まないんじゃないかって」
どういうことどういうこと、僕が皇輝すきってばればれだってこと、
「やだ、引かないでよ」
「だっ、えっ、なっ……」
「周りはそこまで思ってないんじゃないかな、コーキとアオくんが仲良いのは皆知ってるし……だからこそ皆アオくんを使うんでしょ、あたしの時みたいに」
「……」
「でもあたしはわかるよ、アオくんの気持ち」
「……えっと、」
「ねえ、アオくんもわかってるでしょ、あたしのこと」
後ずさる僕に、同じように這って佐倉が寄ってくる。
皇輝相手とは違う心臓の痛み。
やばい、やばいやばいやばい、わかってる、皇輝と違って、佐倉はわかってる。
「お、姫さま……」
「せーかい♡」
にっこり笑った佐倉は、今までで一番綺麗だと思ってしまった。
ほら座って、と腕を引かれて、また座り直す。
どういうことだろう、皇輝を返せということ?でもそんな感じではない、脅される?いやでもまさか、そんな……
「あたしが悪いことすると思ってる?」
「うっ……」
「あは、ほんとわかりやすいアオくん、かわいい、あの時もかわいかったもんね」
「え」
「今考えたらあたし酷いよね、あの時傷付いて、でもそれを表に出さないよう、笑顔を向けるあの子を、妹が出来たみたいでかわいいと思ってたの」
「……でもそれは佐倉のせいじゃないし」
「そうだよ」
じっと僕の瞳をみて、もう一度、そうだよ、と言った。
「あたしのせいじゃない。アオくんのせいでもないし、コーキのせいでもない。前世なんてどうにも出来ないし。あの時、お姫様に出来たことも人魚姫ちゃんに出来たこともないよ、王子様はちょっと~!って思うけど、でもそれは全部を知ってる読者だから。あの時王子様がお姫様を選んだことに、人魚姫ちゃんもアオくんも、あたしもコーキも責めることなんて出来ない」
そうでしょ、と言われて、頷く。
確かにお姫様は人魚姫から王子様を奪おうと思ったわけではないし、王子様は人魚姫を捨てようと思った訳でもない。
ただ全てが噛み合わなかっただけ。
「でもあたしはもう人魚姫の話を知ってしまってる訳で、人魚姫ちゃんが王子様がすきなことも、王子様が最初にすきになったのは人魚姫ちゃんで、お姫様はただちょっと似てただけだって知ってるの」
「……」
「だからコーキだってすきだし、かっこいー!って思うよ、でもそれだけなの、あたしにだってプライドあるし、間違ってすかれるなんて真っ平御免、ちゃんとあたしのことをすきなひとと付き合いたいし」
「あの」
「コーキと付き合いたいとは思ってない、それだけはわかってほしい」
真っ直ぐな瞳が、僕の視線が逃げるのを許さない。
いきなりのことで、頭がまだよく回ってないまま、こくこくと頷いた。
41
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる