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赤ちゃんがほしいのは、悠真さんがほしい、の延長線上なのだ。
悠真さんが相手だからほしいの。悠真さんとの子じゃなければ、いらない。
悠真さんだから。
悠真さんだから……え、あれ、結婚?
「けっこん、」
「……嫌?」
「……おれとで、いいの、」
「和音とじゃなきゃしないよ、和音がいい」
「……一緒に、住むの……?」
「……いや?」
悠真さんの瞳が心配そうに揺らいだ。
いやじゃない。嬉しい。
だってそれって、どんな時ももう、ひとりじゃないってことでしょ?
そりゃあ、仕事とか、そういう時は当然あるけど、発情期とか、さみしい時とか、一緒にいられる権利があるってことでしょ?
我慢しなくたって、もう、悩んだりとかしなくたって、当然のように悠真さんを求めたっていいってことだよね?
……そんなの、いやな訳、ない。
「いっしょにずむゔ……!」
「うん……良かったあ」
鼻声になったおれを悠真さんがぎゅうと抱き締めて背中を撫でるものだから、余計こどものように泣いてしまう。
嘘みたいだ、夢みたいだ。
話だけが進んでいって、まだついていけないところが大きいけれど、一緒に住むというのは現実味があってずどんと胸にきた。
結婚もこどももまだ夢のようなもので、ふわふわした約束事でしかないけど、一緒に住むというのは花音と千晶くんを見て、いいなとも思っていたことだから。
おはようって朝食を一緒に摂って、仕事に行って、帰って一緒にまた夕食、お風呂や家事をして、話をして、一緒に寝る。
そんな普通のことが、いや、その通りになんていかないことの方が多いかもしれないけど、でも、それをする権利がある。
もう悠真さん来るかな、来ないかな、なんて心配しなくたって、遅くなっても帰ってくるんでしょ?
体調を崩しても、さみしくても、眠れない時も、急にヒートが来た時も、ただ会いたい時も、我慢なんかしなくても同じ場所に帰ってきてくれるんでしょ?
発情期に一日だけしか来てくれないなんて苦しくなったり、会いたいって言っていいのかなとか悩んだり、我儘言ったら迷惑かなって考えたり、そういうの、もうかなしく思わなくていいんでしょ?
悠真さんが、おれのものになるってことなんでしょ?
そんなこと、オメガじゃなかったら、おれはきっと求めなかった。
オメガじゃなければ、悠真さんと番になって、こどものことなんて考えられなかった。
初めてオメガで良かったと思えたかもしれない。
オメガじゃなければしないで済んだ遠回りかもしれないけれど、オメガじゃなければ出来ないこともある。
わんわん泣くおれの頬を撫でて、涙を拭い、おでこと頬にキスをした。
ん、と悠真さんの方に顎を上げると、髪を撫でて、ちゅう、と軽く唇が重なる。
一度、二度、三度。
四度目で唇を開くと、ぬるりとあついものが侵入してきた。
自分の拙い指先とは違う、口の中がいっぱいになって、気持ちよくなるやつだ。
追い掛けるように舌を絡ませて、吸う。少し離れた唇を追って、軽く噛む。
仕返しのように舌先を噛まれて吸われると、背中がぞくぞくした。
「……積極的になったねえ」
「ら、って、も、いーんでしょ……」
悠真さんのこと、もっとほしいって思っても、そう口にしても。
だって番は他にはいなくて、当然いちばんめもいなくて、おれがそうなんでしょ、おれが悠真さんのこと、独り占めしてもよくなったんでしょ?
「いやだ……?」
「んーん、求められるの、最高にしあわせだなって」
ぎゅう、と抱き締めて言う言葉が少し震えていた。
本当に嬉しいと思ってくれているのだと思うと、おれだって心臓がばくばくする。
腕を回して、ぎゅっと悠真さんにしがみつく。
緊張するし、どきどきするし、でもやっぱり不思議と落ち着くようなひと。
そんなひと、自分に出来るだなんて思わなかった。
「……っ、ん、」
「ああそうか、ヒート中だよね、これじゃ足んないか」
「や、ちが……」
「脱ごっか、これ」
「あっ、今、だめ……!」
制止が間に合わず、コートを開かれてしまう。
悠真さんがびっくりしたように瞳を丸くして、それからその瞳を細めて、我慢させてごめんね、と耳元に唇を落とす。
キスや優しい声に期待して、おれのものはついさっき車の中で一度達したというのにまた勃ち上がってだらだらと涎を垂らしていて、糸を引くようにコートを汚している。
流石にそういうのを見られるのは恥ずかしい。もう既に色々なところを見られているとわかっていても。
「こ、コートだめにして、ごめんなさい……」
「気にしなくていいってば、こんな服より、和音の方がだいじなんだから」
「……ごめんって、思うんだけど、でもやっぱり服、たくさんほしい……まだだめ?」
「いいよ、幾らでもあげる。今度巣作りしてるとこ見せてね、いっぱい褒めたげるから」
「うん……」
「今日は俺で我慢してくれる?」
「……今日は悠真さんがいい……」
悠真さんの手を取ると、悠真さんはまた嬉しそうに笑った。
それがおれも、嬉しい。
コートを脱がせて、中途半端に着ていた上着も脱がせて、悠真さんはおれをベッドに倒した。
ごめん、和音が来ると思ってなかったから今日シーツ替えてない、と少し焦ったような声に、これがいい、と本音が漏れてしまう。
少しでも悠真さんのにおいに包まれる方がしあわせな気になるから。
悠真さんが相手だからほしいの。悠真さんとの子じゃなければ、いらない。
悠真さんだから。
悠真さんだから……え、あれ、結婚?
