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あっさりと悠真さんはいいよ、と返すものだから、いいよおれがするから、と慌てると、今度は芽依が横からちがうのー!と怒り出す。
なんだよ、おれじゃなくて悠真さんがいいっていうこと?と内心ショックを受けていると、あれ、と芽依がゆび指したのはひとくみの家族連れだった。
成程、と悠真さんが頷いて、肩車だ、と言うと、そうそれ!というように芽依はうんうん首を振る。
は?いや、おれだって肩車ぐらい出来ますけど?なんだ、高さの問題か?安定性の問題か?
「和音」
「……嫌ならおれが肩車するけど」
「嫌じゃないよ、でも肩車するの初めてだからさ、万が一落ちたりしないよう見てて」
「芽依が暴れなきゃ大丈夫でしょ、ばたばたすんなよ、芽依」
「いーこにする!」
「おし」
選ばれなかったのはほんの少し悔しいけれど、まあおれだって芽依の立場なら悠真さんを選ぶか。
落とされなさそうだし。
「ちゃんと掴まっててね」
「んっ」
わあ、たかーい!と特に高さにこわがることもなく、芽依は嬉しそうに周りをきょろきょろと見渡した。
あっちにおさるさんいたね、きりんさんみえないねえ、こっちはかえるとこっ、みんなもうばいばいするんだね、
少し舌っ足らずの声が甘えたように声を跳ねさせる。
最初は落ちないようその背を支えていたが、園を出る頃には大丈夫かと後ろから見守るだけになっていた。
良かった、芽依が楽しそうで。
一週間、つまらない思いをさせずにすんで。
おれ、免許は諦めたから車の運転出来なくて遠出とか出来ないんだよね、電車だってタクシーだって出来れば最小限に抑えたいし。
こどもにはつまらないよね。
その点悠真さんは、急な動物園でもいいよと言えるフットワークの軽さ、面倒見のよさには少しびっくりしたけれど、その姿は悪くない。
芽依を肩車する悠真さんはまるで親子のようで、なんだか微笑ましい。
そんな姿、見れると思わなかった。
◇◇◇
「寝ちゃった」
「はしゃいでたもんなあ、夕飯、どこかに寄ってもと思ってたけど止めとこうか」
「ん、デリバリーでもしようかな」
「買い物は?スーパー寄る?」
「いいよ、明日行く。夕飯の買い物だけだったし」
「……そう」
帰りの車の中、悠真さんの安全運転のおかげもあって、芽依は早々に寝落ちしてしまった。
悠真さん、流石に今日は帰っちゃうだろうな。発情期でもないし、用事があった訳でもない。
一応心配をして、様子を見にきてくれただけ。
それがこんな、動物園まで連れてってもらっちゃって。これ以上望むことは悪い。
「芽依ちゃん、あんまり似てないね」
「おれに?……まあ芽依は叔母よりゆ……番似だからなあ」
「そうなんだ、和音と花音ちゃんそっくりだからさ、つい皆似てるのかなって思っちゃって」
「そんな訳ないじゃん、ねえ、芽依」
「かわいいね」
「……うん」
ぷうぷう仔犬のように寝息を吐く芽依がかわいい。
起きててくれたらもうちょっと悠真さんといれたかもしれない。
でもそんなこと芽依には関係ないことだ。いや、芽依がいなきゃ動物園なんて来なかった。悠真さんと来ることなんてきっともうないんじゃないかな、動物園なんて。
そりゃ、悠真さんにこどもが出来たら、……こうやって連れていくんだろうけど。でもそれはおれ、関係ないし。
「和音、何食べたい?」
「え」
「プリン?」
「……それおやつだし」
「うん」
「寒いし……シチューとか……あっグラタン」
頭の中でデリバリーをしてくれる店を考える。
グラタンならきっと芽依も食べる。こどもはすきだもんね、グラタン。冷ましてから食べさせなきゃ。いやデリバリーなら丁度いいかな……
「それなら作れるよ、俺」
「うん?」
「スーパー寄ってく?」
「……悠真さんも食べてくの?」
「今日和音冷たいなあ、お昼と同じこと言うじゃん」
「えっ、いや、だって」
だっていつも帰っちゃうじゃん、ご飯なんて最初に一度作ってもらったきり……ううん、プリンもうどんも作ってもらったけど、一緒に食べた訳じゃないし……
嬉しいよ、あれはどう考えてもただの看病で、普通の感覚なら病人は放っておけないから面倒みてくれただけで。
今日なんて、ただの勘違いだった、って帰ってもよかったし、今から動物園はちょっと、って断ってもよかったし、そんな、夕飯だって気にせずおれたちを家の前で降ろせばそれでいい筈。
確かに前回、今度から気をつけるとは言ってたけど、それはあくまで発情期についてであって……
違うのかな、発情期以外ももうちょっと、考えてくれるってことだったのかな。
確かに発情期前にしかなかった連絡は増えた。
それだって風邪ひいたばっかりとか、この時期は体調不良になりやすいとか、だから今日だって何かあったと思って来てくれたりとか……
そうじゃなくて、ずっと、この時期だけじゃなくて、もっと気にしてくれるってこと?
いいのかな、おれは……ひとりだって慣れてる、でも慣れてるからひとりがいい訳ではなくて、一緒にいてくれるなら、その、悠真さんと一緒にいるのは、嬉しい。楽しい。安心する。
でも、いいの?番は?
おれにそんなに時間を割いてもいいの?
そう思っても訊ける訳はない。
こういう時、ひとは狡くなってしまうのかもしれない。
なんだよ、おれじゃなくて悠真さんがいいっていうこと?と内心ショックを受けていると、あれ、と芽依がゆび指したのはひとくみの家族連れだった。
成程、と悠真さんが頷いて、肩車だ、と言うと、そうそれ!というように芽依はうんうん首を振る。
は?いや、おれだって肩車ぐらい出来ますけど?なんだ、高さの問題か?安定性の問題か?
「和音」
「……嫌ならおれが肩車するけど」
「嫌じゃないよ、でも肩車するの初めてだからさ、万が一落ちたりしないよう見てて」
「芽依が暴れなきゃ大丈夫でしょ、ばたばたすんなよ、芽依」
「いーこにする!」
「おし」
選ばれなかったのはほんの少し悔しいけれど、まあおれだって芽依の立場なら悠真さんを選ぶか。
落とされなさそうだし。
「ちゃんと掴まっててね」
「んっ」
わあ、たかーい!と特に高さにこわがることもなく、芽依は嬉しそうに周りをきょろきょろと見渡した。
あっちにおさるさんいたね、きりんさんみえないねえ、こっちはかえるとこっ、みんなもうばいばいするんだね、
少し舌っ足らずの声が甘えたように声を跳ねさせる。
最初は落ちないようその背を支えていたが、園を出る頃には大丈夫かと後ろから見守るだけになっていた。
良かった、芽依が楽しそうで。
一週間、つまらない思いをさせずにすんで。
おれ、免許は諦めたから車の運転出来なくて遠出とか出来ないんだよね、電車だってタクシーだって出来れば最小限に抑えたいし。
こどもにはつまらないよね。
その点悠真さんは、急な動物園でもいいよと言えるフットワークの軽さ、面倒見のよさには少しびっくりしたけれど、その姿は悪くない。
芽依を肩車する悠真さんはまるで親子のようで、なんだか微笑ましい。
そんな姿、見れると思わなかった。
◇◇◇
「寝ちゃった」
「はしゃいでたもんなあ、夕飯、どこかに寄ってもと思ってたけど止めとこうか」
「ん、デリバリーでもしようかな」
「買い物は?スーパー寄る?」
「いいよ、明日行く。夕飯の買い物だけだったし」
「……そう」
帰りの車の中、悠真さんの安全運転のおかげもあって、芽依は早々に寝落ちしてしまった。
悠真さん、流石に今日は帰っちゃうだろうな。発情期でもないし、用事があった訳でもない。
一応心配をして、様子を見にきてくれただけ。
それがこんな、動物園まで連れてってもらっちゃって。これ以上望むことは悪い。
「芽依ちゃん、あんまり似てないね」
「おれに?……まあ芽依は叔母よりゆ……番似だからなあ」
「そうなんだ、和音と花音ちゃんそっくりだからさ、つい皆似てるのかなって思っちゃって」
「そんな訳ないじゃん、ねえ、芽依」
「かわいいね」
「……うん」
ぷうぷう仔犬のように寝息を吐く芽依がかわいい。
起きててくれたらもうちょっと悠真さんといれたかもしれない。
でもそんなこと芽依には関係ないことだ。いや、芽依がいなきゃ動物園なんて来なかった。悠真さんと来ることなんてきっともうないんじゃないかな、動物園なんて。
そりゃ、悠真さんにこどもが出来たら、……こうやって連れていくんだろうけど。でもそれはおれ、関係ないし。
「和音、何食べたい?」
「え」
「プリン?」
「……それおやつだし」
「うん」
「寒いし……シチューとか……あっグラタン」
頭の中でデリバリーをしてくれる店を考える。
グラタンならきっと芽依も食べる。こどもはすきだもんね、グラタン。冷ましてから食べさせなきゃ。いやデリバリーなら丁度いいかな……
「それなら作れるよ、俺」
「うん?」
「スーパー寄ってく?」
「……悠真さんも食べてくの?」
「今日和音冷たいなあ、お昼と同じこと言うじゃん」
「えっ、いや、だって」
だっていつも帰っちゃうじゃん、ご飯なんて最初に一度作ってもらったきり……ううん、プリンもうどんも作ってもらったけど、一緒に食べた訳じゃないし……
嬉しいよ、あれはどう考えてもただの看病で、普通の感覚なら病人は放っておけないから面倒みてくれただけで。
今日なんて、ただの勘違いだった、って帰ってもよかったし、今から動物園はちょっと、って断ってもよかったし、そんな、夕飯だって気にせずおれたちを家の前で降ろせばそれでいい筈。
確かに前回、今度から気をつけるとは言ってたけど、それはあくまで発情期についてであって……
違うのかな、発情期以外ももうちょっと、考えてくれるってことだったのかな。
確かに発情期前にしかなかった連絡は増えた。
それだって風邪ひいたばっかりとか、この時期は体調不良になりやすいとか、だから今日だって何かあったと思って来てくれたりとか……
そうじゃなくて、ずっと、この時期だけじゃなくて、もっと気にしてくれるってこと?
いいのかな、おれは……ひとりだって慣れてる、でも慣れてるからひとりがいい訳ではなくて、一緒にいてくれるなら、その、悠真さんと一緒にいるのは、嬉しい。楽しい。安心する。
でも、いいの?番は?
おれにそんなに時間を割いてもいいの?
そう思っても訊ける訳はない。
こういう時、ひとは狡くなってしまうのかもしれない。
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