「けっこん、」
「……嫌?」
「……おれとで、いいの、」
「和音とじゃなきゃしないよ、和音がいい」
「……一緒に、住むの……?」
「……いや?」
悠真さんの瞳が心配そうに揺らいだ。
いやじゃない。嬉しい。
だってそれって、どんな時ももう、ひとりじゃないってことでしょ?
そりゃあ、仕事とか、そういう時は当然あるけど、発情期とか、さみしい時とか、一緒にいられる権利があるってことでしょ?
我慢しなくたって、もう、悩んだりとかしなくたって、当然のように悠真さんを求めたっていいってことだよね?
……そんなの、いやな訳、ない。
「いっしょにずむゔ……!」
「うん……良かったあ」
鼻声になったおれを悠真さんがぎゅうと抱き締めて背中を撫でるものだから、余計こどものように泣いてしまう。
嘘みたいだ、夢みたいだ。
話だけが進んでいって、まだついていけないところが大きいけれど、一緒に住むというのは現実味があってずどんと胸にきた。
結婚もこどももまだ夢のようなもので、ふわふわした約束事でしかないけど、一緒に住むというのは花音と千晶くんを見て、いいなとも思っていたことだから。
おはようって朝食を一緒に摂って、仕事に行って、帰って一緒にまた夕食、お風呂や家事をして、話をして、一緒に寝る。
そんな普通のことが、いや、その通りになんていかないことの方が多いかもしれないけど、でも、それをする権利がある。
もう悠真さん来るかな、来ないかな、なんて心配しなくたって、遅くなっても帰ってくるんでしょ?
体調を崩しても、さみしくても、眠れない時も、急にヒートが来た時も、ただ会いたい時も、我慢なんかしなくても同じ場所に帰ってきてくれるんでしょ?
発情期に一日だけしか来てくれないなんて苦しくなったり、会いたいって言っていいのかなとか悩んだり、我儘言ったら迷惑かなって考えたり、そういうの、もうかなしく思わなくていいんでしょ?
悠真さんが、おれのものになるってことなんでしょ?
そんなこと、オメガじゃなかったら、おれはきっと求めなかった。
オメガじゃなければ、悠真さんと番になって、こどものことなんて考えられなかった。
初めてオメガで良かったと思えたかもしれない。
オメガじゃなければしないで済んだ遠回りかもしれないけれど、オメガじゃなければ出来ないこともある。
わんわん泣くおれの頬を撫でて、涙を拭い、おでこと頬にキスをした。
ん、と悠真さんの方に顎を上げると、髪を撫でて、ちゅう、と軽く唇が重なる。
一度、二度、三度。
四度目で唇を開くと、ぬるりとあついものが侵入してきた。
自分の拙い指先とは違う、口の中がいっぱいになって、気持ちよくなるやつだ。
追い掛けるように舌を絡ませて、吸う。少し離れた唇を追って、軽く噛む。
仕返しのように舌先を噛まれて吸われると、背中がぞくぞくした。
「……積極的になったねえ」
「ら、って、も、いーんでしょ……」
悠真さんのこと、もっとほしいって思っても、そう口にしても。
だって番は他にはいなくて、当然いちばんめもいなくて、おれがそうなんでしょ、おれが悠真さんのこと、独り占めしてもよくなったんでしょ?
「いやだ……?」
「んーん、求められるの、最高にしあわせだなって」
ぎゅう、と抱き締めて言う言葉が少し震えていた。
本当に嬉しいと思ってくれているのだと思うと、おれだって心臓がばくばくする。
腕を回して、ぎゅっと悠真さんにしがみつく。
緊張するし、どきどきするし、でもやっぱり不思議と落ち着くようなひと。
そんなひと、自分に出来るだなんて思わなかった。
「……っ、ん、」
「ああそうか、ヒート中だよね、これじゃ足んないか」
「や、ちが……」
「脱ごっか、これ」
「あっ、今、だめ……!」
制止が間に合わず、コートを開かれてしまう。
悠真さんがびっくりしたように瞳を丸くして、それからその瞳を細めて、我慢させてごめんね、と耳元に唇を落とす。
キスや優しい声に期待して、おれのものはついさっき車の中で一度達したというのにまた勃ち上がってだらだらと涎を垂らしていて、糸を引くようにコートを汚している。
流石にそういうのを見られるのは恥ずかしい。もう既に色々なところを見られているとわかっていても。
「こ、コートだめにして、ごめんなさい……」
「気にしなくていいってば、こんな服より、和音の方がだいじなんだから」
「……ごめんって、思うんだけど、でもやっぱり服、たくさんほしい……まだだめ?」
「いいよ、幾らでもあげる。今度巣作りしてるとこ見せてね、いっぱい褒めたげるから」
「うん……」
「今日は俺で我慢してくれる?」
「……今日は悠真さんがいい……」
悠真さんの手を取ると、悠真さんはまた嬉しそうに笑った。
それがおれも、嬉しい。
コートを脱がせて、中途半端に着ていた上着も脱がせて、悠真さんはおれをベッドに倒した。
ごめん、和音が来ると思ってなかったから今日シーツ替えてない、と少し焦ったような声に、これがいい、と本音が漏れてしまう。
少しでも悠真さんのにおいに包まれる方がしあわせな気になるから。
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